香港にラリー・レオンという人物が居る。
彼はかつてラーベルというセイバーメーカーを主催していた。

現在はeFx社の中心メンバーで、かつてはMasterReplica社のアドバイザーをしていた彼は
セイバーレプリカ界ではかなり名の知れた人物で
MR社発足によりLFL(ルーカスフィルム)にその活動を停止させられるまで
極めて安価で質の高いセイバーレプリカを提供し続けた
セイバー職人の第一人者と言っても過言ではない人物だ。
彼の作品への取り組みは極めて評価が高く、
活動を停止した今もなお根強い人気を誇っている。

その彼が'01年、セイバーの部品として
あるアンティークカメラフラッシュのレプリカを作った。
正直な所、あまり良い出来と言えるものではなかったが
その後いくつかのメーカーが同じフラッシュのレプリカを製作し、
彼の作ったレプリカがどのような物であったかが私なりに見えてきた。
それに関する考察を'04年春にまとめた物が本コラムである。
彼のファンとして極めて良心的な見方を展開している事は否めないが
一つの見解として読んでいただければ幸いだ。


なおこのコラムは
セイバー研究家としてのEFINKを前面に押し出したものであり
内容的には極めてコアかつディープなので
セイバー事情に詳しい人でない限りは
恐らく内容を理解できない可能性がある為
セイバーに興味がない方は読まない方が賢明かも知れない事を
お断りしておく。








セイバーズコラム01


「ラリグラは何故あのような出来になったのか?」


ラリグラとは?

香港のセイバーメーカーであったラーベルが製作したグラフレックスレプリカの事だ。
ラーベルの代表ラリー・レオン氏(以下ラリー)が作ったグラフレックスレプリカである事から
「ラリー製グラフレックス」を略してラリグラと呼ぶ。
グラフレックスとは
ANH・ESBにおけるルークのライトセイバーに
素材として使われたアンティークカメラフラッシュの事だ。

いくつかのメーカーがレプリカを作ったグラフレックス。

'04年、その決定版とも言えるほどの出来のグラフレックスレプリカを
アメリカのセイバーメーカーの一人ジェフリー・パークスが発売した。

カメラフラッシュとしても機能するレプリカであり
基本的に言う事はない程の見事な出来である。


私が知る限りグラフレックスは4つの会社(人物)がレプリカ 製作を行なっている。

まず先述のジェフ・パークスの主催するParks Sabers。

その前にはトム・バックレイという人物がBiskitの名で
少数ながらもレプリカ製作を行なっていた。
さらにその前にはかのラリー・レオン率いる香港のラーベル。
そしてグラフレックス・リボーン、通称GRという会社の4つ だ。

グラフレックスレプリカの元祖はこのGRなのだが

その出来は絶賛に値するとされながらも
その頒布量は極めて曖昧かつ不明な点が多く
存在こそ確認はされているが出来を議論するには資料があまり に少ない。
ラリーはそう言う意味で、希望する人間ほぼ全てに
グラフレックスレプリカを行き渡らせた最初の人物と言える。
(しかし発売から年月が経ってしまった現在
そのラリグラもほとんど見掛けない希少な物となってしまった)


ラリーは、MRが現れてその活動を停止させられるまでの間
最高品質のライトセイバーレプリカを、
一番数多くしかも安価で提供してくれた人物といっても過言で はない。
しかしその彼が作ったグラフレックスレプリカ 、通称ラリグラは
(ちなみにこの略称は我らが友人Darth Slug氏の命名である)

普段の彼の作品のクオリティから考えると
正直あまり褒められた出来ではなかった。


「ラリーの仕事とは思えない。何故彼はこのような作りにした のか?」


初めてラリグラを手にした時、私は真っ先にそう感じた。
それは本物とは異なる表面処理による質感の違いをはじめとし て
パイプの厚みの違いによる微妙な径の違いや
広すぎるクランプサイドバーの間隔など、
様々な不満点を露わにしていた。
海外のプロップ考察サイト ReplicaPropForum、通称フォーラムでは
ラリーが不満をぶつけられるという事件もあった程である。

購入当時は皆と同様に私も不満だった。
もちろんディテールという点では現在も不満である。
リアルグラフレックスとラリグラの比較についてはこちら



ただここでひとつ当然の如き疑問が残る。


何故あのような出来になってしまったのか?
クオリティの高さで有名なラリーの作品だというのに。


皆の不満点は正にここに起因する。
フォーラムに新解釈が現れれば
即座にそれを商品に反映させる程の情熱を持ったラリーが
あのような物を作るなどにわかには信じられなかった程だ。
あまりの大量注文に生産が追いつかないという事態を避けるた めに
質を落として生産を優先したお陰でああなったのだろうと
あの当時は思うしかなかった。


しかし。


確かにラリグラの作りは雑である。
大量注文をさばくためにあのようになったというのは
恐らくはその通りだろうと思われる。
しかし同時期に作られたMPPレプリカは
もちろん雑な所はラリグラ同様にあったが
量産されたレプリカとしては極めてクオリティの高いもので あった。
つまりラリーの生産能力に問題が生じたのではない。


