| アポロンの地獄 1967・伊 |
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![]() 製作:アルフレッド・ビーニ 監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ 脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ 撮影:ジュゼッペ・ルゾリーナ 出演:フランコ・チッティ シルバーナ・マンガーノ アリダ・バリ ルチアノ・バルトーリ アーメッド・バルハチミ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語
舞台はギリシャ 羊飼いが荒れ果てた荒野を歩く。背中に掲げる棒には手足を縛られた赤子がぶら下っている。羊飼いはライオス王の命令で赤子を捨てに来たのだ。羊飼いは赤子を殺すように言われていたがさすがに出来なかった。 その捨て子を見つけ拾った牧人はコリントスの王ボリュボスのもとに届けられた。ボリュボス王は子供がいなかったためたいそう喜び、王妃メローベ(アリダ・バリ)のもとで大事に育てられ立派な青年に成長した。 青年オイディプス(フランコ・チッティ)は、ある日、円盤投げの競技中にオイディプスの違反行為を咎めた友人に言われた一言、「君は捨て子だ」ということばが忘れられない。 父母も否定した。オイディプスはどうしても真実を知りたいと、アポロンの神託を聞くため旅に出た。 しかし、たどり着き出合ったアポロンの巫女は思いもかけない恐ろしい予言をオイディプスに投げかけたのだ。 「お前は父を殺し、母と情を通じるであろう。お前の運命は呪われている」 王ボリュボスとメローベを実の父母と信じているオイディプスにとっては信じられない言葉だった。 だが巫女の予言を避けるためオイディプスはコリントスには帰らない決意をした。それから長い絶望の旅が始まる。 オイディプスは知らず知らず生まれ故郷のテーベに近づいていった。 三叉路で向こうからやって来る一台の馬車があった。帽子を被った主人と数人の従者。従者は尊大な言い方で「どけ!」と命令した。 オイディプスが拒否すると従者たちは馬車を降りてきた。オイディプスは持ち前の負けん気で立ち向かった。戦いの末、彼らを殺し、馬車の主人も剣で刺し殺した。従者の一人は逃げ去った。 テーベに着いたオイディプスは人々が続々と町を逃げ出している光景を見た。聞けば暗黒の国から来た怪物スフィンクスが城山に腰をすえていて人々を恐怖のどん底に突き落としているのだという。 オイディプスは伝令の若者が止めるのを無視して城山に登った。 スフィンクスが異様な姿をさらしてそこにいた。 剣を振りかざしたオイディプスにスフィンクスが謎めいた言葉を投げた。 「知ろうとすると存在し、知ろうとしないと存在しないお前は、お前の中に暗黒の世界があるのを知らないのだ」 オイディプスはスフィンクスの頭に剣を振り下ろした。スフィンクスが死に町に平和が戻った。 狂喜した伝令の若者は、「スフィンクスを退治した者はライオス王の后イオカステを妻とし、テーベの王になれるのです」という布告の出ていることをオイディプスに伝えテーベに連れて行った。 オイディプスはテーベの王となった。そして后イオカステ(シルバーナ・マンガーノ)を妻とした。オイディプスはイオカステとの愛欲に溺れる日々を過ごす。 テーベに恐ろしい疫病が流行した。火葬場の火が一日中燃え続けても死体の処理が出来ないほどだった。 オイディプスに派遣されたイオカステの弟クレオンがアポロンの神託を聞きに行く。その報告によると、この災悪は天の怒りであり、その怒りを解くためにはライオス王の殺害者を除かなければならぬというものだった。 オイディプス王はライオス王殺害の犯人探しを始めた。盲目の予言者ティレシャスが召された。だがティレシャスは、「世の中には知っていてもどうにもならぬ真実というものがあります」と答えるばかりで口をつぐむばかりだ。 業を煮やしたオイディプスは神の代理人たるティレシャスに対してペテン師呼ばわりして罵倒した。侮辱を受けたティレシャスがとうとう口にした言葉はオイディプスを驚愕させるものだった。 「実の父たるライオス王を殺し、母である后と情を通じている恐ろしい罪人はあなた自身だ」 そして「いつの日か罰を受けて闇を一人さ迷うことになりましょう」 と言い残して立ち去ったのである。 予言者ティレシャスの言葉で衝撃を受けたオイディプスのもとへコリントスから知らせが届いた。ボリュボス王が老衰で没し、オイディプスを新たな王として迎え入れたいというのだ。 その知らせを持ってきた老人は赤子のオイディプスを拾いコリントスに届けた牧人だった。 オイディプスは彼の口からボリュボス王の本当の子でないことを聞き出した。更にオイディプスによって殺されたライオス王の逃げ延びた従者を探し出し、その口からライオス王が不吉な神託により生まれたばかりの赤子を捨てさせたことを聞き出したのだ。 オイディプスは恐ろしい真実を知った。父親を殺し母親と交わっていたのは自分自身であった。后イオカステも衝撃を受け首を吊って自殺した。 オイディプスは世界に向かって号泣した。ついで自らの手で両目を潰した。「もはやこれで恐ろしい真実を見ることはない」 オイディプスは伝令の若者くれた笛を吹きながらテーベを去って果てしない放浪の旅に出たのだった。
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| 映画館主から ギリシャの詩人ソフォクレスの「オイディプス王」を題材にした悲劇。 パゾリーニ監督は鮮烈な映像美と日本の雅楽を思わせるような音楽で我々を不思議な世界へと誘います。 「父を殺し母と交わるであろう」 この悪夢のような神託を聞いた主人公の悲劇。オイディプスは自分の出生の秘密を執拗に探る。自分は父親を殺したのか、妻は母親なのか。おどろおどろしい近親相姦の暗示。 イタリア映画界の鬼才といわれたパゾリーニは、このギリシャ悲劇を象徴的に映像化しました。時折流れる音楽は日本の雅楽そっくり。 衣装は先史時代を思わせるのです。 「この映画は私自身のことを描いた」とパゾリーニは語っています。事実、パゾリーニは厳格な軍人の父と激しく対立し、美しく優しい母親を深く愛してやまなかったといいます。 映画の冒頭とラストに現代のシーンをもってきたのは、このギリシャ悲劇は現代にもつながっているのだという彼のメッセージなのでしょう。 「ユリシーズ」(’55年)や「バラバ」(’62年)のシルバーナ・マンガーノ、「第三の男」(’49年)のアリダ・バリ以外は殆ど知られていない俳優陣。そのためか彼らの演技は妙なリアリティがありました。 ピエル・パオロ・パゾリーニは、父親から暴力を受けるなどの不遇な少年時代を過ごし、それを逃げた母親とローマのスラム街で暮らした経験があります。 そこでの体験を生かし、不良少年や娼婦などを題材にした社会の腐敗や暴力を告発する詩や小説を発表しました。 パゾリーニは、本作の後、「テオレマ」(’68年)、「豚小屋」(’69年)、「王女メディア」(’70年)などの同系統の映画を発表したのですが、1975年、17歳の青年によって殺害されてしまったのです。 真相は分かりませんが彼の同性愛傾向が原因との噂が当時ささやかれたのを記憶しています。 参考文献:公開時パンフレット 「週刊20世紀シネマ館 NO.43」 講談社 |
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