隅田川のある風景 
ー自分はどうして、こうもあの川を愛するのか。あのどちらかと言えば、泥濁りのした大川のなま暖かい水に、限りないゆかしさを感じるのか。自分ながらも、少しく、その説明に苦しまずにはいられない。ただ、自分は、昔からあの水を見るごとに、なんとなく、涙を落したいような、言いがたい慰安と寂寥とを感じた。まったく、自分の住んでいる世界から遠ざかって、なつかしい思慕と追憶との国にはいるような心もちがした。この心もちのために、この慰安と寂寥とを味わいうるがために、自分は何よりも大川の水を愛するのである。
ー芥川龍之介「大川の水」よりー

  私は、隅田川に近い町で生まれそして育った。芥川のこの隅田川に対する思いに同感を禁じえない。杉並の地に移ったが、隅田川への思いは断ちがたい。
 そこで隅田川のある風景を訪ね歩いている。

17.4.15更新

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 相生橋

 藤牧義夫(明治44年生れ)という画家がいた。彼は、「隅田川両岸絵巻」という60メートルにわたる長尺の絵巻を描き上げた後、昭和10年9月忽然と姿を消してしまった。相生橋は、その長い絵巻の最後の部分で彼の失踪の直前に描かれたものとされている。

 作家野口富士男の「相生橋煙雨」によれば「・・・藤牧義夫は、・・・あの「絵巻」の最後ーたっていることすら辛かったに相違ない病み弱まった身体で空腹にたえながら、信じかねるほどの執念をもやしつづけて取り組んだ隅田川をえがき終わった瞬間に、動物としての人間としてはともかく、芸術家としては死んでしまった。美術家としては完全燃焼して,燃えつきてしまった。・・・」という壮絶な最後の舞台にもなっていたのである。
 
 この橋は明治36年、月島と深川越中島との間をつなぐ当時としては隅田川最下流の橋として架けらた。
現在の橋は、昭和63年(1988)に架け替え工事が始まり、平成10年(1998)完成となったもので。藤牧義夫の頃の橋とは違っている。
 橋のたもとに東京海洋大学(旧東京商船大学)があり「明治丸」が停泊している。

 都営大江戸線月島駅下車徒歩5分のところにある。

 H17.1.24撮影


 白髭橋眺望

それは白髭橋から始まった。

藤牧義夫(1911年〜)は、隅田川両岸絵巻という60メートルにわたる長尺の絵巻物を描いた。

その絵巻の始まりが白髭橋であった。下段の画像が彼の描いた白髭橋である。

 白髭橋は、江戸時代橋場の渡しといわれていたあたりに大正3年民営により架けられた。大正14年東京府に移管され昭和6年現在の橋に架け替えられた。したがって、藤牧義夫によりかかれた橋は、現在我々が眼にしている橋と同じものである。

このあたりは近くに真崎稲荷(石浜神社)や白髭神社があり風光明媚なところとして江戸時代から広重などの浮世絵に描かれ江戸庶民から親しまれていた場所であった。

17.3.11撮影



 


 花の永代橋

  荷風の好きだった永代橋に行った。
 都営大江戸線門前仲町駅を下車、永代通りを少し行くと永代橋に出た。
 東詰の橋のたもと交番の裏手に桜の木があり満開だった。

 「今日の永代橋には最早や辰巳の昔を回想せしむるべき何物もない。さるが故に私は、永代橋の鉄橋をばかえってかの吾妻橋や両国橋の如くに醜いとは思わない。新しい鉄の橋はよく新しい河口の風景に一致している。」(永井荷風ー日和下駄第六水)より。
  

17.3.26撮影  


 芭蕉像と清洲橋

松尾芭蕉が,隅田川と小名木川の合流点に架かる万年橋の近くに移り住み芭蕉庵を構えたのは、延宝八年(1680)であった。
  
 万年橋のたもとに芭蕉の史跡を記念して芭蕉庵史跡展望庭園があり、そこに隅田川を見つめる芭蕉像が座っている。背景の橋は清洲橋である。

  清洲橋と新大橋が一望でき、ケルンの眺めとも言われ、眺望のよい場所でもある。

16.5.29撮影


 ゴッホの愛した新大橋

ゴッホは浮世絵を愛し、広重の「大はし阿たけの夕立」を模写している。(右の絵がゴッホの模写した絵)
 そこに描かれている橋が新大橋である。
  
 現代の新大橋は,「ひまわり」を思わせる黄色い親柱が特色。
 
 江戸名所図会によれば「この橋は元禄六年はじめてこれをかけたまふ。両国橋の旧名を大橋といふ。ゆゑに、その名によって、新大橋と号(なづ)けられるるとなり。」とされている。

 この橋が完成したとき江戸庶民は大いに喜んだそうだ。
 橋が完成したとき芭蕉の喜びの1句「ありがたやいただいて踏むはしのしも」

 H17.1.4撮影


 

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