DOLPHIN HOTEL 読んだ本ベストテン
実は非常に恥ずかしい……。こんなふうに自分の読んだ本を公にしてしまうのは、自分の人生を見せてしまっているような、なんというかパンツでも見られてしまっているような感じである。載せようか、どうしようか、けっこう悩んだ。
でも、まあ1992年からしっかりと自分でこんなベストテンを考えて書いていたのである。これはその年その年に、1年を振り返ってその年に書いたものだ。よく書いたな、と思う。それなりに本をおもしろさをいっぱいに味わってもらいたい、というのがこの本のサイトの狙いである。
僕はこんなふうに毎年ベストテンというものを書いていて良かったと思っている。まとめて書くなんてことはとてもできないことだからだ。これから先もずっと、その1年を振り返って「読んだ本ベストテン」というものを書いていきたいものだ。
ということで、これを読んだ人は毎年、自分でも書いてみよう!!
あくまでも、「読んだ本ベスト」です。その年に話題になった、ということではなく、僕が気分気ままに読んで書いただけのものです。ベストテンにしても、20では多いのでこのくらいが適当だろうと思っただけ。コメントは基本的に当時書いたままのもの。振り返ると、いろいろと書き足していきたいのだけど、当時のままにそのままに。
<1992年・読んだ本ベストテン>
1.『国境の南、太陽の西』 村上春樹
2.『カッコウはコンピューターに卵を産む』 クリフォード・ストール
3.『黄色い蜃気楼』 船戸与一
4.『水域』 椎名誠
5.『深夜特急 第三便』 沢木耕太郎
6.『哲学者の密室』 笠井潔
7.『透明人間の告白』 H・F・セイント
8.『娘に語る祖国』 つかこうへい
9.『仕掛人藤枝梅安シリーズ』 池波正太郎
10.『剣客商売シリーズ』 池波正太郎
<1993年・読んだ本ベストテン>
1.『火車』 宮部みゆき
2.『坂の上の雲』(一)〜(八) 司馬遼太郎
3.『黒白 剣客商売番外編』(上・下) 池波正太郎
4.『屍蘭 新宿鮫2』 大沢在昌
5.『赤ひげ診療譚』 山本周五郎
6.『かまいたち』 宮部みゆき
7.『新宿鮫 無間人形』 大沢在昌
8.『用心棒シリーズ」 藤沢周平
9.『影武者 徳川家康』(上・中・下)」 隆慶一朗
10.『今夜すべてのバーで』 中島らも
<1994年・読んだ本ベストテン>
1.『蝉しぐれ』 藤沢周平/文春文庫
2.『闇の歯車』 藤沢周平/講談社文庫
3.『人間の檻
獄医立花隆手控え』(1〜4) 藤沢周平/講談社文庫
4.『凶手』 A・ヴァクス/早川書房
5.『空を飛んだオッチ』 海老沢泰久/角川文庫
6.『シンプル・プラン』 スコット・スミス/扶桑社文庫
7.『象が空を』 沢木耕太郎/文藝春秋
8.『もの食う人びと』 辺見庸/共同通信社
9.『使いみちのない風景』 村上春樹/朝日新聞社
10.『ながい坂』(上・下) 山本周五郎/新潮文庫
この1年は藤沢周平にはまいっていた。沢木耕太郎は、なんというのだろうか、そんなに強烈にいいというわけではにいが、ベストテンからは外せない。
『もの食う人々』はテレビの今年の本についてなんかでも、とても人気の本のようだ。この本についてうまくその感想は書くことはできない。不思議な本である。
村上春樹については悩んだ。この『使いみちのない風景』の他、『やがて哀しき外国語』と『ねじまき鳥クロニクル』が出ている。『ねじまき鳥クロニクル』については、やはり完結した上で語りたい本だ。『使いみちのない風景』が僕にはとても自然で素直に読めた。
さて今年のラストを飾る問題の本はこの山本周五郎の『ながい坂』である。実は、正直に言うと、よくわからなかった。ところどころ話がわからなくなったり、これは僕の読むほうに問題があったのだと思うが、最後まで読むのにけっこう時間がかかった。
この本が急になにか凄いものだと感じたのは、下巻になってからだ。
心にうつような、文章が次から次へと出てきた。
この本の中で書かれていることは、ながく時間をかけて、やっとわかってくることもある、ということだろうか。人とわかりあえることとか、善と悪との割り切れない世界とか。急に結論を出すのではなく、少しづつ積み重ねて、やっとわかっていくことができるような……。
多分あと何十年かして、この本を読んだら、もう少しこの本についてわかるのだろうか。
この僕にとっては色々なことがあった1994年の一冊にぜひ入れておきたいと思ったのだ。
<1995年・読んだ本ベストテン>
1.『帰郷』『廃墟』『夏の休暇』『二重唱デュエット』 海老沢泰久
2.『檀』 沢木耕太郎
3.『いまひとたびの』 志水辰夫
4.『桃色浄土』『死国』『狗神』 坂東眞砂子
5.『夜のくもざる』『ねじまき鳥クロニクル』 村上春樹
6.『兵士に聞け』 杉山隆男
7.『私たちが好きだったこと』 宮本輝
8.『蝦夷地別件』 船戸与一
9.『三たびの海峡』 帚木蓬生
10.『鳩笛草』 宮部みゆき
まずは何と言っても、海老沢泰久の短編がよかった。特に『帰郷』は何とも言えなかった。
沢木耕太郎は新しい世界を切り開いた、ということでよかったし、志水辰夫もシミジミとしていてよかった。
そして今年最大の収穫は坂東眞砂子だ。ぐさぐさと胸につき刺さるような物語だった。
村上春樹は何を言ったらよいのだろうか。2冊合わせ技でこの順位ということにしようと思う。実は昨日の夜、眠れなくて(風邪を引いてゲホゲホの状態なのだった)枕元の本棚から村上春樹の短編集を取り出し、『ねじまき鳥と火曜日の女たち』を読んでいた。これだけで十分におもしろい、なんて言ったらまずいだろうか。
そう言えば、ここ数年あまりノンフィクションを読んでないような気がする。杉山隆男の久々の作品はもちろんおもしろかったが、まだまだ他にも色々なノンフィクションを読みたいと思う。
時々は『私たちが好きだったこと』みたいな小説を読みたいと思う。
船戸与一は正直なところちょっと不満。それでも十分に面白いぞ。
帚木蓬生はとにかく読みたいと思う。
宮部みゆきの『鳩笛草』は、とても地味な小説かもしれない。けれども、彼女のうまさと面白さがこの本の中に凝縮されているみたいで、あとから考えるととてもいい本だな、と感じたりする。よかった、よかった。
<1996年・読んだ本ベストテン>
1.『総統の防具』 帚木蓬生/日本経済新聞社
2.『蒲生邸事件』 宮部みゆき/毎日新聞社
3.『蒼穹の昴』(上・下) 浅田次郎/講談社
4.『心臓を貫かれて』 マイケル・ギルモア/文藝春秋
5.『家族狩り』 天童荒太/新潮社
6.『レキシントンの幽霊』 村上春樹/文藝春秋
7.『かくも短き眠り』 船戸与一/毎日新聞社
8.『あなたには帰る家がある』 山本文緒/集英社
9.『青の時間 TIME BLUE』 薄井ゆうじ/文藝春秋
10.『山妣』 坂東眞砂子/新潮社
・その他、忘れられない本たち……
『蟹喰い猿フーガ』 船戸与一/徳間書店
『蝕みの果実』 船戸与一/徳間書店
『雲霧仁左衛門』(前・後) 池波正太郎/新潮社
『闇に消えた怪人 グリコ・森永事件』 一橋文哉/新潮社
『アダルト・チルドレンと家族』 斎藤学/学陽書房
『不夜城』 馳星周/角川書店
『人質カノン』 宮部みゆき/文藝春秋
『クリスマスの木』 J・サラモン/新潮社
けっこう悩んだ……。
まずは、第1位の『総統の防具』ですが、何が悲しいかというと、この本は「このミステリーを読め
'97」ではそのタイトルすらも載っていなかったりと、なぜか世間からはまったく無視されている……という本なのでなのでした。本の好き嫌い、好みは確かにあるだろう。つまらなくて酷評されてしまうこともあるだろう けれど、もう少しどこかで話題になってもいいと思うんだけどなぁ。
