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ドルフィンホテル/岸本葉子ノート



 岸本葉子という人の名前をどのくらいの人が知っているのだろうか。恥ずかしながら僕が彼女の本を読み始めたのは今年、2001年になってからだった。
 岸本葉子は小説を書いているわけではない。ノンフィクションといった感じの本を書いているというわけでもない。本を出しているといっても、あちこちの雑誌に連載したものをまとめたもののほうが圧倒的に多い。
 彼女の書いているものをひと言で言うならば、生活に関するエッセイというものになるのだろうか。
 生活か……。でも、彼女は結婚していていたり家庭を持っているというわけではない。僕と同じ1人暮らしだ。でも、彼女のエッセイを読むと、たった1人でもそこには生活というものがあるんだ、ということを感じる。1人でご飯を食べたり、洗濯をしたり、掃除をしたりすることも、大きな価値を持つことであり、そうした何気ないひとつひとつのことが、実は何よりも大切なことのようにも思えてくる。

 岸本葉子は別に哲学を語るわけでもなく、人生について語っているだけでもない。ただ、おいしくご飯を食べるには、とか。楽しくお風呂に入るにはとか、ほんとうに何気ないことを語っているだけだ。

 たぶん、彼女は僕よりも一つ年齢が上になる。東京大学を出ているのだけど、文章からはこうした学歴というものは何も感じられない。もちろん、おいしいお新香を作るのに共通一次試験の点数なんて関係ないだろう。そうか、そうか、共通一次試験なんて遠い昔のことだったんだ(笑)。就職が決まって、4月までのある期間、卒業旅行に行くこともない彼女は、文章を書き始める。就職活動に関してのあれこれを自分の感じたままに。『クリスタルはきらいよ』というタイトルのその原稿は、すぐに本になることはなく、彼女は保険会社でのOL生活を過ごす。
 そして、本が出版され、約2年半の会社勤めを辞め、中国へと留学する。
 その後、文章を書き、本が出始め、エッセイストとして何冊もの本を出して、今もどこかの雑誌に彼女の文章がさりげなく載っている。


 岸本葉子の文章を何かに例えるならば、パスタランチだったらサラダ、サバ味噌定食だったらお新香のような存在ではないだろうか。こんなこと言うならば、本人に対して失礼かな。岸本さんごめんなさい。
 例えば、本好きの人がいつもカバンに3冊の本を入れてるとする。1冊は純文学、夏目漱石とかけっこう漢字の難しそうな本。1冊は冒険小説、悲しい場面もあるけれど、最後の方では涙を流したりもする。そしてもう1冊はエッセイ、そう岸本葉子の本がいい。
 何もかも疲れてしまって。外で食べるご飯は美味しくなくて。そんなときに、岸本葉子のエッセイを読むと、とてもいい。もちろん元気なときに読んでもいいのだけど。

 背伸びをすることなく、普段着のままでいられるような気がする。できないことを、できます、なんて言うことはない。できなくたって恥ずかしがる必要はないし、ゆっくりでも不器用でもいいんだな、と思える。

 実はまだ彼女の本は4分の1くらいしか読んでいない。たいして本を読んでいるわけでもないのに、こうしたコーナーを作るのはちょっと変かもしれない。でも、岸本葉子さんだったらいいような気がしてしまう。それも彼女の魅力ではないだろうか。
 これから読んで行こうと思う。ゆっくりと。

(2001.6.23)


