エイドリアン・スライウォツキー著『ザ・プロフィット』ダイヤモンド社、2002.12.12、1,600円、
<利益はどのようにして生まれるのかという問いに、ストーリー形式で答えるビジネス書>
【お勧め度】 ★★★★☆


 本書は、普通のビジネス書ではなく、ストーリー形式で書かれている。今日の勝
ち組企業は、社員一人ひとりに「利益」を説き始めています。つまり、何が良い市
場シェアで何が悪い市場シェアか、何が良い売上で何が悪い売上か、何が良いコス
トで何が悪いコストかを、全社挙げて「利益」という観点から考えようとしてい
る。そのため、社員の誰が読んでも理解でき、読んだ人が自分なりに考え始めるよ
うに、ストーリー形式で書かれたものである。内容的には、23種の利益モデルを解
明することで「利益に対する純粋で絶対的な興味」を読者に持たせ、ビジネスと収
益性の関わりを「粘り強く自らの頭で考えてもらう」ことにある。
 
 著者が本書で強調しているのは、下記のことである。
 
・利益が生まれる仕組みは多種多様だが、企業がどこで利益を上げられるかを決め
るのは顧客である。
・「我々のビジネスにおいて、利益はどこで、どのように発生しているか」という
問を徹底的に考え抜くことがきわめて重要である。それを怠っていては、いくら優
れた人材や豊富な資金力があっても、間違いなく浪費してしまうでしょう。
・利益とは経済のエネルギーであり、「モデルや方程式というよりも考え方だ」。
 
 本書を読んでみて、著者のいうように、じっくりと自分の頭で考えなければなら
ないと思った。以下では、気になった点を列挙しますが、じっくりと読んで欲しい
本です。 

1.顧客を知ることが利益のはじまり――顧客ソリューション利益モデル
・私は長年、利益というテーマに取り組み、利益を達成する道を見出した企業を数
多く研究してきた。それこそ何百社も研究したが、利益が生まれる道筋にひとつと
して他とは同じものはなかった。分析するうえで重要なのは、企業の固有性を形作
るさまざまなディテールを理解することだ。

・人がわざわざ失敗を選ぶのには、いろいろな理由がある。ひとつは変化に対する
心理的恐怖もある。しかし、突き詰めるとシンプルな答えに行き着く。ビジネスの
成功に不可欠な、利益に対する純粋で絶対的な興味――これを持っている人が、実
はほとんどいない。

・顧客ソリューション利益モデルは、時間とエネルギーを注いで、顧客について知
っておくべきことをすべて知ること。そして、その知識を顧客固有のソリューショ
ンの開発に活かすこと。短期的な損失には目をつぶり、長期の利益を実現しろ、と
いうことです。

2.ファイアウォールで利益を守れ――製品ピラミッド利益モデル
・新しい利益モデルを学ぶことで、発想を広げ、ビジネスの原則を把握し、他の優
れた人の思考様式の一部を吸収できる。そうなれば、次に自分で物事を考えるとき
に役立つんだ。

・マテル社の製品であるバービー人形は、20ドルと30ドルで売られている。他社は
この低価格市場には簡単に参入できる。そこで必要なのが防火壁(ファイアーウォ
ール)だ。
他社の追随を防ぐために、10ドルのバービー人形を売り出して廉価市場への他社の
参入を封じ込める。ここではほとんど利益があがらないが、他社と顧客との関係を
結ぶ道を防ぐことはできる。マテルは本当の意味で成功を収めるために、廉価市場
とは対極的な方向に目を向けた。そして、登場したのが、100ドル、200ドルの市場
だ。
 小さな娘ではなく、その母親のことを対象としている。彼女には20年か30年前、
バービー人形で遊んだ思い出がある。とても気にいっていた。そして、いまは自由
になるお金を持っている。そういう母親なら、精巧で手の込んだ高級バービー人形
を買おうとするだろう。コレクターズ・アイテムになる。
 