ミステリーかどうか、というのはもちろんあるけどちゃんと今年発行された(4/25)本です。作者は山本周五郎賞を受賞しているのに。読んでいてもぞくぞくさせられるのに。戦争とか、そういったものに対してのメッセージもつまっていて、何度も泣かせてくれるのに……。
『蒲生邸事件』は彼女の文章のタッチの良さがたまらなくいいです。重くなく、軽くなく、そして元気がでてきてしまう感じがなんとも言えません。
『蒼穹の昴』はあえて語る必要もないでしょう。こういった大作を読むのはいいものです。
今年何といっても僕の読書でキーになったのは、“AC(アダルト・チルドレン)”というものである。『心臓を貫かれて』そして『家族狩り』もこのグループに含まれるのではないかと思う。
特に『心臓を貫かれて』は重く、心の中に残る物語だった。ちなみに、村上春樹さん訳ですね。
『家族狩り』は『心臓を貫かれて』と比較してしまうとかわいそうな気もするが、作者のパワーを十分に感じることができて次回作にものすごく期待してしまうのであった。
『レキシントンの幽霊』はムラカミハルキの魅力を再認識させられるものであった。
船戸与一については正直なところ、ちょっとパワーが落ちてしまった感じ。しかし、それは時代の流れによるものなのか、よくわからない。この『かくも短き眠り』はある意味で彼のターニングポイントとなる作品かもしれない。
それにしてもラストはなにかせつなく、悲しいものがある。
今年のニューウェイブ賞を山本文緒にあげたいと思う。いろいろ読んだ作品の中で、特にこの『あなたには帰る家がある』が一番よかった。
『青の時間 TIME BLUE』はよかったのだけど、今年後半に出た本に押されてここまできてしまった。
さて、今年最後の大物である『山妣』はとてもとても面白かった。彼女は今はまだ知名度は低いけれどあと2、3年たてば、そうとう有名になってしまうだろうね。
この『山妣』は、おもしろさは抜群なのだけど、そのテーマの大きさからか、ちょっとばかし後半の荒さが目立つ感じはした。しかし、それにしても期待を裏切ることのない、面白い本だった。坂東眞砂子さん、来年もよろしくね。
今年はなんだかんだと、色々な作家の本を読んでけっこう充実した読書の年だったのではないかと思う。
その他にもいくつも面白い本があった。来年はどうなるのかな……。
<1997年・読んだ本ベストテン>
1.『逃亡』 帚木蓬生/新潮社
2.『半生の記』 藤沢周平/文春文庫
3.『日暮れ竹河岸』 藤沢周平/文藝春秋
4.『漆の実のみのる国』(上・下) 藤沢周平/文藝春秋
5.『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』 村上春樹・安西水丸/朝日新聞社
6.『本の雑誌血風録』 椎名誠/朝日新聞社
7.『アンダーグランド』 村上春樹/講談社
8.『神々の山嶺』(上・下) 夢枕獏/集英社
9.『三浦和義事件』 島田荘司/角川書店
10.『卑弥呼』 久世光彦/読売新聞社
『逃亡』は文句なしにおもしろかった。文句なしに今年のナンバー1である。“おもしろかった”という言葉は適当ではないのかもしれない。枚数にボリュームがあるだけでなく、内容は重く最初から最後まで圧倒される。戦前戦後の時代の話である。“生きる”という言葉が、読んでいてズシリと響く。 じっくりと時間を忘れ読みふける。そして、じっくりとかみしめることができる。
今年読んだ本を語るにはこの作家のことなしではありえない。『半生の記』はエッセイ、『日暮れ竹河岸』は短編集、『漆の実のみのる国』は長編と、別々なジャンルの本が最期の本だった。
今年初め(1/26)に藤沢周平は亡くなってしまった。ひょっとしたら未発表の作品があるのかもしれない。しかし、これから新しい作品を読むことができないというのは、どうしようもなく寂しいことだ。もちろん、人と人には出会いとか、別れとかがあり、避けることのできないことなのだろうけど。
『半生の記』はいままであまり多くを語ることのなかった作者・藤沢周平の生きてきた道のりが書かれている。教師生活、闘病生活、そして先妻・悦子さんの死。藤沢周平という一人の生き方のひとつひとつが、小説の世界の元となっている。
藤沢周平の小説の世界は素晴らしいと思う。
そして、この藤沢周平という人の生き方に感銘を受ける。
『日暮れ竹河岸』は藤沢周平の短編の魅力がぎっしりとつまった本だ。文章のひとつひとつが、胸に響く。
『漆の実のみのる国』は上杉鷹山の話である。改革者の孤独を彼独自の視点で書かれている。この作品はほんとうに、さいごの最期の長編小説である。最期の小説を、上杉鷹山の物語になったのも大きな意味があるのだと思う。
どういう本をベストテンに選ぶかというのは、その一年にどういう気持ちで本を読み、日々を過ごしてきたか、ということに大きく関係していると思う。僕の今年読んだ本の数はとても少ない。本を読もうという気持ちにもなかなかなれなかった。
『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』は、そんな気持ちを楽にさせてくれて、本(文章)を読む楽しみを感じさせてくれる。なにか特別な理由を書く気はない。ただ、この本を読んでなんとなく、落ち着いて、楽しい気持ちになる。
椎名誠の自伝的小説はたまらなくおもしろい。特にこの『本の雑誌血風録』は「本の雑誌」の誕生物語なのである。“好きで始めた”から“会社組織”としての移り変わり。人との出会いと別れ。何かを創りあげていくことでの避けて通れない物語が、いっぱいつまっている。それが、とても楽しく、元気に読めるのである。すごいことなのである。
『アンダーグランド』は地下鉄サリン事件のノンフィクションである。あの事件の中でかかわった多くの人々のそれぞれの生活。朝起きてから、地下鉄に乗るほんの日常のひとつひとつが書かれている。
僕も地下鉄(事件のあった千代田線)を毎日利用している。日々の生活の中で忘れてしまうことは多い。倒れている人を見かけることもある。むずかしい本だけど、読んでよかったと思う。
『神々の山嶺』にはグイグイ、グイグイと引き込まれた。夢枕獏の力強さに圧倒された。登場人物は魅力的で、たまらないぞ。
『三浦和義事件』である。重い本である。三浦和義が有罪か無罪か、そんなことは問題ではない。読者の一人一人がどんなふうに社会を見ているのか、問いかけの本なのではないかと思う。
男と女の恋愛ばなしは深いんだなぁとつくづく思ってしまったのが、この『卑弥呼』なのであった。なんとなく、軽く読めてしまいそうなんだけど、あとからよくよく考えてみると、まあまあ重かったりしている。ずしんずしん。
最後に改めて藤沢周平のことを語りたい。
多分、彼が今年亡くなってしまったということは、忘れてしまうんだろうな、と思う。ずっとあとになっても幾冊かの本は読み返していると思う。「いつのことだったのかな」と考えたりするのかもしれない。
<1998年・読んだ本ベストテン>
1.『マークスの山』 高村薫/早川書房 (注:あわせ技)
『照柿』 高村薫/講談社
『レディ・ジョーカー』(上・下) 高村薫/毎日新聞社
2.『クロスファイア』(上・下) 宮部みゆき/光文社
3.『夜光虫』 馳星周/角川書店
4.『Y』 佐藤正午/角川春樹事務所
5.『ぼくのいつか見た部屋』 安西水丸/KSS出版
6.『血と骨』 梁石日/幻冬舎
7.『理由』 宮部みゆき/毎日新聞社
8.『警察が狙撃された日』 谷川葉/三一書房
9.『流沙の塔』(上・下) 船戸与一/朝日新聞社
10.『旅涯ての地』 坂東眞砂子/角川書店
一応自分なりの順位をつけています。