<岸本葉子作品リスト>


  文庫 書名 出版社 値段 発行  
1   微熱の島台湾 凱風社 1500 1989/10 >文庫 17
2   なまいき始め 日之出出版 971 1990/02 >文庫 12
3   ボーダーを歩く コスモの本 1165 1990/12  
4   さよならニナーダ 凱風社 1500 1991/05  
5   今夜もパジャマトーク ファラオ企画 1165 1991/08  
6   わたしの旅はアジアから 文藝春秋 1311 1991/08  
7   禁じられた島へ 凱風社 1340 1992/05 >文庫 45
8   女が結婚したいと思うわけ 大和出版 1214 1992/09 >文庫 14
9   やっぱり、ひとりが楽でいい 講談社 1262 1994/08 >文庫 23
10   近頃の無常 マガジンハウス 1359 1994/09 >文庫 25
11 * なまいき始め 講談社文庫 447 1994/10 < 3
12   留守電のもんだい PHP研究所 1117 1995/01 >文庫 48
13 * それでもしたい結婚 講談社文庫 495 1995/04 < 9 加筆
14   自分で自分を楽しませる知的な生活 講談社 1262 1996/02 >文庫 32
15   30前後、やや美人 読売新聞社 1165 1996/04 >文庫 35
16   微熱の島台湾 新版 凱風社 1800 1996/05 < 2
17   旅はお肌の曲がり角 実業之日本社 1262 1996/06 >文庫 34
18   夕方、ハルピン駅で エヌティティ出版 1262 1996/09  
19 * 微熱の島台湾 朝日文庫 612 1996/10 < 2
20 * よい旅を、アジア 講談社文庫 660 1996/12  
21   家にいるのが何より好き 文藝春秋 1429 1997/04 >文庫 50
22 * やっぱり、ひとりが楽でいい 講談社+α文庫 700 1997/08 < 10
23   三十女のおいしい暮らし 講談社 1400 1997/12 >文庫 41
24 * 幸せな朝寝坊 文春文庫 505 1998/04 < 11
25 * アジア発、東へ西へ 講談社文庫 533 1998/05  
26 * 異国の見える旅 小学館文庫 419 1998/05  
27   つかず離れず、猫と私 文藝春秋 1429 1998/08 >文庫 49
28   家もいいけど旅も好き 河出書房新社 1500 1998/11 >文庫 52
29   結婚しても、しなくても マガジンハウス 1400 1999/01 >文庫 57
30   本はいつでも友だちだった ポプラ社 1200 1999/01  
31 * お金のいらない快適生活入門 講談社+α文庫 680 1999/02 < 15
32   ふわっとブータン、こんにちは エヌティティ出版 1429 1999/04  
33 * 旅はお肌の曲がり角 講談社文庫 590 1999/06 < 18 加筆
34 * 30前後、やや美人 文春文庫 495 2000/01 < 16
35   ちょっとのお金で気分快適な生活術 講談社 680 2000/04  
36   マンション買って部屋づくり 文藝春秋 1381 2000/05 >文庫 58
37   恋もいいけど本も好き 講談社 1500 2000/06  
38   もうすぐ私も四十歳 小学館 1200 2000/06 >文庫 64
39   私の居場所はここにある マガジンハウス 1400 2000/08 >文庫 65
40 * 三十過ぎたら楽しくなった 講談社文庫 571 2000/10 <24
41 * ひとり暮らしの人生設計 新潮OH文庫 600 2000/12 ※共著
42   実用書の食べ方 晶文社 1600 2000/12  
43 * 炊飯器とキーボード 講談社文庫 533 2001/05  
44 * 禁じられた島へ 光文社文庫 457 2001/07 < 8
45   本棚からボタ餅 中央公論新社 1400 2001/09  
46   若くなくても、いいじゃない 小学館 1300 2001/10  
47 * 女は生きるひとのためならず 講談社+α文庫 680 2002/01 < 13 加筆
48 * 女の分かれ目 中公文庫 552 2002/02 < 28
49 * 家にいるのが何より好き 文春文庫 448 2002/03 < 22
50   何もしない贅沢 光文社 1400 2002/04 ※翻訳
51 * 家もいいけど旅も好き 講談社文庫 495 2002/05 < 29
52   目指せ!大人の女 PHP研究所 900 2002/05  
53   女の底力、捨てたもんじゃない 講談社 1500 2002/06  
54 * 和の旅、ひとり旅 小学館文庫 476 2002/07  
55   自分らしく生きる贅沢 光文社 1200 2002/09 ※翻訳
56 * 結婚しても、しなくても 三笠文庫 533 2002/09 < 30
57 * マンション買って部屋づくり 文春文庫 495 2002/10 < 37
58 * おしゃれ魂 知恵の森文庫 495 2002/11  
59   ひとり暮らしのおいしいキッチン歳時記 PHP研究所 760 2002/12  
60   幸せまでもう一歩 中央公論新社 1400 2003/03  
61   年齢をかさねる贅沢 光文社 1600 2003/04 ※翻訳
62   葉と葉子のふたりごと 清流出版 1200 2003/04 ※共著
63 * 四十になるって、どんなこと? 講談社文庫 495

2003/07

< 39
64 * やっと居場所がみつかった 文春文庫 552 2003/08 < 40
65   わたしのひとり暮らし手帖 大和書房 1400 2003/09  
66   がんから始まる 晶文社 1600 2003/10  

※「JUNKUDO BOOK WEB」のデータベースを参考にしています。
 違っている箇所、文庫本との対応など、気がついた点はお知らせください。

(2003.12.29)


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