飯島みどり立教大学助教授(西サハラキャンペーン・東京)の日本経済新聞宛書簡

 

拝啓

 貴紙二月八日付夕刊第十三面(スポーツ欄)掲載の記事「ガゼル・ラリー」につき訂正と再考をお願いしたく筆をとりました。

 

一、記事中に用いられている地図に誤りがあります。アフリカ全図のうち「モロッコ」として示されている部分は、一九七五年以来帰属が争われ、国際紛争(目下は国連の停戦監視団が展開)となっている旧スペイン領西サハラを含んでおり、国際法上大いに問題のある地図です。一九七六年より一方的に、即ち国際法を侵犯する形で西サハラを占領しているモロッコの主張そのままの地図を掲載することは、たとえスポーツ欄といえど報道機関としてふさわしくありません。否、近年スポーツの世界はますます国際政治とナショナリズムの角逐の場となっているだけに、一層の注意を払って頂く必要があると思います。

 

二、アフリカ全図の下に掲げられた競技区間の概念図にも注意を要します。右の囲みには「レースはすべてモロッコ国内で行われ」とありますが、概念図上のザゴラから南方は一.で説明した係争地にかかっている可能性があります。このレースが厳密にモロッコ領内で実施されているか、点検なさっているでしょうか。もしルートが西サハラ領内を通過しているとすれば、モロッコの主張を既成事実化する手助けをしていることになります。既にモロッコは、パリ−ダカールラリーの実施に際しても、西サハラはモロッコ領であるとの主張を宣伝し、さらなる既成事実化を進めるために、紛争の相手方や国連監視団を無視して、西サハラ通過ルートを恣意的に設定してきました。ガゼル・ラリーもまた同様の操作に利用されているおそれがあります。

 

 スポーツ記事であれば国際政治や紛争に疎くてもよい、ということにはならないと思います。地図については訂正を、また競技ルートについては西サハラ領を侵犯していないかどうかの確認を是非ともお願い致します。                                                    敬具

二月十八日

 日本経済新聞スポーツ担当デスク御中

                               立教大学法学部

  飯島みどり


立教大学法学部助教授 飯島みどり様

 

拝復 日本経済新聞の2月8日夕刊スポーツ面記事についてお手紙でご指摘を頂きました。ご指摘の点、同面の「ガゼル・ラリー」の記事に付けた地図には、帰属を巡る問題が解決していない西サハラが抜けていました。日本経済新聞社としては、西サハラのモロッコへの帰属が決まったとは認識しておりません。ご指摘を真摯に受け止め、3月1日付夕刊スポーツ面で訂正します。スポーツ記事とはいえ、このようなことがないように再発に務めます。また同ラリーのコースについては、西サハラには入っていないことを再度、確認しました。

 

以上、よろしくご理解頂ければ幸いです。

敬具

                    2005年2月28日

 日本経済新聞社編集局運動部長

          西川靖志

(署 名)

 

【高林敏之(西サハラ問題研究室)の責任で忠実に再録しました。】


 拝啓

 二月二十八日貴信拝受、三月一日付夕刊の訂正記事についても確認致しました。ありがとうございました。最初の記事に載った地図はアフリカ全図の中の「該当部分」を指し示すものであったため、訂正版地図とは厳密には対応致しませんが、却って大きく掲げて頂くことになったので最初の地図よりは見やすくなったと思います。

 またラリーのコースについては西サハラを通過していないことを再確認されたとのこと、こちらはやや微妙な問題ですので、こちらとしても引き続き何らかの確認の方法を考えたいと思います。貴紙ではどのように確認をなされたのか御教示頂けましたら幸いです。

 なお貴信後段には「再発に務めます」とあり当惑しました。先日、同様の一件で別の全国紙からも「再発に努めます」との文面を頂いたばかりでした。再発に努めて頂いては困りますので、くれぐれも御注意下さい。                                                     敬具

三月三日

 日本経済新聞社編集局運動部長

    西 川 靖 志 様

                                立教大学法学部

                                   飯島みどり