| ゲーム・レビュー 〜ストーリィ〜 | ||||
| (一部ストーリィ・エッセイと重複する部分があります。また、細かい部分はストーリィ・エッセイで触れています。) クリアした今となっては笑い話なのですが、「アシュナードはいい人なのでは?」と、私は考えていました。いい人…と言ったら語弊がありますね。良い結果を導き出す為に、悪役を演じて大陸に災いをもたらし、それを誰一人知る事もなく自ら知らせる事もなく破滅してゆく…という感じでしょうか。 人は、悪習であっても慣れ親しんでしまうと疑問を抱かない。枠から外れる事を恐れて、駄目な事を見ぬ振りをして、できるだけ波風たてず生きてしまう。事故や戦争が発生して、多くの痛みや身近な犠牲を払って、本当にすべき事・本当に正しい事に気づき、正しい方向へ向かおうとする。 ベオクとラグズの差別意識が強く、対立する世界。この2種の中を繋ぐ為には、ベオクとラグズが共闘する展開にならなければいけない。アシュナードはそれを願って戦をしかけたのでは?…なんて。 それを唯一解っているからイナがアシュナードの近くにいたがる…と、推察していました。 この設定には無理があって、ベオクとラグズを繋ぐ存在が現れなければ、やみくもに戦火を広げ、アシュナードが覇者になってしまう危険をはらんでいる訳ですね。我ながら浅はかで無理ありまくりの空想でした。(苦笑) 結局、アシュナードは自らが望む世界を築く為に、国家単位で指揮する王の権力を欲した。優れた戦闘能力だけでは遺憾ともし難い血の遠さを、一族皆殺しという手段で片付けて。更に、王権を得ながら血筋や既得権を嫌悪し、強い者が支配する新しい世界を作り上げる為に、魔王復活を企んだ。サギの民を絶滅に近い形に追い込み、人を手駒として扱い、他国も自国もある意味自分の命すら唯一無二の1を達成する供物にしてしまう。自己中心主義の悪役にすぎなかった…。 実は、アイクも物語の途中、「ラグズは一番強い者が王になる」と聞いて、肯定的な発言をしています。突き詰めてみれば、アイクとアシュナードの根本は近しい。ただし、28章で、戦乱の終わりで出世の機会が減る事を嘆く兵にアイクが苦言を呈する場面があり、アシュナードの対極にいる事も確か。 アイクの場合は、名誉や権力に全く興味がない上、制度に知識も関心もない。力がものをいう(敵を倒し、仲間を守る)傭兵世界に身を置いているから、「強さは絶対」がごく当たり前。王の持つ、強さだけではない、民を保護し意図をくみながら国を治め、各国との調和を図る部分を解らなかったからの、短慮さがあったのかもしれません。 でも、アイクの発言に漠然とした不快感を覚えた私です。王に強さだけを求めたら、強権主義(それこそアシュナードのような)がまかり通るから。(ラグズのカイネギス・デギンハンザー・ティバーン・ネサラ(?)が強さだけではなく王としての資質も兼ね備えていた所が奇跡なのかもしれない。) ラスト、アイクが「国が落ちついたら地位を返上して、また傭兵に戻る」と言う。この強靭な不変の魂がとても綺麗でかっこいいと思いました。(人は権力や栄華を得るとそれを手放そうとしないどころか、もっと貪欲に求めるのに…) でも、セフェランが呟いた言葉。無欲のアイクが現実に築いた驚異的な武勲と出世が人に与えた影響の大きさ。 本来なら「問題解決!大団円!」と微笑みながらカタルシスを感じさせるシーンのはずが、次なる重い問題をつきつけられる。現状で片付いた問題は、クリミア・デイン間の戦争が終わり、クリミアが復興し、クリミアにおいてベオクとラグスが親しく歩み寄った。それだけ。 アシュナードを撃破しながら、彼の野望である理想体系が生み出された逆説的展開。セフェランの指摘で、私は悲しい必然に血の気の引いた気分にさせられました。 アイクが英雄に祭り上げられた現状が導き出した庶民の意識変革。この先、(王の資質を持たない者が権力を得る為に起こす)下克上な戦乱の火種への危惧。アイクがきっかけになって起こりそうな新たな戦を予想して、凄く不安になりました。 何故、こんなに暗い不透明感を残したまま終えるのか、それがFE制作者達の拘り(プレイヤーへの問題定義)なのか、とても疑問に思っていました。 更に言えば、漆黒の騎士の正体も解らず終い。グレイルとのバトルムービーでガウェインと師弟関係にあった過去がニュアンス的に語られるだけ。何故「女神の祝福を受けた剣や鎧」を数多く持ち、世界に二つとない珍しいアイテム「転移の砂」を持ち使用できたのか? 私は、漆黒の騎士を撃破してクリアしたのですけれど、何一つ語られぬまま彼は死に。エンディングにおいても触れられぬまで、気になっている状態。見逃したイベント(漆黒の騎士は倒さない方が正解なのか?)があったのではないかと、うろたえたりしました。 続編への持ち越しなのでしょうか?釈然としません。 『任天堂マガジン』制作者対談で「親子の仲を描いた」とあります。(私としては「戦争と差別」がメインテーマだったのでは…と思いますが、それは後に置いといて) ラスト、アイクがミストに「永遠に親父には追いつけない」と言う。失ってしまった父親を現実に越えられない淋しさと、亡くしてから知った偉大な父親への尊敬の念を感じました。それだからこそ、アイクは理想に向かって永遠に追いかけ続ける高みを目指し続けるのかもしれませんね。 魔に捕らわれた父親の暴走を、母親が身を挺して目覚めさせる展開は、類型的かなぁと。