で、第一位は『マークスの山』『照柿』『レディ・ジョーカー』の3つで一緒に、という反則技です。正直なところ今年話題の『レディ・ジョーカー』だけだったら一位にはならないんだよな。
『レディ・ジョーカー』というのは二つの面を持った作品だと思う。ひとつは“現代の日本社会を描いた”と言われるような面。「このミス」とか新聞の書評なんかでもほとんどが、こうしたところで評価されているみたい。しかし……、僕はそんなふうには全然読まなかったのだった。どう読んだかというならば、もう一つの面と言える、刑事・合田雄一郎を
テーマとした読み方である。僕は断然こっちの方で読んだ。だから、日本の社会とかそうしたものはあくまでも合田雄一郎が出会った事件というものに過ぎないと感じていた。
どこかの書評で、「この作品に合田雄一郎が登場する必然があるのか」と書かれてあったと思う。確かにそのとおりで、この二つのテーマを完全に分けてしまっても、という気持ちはあったりする。
しかし、何はともあれ。僕はこの合田という男が好きなので、どういう形であれこうやって登場してくれるのはうれしいのである。
ちなみに、この3作は「合田3部作」とも呼ばれている。内容は別々でそれぞれの作品としても読めるのだけど、3作一緒に読むと、合田の変化みたいなものが感じられてたまらなくいい。
正直なところ、読みにくい。『マークスの山』は数年前に購入していたのに僕はぜんぜん読めなくて、今年になってやっと読んだのである。けれど、これらの作品ではところどころ、とても印象に残るイメージを焼き付けてくれる。ズックを洗うシーン、工場でのシーン、大阪の街を歩くシーン、警察官であった父親を思い出すシーン、そして一人でバイオリンを引くシーン、友人と二人で河原でワインを飲むシーン……。
『クロスファイア』はSFの面白さ(うーん、SFと言ってしまっていいのかなという気持ちはあるけど)、昔、星新一とか筒井康隆とかを読んだときのような素直な新鮮な感じを味わうことができた。そして、宮部みゆきのハートがストレートに伝わってくる感じが胸にスパッと来たのであった。
宮部みゆきさん、ありがとう。
問題は『夜光虫』であった。不満とかわからないところもあるけれど、それでも、このパワーは凄い。読んでいて本当に引きこまれるおもしろさがあったと思う。今年『漂流街』を読めなかったのは悔いが残る。
ありきたりと言えば、ありきたりなんだろう。けれど、それでもおもしろかった。笑われるかもしれないけれど、「何か勇気を与えられるような」気持ちを感じることができた『Y』だったのでした。
ギリギリのベスト5は名もなきエッセイである『ぼくのいつか見た部屋』。
読んだときにいろいろと書いたけれど、難しいことは全く抜きにしてこうした楽しい本が好きである。気にいった部屋に住んで、そこでホームパーティーやったりというのが、もっとも大切なことなんだろうと思う。
うーん。振り返ってこの本のことを考えているのだけど、このまま埋もれてしまうのはあまりにも悲しい本だ。安西水丸さんとこの本に登場するお友達の皆さんも、みんなそう思っているのではないだろうか。この本のような雑誌やテレビ番組があったら絶対に面白いと思うのだけどな。もちろん、本でも十分に面白いのだけど。
問題の『血と骨』であった。この本におもしろいおもしろくない、という言葉は該当しない。ただただ、迫力。圧倒されて手に持つ本が10kgくらいに感じられた。たまには、こういう本を読んでズシリという重さを味わいたい。
『理由』を語るのは難しい。うーん、うーん。でも第7位なのであった。
もう本屋さんにも売っていないのではないだろうか。とにかく、この『警察が狙撃された日』は面白いです。一応ノンフィクションなんだろうけど、匿名で書かれているみたいなもんなので、フィクション、ミステリーとして読んでもいいのではないかと思う。背景は例のオウム真理教の事件なのだけど、『レディ・ジョーカー』などよりもずっと深く今の日本の社会というものを語っているのではないだろうか。
船戸与一は好きなのでベストテンに入れました(笑)。ただ、以前と比べてパワーは落ちたような感は否めないかな。来年はぜひぜひ、船戸を一位にしたいものだ。
ベストテンのラストぎりぎりは、坂東眞砂子の『旅涯ての地』にした。なんとなくいい、と漠然にしかいえない。雰囲気がいです。
他に読んで面白かった本としては『氷舞
新宿鮫Y』(大沢在昌/光文社)、『霞町物語』(浅田次郎/講談社)、『約束された場所で』(村上春樹/文藝春秋)、『大河の一適』(五木寛之/幻冬舎)あたりが印象に残っている。
この『新宿鮫』って今年出た本でなかったけ? このシリーズはもう見向きもされないのだろうか。まだまだおもしろいと思うんだけどな。
『約束された場所で』という本はオウム事件の信者(元)の方に対しての村上春樹のインタビューである。ある元信者は理論整然と自分の気持ちを語る、自分の追及していることなど。インタビューアである村上は思わず聞いてしまうのである。「あの、あなたは小説って読めないでしょう?」 それに対しての答えは「ええ、小説読めないです。三ページくらいで忍耐力に限界がきちゃいます」というもの。この部分がとても印象的だった。
『大河の一適』とあと『生きるヒント』も何冊か読んでいるので同じようなものなのかな。恥ずかしながら、こうした本を素直に読みました。けっこう自分のためになったと思う。
あとそれと今年は、『剣客商売』シリーズを読み終えたのであった。ああ長かった。いつかまた最初から読み返してみたいと思う。
<1999年・読んだ本ベストテン>
1.『永遠の仔』(上・下) 天童荒太/幻冬舎
2.『カラフル』 森絵都/理論社 (注:あわせ技)
『つきのふね』 森絵都/講談社
『宇宙のみなしご』 森絵都/講談社
3.『娼婦の部屋・不意の出来事』 吉行淳之介 新潮文庫
4.『本を読む本』 M.J.アドラー・C.V.ドーレン
外山滋比古・槇未知子訳/講談社学術文庫
5.『日出づる国の「奴隷野球」』 ロバート・ホワイティング 松井みどり訳/文藝春秋
6.『龍神町龍神三番地』 船戸与一/徳間書店
7.『エイジ』 重松清/朝日新聞社
8.『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』 村上春樹/平凡社
9.『断層海流』 梁石日/幻冬舎文庫
10.『シボレーサマー』 ボブ・グリーン/TBSブリタニカ
しかししかししかし……。ほんとうに本を読まない一年だった。10冊がちゃんと揃うかどうか不安だった。
とにかくの無理やりベストテンです。
第1位をどの本にするかは相当悩んだ。このベストテンの順序自体が悩んだというかあまり意味がないものだと、つくづく思う。でも自分では毎年の恒例行事なので、ちゃんと書きたいのであった。で、1位で迷ったというのは、2位とどちらにしようかな、と。『永遠の仔』を読んだとき、僕は「むむ、これは今年の一番だな」と密かに思った。あくまでも密かに思ったのであって、いくらなんでもこの本がこんなに有名になるとは思っていなかったのである。あまのじゃくになってしまうのだけど、この本を第1位にするのはしゃくにさわる。まるで本の雑誌のベストテンの選定者になったような気持ちだ。例えば、前作の『家族狩り』を読んでその上で『永遠の仔』がいい、というのであれば、それはかまわないのだけど……。もちろん、作品がいいか悪いかなので、前作なんてまったく関係のないことだ。でもでも、なんか気にいらないのであった。
まだ『永遠の仔』を読んでいないけど読んでみたいな、と思っている人は、ぜひ先に『家族狩り』を読んでみてください。ぜんぜんシリーズものではないのだけど、前作の凄惨な暴力部分があって、この『永遠の仔』という作品の心の部分をおもしろく感じることができると思うのだけど。
