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『愛しのチャイナタウン!』にいたるまで


  
  青葉区小中高校生ミュージカルが、区民祭りの企画からはずれた意味


◆このレポートは、かめおかゆみこのメールマガジン「ドラマ教育ネット」(週刊)に、
  7回にわたって連載した内容を、加筆修正したものです。
  文責は、すべてかめおかにあります。



■地域発の子どもミュージカル

私は、昨年2001年からスタートした、
横浜市青葉区小中高校生ミュージカルのスタッフとして、関わっています。

昨年は、万葉の伝説を下敷きにした『手古奈』に挑戦しました。

50人の、地域の小中高校生が、1時間半の舞台に全力で取り組み、
11月3日の本番は、2回とも満席の立ち見で、大きな反響を呼びました。

おかげさまで、今年3月25日には、
伝説のおひざもと、千葉県市川市での再演まで実現したのです。

この実践の詳細については、友人のサイト「幻の森通信」(管理人・斉藤俊雄)で、
連載をさせてもらい、同じものを、私のサイトでもアップさせてもらっています。
興味のあるかたは、どうぞ、こちらをご覧ください。(準備中20020929)


第2回目の今年は、地元・ヨコハマに題材をもとめて、
『愛しのチャイナ・タウン!』という作品をお届けします。

60人の出演者を募集したところ、
わずか10日あまりで、70人を越える申し込みがありました。
最年少は小学校1年生、一番上は高校3年生です。

ちなみに、昨年の参加者の大半が、
「もう一度やりたい」と、今年も参加を希望しています。
どれだけ、彼ら彼女らの心にインパクトがあったことか、想像できるでしょう。
(今年、受験期にあたる子どもたちは、残念ながら参加できません)

8月22日〜25日と、オーディションのための練習が行われましたが、
これも、「振り落とす」ためのものではなく、
全員が、何らかのかたちで役につけるための振り分けです。

一人ひとりが、充実感をもって活動できるように、
稽古の途中も、必要に応じて、脚本の修正が行われます。

本格的な稽古は、9月末からですが、
12月21日の本番めざして、毎週末、稽古に明け暮れる日々がつづくことになります。

もともとは、区の主催行事「区民祭り」のなかの企画としてスタートした
この、小中高校生ミュージカル。
満席立ち見・再演実現という大成功をおさめたにもかかわらず、
今年は、提案の段階で却下となりました。

却下のとなったおもな理由は、企画会議で出された反論でした。
その反論を手がかりにしながら、このミュージカルの意味を考えてみたいと思います。


■不本意な「提案却下」

横浜市青葉区では、例年、11月3日に区民祭りを開催していますが、
昨年、「公会堂ホールでの催しものに新しい企画を」ということで、
校長会などをとおして、呼びかけが行われました。

「子どもたちのミュージカルをやってはどうか」という案は、
そうした、区からの呼びかけにこたえて、あがってきたものです。

正式決定がたしか、6月でしたから、
わずか5か月で、参加者募集、スタッフ確保、脚本選定、稽古等々に
のぞまなければなりません。
年度に入ってからの企画でしたから、予算的にもかなり厳しいものがありました。

そうした困難を乗り越え、2回公演を満席・立ち見が出る状態で成功させ、
さらに、再演へと発展したことは、前回も書きました。

ところが、これだけの成功と、大きな反響があったにもかかわらず、
今年の提案にたいして、企画会議での結論は「却下」。

昨年参加した子どもたちは、受験年度にあたっている子などをのぞくと、
ほとんどの子が、「またやりたい」と希望していました。

そんな子どもたちに、「今年は企画が通らなかったから、やらない」とはいえません。

区が関わらないのであれば、自分たちでやることになります。

けれども、自分たちで公演を行うということは、
単純に言えば、すべての経費を自分たちでまかなう、ということです。
そのほか、さまざまな困難が予想されます。

それにしても、なぜ、こうした貴重な企画を、
行政と地域が手をつないで、継続することができなかったのでしょうか。
地域の文化活動をともに支えていくためには、何が必要なのでしょうか。


■文化とお金のカンケイ

「横浜市青葉区の区民祭りのなかで、子どもたちのミュージカルは、
区にとっても、区民にとっても、新しい地域文化創造のスタートになる」

−−関わった私たちは、誰もがそう確信していました。

ところが、今年度の企画会議のなかで、思わぬ反論が起きました。
−−企画は、区が委託する委員会が検討し、区が最終決定します−−

 ※会議そのものは、公開されているものではありませんから、
  私の情報は、あくまでも関係者からの伝聞であることをお断りしておきます。

一つは、「演劇はお金がかかりすぎる」という意見。

年度途中の企画だったこともあり、
この小中高校生ミュージカルに与えられた予算は、85万円でした。
(会場費は、区の主催事業だったので減免措置の対象となりました)

