お願い、注意事項等

『君が望む永遠』涼宮遙トゥルーエンド後のSSになります。
また、上記リンクよりSSトップページの方に遷移していただきますと、
注意事項など記載していますので、出来ればご一読をお願いします。

 

よいしょ、よいしょ……

立ち止まって息をつく。
ふぅ……疲れたなぁ、前は毎日通ってた道なのに………
通っていた時は……確か立ち止まったりはしなかったと思う。
やっぱり運動不足なのかな……。それとも――――年?
…………やなこと考えちゃった、でも気をつけよう…………

そんなことを考えながら、私は白陵柊へと続く桜並木を歩いていた―――

病院を退院して一度だけ、先生たちに挨拶をしたくて学園に行った。
でもそれっきり……行こうと思えばいくらでも行けたはずなのに、
今日まで学園にも―――そして、あの場所にも足を運ぶことはなかった。
なのに……どうして今日、こうやってあそこに向かっているのか………よく分からない。

ただ―――天気が良いから散歩でも……と思って、玄関の扉を開けたその瞬間、
どこからか舞い降りてきた桜の花びら―――――
それがなんだか……私を呼んでるみたいに思ったから。

絵本で妖精が男の子を誘うみたいに……
ピーターパンがウェンディを促すみたいに………

あの日――――ずっと無理なんだって思ってた……諦めていたその先に手を伸ばした―――
窓を乗り越え、林に消えていった白い影を追いかけたあの時みたいに―――――

 

なだらかな上り坂、木々の間から温かな日差しが差し込むなかを歩いていく。
“童話に出てくる魔女の森みたい”だなんて思ったんだっけ……
その先にあるものも知らないままここを歩いた遠い日々。
そんな思い出のひとつひとつが懐かしくて……あの頃の自分が遠い昔のことみたいに思えた―――

そして――――森は途切れ、空が開けていく――――

そこには―――あの頃と変わらない場所があった。
緑色の草むら、青い空、その向こうに広がる街の風景………
ううん、きっといろんなところが変わっているはず。
だけど本当に“変わってない”って――――そう思えた。

ああ、そうか――――
やっと気がついた。私がずっとここに来なかった理由――――
私は………怖かったんだ。ここが……大切な場所が変わってしまってるかもしれないことが。
ここに来たことで、私だけがあの頃と何も変わっていない………
変われていないって………そう思ってしまうことが――――

私が眠っていた間も……季節は巡り、時間は流れていった。
周りのみんなはすごく大人になって………私はひとり、置いて行かれたように感じた。

けど――――ここはこうして、変わらないでいてくれた。
変わってしまっていても……それでも前と同じにこうして私を迎えてくれた。
何も変わらずにいることも……何もかもが変わってしまうこともないんだってこと――――
そんな当たり前のことに、やっと気がついた。この場所が……教えてくれた――――

 

「遙!」
森の向こうから聞こえてきた声―――

あの日………木陰から聞こえてきたあの人の声―――
あれから3年、季節が巡って……時間が流れても、彼はまだここにいてくれた。

「――――君」
森の向こう――まだ見えない彼に、精一杯の声を返す。

あの日……少しだけ前に進むことが出来たあの時―――
あれから3年、涼宮遙は―――ここにいる。

 

歩いてきた道、いつか歩みを止め振り返ったその時も………きっと微笑えるそんな日々。
私はこれからも歩いていく。ずっと一緒に、この人と―――――