と、あんまり共感を得られないような話をいきなり書いてしまった。
第2位は森絵都です。この3作もいいけど、ぜーんぶ。そして2000年には有名になってしまうかもしれないけど(だって、けっこうこの作者は美形だよね)、しっかりとがんばっていい作品を書いて欲しい。ふれーふれー、もりえとー。
この1年、吉行淳之介をぼちぼちと読んでいた。一度読んだものを読み返したり気長に、買っては本棚に並べ、少しずつ読んだ。
少しは楽しんで読めるようになった。むかし最初に読んだときには何が何だかさっぱりわからなかったのだ。すごく、おもしろいと思えるようになった。特にこの本はよかった。たまには、こいうベストセラーと関係のない本がベストテンの上位にあるのもいいよね。
この『本を読む本』という本は小説ではない。いわゆる実用書と呼ばれるジャンルになるのかな。聞いた話によると、密かに読まれている有名な本らしい。噂には聞いたいたが、今年ようやく初めて読んだ。読書に関しての方法論のような本はこれまでにもいくつか読んできた。まあ、そのほとんどはどうでもいいような本だったけど。この本はおもしろかった。実におもしろかった。
読んで損はないと思う。
君はロバート・ホワイティングを読んだか! と声を大にして言いたい。
ところで、サッカーに関しての議論というのは多い。Jリーグの問題、代表の監督の問題、日本にとってはまだまだ新しいスポーツとも言えるからだ。辛口の評論もいっぱいあり、それもおもしろかったりする。
でもさ、考えてみると野球についてはなかなかないような気がする。正直言ってこの本のタイトルはショッキングというか、ちょっとやる過ぎじゃないの!? っていう感じがするのだけど、読んでみるとその内容に十分納得してしまう。
団野村のノンフィクションで、野茂、伊良部、吉井などの舞台裏が書かれている。彼の母親についても。しかし、僕にとってもっとショッキングだったのは、もっと別の移籍問題だった。
船戸与一の今月出たばっかりの新作『龍神町龍神三番地』は力が入っている。舞台は島、日本の島である。船戸の物語は、海外などを舞台としたものはおもしろかったのに正直、最近の国内ものはちょっと物足りなかった。しかし、この作品は主人公が生きているし、力強さがある。読んで震えを感じるのだ。新宿という街の中でなくても、殺伐としたものがあったのだ。
実は……、まだこの本を全部読み終わっていない。まだ、半分くらい。しかし、最後まで読まなくてもいい本はいいのだ(と、言い訳するのであった)。
重松清の『エイジ』はよかった。これから先、重松清はどんな作品を書いていくのだろうか。ナイフのような鋭さを常に持っていて欲しいと思ったりするのだけど。
なぜだか、このベストテンは何の変哲もない、さりげないエッセイがランクインしてしまうのであった。
でもさ、本気で思ったりする。この『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』のような本が、一週間に一冊くらい発売されないだろうか。幸せになれそうな気がする(今とっても幸せでないみたいな書き方だけど)。
実は『断層海流』の内容は少し忘れてしまったようだ。最近もの忘れが激しいのである。困った困った。でも、それを超えて梁石日の一文一文は迫力があったりする。そんな読後感は読み終えて半年以上経った今でも残っている。中身を覚えているかどうかより、ずっと大切なことだ。だから物忘れが激しくてもいいのである(と、これも言い訳だったか)。
ボブ・グリーンの新作コラムを読むのは久しぶりのような気がするな。『シボレーサマー』を読むと安心できるような気持ちになります。とても久しぶりに読んだので10位になりました、パチパチパチパチ。
<2000年・読んだ本ベストテン>
1.『朗読者』 ベルンハルト・シュリンク・松永美穂訳/新潮クレスト・ブックス
2.『GO』 金城一紀/講談社
3.『天使の記憶』 ナンシー・ヒューストン・横川晶子訳/新潮クレスト・ブックス
4.『夜を賭けて』 梁石日/幻冬舎文庫
5.『新宿鮫 風化水脈』 大沢在昌/毎日新聞社
6.『神様がくれた指』 佐藤多佳子/新潮社
7.『DIVE!! 1 − 前宙返り3回半抱え型』 森絵都/講談社
『DIVE!! 2−−スワンダイブ』 森絵都/講談社
8.『刑事たちの夏』 久間十義/日本経済新聞社
9.『神の子どもたちはみな踊る』 村上春樹/新潮社
10.『話を聞かない男、地図が読めない女』 アラン・ピーズ+バーバラ・ピーズ/主婦の友社
今年読んだ本の冊数というのは100冊も読まなかった。ほんとうにこの数年本を読まなくなったと思う。しかし、毎年恒例の「読んだ本ベストテン」を10冊揃えることができるかについては全く不安はなかった。けっこう読んだ本、読んだ本おもしろかったんだよね。逆に言うと、おもしろくなさそうな本は最初から読まなかった。自分の好きな本だけじっくり読んでいた。でも、新しい本へのチャレンジということはあまりなかったかもしれない。
少ないながらもチャレンジして読んだ本はおもしろかった。話題の『朗読者』は気にはなっていたけど、実際に読んだのは11月になってから。ぐいぐいとこの物語の世界に入ってしまった。なんといったらいいのだろうか。料理に例えるなら、下処理がしっかりされて、よい出汁をとって、何十にも重なった濃厚だけど、あさっりしている。さっと口に入るのだけど、あとからジワジワとその味が口の中に広がっていくような感じだ。
しかし、この物語はただ単に楽しいという気持ちにさせてくれるというわけではない。戦争の影というものが、根底に強く流れているのだ。静かにこの物語は流れていく。その中に、多くの現代社会の問題が浮き彫りにされてくる。
いろいろな要素はあるけれど、この物語の最大の魅力はタイトルから想像されるように、本を読むということの愛情なのではないだろうか。ひとりで、静かに本を読む時間というものが、とても大切なことのように思えてくる。
爽快な読後感。それがこの『GO』に対する僕の感想である。恋愛というものがすごくいいな、と思える。生きていくということも、すっごいカッコいいものだと感じる。前向きに、前向きに、まさにGOという感じを味わえる。
しかし、この物語は単純な話ではないんだな。在日という問題、国家や個人という問題がこの本の中には散りばめられている。もちろん、読んでいて重さを十分に感じる。けれど、何といったらいいのだろうか、新しい感覚なのである。
この『GO』の出現というのは、現代のサッカーに似ているように思えるのだがどうだろうか。昨年、ワールドユースで日本が準優勝した。これまでと全然違った力強さ。勝っても涙なんかは流さない。もちろん、辛さがないわけではない。
実は登場人物は高校生なんだよね。すごく大人だ。主人公もカッコいいけど、桜井もいいぞ。
新潮クレスト・ブックスにはまっているのは僕だけではないだろう。このシリーズは忘れてしまっている(僕だけかもしれないけど)ような本を読む喜びを教えてくれているような気がする。それにしても、この『天使の記憶』の余韻というのは今だに残っているのである。やさしい語り口、とても独特なものがある。恋愛小説、はっきり言うと不倫の物語と言える。しかし、戦争の影、人種の問題が複雑に絡み合い、人間の心の奥の奥にあるような部分というものが見え隠れする。
どうしてこの物語がこんなにも気になるのだろうか。圧倒的に好きだという感情を持っているわけではないのだ。よくわからない。なんだか今もその余韻は残っている。
『新宿鮫 風化水脈』の世間での評判というのはそんなんでもないのかもしれない。でも、僕にとってこの作品はとってもよかった。これまでよりも、ずっと大人になった鮫島。かつて、刑事ドラマがアクションシーンばかりだったのが今は静かに歩いて事件を解決していくように、時代捕り物ドラマの中で鬼平が異色だったように、この『風化水脈』は独特な雰囲気が漂っている。