50人の参加者がいて(昨年は個人からは一切徴収していません)、
プロのスタッフが関わり、3か月稽古をし、舞台をつくっていくわけですから、
当然、お金はかかります。

ただ、演劇に関わっている人間にしてみれば、
これだけの仕事を、わずか85万円でおさめること自体、
無理な話であることは、当たり前のこととしてわかります。

あらゆる経費を切り詰め、最小限におさえ、そのなかで工夫をしましたが、
実際には、40万近く予算をオーバーし、
それはミュージカル制作の中心になったかたが、個人負担したのでした。


■大切にするべきことは何か?

反論の二つめは、「演劇ばかりをやるのは不公平だ」という意見でした。

「演劇ばかりを」といっても、この試みは昨年はじめてのもの。
それまでは、いろいろな団体の発表をやってきたのですが、
「新しい企画はないか」という、区からの呼びかけを受けるかたちで、
提案したものが、とおったという経緯があるのです。

さまざまな区民のかたが集まる企画会議ですから、
なかなか、前年度のいきさつが周知されない面はあるのでしょうが、
これは、やはり残念なことでした。

ただ、この意見の根底には、このかたの考える「平等主義」がありそうです。

話は少しずれてしまうかもしれませんが、
バブル華やかりしころ、全国各地に公共ホールがどんどん建設されました。
それらの多くは、「多目的ホール」と呼ばれるものでした。

「演劇にも、音楽にも、舞踊にも使えるホールを」と考えた結果でしたが、
実際には、どの団体にとっても、中途半端で使いづらい仕様となってしまい、
「無目的ホール」と、陰口を言う人さえいたほどです。

「分量を同じにする」ことが、本当の「平等」ではないということでしょう。
それは、建物だけでなく、なかみの問題も同じではないかと思います。


■共同負担はいけないこと?

前にもふれたように、
昨年の公演は、限られた予算(85万)のなかで精一杯やりくりしたものの、
結果的には、予算を30万以上オーバーし、
それは、(区ではなく)ミュージカルの制作を担当したかたが
個人負担するかたちとなりました。

「誰かが犠牲になって成り立つ活動ではいけない。みんなで支えよう」
反省会のなかで、そんな声があがりました。

また、昨年は、衣装等は、参加校の演劇部から借りるなどして、
ほとんどお金をかけずにすみましたが、
今年の提案(内容)を考えると、どうしても、購入する方向で考えざるを得ません。

観劇料金を集めるという方法もありますが、それは昨年の段階で、
「区民祭りの一環としてやるのだから、無料で」と区の方針が打ち出されており、
赤字にしないためには、とにかく何らかの方法を考えなければなりません。

そこで、提案のなかに、「参加者一人あたり5千円」の項目が盛られたのですが、
それが、今年の企画会議で、最大の問題点となってしまいました。

「区民祭りの催しにかかわる活動で、お金を徴収するのはおかしい」という意見です。

「演劇」というものを、どう理解されているのかなあというのが、
この意見を(あとから)聞いたときの、私の率直な感想です。


話は少しずれてしまいますが、
学校の鑑賞教室に関して、しばしば、こんな質問が出されます。

「どうして、わずか1時間の劇を上演するのに○十万もかかるのか」

そのかたは、一本の劇が、どれだけの経費をかけてつくられるか、
おそらく、ほとんどご存知ないのだと思います。

役者さんたちが、稽古をしているあいだの最低保障、
スタッフのかたがたの経費、運搬費等の経費…。
それらすべてが、最終的な、公演料としてあらわれてくるのです。

もちろん、結果としての舞台が、出来の悪いものであれば、
そうした批判をされてもしかたのないことでしょうが…。


私たちは地域の活動ですから、役者さんの生活費などは不要ですが、
大道具ひとつとっても、お金がかかるものはかかります。

区民祭りということで、入場料は徴収しないという大前提がある以上、
このままでは確実に赤字になることがわかっています。
そうなると、昨年のように、誰か個人に負担がいくことになってしまいかねません。

参加者5千円負担はだめで、個人の赤字多額負担は言及しないのか。
単純に考えれば、私たちにとっては、納得のいかない話です。


ただ、私が意図しているのは、区や企画会議等への批判ではありません。
立場や考え方は違っても、地域に生きる子どもたちが、
生き生きと成長していくことを望まないおとなは、一人もいないはずです。

子どもミュージカルという、青葉区でははじめての試みをとおして、
私たちが、地域で、ともに文化を創造していくために、
どのような共通認識をもち、何に焦点を当てていく必要があるのか。

