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重力場の方程式は測地線の方程式よりはるかに複雑だ。 測地線の方程式の場合はすでに定まっている計量に従って計算すれば良かったが、 重力場の方程式は計量の 10 個の成分を定めるための微分方程式である。 見た目は次のような非常に簡単な一つの式で表されている。
しかしこの両辺の
右辺の
右辺第 1 項の リッチ・スカラーは「スカラー曲率」とも呼ばれる。 同様にリッチ・テンソルも「テンソル曲率」あるいは「曲率テンソル」と呼ばれることがあるが、 後で出てくる「リーマン・テンソル」も同じく「曲率を表すテンソル」であるから、 混乱が起こらないように気をつけて使わないといけない。 リッチ・スカラーはリッチ・テンソルを縮約して作られている。
この定義を見るとすっきりしたものだが、 アインシュタインの省略記法を使わないで書くと次のようになる。
ところで計量
まぁ、気休め程度に過ぎないが。 ここまでで、アインシュタイン・テンソルは 10 通りのリッチ・テンソルの組み合わせで 出来ていることが分かっただろう。 よってリッチ・テンソルの定義さえ分かればすぐにでも アインシュタイン・テンソルの全貌が明らかになる気がする。 ところがそう甘くはない。 ここまでは小手調べといったところだ。
リッチ・テンソルの定義次にリッチ・テンソルの正体を調べよう。 これは「リーマン・テンソル」と呼ばれる4 階の テンソル から次のように作られている。
これまでに出てきたリッチ・テンソルの添え字は上側についていたが、 この式の左辺では下側についている。 これもリッチ・テンソルと呼んで差し支えない。 添え字を上側に変換するには次のように計量を付けて縮約してやればいいのだった。
なかなか複雑な事になってきた。 しかしこの先のことを思えばまだ大したことはない。
リーマン・テンソルの定義さらに深く潜ろう。 リーマン・テンソルの定義は次の通りである。
ここで
という意味である。 かっこつけないでダラダラと書けば、
ということである。 ここに出てきたクリストッフェルの記号の定義はすでに前回示したが、 もう一度、今度はちゃんと展開して書いておこう。
これで分からない定義は何一つなくなった。 解剖はこれで終わりである。 つまり、アインシュタイン・テンソルというのは 膨大な数の計量とその微分のかたまりだということだ。 それが一体どれくらいの量になるのか、考えてみよう。 「定義が分かる」のと「それを実際に展開したものが正しくイメージできる」のでは 大きな違いがある。
項の数を数えるまず、クリストッフェル記号には 12 の項が含まれている。 そしてリーマン・テンソルの定義の初めの 2 つの項では、 クリストッフェル記号を微分するわけだが、 クリストッフェル記号に含まれる項は全て、 計量と、計量の微分の積で出来ている。 この時、積の微分の法則が適用されるので、両方をそれぞれ微分してやらないといけない。 一回の微分で 2 つの項が出来る。 それで、12 × 2 + 12 × 2 = 48 項にもなってしまう。残りの部分は、クリストッフェル記号どうしの掛け算が 8 項ある。 つまり、8 × 12 × 12 = 1152 項だ。 見積もりは先ほどより簡単だが、さっきより遥かに多い。 合計 1200 項である。 さらに、リッチ・テンソルは 4 つのリーマン・テンソルから出来ているので、 4 倍すれば 4800 項である。 しかし実際はこんなに多くはならないだろう。 添え字の組み合わせによっては幾つかの項が打ち消し合って消えるし、 他の項と一緒にしてまとめられる項もあるはずだ。 理論にはほとんど関係ない単なる興味であるが、 一体、幾つの項にまでまとめられるのか、正確に数えてみたくなってきた。 チャレンジしてみよう。
項を数えるいい方法はないのかさて、これまでの結果から考えるに、リッチ・テンソルは、
というたった二通りのタイプの項の組み合わせから出来ていることが分かる。
しかしこれでは先ほどの見積もりと比べて多過ぎだ。
かなりの組み合わせが実際には使われていないはずである。
上の式の で、手計算でやってみた。 そのノウハウについては面倒なので書かないでおこう。 とにかくなるべく簡単になるように、あらゆる場合分けをした。 感心しないでもらいたい。 エレガントな方法なんかではなく、検算を含めて丸 3 日ほど費やした。 結果は、
ということになった。 重力場方程式の展開を、定義も見ないでスラスラと書き下せる・・・ そんな秘密の裏技を発見できることを夢見てがんばってみたわけだが、結果はこれだ。 美しくも無いし、思ったほどシンプルでもない。 物理的な意味が含まれるわけでもない。 係数 B について同様のチャレンジをする事は断念した。 桁違いの苦労が要りそうだったからだ。
コンピュータを使う手計算では駄目だということが理解できた。 それで、ようやくコンピュータを使うことを思いついた。 実はコンピュータなんかに頼りたくはなかったのだ。作ったプログラムのソースを公開しておこう。 C 言語で書いてある。 計算の効率よりも分かりやすさを最優先にしてある。 誰でも思いつくような内容なので、自由に再利用してもらって構わない。
しかし、最近の PC は速いね。
答えは一瞬で出た。
本当にプログラム通り計算してくれたのか、かなり疑ったほどだ。
プログラムの内容の説明はしないで結果だけ書いておこう。
ここをクリックすると、
i = j の場合、
i ≠ j の場合、
まず、これが元の式であった。
この両辺に
となって、2 階共変テンソルの形に持ってこれる。
こうしておけば、先ほど展開した、添え字が下側についたリッチ・テンソルが
そのまま使えることになる。
さらに、ここに
ここで
ああ!?
式からリッチ・スカラー
それでそのための調べものをしている内に、
私より数年先行して同じ事にチャレンジしているサイトを発見した。
彼のような人でも一時お手上げ状態になっていて作業が中断しているとは・・・。
それを見て少し挫けた。
それから私も忙しくなって、もう 5 年近く経つ。
本当はやりたい。
暇とスポンサーと野心のある若者はチャレンジしてみてはどうだろうか。
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