ふと思う。この先、鮫島はどうなるのだろうか。定年退職まで仕事を続けるのだろうか。そこまではわからないけれど、ボロボロになって疲れてしまっていて、けれど拘りを持った鮫島という男を見ていきたい。
「占い師として、こうして街に出ている時は、自分は言葉のクズかごだと思う時がありますよ」
これは『神様がくれた指』の中に出てくるセリフのひとつである。ツインボーカルとでもいったらいいのだろうか。男性の主人公の2人がいい味を出している。かっこいいよな。2人とも、世間的にはクズみたいに思われるのかもしれないけど、すごく男らしくてカッコいい。
佐藤多佳子はこれから最も注目の作家ではないだろうか。
さて、森絵都である。『DIVE!!』である。児童小説からちょこっと抜け出たような雰囲気を感じさせてくれる。もちろん森絵都には、ジャンルで分けることなんて似合わない。誰が読んでもおもしろい。小説を読む楽しさの原点がここにあるかのようである。疲れたときに、この物語のひとつひとつの場面を読み返すことで力強くなれる。彼らと同じように、自分も悩むし、チャレンジしようと思う。社会に対して妥協はしたくないし、自分自身を見失わずに生きていきたい。年齢なんて関係ないのかもしれないよね。
オリンピックの競技である「飛び込み」の話である。飛び込み台に立ったときの緊張感が伝わってくる。ほんの数秒間の演技、凝縮された時間は、作家にとっての作品とも似ているのかもしれない。この『DIVE!!』は、まだまだ終わらない。今も森絵都は書きつづけているのだろうな。読んでしまう時間はほんのわずかなのに。
久間十義は『ダブルフェイス』(幻冬舎)を読んで好きになった。でも、むかし(10年くらい前かな)デビュー作とかって読んでいるんだよね。この作家には刑事小説をこれからも書いて欲しいと思うのだけど。
この『刑事たちの夏』は数年前に出版されている本なのだけど、すごい楽しめた。重そうなのだけど、重くもなく。軽そうなのだけど、軽くもなく。説明が難しいのだけど、独特な雰囲気にはまってしまった。登場人物がどうも憎めないんだよね。
僕はこの村上春樹の新作短編集『神の子どもたちはみな踊る』はけっこう気に入っている。長編のような力強さとかはないかもしれない。でも、短編として凝縮された世界がこの本の一行一行から感じられるのだけど。もちろん、何が書かれているの?って聞かれるとわからなかったりするのだけど(笑)。僕は正直なところ、翻訳モノを読むのが苦手だったのだけど、この本がきっかけになって世界中のいろいろな小説を読めてしまいそうな気がしてしまう。
『話を聞かない男、地図が読めない女』を最初に読んだときにはとっても感激したものだった。別にこの本に書かれていることに、「ほんとうかどうか」なんてことはあんまり関係ない。「正しいかどうか」なんてことも関係ない。そういったことよりも、「使える本」だな、というのが僕の感想である。誰しも自分と同じように物事を考えるわけではない。一歩冷静になって相手のことを考えたり、ってことはいつどんなときでも大切なことだろう。本を読むということ自体、柔軟にあるべきだと思ったりする。
この本を読むことによって、自分が予想もしていなかった相手の姿とういのが見えてくるのではないだろうか。けっこう有意義なことだと思うのだけど。そして、何よりもこの本は笑えたからね。それが何より。
<2001年・読んだ本ベストテン>
1.『模倣犯』(上・下) 宮部みゆき 小学館
2.『本はいつでも友だちだった』 岸本葉子 ポプラ社
3.『レヴォリューション No.3』 金城一起 講談社
4.『新宿・夏の死』 船戸与一 文藝春秋
5.『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』 江國香織 集英社
6.『あしたはうんと遠くへいこう』 角田光代 マガジンハウス
7.『センセイの鞄』 川上弘美 平凡社
8.『癒しの森 ひかりのあめふるしま 屋久島』 田口ランディ ダイヤモンド社
9.『P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン』 沢井鯨 小学館
10.『四国遍路』 辰濃和男 岩波新書
今年は全部で128冊ほどの本を読んだ。正直なところこの10年くらいを振り返ると少ないほうだった。内容的にも軽いエッセイなどが圧倒的に多かったような気がする。あまり充実した読書の1年だったとは言えないようだ。
このベストテンの選出もかなり苦労した。ようやく10冊並べたというような感じである。もちろん、どれも面白かったのだけど、軽量級というか、ぶ厚い本を読んだときの充実感のようなもののない読書だったように思える。
うーん、1位以外の順位は関係ないような気がする。関係ないな、うん。ちょっとした気分である。
重量感という点ではこの本がやはり一番だった。宮部みゆきの『模倣犯』はあちこちのベストテンでも1位を取り、できれば避けたいところだったのだが。ただ単に、本の面白さというだけでなく、この本は僕の今年の読書を象徴しているとも言える。このベストテンには入れなかったが興味深く読んだ本が何冊かあった。
『遺言 桶川ストーカー殺人事件の深層』(清水潔/新潮社)、『栃木リンチ殺人事件』(黒木昭雄/草思社)、『宮崎勤事件 塗り潰されたシナリオ』(一橋文哉/新潮社)といった事件関係の本だった。かなり凄惨というか、悲しくなるくらいの現実をこうした本から味わった。『模倣犯』のことを思い出すと、ただのフィクションだとも思えなくなってしまう。ああいった殺人事件というのはどこかであって、誰も知ることもないような辛い人生が数多くあるようにも思えてくる。
もちろん、『模倣犯』は小説であって読んでいて悲しいことばかりではない。今という時代を深く考えることができた。そして何よりも、登場人物のひとりひとりを、深く感じながら読むことができた。
今年の僕の読書のヒットは何よりも岸本葉子だった。ドルフィンホテルにコーナーを作り、掲示板も作ってしまった。数多くのエッセイにはとても助けられた。楽しい時間を彼女の本と供に過ごすことができた。恋人のように強い気持ちではないかもしれないけど、疲れていたときにふと隣にいて欲しい、そんな感じだった。
数えてみると今年読んだ彼女の本は全部で18冊。まだまだ未読の本は多くある。こんな状態で掲示板を開設していていいのだろうかという不安もあるが、これからの楽しみもいっぱい持っているので勝手に良いこととする(笑)。
ベストテンの中に彼女の本を入れたかった。一冊を考えると何になるのだろうか。彼女の本の9割を占める生活ものエッセイもいいのだが、僕はこの『本はいつでも友だちだった』(ポプラ社)をセレクトした。
現在この本は書店に売っているのだろうか。簡単には見つからない本だと思う。しかし本が好きな人には、物凄く響いてくる本だろう。彼女の子供の頃からの本とのかかわりのようなことが書かれている。誰もが持っている少年少女の気持ちに帰れるのではないだろうか。
いつか文庫本になり、多くの人に読まれて欲しいと思う。
金城一起の『レヴォリューション No.3』の何がいいかというと、その勢いのようなものである。理屈とか何も関係なしに、引っ張って行くような力強さがいい。難しいことは何も必要ないように思えるのだ。純粋な勢いのようなものがこの本には溢れている。なんだかわからないけど、読むだけで元気が出てくる。
金城一起がこれからどんな作品を書いていくのか、すごい楽しみでもある。
