「ファミリー・プロット」予告編
ファミリー・プロット
        1976・米
ファミリー・プロット

製作:アルフレッド・ヒッチコック
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ビクター・カニング
脚本:アーネスト・レーマン
撮影:レナード・J・サウス
音楽:ジョン・ウィリアムズ

出演:カレン・ブラック
    ブルース・ダーン
    バーバラ・ハリス
    ウィリアム・ディベイン
    エド・ローター
    キャサリン・ネスピット

バーバラ・ハリスとブルース・ダーン

カレン・ブラック

ウィリアム・ディベイン



ブレーキが利かない!!

車から逃げる二人

ファミリー・プロット
物語

ブランチ・タイラー(バーバラ・ハリス)はインチキ霊媒師だ。大金持ちの依頼主レインバード老婦人(キャサリン・ネスピット)の家で交霊術を行い降霊状態にあった。
夫人の死んだ妹の霊がブランチに入りうわ言を話し出す。

妹の息子は私生児で行方不明。夫人はその甥を探し出して財産を贈与したいという。そして探し出してくれれば1万ドルの謝礼を出すというのだ。

ブランチの恋人は売れない俳優のジョージ・ラムレー(ブルース・ダーン)。俳優としては生活できないのでタクシーの運転手をしていた。そしてブランチの霊媒師の仕事を手伝い依頼主の身辺の情報を調査している。
ブランチはタクシーの中でさっそく1万ドルの大仕事を打ち明けた。夜の街は暗い。話に夢中になったラムレーは道を横切ろうとした女を危うく撥ねるところだったが急ブレーキで止まった。

女は大きな帽子にサングラスをかけた黒尽くめのフラン(カレン・ブラック)。フランはそのまま警察のパイロット養成所の事務所に入る。
フランは無言のまま拳銃を構えた。
「ダイヤは渡すから人質が無事なことを証明してくれ」 と待っていた警官に言われると、フランは黙ってメモを差し出した。ダイヤを仕舞うと外で待機していたヘリコプターに乗り込んだ。
「人質さえ取られていなきゃお前なんかここから逆さまに落としてやるがな」 ヘリのパイロットが言うとフランはいきなり発砲した。弾はヘリの機体を貫いた。
ヘリはゴルフ場の真ん中に降り立った。そこに人質が横たわりフランは林の中へ逃げ込んだ。

フランを車の中で待っていた男はアーサー・アダムスン(ウィリアム・ディベイン)。走る車の中でフランは帽子を取り金髪のかつらを外す。
二人は今回も誘拐事件が成功し宝石を奪うことになったことを喜び合った。二人は愛人関係であり、金持ちや高官を誘拐しては身代金がわりに宝石をせしめている悪党だった。しかもアダムスンは宝石店を経営しているのだった。
二人のアジト。ガレージの奥に隠し扉があり、そこに小部屋がある。人質を隠しておく部屋だ。2階に上がる階段のホールにシャンデリアがある。異様に輝いている。そこがせしめたダイヤの隠し場所だった。

ラムレーはレインバード夫人の甥エドワードが25年前、彼女の父の友人シューブリッジに養子にいったことを突き止めた。だがその一家は火事で全員焼死したことを知りがっかりする。
しかし、とにかく一家が埋葬されている墓地に行ってみた。
エドワードの墓石だけが妙に新しい。ラムレーは不審に思い墓石屋を問い詰めると、エドワードの墓石はガソリンスタンドの頭の禿げた男によって注文されたことを知る。また、火事にあったときエドワードの死体が見つからなかったので彼が火をつけて養父たちを殺し逃げているのではないかという噂があることも知った。

ラムレーはガソリンスタンドを探し出した。主人マロニー(エド・ローター)は頭が剥げている。ラムレーはガソリンを入れてもらいながら色々と探りを入れた。しかし埒が明かない。
マロニーはラムレーの車のナンバーから持ち主がブランチであるとこを調べた上でアダムスン宝石店へ行った。

マロニーとアダムスンは前々からの知り合いであり、実はアーサー・アダムスンこそエドワード・シューブリッジであり、マロニーに協力させて一家を焼いて殺した張本人だった。
アダムスンはマロニーの報告を聞いて対策を講じた。

夜、車の中でアダムスンとフランはマロニーの調べで突き止めたブランチの住居を見張っていた。そこへ二人が戻ってきた。ブランチとラムレーが口論を始めたが、誘拐事件とは何の関係もない訳の分からない口論でアダムスンは安心した。

翌朝、レインバード夫人の家に行ったブランチはエドワードに洗礼を施したサンフランシスコの聖アンセルム教会のウッド司祭が彼のことを知っているかも知れないとの手がかりを得た。
ブランチとラムレーが聖アンセルム教会に行くとミサの最中だった。待っていると壇上から降りてきたウッド司祭に一人の老婆が近づいていき倒れ掛かった。抱き起こそうとする司祭に突然司祭姿のアダムスンが近づきウッド司祭に注射した。気を失ったウッド司祭は老婆とアダムスンに両脇を抱えられ教会の外に出て行く。鮮やかな誘拐劇に誰もあっけに取られるばかりだった。老婆はフランの変装だった。