でも、その後のグレイルの生き様と父性には、作品内で一番感銘しました。グレイルの死、フォルカから聞かされた話。とかく、戦争中の痛い話が続く中、その深い愛情に泣けました。 ミストや母親がベオクにしては負の気が少ないという設定。善良の塊の人間は極稀に実在するから納得できるとしても、そんなミストが剣を振るって敵を倒すという点は…微妙に疑問。サギの民は攻撃できない点から考えても矛盾。ミストを杖だけの職種に限定するとイベント的に問題があるので仕方のない事ないのでしょうが…。 さて、先にあげた「戦争と差別」。 ベオクとラグズの協調を図るクリミアへのアンチ・ラグズ派デイン軍の急襲。 自国が戦火に巻きこまれながら影響を受けていない地方都市の市民達の凡庸とした態度。 協調が王族同士の交流でしかたなかったクリミアとガリア。 人間同士の親しさとは裏腹な、半獣への仕打ち。挙句、ラグズと組するベオクへの容赦ない切り捨て。 ベグニオンが行っていたラグズの奴隷扱い。デインが行っていたラグズへの虐殺行為。 ラグズのベオクへの攻撃。 長い歴史の中では逆の立場でもあったという事実。 ベグニオンでの人間同士にもある階級差別。 敗戦国の実状。 侵略されたクリミアが(王を倒し自国を再興を願い)逆に侵攻した際、浴びせられるデイン国民からの恐怖と猛烈な非難。 敵として立ちふさがる者は、国民から慕われていても倒す(殺さ)なければならない非情さ。 ファンタジー世界のお話でありながら、戦争に対する描写はリアル。それらは形を変えて今現在私達の地球上に起こっている事に他ならない。 ラグズへの差別意識も同様。現実の人間同士の種族・民族間にあるもの。更に、サギの民に付加されている要素が、人間による希少種の乱獲と絶滅、自然破壊。 重い問題を嫌というほど付きつけてくる作品内容。それは娯楽として楽しみたい部分ではヘビィすぎる。でも、戦いは勧善懲悪ではないんだという意識を植え付けさせるテーマを描いたとすれば成功だと思います。 たとえば、人間同士の人種差別を描けば、ファンタジーを逸脱した生々しさ(それこそお説教めいた)ストーリィやモラルへのよびかけとなってしまうかもしれない。ラグズは、人間同士の、そして地上に等しく生きる者として、平等であり共存するべきというメッセージのこめられた生態だったのではないかと思います。 (私は当初ラグズの半獣という設定に魅力を感じただけでしたが)彼らの抱えた問題こそ、私達人間が地上で解決しなければならない問題を提示していた貴重な意義のある設定だったのだと感じました。 そして、また、差別や権力の意味を問いかけるテーマが描けたのは、FEシリーズ初の民間人主人公だから、と思うのです。庶民と同じ生活をし、庶民から語られる言葉やなされる行為を間近に見聞きし、それにどう対処するか(決して支配する者としての視点ではない)。突き詰めれば、とかく相対的な価値観に捕らわれがちな人が、アイクはあくまで自己の価値(絶対観)を揺るがせずに判断していける。それゆえ、「戦争と差別」が痛みとしてプレイヤーに伝わり、作品を引きたてたのではないでしょうか。 ナーシルがイナと共に解放軍に参加し謝罪した際、アイクとミストの態度(対応)を見た瞬間、微妙な違和感を覚えました。 間諜の件は、アイクに多くのアドバイスを与えたからプラスマイナス0としても。メダリオンを盗んだ件は、たとえ、邪神が復活しない確信があっても、身内の為に人の誠意を踏みにじった。特に、ミストに絶望的な悲しみを何日も与え、多くの人に衝撃を与えた事は事実。 事件発覚から日が経った事、様々な事実が垣間見れた事も作用したにとしても、淡々と許す二人。裏切りに対して、信頼していたからこその遣り切れなさ・痛みはなかったのかな?信頼という名の下では、結果オーライで調和(寛容)を優先するのかな?・・・なんて。 でも、最後の最後、エピローグで、アイクが「何か理由があると思っていた。裏切ったなどと考えてなかった」と言い、ナーシルが「君は変らなかった。そのままの君でいて」の答える。 その場面を見て、ナーシルの性質を見抜き、信じ、憤らず、許す。それがアイクの凄さであり、ミストの善良さで。彼らはグレイルとエルナに育てられた人の善い部分を持ち、そして、彼らに相対する人をも善い方へと導いていく。(それ故に、ベオクとラグズを繋ぎ、二つの種族からの信頼を得て、偉業(!)を達成できる存在になり得たのだ。) 遡って、クリミアからベグニオンへの船旅の途中、甲板でナーシルがアイクに謎かけめいた言葉を告げた場面を思い出しました。全てを見通し狭間で苦しんでいたナーシルを救えたのは、アイクの揺るぎない姿勢だけ。 アイクの驚嘆的な生き様(富や権力を得たにも関わらず栄華を望まず、かつて両親に育まれた自分の思いに真っ直ぐ生き、自ら認める相手を差別なく受け入れ信じる姿)の延長上にあった態度は、誰もができうる事ではないけれど、そうありたいと願う理想。ここに至ってとても感動しました。 総じて、ストーリィはとても素晴らしかったです。だからこそ、先を知りたいという貪欲な気持ちを失う事なくプレイし続けられたのですから。これほど夢中になって作品を堪能できたのは、本当に久しぶりです。時に楽しい気分にさせられ、時に真剣に思い悩み、考えさせられました。『蒼炎』に出会えて良かったと心底思っています。そして、一人でも多くの方にプレイしていただきたいと考えています。 |