僕はずっと前から船戸与一作品を追っかけてきたのだけど、この『新宿・夏の死』は十分に船戸ワールドを感じることのできる満足できる本だった。船戸与一にしては珍しい短編集、しかも舞台は新宿である。南米の奥地でも、アフリカの砂漠でも、アフガンでもない、新宿なのである。もっともっと、この世界を書いて欲しいと思うのだけど。
今年になって急にメジャーになってしまった江國香織なのだけど、僕は話題になった本よりもこの『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』のほうがずっと好きだったりしている。江國香織ワールドがとてもうまく調和された世界が描かれているように感じているのだけど。
今年は新しく角田光代を読み始めて。数えてみると全部で14冊。圧倒的なオモシロさというところまではいっていないのだけど、なんとも言えない魅力がある。最新作と言えるこの『あしたはうんと遠くへいこう』は角田光代ワールドが進化していることを感じさせてくれる一冊ではないだろうか。
川上弘美の本はこの『センセイの鞄』で2冊目だった。でも、この本は新鮮だったな。居酒屋で酒を飲む場面はどうしようもなくいい。いや、他の場面もいい。どの場面をとっても、しみじみと、しみじみとさせてくれるのである。ただ単に面白いとか面白くないとかではない。この余韻がいい。この本のことを思い出しながら、ついつい酒を飲んでしまうのであった。
今年読んだ本では田口ランディの本もいっぱい読んだ。数えてみると11冊。今年一番元気な作家だったのかもしれない。その勢いのある本はどれもどこか惹かれるところがあった。でもその中で一冊を考えるならば、僕はこの『癒しの森 ひかりのあめふるしま
屋久島』がよかった。彼女の本としてはちょっと雰囲気の違ったものだろう。でも、この本が原点になっているように思える。なんだか旅をしたい気持ちになるね。
図書館で本を眺めていたときに発見した沢井鯨の『P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン』とうい本だった。おもしろい、と聞いていただけで深い知識はなかった。カンボジアを舞台とした物語である。この国がどのような歴史を持っていて、現在どのような状態なのか、まったくわかっていなかった。もちろん、謎の多い国ではあるが。彼の次回作に期待なのだけど、この作家も謎である……。
今年読んだ本でどうしても10冊の中に入れておきたかったのが、辰濃和男の『四国遍路』である。この辰濃和男という人は朝日新聞の天声人語を書いていた人である。文章の書き方についての本も出している。それだけに、読ませる文章がいい。旅の本というのは、文章を読むという点ではつまらないものが多かったりもするが、この本は旅を楽しみ、その文章の一行一行をも楽しむことができる。
この本は僕にとってちょっと特別な本とも言える。どんな風によかったのか、そのうちどこかでまたこの本については触れることにする。
<2002年・読んだ本ベストテン>
1.『黄色い目の魚』 佐藤多佳子 新潮社
2.『パレード』 川上弘美 平凡社
3.『文章読本さん江』 斎藤美奈子 筑摩書房
4.『だれが「本」を殺すのか 延長戦』 佐野眞一 プレジデント社
5.『海辺のカフカ』(上・下) 村上春樹 新潮社
6.『国盗り物語』(一〜四) 司馬遼太郎 新潮文庫
7.『それでもしたい?! 結婚』 岸本葉子 講談社文庫
8.『ファースト・プライオリティー』 山本文緒 幻冬舎
9.『あかんべえ』 宮部みゆき PHP研究所
10.『一億三千万人のための小説教室』 高橋源一郎 岩波新書
ほんとうに、ほんとうに本を読まない1年間だった。この数年毎年同じことばかり言っているような気がするが。10冊を選ぶということにはとても悩んだ。なにせ、読んだ本の数があまりにも少ないわけで……。
おもしろい本というのは、インパクトが必要だと思う。一番面白かった本、そういうことを考えるならばやっぱりインパクトだとう。絶対こう思うということではなく、ぼんやりと思っていることだけど。でも、インパクトの反対側にあるような、静かな心地よさというのも悪くはない。そんなことを考えていると、読んだ本をこうやってセレクトすることにあまり意味を見出せなくなってしまう。
インパクトがあり静かで暖かで、不器用な良さというのが、佐藤多佳子の『黄色い目の魚』にはあった。この小説の中には、「絵」というものが出てくる。自分を表現するということ、どんな風に生きて行くか、人を好きになること。そうした悩みが胸の中の難しい角度から入った奥のところに、すっと入ってくる。
川上弘美の『パレード』は、ほんのちょっとした短編である。すぐに読めてしまう。読み終わってから、この本の世界がどんどん膨らんでくる。『センセイの鞄』の景色が頭の中に広がってくる。いい本というのは、いいコンサートホールみたいなものだと思った。音が反響して、身体全体で感じることができる。この本もそうした響きがあるように思える。
斎藤美奈子の『文章読本さん江』はけっこう衝撃だった。なにせ、有名文章読本をずばずばとぶった切っていくのである(笑)。心地よいだけでなく、その鋭い視点に驚きの連続であった。
佐野眞一の『だれが「本」を殺すのか 延長戦』は正直なところ、前作の『だれが「本」を殺すのか』よりも面白かった。直接的に、本に対しての思いのようなものがどんどん書かれていて、読んでいてとても嬉しい。
正直なところ、村上春樹の『海辺のカフカ』はよくわからなかった。でもその文章に触れることはとても楽しく、心地よい幸せな気持ちを味わうことができる。生きて行くことにはいろいろな問題はあるけれど、何事も楽しむことが出来るのだと改めて思う。
司馬遼太郎の『国盗り物語』を読むことで、日本の歴史というものにまた興味を持つことができた。自分の無知を感じることでもあるが、教科書では暗記するにしか過ぎなかった出来事にも、多くのドラマを感じることができる。読まなければ、知らなければ、損をしているようなことが多くあるのだと思う。
この一年、岸本葉子の本はよく読んだ。中ではこの『それでもしたい?! 結婚』が一番良かった。衝撃的でもあった。結婚について、恋愛について。
山本文緒の『ファースト・プライオリティー』は、現代という時代を強く感じさせる内容だった。すごいな、と思う。でも、山本文緒にはまだまだ注文がある。もっと時代を超えたものを書ける人で、もっともっと凄い小説を書いてくれるのではないかと密かに期待している。
宮部みゆきの『あかんべえ』は定番中の定番といったところだろうか。十分に面白く、小説を読むことの楽しみを感じさせてくれる。でも、こういう作家というのは辛いのかもしれないな、と思ったりもする。それなりのレベルの作品が当然になっているわけで、正直なところ僕の期待もかなり高い。そろそろ彼女の小説を読み始めて10年になる。
今年読んだ本では中身のある実用書を読んだような気がした。高橋源一郎の『一億三千万人のための小説教室』は実用書というよりは、エッセイというようなものだが、とてもためになったと思う。誰でも読める本であり、小説を読むことが楽しくなる。他にも良いな、と思える実用書があるので書いておきたい。
野口悠紀雄の『「超」文章法』(中公新書)は実践的でとてもためになった。こういうタイトルの本は、まわりくどい内容が多いのだけど、そんなことはなくストレートなところがよかった。ウェブなどでちょっとした文章を書くときでも利用できるだろう。
陰山英雄の『本当の学力をつける本』(文藝春秋)も世間ではかなり話題になった本だった。読んで損はしないというよりも、これから先の考え方にプラスになる本だと思った。
(2003.1.14)
<2003年・読んだ本ベストテン> NEW!!
