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葉月さん (70年代ロックと木原作品)
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葉月さんはずっと現役でロックを聞かれていて自らバンド活動もされていたということでこの方面にうとい管理人にとって大変心強い“下宿人”の一人です。今回お願いして以下のような木原作品と70年代ロックに関する詳細な原稿をいただきました。(2000/3/7)
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はじめに
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ジャンルは違えども「音楽」が感じられる木原作品って多いと思いませんか?
ここでは、70年代ロックが感じられる作品を挙げていきながら、木原先生のBGMとロック・ミュージシャンな木原キャラを(勝手に(^^;))推察してみます。
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どうしたのデイジー?
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全編を通じてのBGMは、映画「フォロー・ミー」のサントラ(1973年「FOLLOW
ME/THE PUBLIC EYE」by John
Barry)だということですが、ロックを連想させる場面も登場します。のっけから孤児院の子供たちの名前がミュージシャンのオンパレード。
マークはTレックスのマーク・ボラン、デビッドはボウイー、ミッキーはTレックスのパーカッショニスト、ミッキー・フィン(マーク・ボランの本名もミッキーですが)、キースはローリング・ストーンズのキース・リチャーズでしょうか、それともザ・フーのキース・ムーン?アリスはもちろんアリス・クーパー、ジェフはベック、イアンはディープ・パープルのイアン・ペイス・・・じゃなくて(笑)イアン・ギランでしょうか?ジョンとリンゴはビートルズでしょうね(この2人だけというのがなかなかシブイ)。
主要キャラの中性風美少年ジギーは、ボウイー本人というより彼の創りあげたバイセクシュアルなキャラクター、ジギー・スターダストからきているのかもしれません。コンスエラは見たまんまマーク・ボランですね。(ちなみに「フォロー・ミー」のミア・ファロー演じるヒロインがベリンダですが、リンダと似てますね、名前だけですけど)
木原先生がデビューなさった1969年と、ボウイー、Tレックスのメジャーデビューはほぼ同時期で、「どうしたのデイジー?」をお描きになっていた1973年は、両ミュージシャンとも歴史に残る代表作(1972年「ジギー・スターダスト/THE
RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDERS FROM
MARS」by DAVID BOWIE、1972年「電気の武者/Electric
Warrior」by T-REX)を発表しておりました。
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エメラルドの海賊
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この作品のBGMはデビッド・ボウイーだと「DOZIさまのBGM」に書かれていますが、アルバム・タイトルは何なのでしょう。この作品が連載されていた1973年までには、1967年「デビッド・ボウイー」1969年「スペース・オディティ」1971年「世界を売った男」1971年「ハンキー・ドリー」1972年「ジギー・スターダスト」1973年「アラジン・セイン」の6枚が出ていますが、ボウイーキャラであるスフィンクスの容貌から推察すると、眉をそりジギーというキャラを創りあげた1972年以降のアルバムなのかもしれません。日本でもかなりのヒットとなった「スターマン」(星男という名の由来ですね)が収録されている名盤「ジギー・スターダスト」を挙げたいところですが、個人的には、木原先生が「エメラルドの海賊」の直後に発表なさった「銀色のロマンス」に登場するフィービーちゃんの記憶をなくした夫の名がジーンなので、「ジーン・ジニー」収録の「アラジン・セイン」がBGMだったのかも・・・と考えたいです。
キャラとしては、先に挙げたスフィンクスがボウイーというのは誰もが認めるところでしょう(スフィンクスは最後に曲を書いておりますし)。コンスエラとジギーは「どうしたのデイジー?」と同列キャラですね。スフィンクスは、その麗しき容貌に、神秘的な雰囲気までもがボウイーそのものです。特筆すべきは、フィリップ(ミーブ)に頼まれて敵を催眠術であざむく場面。「OH
COSMIC!」と犬にされてしまう敵の姿から、ボウイーのコンセプト・アルバム「ダイアモンドの犬」を連想してしまったのは私だけでしょうか。「エメラルドの海賊」が1973年発表、「ダイアモンドの犬」が1974年発表ですから、木原先生には先見の明、いや予知能力がおありになった!?