・ピラミッドが機能するにはいくつかの要因がある。まずはそのピラミッドが異な
る価格帯の単なる寄せ集めであってはならないということ。そもそもピラミッドと
は、低価格帯商品を売ることで、他社がもっと安い値段で市場シェアを奪う可能性
を実質的に断ち切るシステムなんだ。こればピラミッドの最下層をファイアーウォー
ルと称するゆえんだ。

3.同じ製品で異なるビジネスを――マルチコンポーネント利益モデル
・多くのビジネスはいくつものピース、つまり構成要素から成り立っている。各々
のピースは必ずしも同じだけの利益を生み出すものではない。実際のところ、ある
ものは高く、あるものは低く、またあるものはゼロというように、収益性の面で著
しく不揃いなことのほうが多い。

・コカ・コーラを例に挙げてみよう。たしかに製品はひとつだが、いくつものビジ
ネスを展開している。食料品店、レストラン、自動販売機といったコンポーネント
をもっており、利益の大半はレストランと自動販売機の売上から生じている。

・自分のいる場所に応じてすべての価格帯のコーラを買っている。同じ製品で異な
るビジネスだ。ところがバービー人形の製品ピラミッドは、複数のまったく異なる
製品で形成されていて、それぞれが明確に異なる顧客層をターゲットとしている。

・書籍販売では、店頭売りという基礎の上に新たな高収益コンポーネントを築ける
と考えた。すなわち企業向け販売、読書サークル向け販売、個人向け直販といった
コンポーネントだ。その内容は実にシンプルだった。二人の顧客担当マネジャー
が、まず企業の図書室や人材開発部門を訪ねて新刊を売る。次に、地域の読書サー
クルにサービスを提供し、最後に高額購入層の個人向け販促を展開するというもの
だ。

・ビジネスにはさまざまなコンポーネントがあり、それぞれ収益性が大きく異なる
ということです。顧客は購買機会に応じて異なる購買行動を示します。非常に幅の
ある価格感応性を示すということです。

4.臨界点を目指せ――スイッチボード利益モデル
・マイケル・オーヴィッツはテレビのタレント・エージェントとして出発した。彼
は優れたストーリーを売れっ子俳優とディレクターに持ち込み、この3つを一括り
にしてヒット作に飢えた映画制作会社に売り込むようになった。

・ストーリーの供給源を確保し、タレントのパッケージを作り上げるのに必要な説
得力と腕があったとしても、しょせんは2つの変数をコントロールしているにすぎ
ません。そこには3つ目の変数が存在します――すなわち量です。量としては、上
向きのスパイラルが効き始めるのはだいたい15%から20%です。ここに達した時点
で、潜在的な可能性が一気に上昇し、にわかにタレントや取引があなたのほうに流
れ込んできます。

・一番のミソは取引量が飛躍的に増えてくる可能性があることです。掌握するタレ
ントの数が200人、300人に増えてくると、適切なタレントのパッケージを提供でき
る可能性が増え、映画制作会社が契約せざるを得ない可能性も高まります。つま
り、取引量が増えるわけです。一定期間あたりの取引量はおそらく2倍か3倍にな
るでしょう。契約1件当たりの利益増加と時間当たりの利益増加がダブルできます
から、最終的な収益性はおそらく従来モデルの7倍から10倍に達すると考えられま
す。

5.粘り強さが生み出すスピード――時間利益モデル
・インテルは新しい半導体を開発し、真っ先に市場に送り出すことで利益を生み出
している。

・金融商品や投資情報サービスのウォーターストーンが、送り出す新製品が9ヶ月
から1年で大きな投資銀行に模倣されることが、テリーの目にいやでも入るように
なった。テリーは新製品の即時普及、すなわち、他が追随する前に甘い汁を速やか
に吸い尽くす策が必要だと主張し、そのためのシステム開発に取り組んだ。

