●ニュートンの運動方程式と静止質量エネルギー『ニュートンの運動方程式』はガリレイ変換に対して不変であった。特殊相対性原理を満たすためには、この方程式もローレンツ変換に対して不変な共変形式に書き直さなければならない。ニュートン力学では、通常、質点の運動はその空間座標x1、x2、x3をその座標系の時間x0の関数として表わすことで次式のように記述される。
xμ=fμ(x0) ここでμ=1,2,3である。以後、ギリシャ文字の添字は、特別にことわらない限り、空間成分を表わすために同様に1から3までの数とする。この質点の速度はxμを微分して
である。しかし、これは時間tもしくはx0を特別扱いしており、共変な形式で記述するためには、なんらかの媒介変数τを使って
xi=xi(τ) と記述する必要がある。媒介変数としてもっとも適当なものは固有時間である。固有時間は質点に固定した座標系での時間であり、ローレンツ変換に対して不変なスカラー量である。以後、τは固有時間とする。
x系で微少時間dx0の間に質点が空間座標でdx1、dx2、dx3変化したとしよう。この前後の世界間隔の2乗ds2はds2=-(dx0)2+dxμdxμ=-(cdt)2+dxμdxμ である。質点に固定した座標系をx'系とすると、この世界間隔は
ds'2=-(dx'0)2=-(cdτ)2 である。世界間隔不変により両者は等しく、これにより固有時間τと座標時間tとの関係は
となる。ここで、v(x)はx系での空間座標がxである場所での速度の値で、
・・・・・(2.58)
である。以後、v(x)の引き数xは必要な場合を除いて省略し、簡単にvと書くことにする。次に4元速度を定義する。世界線の式xi(τ)を固有時間τで微分したもの
を「4元速度」とよぶ。dxiが反変ベクトル、dτがスカラーであることから、uiが反変ベクトルとして変換されることは自明である。4元速度の2乗長さは
uiui=ηijuiuj=ηij(dxi/dτ)(dxj/dτ)=(ds/dτ)2=-c2・・・・・・・・(2.60) のように計算され、その値は常に-c2である。
4元運動量はpi=mui と定義される。mは質点の質量である。したがって、4元運動量の2乗長さも(2.60)から
pipi=m2uiui=-m2c2・・・・・・・・(2.62) である。したがって4元速度も4元運動量もそれぞれ4成分からなるが、じつはその長さがこのように変化しないという条件のため、独立な成分はそれぞれ3つである。例えば、空間成分p1、p2、p3が求められているなら、p0は上の式で計算し求めることができる。4元運動量の意味を考えるため、これらの量をx系での通常の速度vμやvで書き換えてみよう。
したがってpμは
を定義すると、pμ=m'vμと書くことができるから、光速に近づくと見かけ上、慣性質量がm'のように増加すると解釈することもできる。本来の慣性質量mをこれと区別するために静止質量ともよぶ。
p0の意味について考えよう。非相対論的極限、β=v/c≪1で、p0に光の速さcをかけた量cp0は、式(2.63)においてv/cを小さな量とみなして級数展開すると・・・・・(2.66)
となる。つまり、運動エネルギーに定数であるmc2を加算したものとなる。このことは、cp0は相対論的な粒子のエネルギーと解釈できることを示している。ここでcp0=EとエネルギーEを定義する。(2.62)式、pipi=-m2c2をE2について書き直すと
E2=(mc2)2+c2{(p1)2+(p2)2+(p3)2} となる。さらにpμの式(2.64)や(2.58)を代入すれば
・・・・・・・・(2.68)
と書き換えることができる。(2.68)式は、相対論ではエネルギーEを速度がゼロでも静止質量に光速の2乗をかけたもの、mc2であることを示している。これを静止質量エネルギーという。静止質量は粒子が孤立して運動している場合は変化しないので定数であるが、粒子が分裂を起こし2個になったり、また他の粒子と反応するとき変化する。分裂あるいは反応する前の質量の合計とその後での質量の合計は一致しない。その差は運動のエネルギーに転化しているのである[(2.66)式]。化学反応では質量の変化は10億分の1程度できわめて小さいが、原子核反応では質量が1%程度変化する。
さてそれではニュートンの運動方程式は、ローレンツ変換に対して不変になるようになるにするには、どのように書き換えればよいだろうか? まず外力が働かない自由粒子の運動に置き換えるとが得られる。この式はpiが反変ベクトル、τがスカラーであることから共変である。これにより得られるpi=一定、の式の空間成分(μ=1,2,3)は
で、運動量保存の式である。非相対論的極限(v/c≪1)では、ニュートン力学での運動量保存式、mvμ=一定、に当然一致する。また、時間成分に光の速さをかけたもの
cp0=E=一定 は、すでに示したようにエネルギー保存式を表している。非相対論的極限(v/c≪1)ではニュートン力学での運動エネルギーの保存式、mv2/2=一定、に当然一致する。
それでは、外力がある場合には、運動方程式はどのようになるのだろうか? もし外力として、4元ベクトル、fiがあたえられているなら、式は・・・・・・・・・・(2.72)
となる。ニュートンの運動方程式の、ガリレイ変換に対する不変性を議論したとき、暗黙に力fはどの慣性系でも同じであると仮定した。しかし、相対論ではこのことは一般には正しくない。例えば、電場の中で荷電粒子に働く力を考えよう。ある座標系では電場しかなくても、相対速度のある別の慣性系に移ると、その座標系では電場の強さが変わってしまうのみならず、磁場も存在するようになり、力は当然変化する。しかし、力を4元ベクトルfiとして書き下すことができれば、(2.72)は共変な形式である。逆にいえば、物理学の法則が特殊相対性原理を満たすためは、あらゆる力は4元ベクトルとして書かれなければならない。実際、重力を除いて現在知られている力は4元ベクトルとして書くことができる。重力をこのような相対性原理に従わせることができないのが特殊相対論の限界で、これを解決する過程で一般相対論が生まれてきたのである。
具体的に電磁気力の4元力は、どのように表わすことができるだろうか? 電磁場が存在する場合、電荷Qをもつ荷電粒子の非相対論的運動方程式は電磁気学で学んだように、dp/dt=Q(E+v×B)、これを行列の形式で書くとである。この式で時間を固有時間に、速度vμを4元速度にuiと拡張すると
・・・・・・(2.74)
という式が得られる。ここでuiは4元速度を共変ベクトルとして表現したものである。
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つまり(2.74)の右辺の行列は電磁場のテンソル、fij、そのものであるので、運動方程式は
ただしfiEMは電磁気力の4元力
fiEM=Qfij・uj
である。相対論化することで新たに加わった第0成分がエネルギー保存則を表していることは、自由粒子の場合と同じである。第0成分に光の速さをかけた式は、粒子のエネルギー(E=cp0)の時間変化の式、
となり、電磁場によってされる仕事によって粒子のエネルギーが増減することを表している。(岩波基礎物理シリーズ 相対性理論 佐藤勝彦より)
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