ドルフィンホテル マイベストルーム
○ひとり暮らしの女性に読んで欲しい本
「ひとり暮らしの女性」という対象は書いていてちょっと変だなとは思う。どうして男性は関係ないのか。でも、「ひとり暮らしの男性」という言い方はもっと変な感じがする。イメージとしては、「ひとり暮らし」=「女性」なのだけど、この部分を深く追求されてしまうとよくわからない。けれど、今回セレクトした本を男性に読んで、というのはまたまたちょっと違う。あくまでも、言葉でうまく言えない感覚の世界だけど。読んでもらえれば少しはわかってもらえるだろうか。
◆ 宮部みゆき『火車』(新潮文庫)
宮部みゆきの作品のナンバー1と言えるものだろう。僕は彼女の本の中では、この本が一番好きである。この主人公は女性である。その姿は直接には、ほとんど出てこない。それだけに、その女性に少しずつ迫っていくことに、その気持ちの中に入っていける。作者の作品に出てくる登場人物の多くは孤独である。この物語に登場する主人公は特にそうだ。何か多くのものを求めているわけではない。ほんの少し幸せになりたいだけだ。読んで行く中で彼女の優しさが垣間見える。この本が出版されたのは1992年7月。もう10年も時が流れたのだ。時間が経っても、全く色褪せることはない。僕は今でもときどきこの本のラストシーンのイメージを思い浮かべる。
◆ 岸本葉子『それでもしたい?! 結婚』(講談社文庫)
ひとり暮らしというと、どうしても考えざるをえないのが結婚というものだろう。この本には20代、30代の作者の恋愛が語られている。ほんとうにここまで書いていいの、というくらいに。それだけにこの本を大切だと感じる人は多いのではないだろうか。仕事と恋愛と、生きて行くことの悩みがこの本には書かれている。
◆ 山本文緒『ファースト・プライオリティ』(幻冬舎)
女性の少しばかり角度のキツイ側面を描くという点では、山本文緒という作家はもの凄い魅力を持っているのではないだろうか。何冊も面白い本がある。けれど、この『ファースト・プライオリティ』は読みやすく、疲れた夜に軽くアルコールを飲みながら読むのにはとてもいい。多くの短編が載っている。女性が主人公で、自分のことのようだと思える話がいくつかあるかもしれない。読んでいて、辛くなってしまう人もいるのではないだろうか。特に最後の物語は、ひとりの女性が孤独な部屋の中で、もがいているような様子が感じられた。
◆ 川上弘美『センセイの鞄』(平凡社)
お酒の好きな女性にはぜひ読んで欲しい。この本についてはゴチャゴチャと語る必要はない。読む、そして酒を飲む。ほんとうにそれだけだ。
◆ 佐野眞一『東電OL殺人事件』(新潮社)
1997年3月に渋谷で女性が殺害された事件を扱ったノンフィクションである。被害者がエリート・キャリアウーマンで、かつ夜の仕事をしていたということでかなり話題となった。実は、この事件、この本に感心を寄せる女性は多いようだ。そうしたことはこの本の続編と言える『東電OL症候群』(新潮社)にも書かれている。
いくつかの角度から、この事件のことが語られる。女性の過去からも、どのように夜の仕事をしていたかも。この女性のことを深く考えることによって、今の日本の社会というものが見えてきたりもする。こうした社会の中で生きてゆく、多くの女性について考えたりもする。遠いところにある話ではないのかもしれない。
◆ ヘレン・フィールディング『ブリジット・ジョーンズの日記』(ソニー・マガジンズ)
この本は映画にもなっているのだが、ぜひ本で読みたい1冊である。タイトルの通り、日記のような形になっており、その日の体重やアルコールの量まで詳細に書かれている。ひとり暮らしは、確かに辛いことも多い。けれど、この本を読めばそうしたことを笑い飛ばすことができるはず。楽しく本を読み、楽しい毎日を過ごしたい気持ちにさせてくれる本だ。
(2002.11.23)
◆ 吉田伸子『恋愛のススメ』(本の雑誌社)
NEW!!