1.松居直『絵本の森へ』(日本エディターズスクール出版部)
2.村上春樹『少年カフカ』(新潮社)
3.池上彰『そうだったのか!現代史』『そうだったのか!現代史パート2』(集英社)
4.森達也『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』(晶文社)
5.岸本葉子『がんから始まる』(晶文社)
6.森絵都『永遠の出口』(集英社)
7.フレッド・ウルマン/清水徹・美智子訳『友情』(集英社)
8.山本ふみこ『台所で元気になる』(大和書房) 他
9.金城一紀『対話篇』(講談社)
10.佐木隆三著『大義なきテロリスト オウム法廷の16被告』(NHK出版)
この数年変わらないのだけど、情けないような読書量だった。でも、少ない中でもいい本に出会えたのではないかと思っている。一応1位から10位まで順位は付けてはいるが、あまり意味はない。だったら付けなければいいわけだが(笑)、まあひとつのお約束みたいなものだ。本というものを、作品として面白かったかどうかというよりも、新しく出会えたというインパクトの方に、どうしても重点が大きくなっている。そうした気分の2003年という一年だったとも言える。とにかく、僕の一年間だったわけだ。
最も印象に残った本、それは松居直の『絵本の森へ』だっただろう。振り返って考えてみると、このタイトルも素晴らしい。24作品の絵本の紹介がこの本には書かれているのだが、その最初に取り上げられている作品がマリー・ホール・エッツの『もりのなか』である。森の中で子供が遊んでいるという絵本なのだが、この場面が『絵本の森へ』で書かれている絵本というものの素晴らしさを象徴しているのではないかと思う。松居直の本は、他に『わたしの絵本論
0歳からの絵本』(国土社)、『絵本のよろこび』(NHK出版)と読んだ。どちらも胸に響くことがいくつも書かれていた。
もちろん、絵本についてというのがテーマである。しかし、普段読む「本」というものも含めて考えさせられることが多い。ワクワクした気持ちで本を読む。当たり前のことなのだろうけど、真っ直ぐなところがいかに大切であるのか。そして、今の時代というものをも、深く考えることができる。
ほんとうに、いい本に出会えて良かった。そう思える一冊だった。
本と言っていいのか難しいのかもしれないが、村上春樹の『少年カフカ』は特別な面白さを持った一冊だった。このデカいサイズの(少年マンガのような)本は、毎日数ページづつ、期間としては2カ月以上も掛けて読んだ。読むというよりも、その時間を楽しんでいた。この本の活字に触れるということが、小さいけれど確かな幸せだった。
読者のメールに、村上春樹が答えるという内容。普段だったら、わからないであろう、村上春樹の奥の方の部分に触れたような気がする。村上春樹というだけでなく、ひとりの小説家と言ってもいいかもしれない。難しく語ってしまうなら、限りなく難しくなってしまうのだが。とにかく、小説を読んだり、活字を読むということが、心から楽しいものだと思える本であった。
自分の社会情勢についての無知をさらけ出すようなものなのだが、池上彰の著書はとても面白いものだった。他にも彼の著作は何冊かあるのだが、この2冊を読むと現代史、つまりは新聞の読み方が変わるのではないだろうか。
例えば、司馬遼太郎などの時代小説を読むことで、知らなかったその頃の歴史、人物像というものを読み取ることができる。まあ、それが事実だったかは別として。戦争などの出来事があれば、それには何らかの原因があり、人々の物語がある。
現代に起こっている戦争というものにも、当然のように物語がある。新聞など、普段目にするメディアから見える物語というのは、どうにも一方的なものとなりがちではないだろうか。世界の紛争を、小説と同じように捉えるのは違っているのかもしれないが、読ませるだけの強い物語がある。世界では、多くの人が生きているのだと、実感することができる。
森達也の本を6冊も読んだ。どれも興味深いものだった。オウムを取り上げたということで、この人はとても衝撃的だったわけだが、本を読んで感じたのは、森達也というひとりの人間だった。人間というよりも、同じような時代を生きている先輩といった方がいいだろうか。特に『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』は、多くの森達也の側面に触れることができた本だったように思う。オウムだけでなく、ドキュメンタリーの仕事について、彼独自の視点というのが、魅力的なのだ。『ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー』(角川書店)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』(角川文庫)、『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、安岡卓冶との共著『A2』(現代書館)という本は、どれも人を勇気づけ、優しい気持ちを持たせてくれるのである。
この数年、岸本葉子の本を読んできた。まさか、『がんから始まる』という本を彼女が出すとは思ってもみなかった。けれど、ちょっと自分勝手な話になるが、この本の存在はとても大きなものだったと感じている。仮に僕がこの先、がんという病気になったとしよう。この本を読んだことによって、比較にならないほど、前向きに生きていくことができると思うのだ。たぶん、こういう気持ちを持ったのは僕だけではないのではないか。
森絵都の『永遠の出口』は、驚きの本だった。森絵都という作家がすごい実力のあるということは知っていた。この何年か、彼女の本を読み続け、児童文学でない一般向けと呼ばれるジャンルの本を待っていた。それが、こういう本で目の前に現れたのだ。読むほどに、深みを増す、この本はあまりにも魅力的である。ちなみに、舞台となる総武線沿線は、かつて僕が住んでいたところでもある。胸が熱くなってしまうんだよな。
一冊の小説ということで考えるならば、フレッド・ウルマンの『友情』が最も面白かった作品だったと言えるかもしれない。戦争という時代での、友情の話である。もちろん、今の日本はこの本の状況とは違う。けれど、読者はついつい自分の子供の頃の友達を思い出すのではないだろうか。誰もが大切な気持ちをどこかに置いて生きているのではないだろうか。静かに、長く、読まれていく本であることは確かだ。ずっと本棚に置いて、時には手に取っていきたい。
山本ふみこの『台所で元気になる』を読んで、かなり元気になったと思う。この本の他にも、『暮らしのポケット』(大和書房)、『ふだんの暮らしがおもてなし』(晶文社)、『食卓の力』(晶文社)、『食卓のこころ』(PHS研究所)と読んだ。全て合わせて、とにかく山本ふみこが良かったということである。毎日の食事とか、ほんのちょっとした生活のことなのだけど、元気になるのだ。あったかなオニギリを食べるような感じと言えばわかりやすかな。ちょっとご飯が口のあたりに付いていたりして。
金城一紀は『対話篇』は、短編(中編小説というのかもしれないけど)の魅力に満ちた本だった。今でもこの本を書棚から取り出すときには、手を洗わなくては、と注意したりする(笑)。でも、繊細な感情というものが、この本のひとつひとつの物語にあるような感じがして、何とも心地よかったりしているのだ。短編で読ませる作家というのは、少なくなっているように思える。金城一紀はもちろん長編も面白い。けれど、こうした小説をどんどん書いて欲しい。
佐木隆三『大義なきテロリスト オウム法廷の16被告』について語るのはちょっと難しい。やはり重い内容であることには変わりはないからだ。けれど、この本に書かれている16人の被告にも、何らかの人生があり、オウムに走った理由のようなものはあるのだ。この本に出てきた、出来事、時代背景のようなものは、僕にとってはとてもリアルなものだ。選挙活動、地下鉄サリン事件での築地駅の風景というものだけでなく、年齢的にも僕と似たような人達の犯罪である。
それにしても、こうした事件のノンフィクションというものは読み応えがある。しかし、辛くもある。でも、佐木隆三という人の本は、これからも読んで行きたいとは思っている。
(2004.1.11)
<2004年・読んだ本ベストテン> NEW!
