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動機「ド・ブロイ波の形が知りたい」ド・ブロイ波の存在が実験で確かめられるようになると、 単なる面白いアイデアだと笑ってはいられなくなる。 それは一体どんな形をした波なのだろうという事を真剣に考えざるを得ない。 ある運動量を持つ物質のド・ブロイ波の波長はいくつだろうか、とか、 あるエネルギーの時は周波数がいくつだというくらいの単純な計算では満足していられない。 一体どんな条件の波が存在してどのように伝わっていくのだろうか?歴史的にはド・ブロイ波の存在が実験で確かめられる以前に シュレーディンガーの方程式が発表されている。 やはり世の名声を勝ち得るためには 時代を先取りしないとダメだということか。
君もチャレンジしてみるか?これまでに得ているヒントは、エネルギーと運動量が、 ド・ブロイ波の周波数と波長との間に、
という関係があるということ。 そして、古典力学ではエネルギーと運動量の間には
という関係があるということ。
これは高校生には
と書いてやればいい。 さあ、これらの条件を元にド・ブロイ波の形を求める方程式を作ってみよう。 立場はシュレーディンガーと同じだ。ただ君の数学上の知識が試されるかも知れない。 うまく式が導けたなら君の頭はかなりいいはずだ。 もし 1926 年当時に生きていれば後世に名を残せたかも知れないが 残念ながら半世紀以上も前の話である。 さて、私のような凡人が思いつく事といえば、せいぜい代入してみるくらいである。 試してみてくれるとよく分かるが、それではただ波長と周波数の関係が求まるだけで、 そこから波の形の一般解はうまく求められないのである。 シュレーディンガーは、裏技とも言える賢いやり方で新しい方程式を作ってしまった。 これからその方法を説明しよう。 「そんなのありかよー!」と思うかもしれないような方法だ。
シュレーディンガーの賢い方法まず、周波数 、波長 の波動は、
人によって慣れた形式は少々違うかも知れないが、
と表現できる。
これは
と書ける。
さて、こいつと
関数
となる。
しかし、もっとすっきりした形で書き表したいのだ。
そう言えば、微分しても形の変わらない関数があった。
それは「指数関数」である。
もし
というもので、複素関数論を学べばすぐに出て来る公式である。 ここでもし、
と置けば、これはオイラーの公式により
ということであって、虚数部分がおまけに付いてきたことを除けばさっきまでの関数と同じである。
虚数部分の
と書ける。 右辺の係数が邪魔に見えるのであらかじめ割っておけば、
とすっきりした形になった。
ところで、ここまでの変形を見ると、いつも
この
と表せるようになる。
同じ事を
という関係を得ることが出来る。
つまり、波動関数
このことを利用して古典力学の関係式
これは、「古典力学の関係を満たす運動量とエネルギーの組を同時に取り出すことの出来る波動関数 これは微分方程式になっているので、あとは「微分方程式の解き方」とかいう種類の 参考書を読めば解を求める方法が解説されていることであろう。 また量子力学の教科書もこれを解く部分には十分な解説がしてあるので わざわざここで解説するまでもないだろう。
本当にこんな小細工でうまく行くのか?こんなパズルみたいな方法で果たしてうまく行くのか、と思われるかもしれない。 実際この方程式が発表された当時もこの数学的意味をめぐって議論がされた。 そして難解ではあったが当時すでに支持を得ていたハイゼンベルクの行列形式と 数学的に同等であることが証明されると、シュレーディンガー流の方が 直観的に理解しやすくて使いやすいというので 多くの人が安心してこの方法を受け入れるようになった。実数の波動関数に虚数を取り入れて指数関数を導入した部分を少し怪しく思うかもしれないので、 ここで確認をしておくことにしよう。
先ほども計算したように、
のように
となるが、これはオイラーの公式によると、
ということである。
係数として飛び出してきた虚数
となって、実数部分だけを見比べればこちらも このように虚数部分は、実数の三角関数に微分計算をしたときと結果が同じになるように 助けてくれているのである。 波動関数の実数部分だけを見ていれば計算結果は実数だけで計算した時と同じなのである。 三角関数の代わりにわざわざ虚数を導入してまで指数関数を用いるのは、 微分しても関数の形が変わらないので微分方程式が非常に楽に解けるという メリットのためであると言えるだろう。 ここまで見る限りでは、 波動関数に虚数が出てくるのは何か理解できない深い意味があると考えるより、 単に数学を使った計算テクニックの結果だと考える方がいいように思える。
なぜなら、シュレーディンガー方程式を作った時の意味に従うのなら 指数形式で書ける解のみが許されるべきであって、 さらにその実数部分のみがド・ブロイ波としての意味を持つはずである。 しかし指数形式の解のみを認めるという制限をつけると、 まったく当たり前すぎて面白みのない答えしか出て来ないことになってしまう。 しかも境界条件の関係で解けないことの方が断然多いのだ。 そんな応用に使えないようなことでは シュレーディンガー方程式がこれほど有名になることもなかったことであろう。 そこで元の意味を離れて指数形式以外の解も解として認めることにしたのであるが、 その結果、何とも解釈の難しい複素数の解が出てきてしまうことになってしまった。 では、適用範囲を広げて求められたこの複素数の解はどうやって解釈したらいいのだろう。 虚数部分は一体何を表すのだろう? 不思議なことに、求められた波動関数の絶対値の 2 乗が 粒子の存在確率を表すと考えると計算結果が事実と合うのである。 素直に認めるべきか、うまく行く理由を考え直すべきなのか・・・。 多分これが、シュレディンガー方程式が発表された当時の人々の反応だったのではなかろうか。 現在では、教科書を鵜呑みにする限りこのような問題に悩むことがない。 これでうまく行くことだけは事実だからだ。
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