「WEB本の雑誌」(http://www.webdokusho.com/)に連載されていたエッセイ。現在は結婚している吉田伸子さんの、恋愛と本についての話が散りばめられている。自分の過去を振り返り、「いいじゃん、淋しくたって」とやさしく語りかけてくれる。生きて行く過程では、時間が経って気が付くことも多いのだろう。この本を読むことで、強く、そして優しくなれるのではないだろうか。
(2002.12.21)
○10代の春の日に読みたい本
・『青が散る』 宮本輝 文春文庫
最初にこの本を見たのは友人のアパートだった。友人といっても歳が上の先輩という人のところだったのだが。その部屋にある本の数はかなりのものだった。僕はまだ本というものを読み始めた頃だったので、その部屋の景色はとてつもなく新鮮だった。「なにかお薦めの本はないですか?」と僕はいつだったか聞いたことがあった。その時に返事として返ってきた本がこの『青が散る』だった。
青春という名前の付くものの定番と言えるような本かもしれない。数年前まで僕はこの本のことを思い出すと、胸が痛んだ。でも、もうそんな気持ちはなくなってしまったようなのだが。
舞台は大学のキャンパス。テニスが出てきて、一人暮らしの生活があり、あこがれの女性と、いつも隣にいるあんまり女性だと意識しない女の子がいる。どこかひとつは違っているかもしれないが、どこか同じような設定の中を過ごしたという人も多いかもしれない。たぶん、この本を読んで涙が止まらない人もいるだろう。最後の数ページには、特別なものがある。
この本を読んでよかったと思っている。もう読まないとは思うけど。
ちなみにこの本はテレビドラマにもなった。石黒賢が主役で、二谷友里恵に川上麻衣子、他には清水善三、佐藤浩市、村田雄浩、利重剛なんてのも出ていた。そうそうたる出演者である。主題歌は松田聖子の「青いフォトグラフ」だった。
宮本輝と言えば、今の僕の気持ちとしては『青が散る』よりは「川三部作」だったりしている。『泥の河』『螢川』『道頓堀川』の3作なのだが、『青が散る』と比べてやや暗い雰囲気が漂う。でも、この方が静かに青春というものを語れるような気もしないでもない。
・『やがて笛が鳴り、僕らの青春は終る』 三田誠広 角川文庫
本を読み始めた頃、三田誠広の本はよく読んでいた。僕と同じ年代ではないけれど、少し上の兄貴のような人達の物語というか。
この『やがて笛が鳴り、僕らの青春は終る』という作品は、からりとした青春小説である。大学のラグビー部が舞台となり、友情があり恋愛がある。この本を読んだのはかなり昔のことで正直なところあまり記憶に残っているわけではない。でも、このラストシーンのよい雰囲気が気持ちよく残っている。今読み返したならば、また違った感じを持つのかもしれないけど。まあ、青春と名の付くものはそういうものなのだろう。
ちなみに僕が読んだ三田誠広で一番面白かったのは『野辺送りの唄』だけど、なぜか絶版となって文庫にもなっていない。
・『テロルの決算』 沢木耕太郎 文春文庫
この本と一緒に「青春」というものを語るのにはあまりにも悲しいものがある。昭和35年の事件である。17歳の少年とも言える山口二矢は、社会党委員長浅沼稲次郎を日比谷公会堂での演説中に刺殺する。その事件を丹念に描いたノンフィクションである。
今の時代からはこんなことは考えられないかもしれない。でも実際に起こった事件で、山口二矢も実在の人物である。自分の17歳を振り返ったりもする。もちろん、人によって環境によって時間の流れは違っているし、比べても仕方のないことだけど。
でも、こんな17歳を送ったという人の存在というものを感じてみるのもいいのではないだろうか。
僕はこの本をきっかけに、沢木耕太郎という人にのめり込むことになる。この本が出た8年後に『深夜特急 第一便』が出版される。
・『モッキンポット師の後始末』 井上ひさし 講談社文庫
井上ひさしは、一時期かなりはまって読んだ作家である。いくつかの種類の本があるのだが、かなり作者の青春時代が入っているこの本はぜひ読んで欲しい本である。この本を手にすれば、腹を抱えて笑い転げることになるのは間違いない。舞台は東京の某上智大学と思われるところである。主人公はこの大学に入り、さまざまな事件を起こし監督者とも言えるモッキンポット師をさんざん困らせる。本当に面白い本なのである。若かりし頃には多少の脱線は許されるというが、このくらいやった方が楽しく過ごせるし、その後の人生も豊かなものになるように思える。
ちなみに、この作者の作品は他には『浅草鳥越あずま床』『合牢者』『さそりたち』『雨』『吉里吉里人』というところが僕のお薦めである。
・『青春の門』(シリーズ) 五木寛之 講談社文庫
僕の二十歳の頃というのは、この『青春の門』という本のタイトルはかなり有名だったようにも思う。今はあまり知られていないけれど。何本かの映画にもなり、青春の本と言えばこの本の名前が必ず出てきたような気がする。
僕がこの本を読んだのは確か20代も後半になってからだった。若かった頃には、このような作品のタイトルがどうしようもなく嫌だったんだね。あっ、今も若いつもりでいるけれど。