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銀色のロマンス
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この作品は、アリス・クーパー1972年の「スクールズ・アウト(School's
Out)」に収録されている「アルマ・メーター(Alma
Mater)」から浮かんだイメージをふくらませて出来たと「DOZIさまのBGM」に書かれています。そう思って読むと、雷雨のようなサウンドが重なってくるような。ジーンの名は先の「ジーン・ジニー」から?
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あ〜らわが殿!
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ボウイーキャラとおぼしき眉なしキャラが登場。星男の原型?
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銀河荘なの!
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初めてこの作品を読んだとき、イカルスはクィーンのフレディ・マーキュリーをモデルになさったのだと勝手に決めつけておりました。しかし後年「DOZIさまのBGM」を読んでビックリ。「銀河荘なの!」の連載途中にイカルスとフレディがそっくりなのを発見なさったとか!確かに、クィーンのデビューは1973年ではありますが、目張りをほどこしクレオパトラヘアの写真がでかでかとジャケットを飾った2ndアルバム発表時には、既に「銀河荘なの!」は連載されておりました。うーん、雰囲気と衣装もそっくり。(個人的にはイカルスのほうが美形だと思いますが〜)
そういえばリンゴをかじる素敵な女性もクィーン。彼女の名は、ヒロインがビクトリアだから言葉遊び的におつけになられたと考えるのが自然でしょうが、それにしても木原先生には時代を先取りする感覚がおありなのですね〜!そっくりなのを発見なさって以降のBGMはもちろんクィーンだったそうです。当時発表されていた1st「Queen」と2nd「Queen
II」を交互に聴いておられたのかもしれませんね。レディ・ジェーンという名は、ローリング・ストーンズの「FLOWERS」収録の名曲から連想されたのでしょうか。モブ・シーンには、ギターを抱えたマーク・ボランの姿もあります。
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天まであがれ!
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新撰組の時代にロック。このミスマッチが嬉しいですね。風守さまのまたの名はクィーンの3rdアルバム「シアー・ハート・アタック(Sheer
Heart Attack)」からのヒット曲「キラー・クィーン(Killer
Queen)」が元ネタでしょうか。あちらこちらのモブ・シーンにロック・ミュージシャンらしきキャラが描き込まれていて、思わずほくそ笑んでしまいます。(星模様キモノのイカルスと、Q模様キモノのフレディ・マーキュリー、さらにマーク・ボランが一緒のコマがあります。時間のある人は探してみましょう(^^))
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ラストタンゴ
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フレディ・マーキュリーに似ているイカルスが、パリNo.1の美容師として登場いたします。うるわしいですね〜。
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落ち葉だらけのロマンス
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ディーンのとりまき、ソドムの男たちの中に、ボウイーキャラが。
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摩利と新吾
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設楽星男は、その容貌も名前もデビッド・ボウイーですね(「スターマン」は1972年「ジギー・スターダスト」に収録)。彼は音楽クラブに所属していましたし。星男とは別に、モブ・シーンにボウイーキャラ(大島弓子さんタッチ?)も登場します。
それから「緑紅最前線」にて、修学院女学生の前で演じた「男ぎらいになる方法パターン4」のパフォーマンス。「彼が男にしか愛を感じない人種だった場合」における摩利と新吾、星男、織笛の倒錯美あふれるステージは、まさにグラム・ロックおよび「ロッキー・ホラー・ショー」をホーフツとさせますね(織笛のポーズはジェスロ・タルを連想してしまいました(^^;))。次ページで木原先生が「パンク・ロック およびパワー・ポップの流行は 今から70年後なのです」ということわり書きも楽しいです〜(^^)
「SING,IF YOU ARE GLAD TO BE
GA(うたおうホモって しあわせならば)」というのは、マイノリティの強い味方、ゲイのパンク・ロッカー、英国のトム・ロビンソン・バンドの1stアルバム「POWER
IN THE DARKNESS」(1978年)に収録されている「GLAD TO BE
GAY」だと思います。
さて、この「緑紅最前線」が連載されていた1979年くらいを境に、木原作品のロック色はうすくなっていくように思えます。もちろん70年代にも音楽に造詣の深い木原先生は、クラシック、フレンチ・ポップ、ジャズ・ピアノなど多様なジャンルの音楽をお聴きになっておられます。しかしグラムの語源となったグラマラスな時代、音楽だけにとどまらず、ファッションや文化、そしてセクシュアリティに改革をもたらしたあの時代に、リアルタイムの空気を、その素晴らしいマンガ作品にのせてくださった木原先生。一漫画ファン、一音楽ファンとして心から感謝いたします・・・!