そこでひとつ考えられるのが。
「ああなった」のではなく「ああした」のだとしたら?
ということなのだ。


あの不満点の多いグラフレックスレプリカは
むしろ意識的にあの様な作りにしたのではないだろうか?
私はそう考えている。
(恐らくはフォーラムの住人からの我侭な要請により
相当な忙しさを強いられていたに違いないことから
様々な雑な処理にはここでは目をつぶる事にする。
気に入らない部分は自分で修正すればいいのだから)


そこで私が思い出すのはあるレプリカの一件。
ドン・ポスト社のダース・ベイダーの実物大マスクである。
オリジナルと偽って転売される事を避けるために
本物の左右非対称の塗装をあえてオリジナルとは逆にする、
という手段が採られていた。

この手法、つまりレプリカである証明を隠れた形で盛り込む事は
現在ではレプリカ証明の常套手段と言ってもいい手法だ。



ラリーも同じ事をしようとしていたのではないだろうか?
モノはセイバーにする事を前提としているとは言え
セイバーそのものではなく既製のメーカー品である。
その第一人者になるはずであったGRは
様々な障害を抱えて少数のレプリカを製作後消滅してしまっ た。
このGRの頓挫により既製品のレプリカの量産は実現されず
セイバー界では「まだ誰も足を踏み入れていない領域」に戻っ てしまった。
そこでラリーがフォーラムでの要望もあり立ち上がった訳だが
既製品のレプリカを作るという事は
既にない会社の物とは言え、版権の問題はどうなるのかなど
その他色々と不明な点が多かったであろうことは想像に難くな い。
その点から考えると、やはり既製品のレプリカであるため
一目でレプリカと判別できるような作りを
あえて行なった事であの様な作りになったという事が考えられ る。
質感、サイドバーの間隔、ボトムの刻印の微妙な違い、エミッ ター部分を
EL仕様と共用出来る作り、レッドボタンの微妙な違い等々。
これは見方によっては
どの角度から見てもレプリカであることを
証明できる作りとなっているとも言える。

GRはICONSルークへの不満から産まれたと言う側面を持っており

ICONSとの差別化を図るため
オリジナルに極めて忠実な造形を目指した作りとなったが
レプリカである事を証明する箇所を無視するわけには行かな かった。
GRはそのための演出を、オリジナルとは全く違う
クランプのGRロゴ やボトムの刻印で行なっていたが、
(正確には頒布されたものにはボトムに刻印は刻まれていなかったが、後に
海外オークションで「GRAFLEX REBORN」の刻印入りのボトムが少数販売された)
その演出は他の部分の出来が良いが故に
「絶賛すべき出来の全てをぶち壊す演出」
という酷評を受ける結果となってしまった。

対してラリグラはそのGRとの差別化を図った事が考えられる。
つまり後発のラリーは基本的にオリジナルと同じでありながら
GRとは違う形でレプリカを証明する外見を追求する必要があ る。
その結果があの外観だったというのは
可能性としては充分有り得るのではないだろうか?


では既製品と言う条件自体は
グラフレックスと同じであったはずの
ラリPことMPPレプリカは
何故あそこまでクオリティが高くなったのか?
MPPとはMicro Precision Productsの略で
ANH・ESBヴェイダーセイバーに使用された
アンティークカメラフラッシュの事だ。


ラリーはラリグラ製作後すぐにMPPレプリカを発売してい る。
ラリグラ同様レジン部分やエミッターの針金の接合部分に
かなりの雑さや個体差を残したMPPレプリカだったが
その出来は期待をほぼ裏切らない物であった。
それは、ラリグラをフォーラムで批判されたために、
ラリグラの次に控えていたMPPレプリカは
相当にレベルの高いものにする事を余儀なくされ、
また、グラフレックスと違い
オリジナルと差別化を図れる部分が
少なかった事もあり
あのような本物に近い出来になった、

ということが考えられる。
グラフレックスとMPPという二つのメーカーの
版権に対する配慮に差が有り、
それに左右された部分があったという可能性もある。
しかし、何と言ってもその構造が グラフレックスに比べて単純で
加工の手間がはるかに少ないであろう事が
そのクオリティを上げる一番の要因だったのではないかと 私は考えている。
MPPはグラフレックスに比べ 恐らくは条件的に有利だったのだ。

また、リアルMPPはグラフレックスに比べ希少性が高かった 為
ただでさえ高値がついたリアルグラフレックスよりも さらに高値がついてしまうという
アンティーク業界的には極めて異常な事態を生んだ。
常軌を逸したその事態に終止符を打つべく
あそこまでのクオリティに仕上げた、 という可能性も考えられる。
事実ラリーがMPPをリリースして リアルMPPの値段はかなりの下落を見せた。
先述の「レプリカである事を証明する箇所を作る」 という点からは矛盾しているが
版権に関して配慮する必要がないとすれば その矛盾は解消する。
セイバーファンがアンティークカメラ市場を荒らすという
困った現状に一石を投じるには充分な効果があった
という事は言うまでもない。


何にしても、この二つのレプリカ製作について 考えれば考えるほど
ラリーの使命感を感じずにはいられない。
特に、ラリグラとMPPレプリカとの出来の差を見るに
ラリグラ製作において配慮しなくてはならなかった点は
MPPの比ではなかったのではないだろうか。
ラリーの苦労が垣間見えるようだ。


ラリーの勇気と功績に心から拍手を送りたい。


ちなみにこの仮説はラリーに確認を取っておらず、 あくまで仮説でしかない。
一つの可能性として想像した事であるという事を お断りしておく。



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