a day

 

注意事項など

■『君が望む永遠 special FanDisk』涼宮茜シナリオ中のSSになります。
若干のネタバレを含んでいますので、ご了承下さい。

■その他注意事項については、SSトップページに記載してあります。
出来れば上記リンクより移動していただき、ご一読をお願いします。

 

 

――――ん………


目を開けると、部屋はすっかり暗くなっていた。
………あれ、どうして私……寝ちゃってるんだっけ?
手探りで枕元にあるはずの時計を探す。と、何か別のものが指先に触れた。

…………?

そこにあったのは時計ではなく、こっちを見つめている孝之の頭―――
……そっか、部活の後孝之の部屋に来て、それから………

「―――“おはよ”ってのは……変かな。何か探し物か?」
「…………」

何か返そうと思ったけど言葉がうまく出てこない。
いろんなことがありすぎて頭がついてきていない、そんな不思議な感じ。

「………孝之、ずっと起きてたの?」
「ん?いや、起きたのはついさっき。で、茜の寝顔見てた」
「っ!?」
とたんに頬が熱くなる。
「………顔、赤いぞ?」
「…………孝之のバカ」
「あ!?」
「……………エッチ」
「……照れてんのか?」
「そ、そんなのじゃないもん」
恥ずかしくて寝返りを打って視線をそらした。

背中越しに孝之の温もりが伝わってくる。それが――たまらなく、嬉しかった。
こんな風に感じる、ずっとこうやって一緒にいたいって思えるような人が出来るなんて、
ほんの少し前には考えもしなかった。

もし、孝之と出会わなかったら――――
………もしも、出会わなかったら…………?

考えたってしょうがない、分ってるのに………考えてしまった。
そんなことないって分ってる。なのにそれがただどうしようもなく怖くて、
腕枕してくれていた孝之の手を握りしめた。

「茜、どうした?」
「……なんでもない」
「思い切り何でもあるって感じだぞ?
―――約束したろ?お前の悩みはオレが全部聞くって。だから……ひとりで抱えるのは止めてくれ」

「………うん」
優しく握り返してくれた手を両手で抱いて、孝之から顔を背けたまま呟く。

「もし……もしも孝之がお姉ちゃんの告白を受けて、付き合ってたとしたら―――
もし別の……今とは全然違う形で、私と孝之が出会っていたとしたら………どうなってたかな?
それでも私孝之のこと―――好きになってたのかな?」

「…………」
孝之は押し黙ったままだ。……変なこと言ったから怒ってるのかな………
謝ろうかどうしようか考えていると、孝之は急に腕を動かし、私はそのままギュッと抱きしめられた。

「………孝之?」
「――――これが答え」
「え?」
「人生……なんてもの語れるほどオレも年くってる訳じゃないけどさ。
オレたちは普段いっぱいの選択をして生きてるんだと思う。
もし、涼宮さんの告白を断らず受けてたら………
もし……速瀬の誘いを断って、水泳の大会を観に行かなかったとしたら―――
もし……もしもあの日、茜に街で呼び止められたとき、それに応じなかったとしたら――――
そうしたら、もしかしたら全く違った未来があったのかもしれない」

「…………」

「けど、それは別の鳴海孝之だ。
オレは……この鳴海孝之はお前を、涼宮茜を選んだ。
もし神様か何かいたとして、もしもう一度過去に戻って選択をやり直すことが出来たとして―――
それでもオレは―――茜を選ぶ。
茜と出会って、茜のことを好きになって、茜とキスして、こうやって――茜を抱く。何度でも、何十度でもだ。
………だから……さ、そんな事言うのは止めよう?」

「……うん、ごめん。―――ありがとう、孝之」
抱きしめられたままキスして、そのまま身体を寄せた。

「孝之……今日このまま………泊まっちゃダメ?」
「それは………正直嬉しいけど、家の人……心配しないか?」
「心配するし怒られると思う。……でも、こうしていたいんだもん………」
「……わかった。けど家には電話しておこう、今後のこともあるんだから」
「うん、電話借りるね?」
「ああ。……もしまずいようなら言えよ?なんならオレも電話に出るなり謝るなりするから」

気持ちは嬉しいけど孝之に電話に出られても…………


トゥルルルル………トゥルルルル…………


『はい、涼宮です』
「あ、お姉ちゃん。茜です」
『茜、どうしたの?こんな時間まで連絡もしないなんて……』
「ごめんなさい……」
『心配したよ?』
「うん…」
『それで、何があったの?』
「ごめんなさい、今日は友達の家に泊まるね」
『お友達って……だれ?』
「それは……ごめんなさい、言えない。でも絶対悪いこととかしてる訳じゃないから……」
『………わかった。じゃあお母さんたちには私が何とか言っておくね』
「ありがとう、お姉ちゃん。……それじゃ」

受話器を置いて振り返る。孝之はほんの少し困ったような顔をして微笑っていた。

「……怒られたろ、大丈夫だったか?」
「うん。……でも、お姉ちゃんが何とか言っておいてくれるって」
「―――そっか、涼宮さんが……」
「…………」

「……で、いつまでもそこにそんな格好でいられると目のやり場に困るんだけど?………嬉しいけど」
「………え?」
孝之の視線の先に目を向ける。
「っ!?」
―――そう言えば私……服着てなかった………………

「孝之のエッチ!」
「“エッチ”って………」
「エッチエッチエッチエッチエッチエッチ!!」
慌てて布団に潜り込む。と、孝之がいきなり抱きついてきた。

「あ、ちょっと孝之!?」
「どうせオレはエッチだからな。こういうことだってするさ」
「もう………くすぐったいよ……」
「―――寝よっか、疲れたろ」
「…………え?」
「ん、どうかしたか?」
「……えと………しない…の?」

微笑いながら私の頭を撫でる孝之。

「オレは“エッチ”かもしれないけどさ。―――大好きな子を気遣うくらいはするさ。
さっきの今で無理させようとは思わないよ」
「孝之………」
「それに………」
「……?」

「言ったろ?明日も、明後日も――ずっと一緒にいるんだから―――」
「―――うん!」

本当になんてことない、あたりまえのことのようにそう言ってくれた。
それがどうしようもないくらい嬉しくて―――幸せだった。

「……おやすみ、孝之」
「おやすみ、茜」


明日は早起きして孝之に朝ご飯作ろうかな……
ちょっと気恥ずかしいけど、そんなドラマみたいな朝もいいかもしれない。
………ちゃんと作れれば、だけど……



そんなことを考えながら隣で微睡んでる大好きな男の子に……
―――孝之の頬にキスをして、心地よい温もりのなか目蓋を閉じた。