たぶん、こういう本というのは、主人公と同じ年齢の時には読みたくないのではないだろうか。2年か3年、前の時か。それとも10年くらい過ぎてしまってからか、どちらにしても、一度は読んでいたい本だと思う。
五木寛之というと、本だけでなくどうしてもラジオの「五木寛之の夜」のことを思い出す。しかし、調べてみるとこの番組は今もやっているのであった(笑)。
・『哀愁の町に霧が降るのだ』(上・下) 椎名誠 新潮文庫
最近はあまり読まなくなったが椎名誠が好きだった。旅のエッセイ、SF、ほろりとする小説、はちゃめちゃのエッセイ、自伝的物語。どれも、楽しく読んでいた。
いろいろな本のある中で僕はこの『哀愁の町に霧が降るのだ』を取り上げたい。かなりいい加減でまとまりのないエッセイなのだけど、実に面白い。まだ若い二十歳前後の頃の6畳アパートでの共同生活の話である。その共同生活のメンバーというのが、椎名誠に沢野ひとしに木村晋介にその他という信じられないような人達であった。まだ、当然のように未来は夢でしかない。小岩の克美荘という小さなアパートで日夜、酒を飲み喧嘩をするという馬鹿話が次から次へと繰り返される。
考えてみると、今の本のブームというか、ウェブサイトでの本を自由に語ることのできる元となったがの『本の雑誌』ではないかと思う。本というのはなにも評論家だけが語るものではない。どこにでもいるような、たった一人でしかないかもしれないけど、本を読んで面白い面白くないという感想は持っているし、プロではないからこその面白い話もある。
その『本の雑誌』の原点がこの『哀愁の町に霧が降るのだ』の克美荘にあるように思えるのだ。
(2002.1.5)
○なんとなくお薦めの10冊
なんとなく僕のお薦めの10冊です。
ほんとうはテーマとかがあって10冊を選べばよかったのだろうけど、
以前ピックアップしたものがあったので、そのまま載せます。
ぜんぶ文庫になっているものにしたので、ぜひぜひ読んで欲しいです。
・『メディアの興亡』(上・下)杉山隆男/文春文庫
その面白さのわりには、知られていなさすぎるような気がする。
新聞が活字からコンピュータに変わるノンフィクション。
今では当たり前のことの裏側に、こんなにも人間のドラマがあったとは!
もう本当に面白いです。
・『黄昏のロンドンから』木村治美/文春文庫
この本のことを知っている人はどのくらいいるのだろうか?
10数年前のベストセラーである。
今でこそ女性のエッセイというはいっぱいあるけれど、
この本はいつの時代になっても色あせることはないと思うのだけど。
・『夏への扉』ロバート・ハインライン/ハヤカラ文庫
この本もはたしてどのくらい読まれているのか、少し不安になったりする。
もう定番の本です(でん!)。
最近、日本で書かれているタイムスリップものの原点はすべてこの作品と
言ってもいいのではないだろうか。
・『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス/ハヤカワ ダニエル・キイス文庫
なんだか、宇多田ヒカルで有名になっているような気がするけど(笑)。
ええと、『五番目のサリー』もけっこういいと思う。
・『もの喰う人びと』辺見庸/角川文庫
旅のエッセイはいくつもあるけれど、この本はいつまでたっても定番です。
文章のひとつひとつを、噛み締めるように、読むことができます。
・『錦繍』(実はシュウの字がちょっと違う)宮本輝/新潮文庫
宮本輝といえば『青が散る』なんて本が話題になりそうである。
確かに、僕も『青が散る』で青春を語っていた(ちょっと恥ずかしい)。
けれど、僕も歳をとった。大人の恋をしたいな、なんて思ったりしている
(とぉーっても恥ずかしい)。
この小説は、とても変わった形式で、手紙のやり取りである。書簡集というのなか。
とてもいい、しみじみと、蔵王の風景が眼に浮かんできたりする。
手紙のやり取りなんてこのところ全然ないけれど。
いま、新しくこの小説が書かれるとしたならば、メール交換の文章になるのだろうか。
そんなことを考えました。
・『空を飛んだオッチ』海老沢泰久/角川文庫
この物語もあまり(あまりにも)知られていないような気がする。
児童文学と言ったほうがいいのかな。
たぶん、この本を読んだ人の7割は泣いてしまいます。
なんと、解説を書いているのは辻井喬。とにかく、読んでみてほしい本です。
・『されど われらが日々−−』柴田翔/文春文庫
実は僕はむかしこうした本をそれなりに読んでいました。
とても古い話に思えるけれど、ぜひ、今の若い人に(笑)読んでみてほしかったりしてます。
・『影武者徳川家康』(上・中・下)隆慶一郎/新潮文庫
冗談抜きでこの本は凄いです。時代物の好きな人、ぜひ読んでください。
あっという間にはまります。ぐいぐいぐい、と。
ぜひNHKの大河ドラマでやって欲しいのだけど。
・『凶手』アンドリュー・ヴァクス/ハヤカワ文庫
今でこそ、幼児虐待という犯罪が問題となっているけれど、
この作者はずっとこのテーマで書いています。
人気のバーク・シリーズとは別の物語。もう、この雰囲気はたまらないです。
読んでいて、その雰囲気の中にどっぷりとつかってしまいます。
(2001.4.30)
DOLPHIN
HOTEL
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