そうしたことを、ていねいに探るきっかけになればという気持ちで、
このレポートを書き始めたのでした。


■できない理由を探すのか、できる方法を探すのか

これまで書いてきた以外に出された反論については、
正直、事実誤認にもとづく誤解などもあり、大きな問題ではありません。

今年のミュージカル企画を提案したがわ(私たち)は、
会議に直接出席して、対話をして理解をもとめたいと考えましたが、
企画会議に出席することは、残念ながら許可されませんでした。

そして、文書での意見提出というかたちとなりましたが、
これでは、反論されているかた、誤解されているかたに、
充分な理解を得ることはできなかったろうというのが、正直なところです。

最終的には、「今年の区民祭りでは、ミュージカルはやらない」という
結論が出されてしまいました。


「できない理由を探すのか、できる方法を探すのか」

会議のやりとりをあとから聞きながら、終始一貫して感じたことは、このことでした。

たしかに、金銭的な面など、困難な部分がないわけではありません。
初の試みゆえの、失敗や課題もあったことでしょう。

でも、だからといって、「だめ」「無理」など、否定的な側面から考えていっても、
新しい何かを生み出していくことはできません。

  地域の子どもたちが、一つのミュージカルをともにつくる。
  そして、それを地域のホールで、地域の人たちに見てもらう。

  それは、間違いなく、参加した子どもたちにも、かかわるおとなたちにも、
  見に来てくれる地域の観客にとっても、おおきなエネルギーをもたらす。

  演劇という文化活動をとおして、地域の活性化につながっていく。

−−私たちの最大の願いはそこにありました。

実際、参加した子どもたちもおとなも、口をそろえて、
「来年もやりたい」と意欲を燃やしていました。

3か月ものあいだ、週末を費やして、厳しい稽古を繰り返す。
その体験を、もう一度、やりたいと思える、
それだけのエネルギーが、メンバーのなかに育っていたのです。

「できない理由を考えるより、できる方法を考えよう」

企画案の却下を受けて、私たちがそういう方向を模索しはじめたのは、
ある意味で当然のことだったといえるでしょう。

「行政と共同でやれないことのデメリットは、たしかにある。
 でも、自分たちのやりたいことを貫くことで得るものは、
 それ以上にあるはずだ」

経済面など、不安材料を残しながらも、7月、参加者募集をかけました。
わずか10日で、80名近い応募がありました。
応募時点で、応募者の所属する学校は、18にのぼりました。

8月中旬、オーディションを行い、メインキャストを決定。
参加する子どもたちの雰囲気が、昨年のスタート時とはまるで違いました。
「やるぞ」という意気込みに満ち満ちているのです。

おとなのサポーターもしっかり顔をそろえました。
子どもたちの熱気を受けて、負けじと目を輝かせていました。

企画案却下という、ある意味、予想外の展開が、結果として、
これだけの、パワフルな集団を生み出してくれたのかもしれません。



■熱いおもいを、かたちに!

「できない理由を探すのか、できる方法を探すのか」

私たちの結論は、後者でした。

参加してくれた子どもたち、そして、サポーターとして関わったおとなたち、
誰もが熱い思いを抱いていました。

思いがあるなら、可能性に向かって、トライしてみたいと思いました。
こたえも、かたちも、ひとつではないはずです。

誤解も含めた反論がもとになってではありましたが、
ミュージカルの企画が、今年の区民祭りの企画からはずれたことは、
ある意味で、私たちにとって貴重な試金石となりました。

私たちが、何のために、こうした活動を続けていこうとするのか、
そして、そのために、どれだけのエネルギーを注ぐことができるのか、
さらには、どれだけの人たちと、手をつないでいけるのか、
しっかりと、問い直すチャンスになったことは、間違いありませんから。


今回の公演を成り立たせるには、
どんなに少なく見積もっても、110万円というお金がかかります。

出演者に協力をもとめると同時に、スポンサー探しも始まりました。
これから、さまざまなかたちで、はたらきかけをしていく予定です。

地域の文化を育てることは、もちろん大切なことです。
とりわけ、子どもたちが、未来に向けて希望をもてるような。

そのために、一人ひとりに何ができるかが、問われています。

行政まかせにするのではなく、まずは主体となって動くこと。
その結果を、実際に見てもらうしかありません。

そのとき、あらためて、行政と地域協働の文化活動のありかたを
ともに語ることができると確信しています。

横浜市青葉区小中高校生ミュージカル、今年の本番は、
2002年12月21日、青葉公会堂で。(会場は、区が確保してくれました)

60人の子どもたちと、それを支えるおとなたちとともに、
この公演を、成功させるために、全力を尽くします。

どうか、あたたかく見守り、応援していただけるとうれしいです!

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