遠藤 功著『現場力を鍛える』東洋経済新報社、2004.2.26、1600円、
<「強い現場」をつくる7つの条件>
【お勧め度】  ★★★☆☆


 著者は、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベル
ガーの日本法人代表取締役であり、早稲田大学ビジネススクールの客員教授であ
る。本書は、15年に及ぶこれまでのコンサルティング経験、100回に及ぶ講演や研
修、そして早稲田大学ビジネススクールでの授業内容をもとにしたものである。
 
 本書は、オペレーションの現場(工場だけでなく、顧客と接している場所でもあ
る)から経営を捉えようとしたものである。本書を読んでみて、改めて「強い現
場」を作らなければ、いかにりっぱな戦略や計画でも無意味であることを痛感し
た。一読を勧めます。以下、私の気になった点を列挙します。
 
序章 素朴な疑問
[よい例]
・トヨタではどうして改善提案が年間61万件も出され、その91%が実行されている
のだろう。

・トヨタの海外アフターサービス部門では、どうして10年間も「改善マラソン」が
継続できるのだろう。

・ヤマト運輸の宅配便の事故率(10万分の1)は、どうしてあんなに低いのだろ
う。
・・・・・・

[悪い例]
・新日鐵やブリヂストンの製造現場での重大事故は、どうして起きてしまったんだ
ろう。

・多くの企業で鳴り物入りで始まった全社業務改革運動が、途中で頓挫し根付かな
いのはどうしてだろう。

・せっかく部門横断会議を開いても、誰も本音の議論をしないのはどうしてだろ
う。
・・・・・・

――その答えは「現場力」にある。

第1章 「強い現場」とは何か

・企業活動の「影」(株価、各付けなど)ではなく、「実態」に目を向けよう。
「強い企業」とは、競争戦略、オペレーション、リーダーシップの3要素の経営品
質を高める努力を続けている企業である。

・「正しい戦略」は重要であるが、それ自体には実行性は担保されていない。今こ
そ、経営として「正しくやりきる」ことに目を向けなければならない。ヤマト運輸
の小倉昌男前会長はこう指摘している。「事業発展の鍵は、あくまで(1)努力、(2)
人材、(3)経営戦略の順である」。

・経営は「逆ピラミッド」で考えろ。正しいことを正しくやり続けることこそが、
競争力の本質である。

・企業のオペレーションには戦略を軌道修正しながら遂行する「組織能力」が内包
されている。これを私は「現場力」と呼ぶ。オペレーション力とは、すなわち現場
力のことである。

・組織の壁をまたがる一気通貫の仕事の流れ、すなわち「業務連鎖」こそが、「現
場力」の鍵である。

・「現場力」は品質、コスト、スピード、持続性の4つのものさしで測定すること
ができる。一見両立が困難と思われる二律背反的な目標を同時に克服することが真
の現場力である。

・「現場力」が競争上の優位性まで高められていることを、「オペレーション・エ
クセレンス」と呼び、持続力の長い優位性を企業にもたらす。

・卓越した現場力は、「コスト優位性」「新たな価値創出」の両面において圧倒的
な競争力を企業にもたらす。そして、その根底には徹底した顧客指向がある。

・自分の目で見て、自分の耳で聴き、自分の肌で感じ、自分の頭で考える「三現主
義」を徹底させよ。現場現場は理屈に勝る説得力を持っている。

・現場力欠乏症の典型的な症状は「無知・無視・無関心」の三無状態である。仕事
はつながってこそ価値を生むにもかかわらず、自分、自部門の業務しか知らない、
他部門の業務は無視して関心がないといったことが現場に蔓延している。

・強い現場とは、知的ワーカー一人ひとりが自らの意思のもとで、よりよい仕事の
やり方、新たな価値の創出に向けて努力を重ね、連帯を組んでいる現場のことであ
る。

・「強い現場」は一朝一夕にはできない。環境を整えたからといって、後は現場任
せにしておけばよいというものではない。現場自らがその気になって、業務連鎖を
進化させていく気概を持つことが必要であるが、発展途上にある現場に対しては、
経営として現場を叩いて鍛える努力が不可欠である。

・自らの意思で進化しようとする現場だけが生き残る。経営者は冷徹な目で、現場
の組織能力を見極めなければならない。

・自分の足で現場に赴き、自らの目で観察し、自らの耳で様々な声を聴くという
「現場主義」に徹することが、戦略の実行性を担保する最大の方策である。「戦略
の芽」に気づく感受性、その芽から戦略を組み立てる構想力は必要であるが、その
材料はすべて現場にあることを再認識すべきである。

第2章 「強い現場」の7つの条件

・真の現場力は、手法やツールだけに頼っていては確立できない。現場力の重要性
を信念として持ちつづけ、企業哲学のレベルまで昇華させなければならない。

・自社独自の価値観や行動規範、仕事のやり方を「ウエイ」として明文化し、伝
承、発展させる企業努力が不可欠である。

・異質のぶつかり合い、健全な対立こそが、現場力を高める起爆剤である。意見の
衝突やギクシャクすることを避けてはいけない。

・「強い現場」とは「自ら問題を発見し、解決する」自律した現場のことである。
上からの指示があるから動くのではなく、自分たちの意志で能動的に進化を求める
現場のことである。そのために必要なのは、現場の力、やる気を尊重し、権限委譲
を徹底することである。

・「下位上達」で現場に眠っているマグマを呼び起こせ。「失敗する権利」こそが
最大の権限である。

・問題点の源流まで遡って、真因を特定する。そのためには、5回の「なぜ」がき
わめて有効である。

・発見した問題を共有し、解決策を討議する「場」を、様々なレベルでつくり、や
りつづける。その結果、ねばり強い企業体質が生まれてくる。

・問題点が見えることによって、問題に対する組織としての意識が高まり、知恵も
出てくるのである。これをトヨタでは、「見える化」「見える仕組み」と呼んでい
る。

・「プロセス」「問題点」「結果」「知恵」の4つが「見える」ことによって、現
場の進化が生まれてくる。

・ぶら下がる人間をなくし、主体性を持たせるには、小さなチームを数多くつくっ
て、たくさんの「みこし」を担がせるのが最も有効である。

・組織は成長とともに肥大化し、官僚的になる。そして、現場のエネルギーは徐々
に失われ、責任感が希薄になる。ヤマト運輸もまさに同じ問題を抱えていた。それ
に対する処方箋は、収益管理の単位を小さくし、従業員を全員戦力化して、自律神
経を取り戻すことである。

・現場力の強化は、景気の波や会社の業績とは切り離して考えるべき、恒常的な企
業努力である。個の情熱と組織の執念が結びついて、現場力のDNAは宿るのであ
る。

・敵は内にいるのではなく、外にいるのである。会社の総力をあげなければ勝てな
いという危機感を共有した企業は強い。決して満足しない、常に現状を否定する。
危機感を背景に、こうした意識を現場の一人ひとりが持つことによって、「立ち止
まらない進化する現場」はつくられる。

第3章 「強い現場」をどうつくるのか
おわりに