1.帚木蓬生著『国銅(上・下)』(新潮社)
2.高村薫著『晴子情歌(上・下)』(新潮社)
3.村上春樹著『アフターダーク』(講談社)
4.よしもとばなな著『デッドエンドの思い出』(文藝春秋)
5.川本三郎著『美しい映画になら微笑むがよい』(中央公論社)
6.鷺沢崩著『ウェルカム・ホーム!』(新潮社)
7.疋田智著『自転車通勤で行こう』(WAVE出版)
『サドルの上で考えた』(東京書籍)
『自転車生活の愉しみ』(東京書籍)
8.南木佳士著『阿弥陀堂だより』(文春文庫)
9.船戸与一著『金門島流離譚』(毎日新聞社)
10.金水敏著『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店)
2004年に僕が読んだ本は、約69冊……。もうドルフィンホテルから「読書」という看板を外さなければ、なんてことも思ってしまう。やれやれ。大きな要因は通勤が無くなったことだろうな。部屋で本を読むというのはどうにも苦手なんだな。2005年には何か対策を考えなくては。しかし、数は少なかったけれど、このベストテンには自信がある。面白い本たちだった。
栄光の第一位は帚木蓬生の『国銅』上下巻である。読み応えのある壮大な物語だった。毎日寝る前に読んでいたのだけど、読むのが楽しみで楽しいでどういようもなかった。特に何かの事件があるわけではない。遠い昔の日本という国で大仏をつくる。とてもシンプルな話だ。登場人物たちのひとりひとりの表情が感じられるものだ。本の面白さがいっぱい詰まったものだった。
第2位も読み応えのある長編ということにした。高村薫の問題作である『晴子情歌』。実は購入したとには読みにくく一度挫折していた本だった。ところが読み進めると、ぐいぐいと物語に引き込まれていった。やっぱり長編はいい。そして、高村薫もいい。
順位をつけるというのも変な話だが、あくまでもひとつの遊びみたいなもの。村上春樹の『アフターダーク』は特別な存在だった。中篇というべき長さだが、この本の1ページ1ページが宝石のようだった。次の村上作品が今から楽しみでどうしようもない。
よしもとばななの作品がこんなにも良かったとは。『デッドエンドの思い出』は多くの人に読んで欲しい大推薦の本だった。ひと言でいうなら、「やさしい気持」になれる本だ。
それにしても、この1年に読んだ本は映画関係が多い。川本三郎の『美しい映画になら微笑むがよい』は多くの作品に関してのコラムが載っている。しかも、アジア映画がメインとなっている。その取り上げられている映画がたまらなくいいのだ。この本を読めば、もっともっと映画が好きになる。ぜひ読んで欲しい。
鷺沢崩の本はだいぶ読んだ。デビューの頃から知っている作家だったので、彼女の死というのは僕にとっても大きなことだった。『ウェルカム・ホーム!』を語ることにおいて、希望という言葉を使いたい。ありふれた言葉だけど、この本は希望が溢れていた。人と人との関係はすれ違いが多かったり辛いことも数多くあるけれど、それでも前に向うことができる希望だ。特にこの一冊は大切な、希望に満ちた本だった。
僕にとって2004年最大の変化は、自転車を乗り回したということだった。遠出をしたというわけではないが、近くをあちこち、汗を流して走り続けた。そのことが大きいだろう。かなりのダイエットにもなった。確かに健康になった。こうした自転車ライフの入門書となってくれたのが、疋田智の著書だった。どれが一番ということもないので、すべて挙げることにした。これらの本を読むと、自転車がどんなに素晴らしい乗り物かがわかる。そして、自転車に乗った景色から周りを見ることで、大きく価値感も変わってくる。実は、これらの本こそが2004年の第一位ではないかと今だに悩んでもいるのだ。
南木佳士の『阿弥陀堂だより』はビデオを観たことで、読んだ作品だった。主人公が都会の生活を離れ田舎へと移り住む。そうした状況は、同じような暮らした始めた僕に静かな励ましを与えてくれた。何も無理をする必要は無い。静かな時間を過ごす中で、やっと感じることのできるものもある。この本の素晴らしさは、大きな感動とかそういうものではない。あくまでも、静かな風を感じ、土の臭いを感じるようなものだ。
デビューから船戸与一を読み続けている。その中でも『金門島流離譚』はかなり面白い方の作品に入ると思う。男としての生き様があり、アジアをいう地域を感じさせ、日本の今をも考えさせてくれる。それにしても、船戸与一恐るべし。考えてみるとデビューから20年以上が過ぎているのだ。その間に世界の情勢は大きく変わっている。その変化を今も描き続けているのだ。
金水敏の『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』は、本を読むという意味を問うような本だったのではないかと思う。僕は最近の文学賞というものにすっかり興味を無くしている。響いてくる作品がないのだ。なぜ面白く感じないかというのは漠然としたものだ。しかし、この本を読んで、文章に使われる言葉について敏感になった。言葉が明確に使われていない。それは人物を深く掘り下げて書かれていないことでもあるのだろう。
冊数としては少なかったが、読んだ種類としてはバラエティにとんでいて、ユニークな本ばかりになったような気がする。いい出会いのあった一年だった。本というのは出会いなのだと思う。新しい本を読もうという気持はしだいに小さくなっているが、なんとか新しい出会いにチャレンジしていきたい。
(2005.1.20)
DOLPHIN
HOTEL
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