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はみだしロック話
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先に挙げてきた木原先生の作品に登場するロック・ミュージックは、すべていわゆるグラム・ロックの一線上に位置します(いわゆる・・・と書いたのは、当時そういう呼び名がなかったからです。フラッシュとか、先に挙げた木原先生のパワー・ポップとかいうように言われていて、ボウイーやTレックス、イギー・ポップ、ルー・リード、ロキシー・ミュージックらが出揃って一段落したときに、このムーブメントをマスコミがグラム・ロックと名付けたようです)。グラムは音楽のジャンルというよりは、むしろファッションやセクシュアリティ、華麗さの内面に潜む影、そういった全体的なムーブメントを指すといったほうがよいのかもしれません。ミュージシャンの系譜としてみると、グラムの始まりはモッズといわれ、70年代半ばまでのグラムという時代(クィーンの「ボヘミアン・ラプソディ」をグラム時代のレクイエムという説もあり)、そしてパンクやニューウェイブ、オルタナティブ、グランジ、GOTHなどと呼ばれながら、独特のスタイルを保ち変容させつつ今に至っています。しかし音楽を離れてセクシュアリティの改革という点では、オスカー・ワイルドがグラムの原点といえるかもしれません。
1998年に製作されて話題を呼んだグラム時代へのオマージュ映画ともいえる「ベルベット・ゴールドマイン」(トッド・ヘインズ監督)、このタイトルは「ジギー・スターダスト」に収録されている曲からきています。NYアンダーグラウンド・シーンで活躍していたルー・リードのバンド名は「ベルベット・アンダーグラウンド」ですが、このベルベットというグラム時代の響きは、オスカー・ワイルドが愛したベルベットの肌ざわり、いつもベルベットの衿にグリーンのカーネーションをつけていた(山岸凉子作品が連想されます〜)彼の19世紀末デカダンス、ダンディズムを象徴しているわけです。ワイルドはホモセクシュアルにより投獄されましたが19世紀のイギリスではなく1960年代のイギリスでも同性愛は未だタブー視されていました(ホモセクシュアルを公然と表現にとりいれていたのは、むしろアンディ・ウォーホール一派であるルー・リードやイギー・ポップらアメリカ勢のほうが早かったのです)。そういう時代に自己表現の美学として、ヘテロセクシュアルで保守的な中産階級的価値観を皮肉るかのように現れたのがマーク・ボランやデビッド・ボウイーらでありました。ホモセクシュアルやトランスヴェスタイト(異性装趣味)を意識的にとりいれ、自己表現する上で、より多くの自由を感じさせてくれたその影響はとても大きかったと思います(後にボウイーはグラム時代の言動をすべてメディア戦略だったといっておりますが(^^;))。
木原先生の作品からは、ロートレアモンやポオに重なる幻想的なイメージ、また鏡花や秋成に重なる幽玄的なイメージが感じられ、何よりもすばらしい言葉の数々で独特の世界を創りあげておられます。ですから70年代ロックのイメージは、木原先生のホンの一面でしかないわけです。しかし、まだすべてが本当に自由ではなかったあの時代に、ミュージシャンたちは音楽で、そして木原先生はマンガという手段で、表現と意識の改革をもたらしてくれました。そんな70年代に、10代を過ごすことができた意味を今さらながらにかみしめています。あの時代のロック・ミュージック、そして木原作品の数々は、これから先も決して色褪せることはないでしょう。
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