●測地線

 曲面上の2点間の最短の経路を、その2点を結ぶ「測地線」と呼ぶ。球面上では、大円の弧である。では、この概念は、時空の場合にはどのように使えるのだろうか?
 時空と面とでは違う。時空には距離というものは定義できない。時空で距離に変わるのは「固有時間(時計の進み方)」であった。そこで、距離という言葉を固有時間に置きかえたら、どうなるだろうか?
 まず、平面から話を始めよう。「歪んでいない面」つまり平面とは、すべての場所で、ピタゴラスの定理が成り立つ面のことである。
 アインシュタインは、これに対応して、「『歪んでいない時空』とは、そのどこでもミンコフスキーの定理が成り立つ時空のことである」と考えた。
 では、「平面では2点間の最短の経路(測地線)は、その2点を結ぶ直線である」という性質は、時空では、どう言いかえられるだろうか? この疑問に答えるには、時空上に描いた直線がもつ性質について、考えなければならない。

 上の図の時空上の2点A、Bを結ぶ線として、直線(丸1の経路)と、Cを経由する折れ線(丸2の経路)の二つを取り、それぞれの固有時間を比較してみよう。それぞれの道筋を通って動く時計の進み具合を考えればよい。直線(丸1の経路)は、時計は位置は動かない場合であり、折れ線(丸2の経路)は、Cまで動き、また戻ってくる場合である。ミンコフスキーの定理を考えれば、位置の差がある分だけ、折れ線(丸2の経路)のほうが固有時間が小さいのは明らかだろう。
 実は、時空上で、どのような折れ線を考えても、その固有時間は直線より小さくなる。また、最初と最後が同じ位置でなくても、やはり直線の固有時間が一番大きい。つまり、折れ曲がって進むと、そのたびに余分な位置の移動があるので、固有時間は小さくなることはミンコフスキーの定理から想像できるだろう。これは、宇宙旅行をして戻ってくると歳をとらないという双子のパラドックスの話でも説明できる。
 そして、折れ線の折れ曲がりをどんどん細かくしていけば、滑らかな曲線になるので、曲線の場合も、やはり固有時間は短くなる。

 結局、次のことがわかった。歪んでいない時空上の2点を結ぶ固有時間を最大にする線は、その2点を結ぶ直線である。
 そこで、2点間の固有時間を最大にする経路のことを、その2点間の測地線と呼ぶことにすると、(ミンコフスキーの定理が成り立っている場合)時空上の測地線とは直線であることがわかる。
 面の場合、歪んでなければ、つまりピタゴラスの定理が成り立っていれば、測地線は直線になる。逆に言えば、歪んでいる面上では、測地線は曲線である。
 これと同様に、固有時間というものは決まっているが、ミンコフスキーの定理が成り立たないような時空があったとすれば、そこでの測地線は、一般には直線にならないだろう。アインシュタインは、このような時空のことを「歪んだ時空」と呼んだ。(図解雑学 時空図で理解する相対性理論 ナツメ社より)

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