『分岐点に立つひきこもり――社会的ひきこもりからニートへ? しかし、本来的意味としてのひきこもりは今も長期化し続けている

樋口明彦・石前浩之・上田陽子・金城隆一・田中俊英(著)

★書籍データ
対談集: 100p ; サイズ(cm): 15 x 21
出版社: ドーナツトーク社
発行: 2005/08

★こちらの商品は完売しました、ありがとうございます。

定価:1000円



 実は、僕がニートのことを知ったのはかなり遅く、04年の夏だった。今からたった半年前だ。僕の職場の「淡路プラッツ」に、ニートに関する勉強会が東京であるとの知らせが届き、大阪から僕が参加することになったとき、初めてその言葉を聞いたのだった。
 そのころ、「ひきこもり」に関していろいろ考えたりしゃべったりすることが僕は何となくめんどくさくなってきていた。でも現実は、ネットを中心に「ひきこもり」は毎日熱く論じられているようだし、テレビや新聞といった大メディアでも一般常識の一つとして定着していたから、自分の「めんどくささ」をいつもの飽きっぽさかなあとも思い、それほどつっこんで考えてはいなかった。
 それでも、「ひきこもり」に関して繰り広げられる議論に関して、いくつかの問いはずっと抱えていた。(略)

 もうひとつ、「ひきこもり」の問題は、単に部屋から飛び出て誰かとコミュニケーションして解決、ということでは収まらなくなってきていた。つまり、対人コミュニケーションの復活後、さてそこからどう社会に接続していくのか、言い換えると、社会の中でどう働くのか、どう就労するのか、どう「稼ぐ」のか、ということが大きなテーマになった。(略)
 そこに、ニートが登場した。この概念を知っていくなかで僕は、本書でも書いているが、いくつかの戸惑いや問いを抱いた。速いスピードで次々と「名付け」されていく青年問題にまた新しい名前が登場したのかというげんなり感や、この概念を巡ってまたいろいろな人の思惑や行動が絡むのだろうなあという比較的悪い予感もあった(今もある)。だがそれと同時に、上に書いたような「当事者」の問題や行き詰まり感を打破してくれる便利な言葉になるのでは、という期待もあった(もちろん今もある)。04年の秋頃、とにかく僕が考えたのは、「ひきこもり」議論の行き詰まりを突破するには、今、このニートという概念は使える、ということだった。
 (略)今の時点では、ニートと「ひきこもり」の両テーマを合わせてここまで深くそしてコンパクトに論じた本はないと自負している。膨大な「注」も含めて、読者のみなさんの実践や思考活動、そして生活に本書をうまく利用していただければ幸いだ。(「はじめに」より――田中俊英)



★目次

●はじめに 田中俊英 04

●回顧と展望 樋口明彦 08

●SCENE01 社会的ひきこもりからニートへ?(2004/10/24)

●introduction
※壮大な椅子取りゲームのようなものがあって、椅子に座れない人たちがいろんな形でたまっているのではないか。その延長線上にニートという言葉がある。石前浩之 14
※若者問題のネーミングは、短期間のうちに名づけがころころ変わっている。我々は、今、ニートという言葉を受け入れてもいいのか。田中俊英 16
※「ニート」が概念として妥当でないからといってほうっておくわけにもいかない。「活動として使えるものは使わなくては」という状況に、今、私はいる。樋口明彦 18

●opinion
※田中俊英よりニートに関する四つの論点 21
 ・"こころ系"から"就労系"へ移行したのか?
 ・就労意欲は必要か? 
 ・ニートとは誰なのか?
 ・ニート対策は社会コスト削減ではないのか?
※樋口明彦より四つの論点への回答 27
 ・「社会的ひきこもり」の分類化
 ・事後的なフィクションとしての就労意欲
 ・ニート問題=アウトリーチ問題
 ・「誰」のために、「何」のために

●discussion
※「若年者を中心とした『人間力』強化の推進」とは 35
※ニートの全体像は誰も見ることはできない 39
※「見える」ニートと「見えない」ニート 40
※ニートに届くアウトリーチの手法を模索する 43
※どうしてもNPOに頼らざるをえないニート支援 45

●questions&answers

●SCENE02 しかし、本来的意味としてのひきこもりは今も長期化し続けている(2004/11/28)

●introduction&opinion
※公的機関と民間団体がお互いの特徴を引き出しながら、「連携」「情報」「就労」でつながり、ネットワーク化していく新しい動きに注目したい 樋口明彦 54
※訪問活動には、実にさまざまなコストがかかってくる。親との信頼関係作りもその一つ。「親も動けば子も動く」と実感しているが、その実感は正しいのか考えていきたい 田中俊英 57
※社会参加に向けて自発的な行動を促すために、今、「ひきこもり」のままでさまざまな仕事の選択肢を提供しよう 上田陽子 61
※一つの言葉で表現できないほど、青年問題は多様なのに援助の幅が狭いことが問題だ。ネットワーク化によってその問題を解決できないだろうか 金城隆一 68

●discussion
※家族全体をどのように支援していけばいいのか 72
※社会参加の第一歩としての「ファーストステップジョブ」 74
※社会資源としての「親」を利用しようと親自身が考えた 77
※援助者も被援助者も停滞し長期化が起こるのではないか 87
※情報発信基地と、そこへのナビゲートの必要性 86
※ネットワークだけでは語りきれない「何か」 89

●questions&answers

●謝辞 田中俊英 98

淡路プラッツHPへ

ドーナツトーク社日記へ