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磁気量子数今回のテーマは、以前に「原子の構造」で計算した波動関数の中から どうやって角運動量についての情報を取り出すかということである。 そのために演算子を極座標で書き直しておく方がやり易い。 例えば は、
と計算できる。
つまり波動関数
この内で
これに
が成り立つ。
つまり、原子核の周りを巡る電子が持つ角運動量の
「電子の質量」と「磁気量子数」は両方とも
を「ボーア磁子」と呼ぶ。 ミクロの世界で電子が作り出す磁気モーメントは必ずこのボーア磁子の整数倍に なっているというので、特別な数字なのである。 しかし現実には実測値は色々な影響でこの値からずれることがある。 それでも実測値をボーア磁子の何倍かというやり方で表しておけば、 理論値との差が分かり易くてとても便利ではないか。 ちなみに、電子以外の粒子であっても同じように磁気モーメントを持つわけで、 例えば陽子も原子核内で角運動量を持っている。 その時の磁気モーメントは「核磁子」という単位で表す事になる。 定義はボーア磁子と同じであるが、 分母には電子より遥かに大きい質量が入るので、その分だけ小さな値になる。 だから日常の現象では電子の作る磁気の方だけが特に目立っているわけだ。
測定の方向こんな面白い結果が出てくると、 成分だけでなく、
他の方向の成分についてもどうなっているのか知りたくなってくる。
途中の計算は面倒なので読者にお任せするが、
という結果になる。
この複雑さを見れば、先ほどのように簡単には行かないことがすぐ分かるだろう。
これを作用させると波動関数自体の形が大きく変化を受けてしまい、
このことは非常に不自然に思えるかも知れない。
原子の波動関数を求めた時に使ったポテンシャル
それはこの問題を解くときに極座標を使ったからである。
極座標というのは
さて、
無数の解があると言っても、それほど複雑なことにはなっていない。
なぜなら、それは、前に求めた解を回転させたのと同じ形になっているからだ。
その事は次回以降で分かってくるだろう。
つまり
しかしひとたび磁場が掛かれば話は別だ。
状態は ここまでの話から、 測定するという行為によって状態が変わってしまい、 その測定した軸以外では角運動量が定まらなくなるという事態が起こるだろうことが推論できるだろう。 一度の測定で確定するのはその軸の成分の値だけであって、 他の軸についての情報は測定の後は不確実になってしまうのである。 2 つ以上の成分の値が同時に確定するような状態はない。
原子の全角運動量角運動量ベクトルの成分がどれか一つの軸についてしか知り得ないというのは、 心情的にはひどく窮屈である。 角運動量の全体を把握するためのヒントがもっと欲しい。 例えば、角運動量の大きさ(の 2 乗)は、
とすれば求められるはずだが、この値は量子力学的にはどうなっているのだろう。 この演算子を極座標で計算してやると、
となる。 (この計算の過程を知りたい人はこちら。) この形に見覚えはないだろうか。 以前、次のような方程式を解いたことがあるだろう。
これは球面調和関数
ということであり、なんと、球面調和関数というのは、
演算子
であるということが分かるのである。 こんなところで方位量子数と再会することになろうとは驚きだ。
方位量子数の意味は何だろうか。
我々の日常の世界では
であると考える事が出来る。
しかも角運動量が
この「 + 1 」が余分に付く事の意味は何だろうか。
それについては次回やるので、今はイメージだけ把握しておこう。
磁気量子数
角運動量の これをコマの歳差運動に似たものだと例える人もいる。 「核磁気共鳴 (NMR) 」と呼ばれる現象を説明する時には必ずこのようなイメージが使われる。 確かに軸は歳差運動のように回転しているようにも解釈できなくもないのだが、 どの瞬間にどちらを向いているのかということまでは言えない。 この現象は医療関係に応用されていることもあり、興味ある人も沢山いるだろうから、 いずれそれだけを詳しく説明することにしよう。
この図のように角運動量ベクトルの
では方位量子数の名前の由来はどこにあるのだろうか。
