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ハミルトニアンが時間を含む場合前回はハイゼンベルク描像について、 「ハミルトニアンが時間を含まない」という特殊な場合に限った説明をしたのであった。 では時間を含む場合にはどういう式変形で説明したらいいだろうか。最初はちょっと面倒になりそうだと感じていたが、ここまで来たらとても簡単に話が進められると気付いた。 細かな注意点はあるのだが、それは後回しにしよう。 とにかく、次のようなシュレーディンガー方程式から出発することにする。
前回も同じところから出発したが、少しだけ違うのは、
つまり、時刻
という演算子を作用させることにより、
時刻
という形で表されるのではないだろうか。 なぜなら、ある状態から別の状態への変換は、ユニタリ変換で表されるからである。 ユニタリ変換というのは、複素ベクトル空間の中で、ベクトルの長さを変えない変換なのだった。 その物理的な意味は、粒子の全存在確率を変えないということであった。
このような ここまで納得したら、(3) 式を (1) 式に代入してやればいい。
この左辺を見ると、時間微分は
さあ、これを解いてやれば
さあ、望んだことはこれで果たされただろうか?
いや、
これまで単に
それでも同じことだ。
結局は右辺には
規則性のある級数として表すことに成功したようだ。
こうして右辺の
時間順序積の例今求めたばかりの結果をもっとエレガントに、シンプルに表現する方法がある。 そのためには「時間順序積」あるいは「T 積」と呼ばれる一つのルールを導入するだけでいい。それをここで紹介しておこうと予定していたのだが、 ざっと調べたところ、「シンプルに表現できる」ということ以外には 大した利点があるようには思えないのである。 とりあえず先の方まで進んでみて、どうしても必要だということであればここに説明を追加しようと思う。 将来のためにここに場所を確保しておこう、というわけだ。 ちなみにどんな形に表現できるかというと、
という感じである。 これが (4) 式と等価なのだ。 ここまで書いて説明をしないのはちょっと意地悪かな。 しかし面倒な割りに得るものが少ないのである。 ・・・。 たった今、未来の自分から連絡があって、この部分はここで説明しておいた方がいいとのことなので、 理由は分からないがやっておくことにしよう。
まず時間順序積のルールについて説明すると、(5) 式のように
とは言うものの、(5) 式を見る限りではそのルールをどこにどのように適用したらいいのか良く分からない。
それで、
ほら、どうだ。 (4) 式とそっくりになっただろう。 しかしわずかに違いがある。 分かるだろうか? この式と (4) 式の各項が同じであることが証明できればいいわけだ。 例えば、第 3 項どうしを取り出して比べてみよう。
左辺には
これはどういうことかと言えば、左辺のカッコの中では
何が起こっているか把握しにくいかも知れないので、もう少し話しておこう。
右辺では ![]()
右辺の積分は、左辺の積分の半分の範囲でしか行われていないことになるわけだ。
これだけの違いなら左辺を 2 で割っておけば済む。
実際、
しかしもう一つの問題は、
次の項以降も同じことである。
(4) 式の第 4 項は そういう表現方法もあるのだな、くらいに覚えておいて貰えばいいと思う。
これで全てかハミルトニアンというのは系の全エネルギーを表している量だった。 それが時間によって変化するというのは、 外界とのやり取りがあってエネルギーが保存していないということを意味する。つまり前回は全エネルギーが保存する場合を扱い、 今回は全エネルギーが保存しない場合を扱ったことになる。 すると、これであたかも全ての状況を言い尽くせたかのような気分になるわけだが、そう甘くはない。 ハミルトニアンが時間に依存する形でうまく表されるというのは特殊なケースなのである。 しかし教科書に出てくる例といえばそういうものばかりだから、 それ以外の状況があるなんて想像も付かないわけだ。 当たり前のことだが、教科書というのは何とかして解けるような問題しか扱わないものである。 例えば、状態の変化に応じてハミルトニアンの形が変わるような仕組みになっていたらどうだろう。 時間が直接は出てこないから今回の論法は当てはまらないだろう。 量子力学でそのような具体例があるのか、また、その処方箋があるのかは私は良く知らないが、 少なくとも古典力学の場合にはそれに似た分かりやすいケースが存在する。 粒子がある領域に差し掛かったときだけ摩擦力が働くとか、壁からの反作用を受けるとか、だ。
念のため、まとめあらゆる状況に対応できるようになったと安心するわけにはいかないが、 とりあえず限られた条件下では時間発展演算子 が導けたのだから、
これを使って前回と同じような方法でハイゼンベルク描像を考えることが出来るだろう。
前回の話で (2) 式のような演算子を使って説明していた部分を、
全て これでハイゼンベルク描像についての話にまとまりがついたと思うが、 これに関連して少し気になることが出てきたので、 次回以降で確認することにしよう。
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