●ハイゼンベルクの不確定性原理(あちらを立てると、こちらが立たず)
電子とは何かを知ろうと思えば、最終的には「観測」という手段に頼らなければならない。平たく言えば、電子の「位置」や「運動の勢い」などを人間の目で確認すると言うことだ。
しかし、電子は肉眼では見えないから、なにか間接的な方法で観測するしかない。では、電子にある種の電磁波を当てて、その位置と運動の勢い(運動量=物体の重さ×速さ:p=mv)を測ってみよう。
まず、電子の位置を測定するためには、ガンマ線など波長の短い電磁波を当てる。すると、電子にぶつかった電磁波は、ある方向に跳ね返ってくるので、その方向から電子の位置がわかる。ところが、波長の短い光(ガンマ線)はエネルギーが強いため、電子のほうも飛ばされてしまう。その時、電子がどこへ飛んでいったかまではわからない。つまり、運動量が測定によって変化したせいで、しっかり測れなくなる。
ならば、電子の運動量に影響しないように配慮して、エネルギーの弱い電磁波、つまり長い波長の電磁波を当てる。すると今度は、運動量はよくわかるが、弱いエネルギーの電磁波は電子にちゃんとぶつからないため、位置がはっきりしなくなる。
ミクロの世界では、このように対象となるモノの位置や運動量を同時に正確に計ることはことができない。なぜなら、測定という行為自体が電子の状態に影響を与えてしまうからだ。この結果は、どんなに測定方法や計測機器などを精密にしても同じになる。
これがハイゼンベルクの唱えた「不確定性原理」である。そしてこの不確定性原理は、量子論の基本となる考え方であり、また量子論が到達した結論のひとつなのだ。(不確定性原理にも式がある)
もう少し、ハイゼンベルクの不確定性原理を詳しく見ていこう。実は、これには下のような式がある。・位置と運動量の場合
ΔxΔp=h
(位置の不確かさの幅)×(運動量の不確かさの幅)=h
hは「プランク定数(6.626×10-34ジュール・秒)」・時間とエネルギーの場合
ΔtΔE=h
(時間の不確かさの幅)×(エネルギーの不確かさの幅)=h位置xにΔ(ギリシャ語のデルタ)がついたものは、電子がある位置に存在している不確かさを意味する。言いかえると、電子が、どこにいるかは微妙な誤差があり、その幅がデルタで表される。同じように電子の運動量についても、微妙な誤差の幅を考えてΔpと表される。
そして、このΔxとΔpをかけ合わせると、必ずプランク定数よりも大きくなる。つまり、どんなに測定の精度を高めても、そこには必ずh程度の誤差が生まれるというわけだ。このプランク定数hは非常に小さな数値で、私たちの住むマクロの世界では、ほとんど影響がない。しかし、これがミクロの世界となると、大きく影響してしまう。
ところで不確定性原理は、位置や運動量ばかりだけではなく、時間とエネルギーの関係をとっても同じである。時間の不確かさΔtを厳密に求めようとすると、エネルギーの不確かさΔEが増えていく。逆にΔEを確定しようとすると、今度はΔtがどんどん不確かになる。もちろん、このΔtとΔEをかけ合わせると、位置と運動量の関係と同じようにプランク定数h程度の誤差が生じる。
以上のように不確定性原理に従うと、ミクロの世界を正確に測定するのは、不可能なことが分かる。ただし、何もかも分からなくなるのではなく、一方を確定すると他方が不確定の「反比例」の関係になるのだ。(図解雑学 量子論 佐藤勝彦監修 ナツメ社より)[前ページへ][ホームへ][目次へ][次ページへ]