量子力学が誕生する以前に、ボーアが多数のスペクトル線を説明するために、
電子の軌道はある平面内に限られているのではないか、という説を唱えたことがあり、
それが「方位量子化」という用語で呼ばれていたらしい。
ここで少しだけ話題が外れるが、注意を差し挟んでおこう。
電子は回っていないここまで学んで量子数 や の意味が分かってくると、
電子が「原子核の周りを回っている」という表現をするのが
非常にまずいということに気付き始めるだろう。
の時、つまり電子が 軌道にある時、角運動量の大きさは確実に 0 なのだ。
電子は原子核の周囲にあるにはあるが、絶対に回ってなんかいない。
しかし止まっているわけでもない。
原子核の周囲の全方向で同じ具合に位相が変化する波が存在しているだけである。
しかしただ どちらにしても波の位相変化が回っているのであって、 電子という粒が回っているわけではないというのは前から言っている通りだ。
世界の見直し原子の角運動量は の整数倍という飛び飛びの値になっているという、
奇妙な結果が量子力学から導かれた。
これについての具体的な測定方法はもう少し後の方で説明するが、
とにかく、この結果が正しいことは実験で確かめる事が出来る。
しかしここまでの説明でごまかされてはいけない。 私はただ数値上の辻褄が合っていることを話しただけである。 電子の波がどういう仕組みで磁気を生み出す結果になっているのかという 根本的な説明はまだ何もしていない。 そしてそれはこの段階では説明しようがない。 多くの教科書はそんなことは問題ではないかのように、 全てが解決した振りをしてただ通り過ぎるが、 私はその点について黙っていられなかった。 この先の議論でその辺りの仕組みが明らかにできればいいのだが、 それを期待する前に、我々自身が少し考え方を変えておくことも必要である。 我々は古典的な考えを量子力学に当てはめて、 何とかこれまでの常識を保ったままで納得できるような仕組みが 見出せないものかと必死になってはいないだろうか。 それも大事だが、それだけではいけない。 むしろ、常識をこそ疑うべきだ。 この世の全ての現象は 量子力学的な法則の積み重ねで起きているのである。 量子力学の方が根本にあって、我々が見ている現象はその結果に過ぎない。 なぜ現実世界はこのように見えているのだろう。 量子力学をそのまま認め、その視点で世界を見つめ直すことも必要である。 例えば、原子核の周りを回る電子が制動放射を起こさずに 同じ軌道を保っていられるのはなぜだろうという疑問を以前に提示したことがあったが、 読者の頭の中でこの疑問は解決しているだろうか。 この疑問自体がおかしかったのである。 同じ軌道を保っていることの方がこの世界の常識であり、 電子が状態を変えるときだけ、余ったエネルギーを光として放出する。 逆に、制動放射という現象が起こることの方を疑おう。 制動放射とは、電荷が加速される時に光を放出する現象だと考えてきた。 これは、電荷の状態が変化して、 エネルギー状態の異なる別の状態へと次々に移行しているからこそ、 その過程で余ったエネルギーを放出するのを見ているのだとは考えられないだろうか。 これが量子力学的に世界を見直すということである。 では角運動量と磁場が関係しているのはなぜか。 そんな事を問う前に、 そもそも、電荷が移動するだけでなぜか磁場が生じるのであるが、 それはなぜだかすでに分かっているとでも言うのだろうか。 磁場とは何だろうか。 本当に在るのだろうか。 ただ移動する電荷間に力が働くのを見て、 「そこに磁場がある」と解釈しているだけなのではないか。 つまり、我々は最終的には、 「なぜ角運動量が磁場を作るのか」なんて薄っぺらな疑問を捨てて、 「角運動量という属性を持った電荷の状態が、 離れた電荷に対してどのような作用を及ぼすのか」という具体的な計算方法を 得る事で満足しなくてはならない可能性がある。 その答えを得た上で「それはなぜ?」と問う事はやはり必要だろう。 私は今後、そのレベルまで説明を進めることができるだろうか。
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