CCPLのように、コンテンツを自由に利用することが目的で創られたライセンスというのにはいくつか種類がある。ここでは、それらのライセンスの比較をして、どういうケースにどのライセンスを使えばいいかというのを見ておきたいと思う。
CCPLは確かに他のライセンスに比べて利点が多いけれど、決して全てのシーンにおいて適用可能なわけではないってことは覚えておいて欲しいからね。
CCPLの説明についてはここでは省いておく。だって最初の方できちんと見てきたはずだから。もしここから読もうとしているのだったら、先にCCPLの説明を読んでからこれを読んで欲しい。
● 自由利用マーク
まずは文化庁作成の「自由利用マーク」との対比をしておこう。
これは「コピーOK」「障害者OK」「学校教育OK」の3種類のマークで構成されていて、これらのマークを貼った著作物については、利用者がマークで定められた範囲について著作者の許可を得ずに利用可能になるというものだ。一応それぞれのマークについて簡単に解説を入れておくと‥‥
「プリントアウト・コピー・無料配布」OKマーク:(図)
これは個人、企業に関わらず、あらゆる目的を対象としてプリントアウト・コピー・無料配布を認めるものである。この場合の無料というのは実費の徴収も含まれない。またインターネットでの送信や放送なども含まれず、コピーも改変無しのリアルでのデッドコピーのみが許されている。
「障害者のための非営利目的利用」OKマーク:(図)
障害者のみが使うことを目的とする場合に限り、非営利でのあらゆる利用が可能になるマークである。これはコピーだけでなく改変利用等も可能だ。また障害者利用目的であればコピーをする人は障害者でなくても構わない。ホームページでの利用も可能だが、障害者のみがアクセスできるようにしなければならないため、パスワード等で制限する必要がある。
「学校教育のための非営利目的利用」OKマーク:(図)
これは授業やクラブ活動などの学校の様々な活動で使うことを目的とする場合に限り、非営利でのあらゆる利用が可能になるマークである。これもコピーを行う人は教員・生徒に限られない。学校管理下のWebサイトであれば、趣味のページなどであっても使用してかまわないことになる。(文化庁著作権流通課尾崎氏)
このマークの利点は、対象を限定して利用可能にしたい場合に使えるということだ。といっても、「障害者OK」というのは別にマークを貼らなくても、点字化などについては著作権法の制限規定で営利目的であっても可能になっているのだが。
「学校教育OK」というのは結構利用価値がある。このマークを貼ったコンテンツについては学校管理下のWebサイト等でも使用可能になるため、これを貼ったコンテンツが増えれば、教育の際に使用できるコンテンツが増えて楽になるだろう。そして、学校教育以外については依然として独占権を主張できるので、あまり被害は生じない。
「コピーOK」マークは、リアルでのコピーのみを許したい場合に使えるマークだ。CCPLを使う場合は、インターネットでの無償コピーをも認めてしまわないといけない。しかし、このマークを使用していれば、リアルでの頒布のみがOKとされるので、著作者が負う被害は少ないし、インターネット上を旧版が回り続けるということもない(誰かがコピーを保持することはあっても、公開していたら著作権法に基づいて差し止め請求ができる)。
自由利用マークの欠点はというと、範囲が狭いということになるだろうか。このマークは、使用者が法に詳しくないということを前提にしているためか、とにかく制限的にしてある。例えば、権利関係が複雑になりがちな動画や音楽などは、マークの対象から外されているし、インターネットでの利用を可能にしようとしたマークは最終的に没になっている。派生作品についても学校教育等に限ってしか認められていない(※障害者OKマークについては点字化・字幕等が主眼におかれていると思われる‥‥のわりには動画には適用されず・苦笑)。
自由利用マークは、その著作物の利用を簡単にするためのマークであるととらえればいいのではないかと思う。
それに対して、CCPLは、その著作物をもとにした創造的な空間を作り出すためのマークであるため、広い範囲での利用許可がなされていると考えればいいのではないかな。
● OpenCreation Public License
次は音楽に特化したライセンス、OCPLを見てみることにしよう。
日本発のコンテンツの自由利用のためのライセンスとして出てきたライセンスだが、実はまだ完成しているわけではなく、現在のところα版がリリースされている状態だ。
このライセンスは、5桁の数字によってライセンスの状態を表現している。この数字については、商用かどうか、改変利用可能かどうか、氏名表示が必要かどうか、再利用の際に許可が必要かどうか、などという点について、表にもとづいて選ぶことになる。
最近ではOCPLerというライセンス作成ツールも作られており、簡単にライセンスの作成が可能、かつ、ライセンスの数字をそのツールに入れれば、どのような条件で利用可能かもわかりやすくなっていて、評価できる。
問題点としては、ライセンスという形をとっているとは言えない点だ。OCPLでは、選択肢として、「無条件でOK」「届け出でOK」「要相談(無料)」「要相談(有料or無料)」というものがあげられている。