・新製品を発表する2週間前に、200件のクライアントに新製品を予告する手紙を出
す。1週間前になると、今度は電話で翌週の月曜日に売り出す旨を伝える。そし
て、週明け発売開始という木曜日の夜から、社員全員を対象に新製品に関するトレ
ーニングを開始する。細かいところまで徹底的に網羅する短期集中トレーニング
だ。これが徹夜で金曜日の朝まで続き、そこで出た質問で答えられなかったものは
その日の午後までに調べられる。土曜日の朝に再び社員全員が集まり、週末を使っ
てトレーニングを続ける。みんな寝言でも新製品を説明できるようになっている。
月曜朝になると、クライアントからの電話が鳴り始め、その週の終わりには50件か
ら60件の問い合わせがあり、売り出し後2週間でその数は100件に達する。これが彼
女が考えたシステムだ。
 システムが完全に機能するようになったのは3回目からだった。儲けはみるみる
うちに増えた。

6.大ヒットを創造するマネジメント――ブロックバスター利益モデル
7.一つの資産からさまざまな製品を――利益増殖モデル
8.利益追求に邁進する情熱――起業家利益モデル
9.すべてを知りつくすことの強み――スペシャリスト利益モデル
10.売り手が主導権を握る――インストール・ベース利益モデル
11.未来を計画できる立場をつかめ――デファクト・スタンダード利益モデル
12.人間の心に潜む非合理性――ブランド利益モデル
13.ニッチな市場を深く掘れ――専門品利益モデル
14.点から面への拡大――ローカル・リーダーシップ利益モデル
15.信頼関係がもたらす巨大なリターン――取引規模利益モデル
16.コントロール・ポイントを制する――価値連鎖ポジション利益モデル
17.わずかな価格差をめぐるゲーム――景気循環利益モデル
18.フォローアップの潜在力――販売後利益モデル
19.真っ先に波を乗り換えよ――新製品利益モデル
20.ビジネスにおける重力の法則――相対的市場シェア利益モデル
21.学習の累積がもたらす知恵――経験曲線利益モデル
22.速く動くより、速く着手せよ――低コスト・ビジネスデザイン利益モデル

23.10倍の生産性を生む源――デジタル利益モデル

・デジタル型に移行することで生産性が10倍も改善される点です。デルの在庫回転
率は1年で6回から60回に向上しました。セメント・メーカであるセメックスの場
合は顧客の注文から納品までの時間が3時間から20分に短縮され、オラクルの顧客
対応コストは1件当たり350ドルから20ドルに削減されたのです。

・10倍の生産性だけでなく、デジタル化によって、プッシュからプルへ、あてずっ
ぽうから確実な根拠に基づく決定へと、ビジネスのプロセス自体が文字通りまった
く逆転したんです。

・多くの場合、デジタル化によって顧客は自分が本当に欲しい製品なりサービスを
デザインすることができます。デルのオンライン・コンフィギュレータ、オフィス
家具メーカーであるハーマン・ミラーのz軸デザインシステム、マテル社のマイ・
バービー然りです。売り手は機能的な電子メニュー『チョイスボード』をウェブ上
に開き、顧客はそれを利用して独自仕様の製品をデザインし、正確に自分が必要と
しているものを手に入れられる。

・顧客は自分が欲しい製品を自分でデザインすること以外にも多くのことを望んで
います。彼らの希望の半分でも叶えてあげれば、購買行動が受身から能動的なもの
に変わるはずです。そして、製品情報や価格、オーダー・ステイタス、技術的な問
い合わせに対する回答などを、自分の手で探すようになるでしょう。実際は、従来
はサプライヤーが提供していた作業のうち、デジタル化によって顧客の手で可能に
なった作業は20を超えます。

・別の次元でも効果があります。たとえば、リアルタイムの情報です。仮に僕が従
来型ビジネスを、あなたがデジタル化したビジネスを経営しているとします。僕が
売上、コスト、顧客動向、材料費、市場状況といった情報を売るには30日かかりま
すが、あなたは同じ情報を24時間で入手できます。いち早く問題を察知し、対応
し、資源の再配備を行えるのはどちらでしょうか? デジタル化に移行した企業に
はことごとく大きな利益が発生します。

・利益と情報の全体的な関係は非常に深い。理由は簡単だ。利益は正確な情報が不
足しているおかげでもたらされるものだからだ。では、利益のどの程度が情報不足
の賜物なんでしょうか。
・ほとんどがそうだ!