●ド・ブロイの電子波  

 さて、ボーアやハイゼンベルクたちは、電子を粒子だと考えて量子論を構築してきた(と言っても最後にハイゼンベルクは、電子の姿や軌道を考えること、つまり描像は捨ててしまったのだが)。
 これに対して「電子はもしかしたら、波かも知れない」と考えた人物がいる。フランス生まれのルイ・ド・ブロイ(Louis de Broglie 1892-1987)である。彼の考え方を出発点にして、量子論はもう一つのルートから、その完成が目指されることになる。

 ド・ブロイが電子を波でないかと考えた背景には、アインシュタインの「光量子仮説」がある。アインシュタインは、古典物理学で波とされてきた光を、粒の性質もあると言う視点で考えなおした。同じようにド・ブロイも、これまで粒とされてきた電子を、今度は逆に「波」でもあると仮定してみたらどうだろうと思ったのである。
 そこで彼は、いちばん簡単な構造の水素原子を使って、電子の「運動量」と「波」の関係を示す式はないものかと、いろいろと計算してみた。すると電子を「波」と考えたとき、電子の波長(λ)を求めるには、プランク定数(h)を運動量(p)で割ればいいという関係が成り立つことを発見したのだ。  

λ=h/p  

 この結果から、原子内の電子の運動が整数倍のとびとびになる理由を軌道ではなく、整数個のうねる波(定常波)で説明できる。また、後年、電子が回折(かいせつ)*という波特有の現象を示す実験がおこなわれ、電子が波の性質を持つことは確かな事実となった。電子を波と見なすこの「電子波」という考え方は、その後、物質はすべて波の性質を持つという「物質波」の思想につながっていくことになる。  

 *たとえば、何か障害物があって相手の姿が見えなくても、こちらから声をかければ話ができる。これは音が、障害物にぶつかっても、そこで止まってしまわず、障害物の裏側に回り込んで進んでいけるためである。こうした現象を波の回折という。(図解雑学 量子論 佐藤勝彦監修 ナツメ社より)  

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