教会にラムレーとブランチがいたことをアダムスンとフランは気づいていた。アダムスンは既にマロニーの力を借りて二人を消すことを決めていた。

翌朝、ブランチの家にガソリンスタンドのマロニーから電話が入った。良い情報があるから200ドルで買ってくれという。
指定されたドライブインに行く二人。だが、マロニーはいつまで経っても現れない。
痺れを切らした二人は車に乗って家路に向かった。走り始めるとオイルが漏れ出した。山道が曲がりくねっている。ブレーキが利かない。「スピードを落としてよ!」 ブランチが叫んだ。アクセルが戻らない。ブレーキも利かない。対向車線をバイクが何台もやって来る。ブランチはラムレーの首にしがみ付きラムレーの運転もままならない。谷底に落ちる恐怖を味わいガードレールをこすり車は横倒しになりやっと止まった。
これはマロニーの仕業だった。

「遅くなって済まなかった」 と、そこへマロニーが車でやって来た。
追っ払って歩き出した二人を今度はマロニーの車が全速力で突っ込んで来た。今度こそ殺される。だが、マロニーの車は対向車を避け損なって谷底に転落していった。

マロニーの葬式に出かけたラムレーはマロニー夫人を問い詰めエドワードがアダムスンを名乗っていることを聞き出した。
ブランチは電話帳からアダムスンの宝石店を探り出した。アダムスンとフランはその夜、人質の司祭とダイヤを交換する手筈だった。
司祭に注射をして眠らせたところでブランチがアダムスンの自宅のブザーを押した。
アダムスンとガレージで会ったブランチは車の後部ドアから司祭の法衣がはみ出ているのに気づいた。フランが慌ててそれを押し込もうとした時、気を失った司祭の頭が滑り落ちた。
悲鳴を上げたブランチにアダムスンがすかさず注射し眠らせた後、隠し部屋へ閉じ込めてしまった。
そしてフランとアダムスンは人質を乗せてダイヤとの交換に出て行った。

やがて伝言を受けてその家にやって来たラムレーはブランチはおろか人っ子一人いないのに不審を抱く。横手のドアからガレージに忍び込むとそこにブランチのショルダー・バックが落ちているではないか。しかも血が付いている。
ラムレーが家の中を探し回っていると、ダイヤ獲得に成功したアダムスンたちが帰ってきた。ラムレーは2階に身を隠す。アダムスンはブランチを殺そうと隠し部屋に向かう。寸前、ラムレーは隠し部屋に入り込むとそこに気を失った振りをしたブランチがいた。
そこへアダムスンが入ってきた。瞬間、ブランチが大声を上げてラムレーと共に外に飛び出しアダムスンとフランを隠し部屋に閉じ込めてしまった。

ドアの前で二人は喝采の声を上げた。レインバード夫人の甥を探し出すと共に誘拐犯も捕らえたのだ。
「賞金はどれくらいだろう。それにダイヤのありかも分かれば・・・」 ラムレーが皮算用を言ったとき、ブランチに突如霊感が働いたようだ。彼女はふらふらと階段の途中で立ち止まり例のシャンデリアを指差したのである。
そこにひときわ大きなダイヤが輝きぶら下っていた。
「お前は本当の霊能者だ!警察に知らせてやったら喜ぶぞ!」 ラムレーが叫んだ。
映画館主から

アルフレッド・ヒッチコック監督の53作目にして最後の作品となりました。この時ヒッチコックは77歳。
小品ではありますがユーモアとスリル・サスペンスの詰まった味わい深い作品です。

二組のカップルが平行して描かれるスタイルはなかなか鮮やか。特に冒頭で偽霊媒師とタクシーの運転手が夜道で一人の女を引きそうになる。するとカメラはその女を追いかけていき、先のカップルとは別のカップルの描写に移行してしまう。その転換の鮮やかさ。

まったく関係のない二組のカップルが平行し、接近し、絡み合ってラストのラストになって初めて合体するのです。
その軽妙なタッチの妙味が本作の魅力です。

ブレーキの利かなくなった車の中でバーバラ・ハリスが悲鳴をあげ運転するブルース・ダーンに抱きついたりネクタイを引っ張ったりのてんやわんやは笑わせます。

大スターは登場せず比較的地味な配役です。
悪党のアダムスンにウィリアム・ディベイン。愛人のフランにカレン・ブラック。
一方の偽霊媒師ブランチににバーバラ・ハリス。タクシー運転手ラムレーにブルース・ダーンといった割り振りでした。しかしながらいかにもそれらしい雰囲気を持っており適役です。

ヒッチコックは「ファミリー・プロット」のシナリオをアーネスト・レーマンと組み立てているときに心臓発作で倒れそれ以来胸部にペースメーカーを移植していたとのこと。彼は訪れた人にそれを隠すようなことはせず返って面白がって胸を開いて見せびらかしていたとのことです。いかにも人を喰った彼らしいエピソードであります。

ヒッチコックは人生の大半をスリルとサスペンスに満ちた映画作りに費やし人々を楽しませ恐怖に陥れ1980年80歳の生涯を閉じたのでした。

参考文献:「ヒッチコック 映画術 トリュフォー」 晶文社

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