これは、ある条件で有れば利用可能であるということを表示しているライセンス文書と異なって、使用許諾交渉のための条件表示をしている文書という感じになってしまっているわけだ。「無条件でOK」「届け出でOK」「使用不許可」という条件表示のみであれば、ライセンスといえると思うのだが、「要相談」というのがネックになっている。
他にも、著作物が自分の物であるという「保証」をしている点がある。これはやらなきゃいけないことではあるんだけど、その著作物が自分の物であるということを保証するというのはとても大変なことだから、使用の際に注意が必要にはなるだろう。
OCPLはまだ作成途上のものだし、これからの発展の過程で問題点も解決されていくだろうと期待しておきたい。
CCPLの方が、わかりやすさ、法的安定性ともに優れているのかもしれないけど、OCPLの欠点としてあげたライセンスというよりも使用許諾のための条件表示になっているという点については、普通の音楽はそういう条件表示すらされていないのだから表示されているだけ意味があるともいえよう。
● プロメテウスキャンペーン
おまけとして白田秀彰先生が提唱しているプロメテウスキャンペーンを見ておこうかと思う。実際のところ、プロメテウスキャンペーン使っている人、ほとんどいないような気もするんだが、これはこれで意味がある代物なので(※googleで検索かけてみたところ5名‥‥)。
これは、非商用での利用に限ってコンテンツを利用することを可能にしている。そして、改変については著者の名誉を毀損するようなものを除いて許可するが、改変した場合は原本へのリンクもしくはURLの明示を必要としている。
このキャンペーンは学術目的の文書などに使用するのに適しているものだ。名誉を毀損するような改変についてまでOKにすることがなく、さらに原本へのリンクを行わせることで、自分の主張がゆがめられることも防いでいる。
欠点としては、名誉を毀損するような改変ということについての範囲がはっきりしないので、改変の範囲がつかめないということになるだろうか。自由利用マークと同様に、範囲が狭いという批判も可能だろう。
学術系の文書をインターネットで公開する際には、これを採用することを考慮に入れてもいいと私的には思っている。
● dマーク(dは○の中にd)
あと最後にdマークも見ておこうか。これは林紘一郎先生が基礎的な概念を提唱しているマークで、今のところ使用されたりということはないんだけど、新たな著作権制度というものを考える上で重要なマークだと思うから。
CCPLをはじめとする上で紹介しているマークが既存の著作権制度を利用しているのに対して、このマークはデジタル著作物について新たな著作権制度−ディジタル創作権−を創設することを提唱してる。
このディジタル創作権は、既存の著作権と同じ権利を全て保持しているが、適用される期間が異なっている。権利保持期間は5年刻みで最大15年。つまり、0年、5年、10年、15年の4種類が存在することになり、その期間が過ぎれば権利は消滅する。また、この権利は公表・登録が行われることによって発生する。(現行著作権は創作と同時に発生し登録の必要はない)
見るとわかるように、このディジタル創作権と現行の著作権では、色々と異なっていることになる。だから著作者は、公開の際にどちらかの権利を明確に選択しなければならず、後で変更することはできない。
どの権利を利用しているかについては、d-0、d-5のように表示することで宣言することになる。ちなみにd-0というのはパブリックドメインにするということの宣言。
当面、このマークは法的な効力を持つというわけではないが、林紘一郎先生は、今後国際的にこの考えを広めていくことで、このマークを定着させていきたいと考えているようだ。
現状では、dマークは効力を持つわけではない。けれど、デジタル著作物については、現行の著作権ではあまりふさわしくないと考えている人も多いと思う。私見ではあるが、このマークによる主張が国際的に広まっていくことで、著作権制度に変更が加われば、それほど素晴らしいことはないと思う。
是非こういうマークがあることを知っておいてもらいたいということから、紹介をしておくことにした。このマークを付けることに法的な意味はないけれど、このマークを付けるということは、自分が現行の著作権制度に対して不満を持っているぞということを表明し、変更を望んでいるということを示せるのではないだろうか。
● まとめ
どのライセンスもそれぞれ得意な分野を持っている。その中で私がCCPLを推すのは、その汎用性と、それが抱いている思想のためだ。CCPLはインターネットで情報を流通させる際に、それなりに限定された使用法からかなり余裕のある形での公開までを可能にし、さらにRDFを使用することで、統一的な検索をも可能にしている。それによって、自由に使える創作性のプールをつくるのに都合がいい構造になっていると思う。
だから、私はCCPLを支持している。こういうことに貢献したいという人がこのプロジェクトに次々と参加することで、ビニールプールからちょっとした湖程度くらいまでは拡大されればいいなと思う。
ただそういう意図を持たず、ちょっとした用途について自分の著作物を使ってもいいよという程度で有れば、他のライセンスを使用するというのでも別にいいのではないだろうか。クリエイティブ・コモンズは決して強制的に広めるべきものではないだろうから。
そしてdマーク。本当はこのような新しい形の芸術を保護する仕組みができあがる方が望ましいのだと思う。このマークをつけて、デジタル時代の新しい形を求めるというのも面白いのかもしれない。