|
仮定の確認初めの方では、光速がどの立場から見ても変わらない事を利用してローレンツ変換を求めた。 ここでは方法を変えて、マクスウェル方程式が不変となる条件で同じものを求めてみよう。 私もずっと気になっていたし、やってみせて欲しいと言うリクエストも良く来るのである。 このやり方は相対論が世に出るずっと以前に提案されたのだった。
座標
前にやった時には係数
のような形になるであろう。
係数
こういうことを考え始めると、実は係数
という変換を仮定して、係数
マクスウェル方程式の座標変換さて、 系でのマクスウェル方程式というのは、
ベクトル表記をしないで成分に分けて書けば、次のような 8 つの式で表される。
この関係式の導き方が分からない人は、 先に「微分演算子の座標変換」の記事を学ぶか、復習する必要がある。 とにかくこれを当てはめれば、先ほどの 8 つの式は次のように姿を変えることになる。
ここで少し物理の視点で考える事が必要だ。
上の (4') 〜 (11') 式では つまり、ある点での電場や磁場は、 どの立場から見ても同じ量の電場や磁場のままでいいのか、という問題だ。 まだその辺りに疑いがあるので、この式をこのままの状態で眺めてみる事にしよう。
同じように、(8') (9') 式も元の (8) (9) 式と同じ形をしているのだが、 こちらでは、
であると考える必要がある。 これらの主張には重なる部分があるわけだが、対立してしまわないだろうか。 いや、
であると考えさえすれば、両方の主張がぶつかる事は回避できる。 すなわち、まとめれば、次のような関係があるというわけだ。
重要なのは、今回のやり方で得られるのはローレンツ変換の式だけではなくて、 同時に、電場や磁場の変換規則までもがこうでなくてはならないということが 自動的に導かれてくるという点だ。 しかしまだまだ話は始まったばかりだ。 残りの (4') (7') (10') (11') 式は、元の方程式の形からは少々外れた形になってしまっているのである。 これらはどう考えればいいのだろう。 元の式と同じ形式を保てるのだろうか。 そしてそれは先ほどの電磁場の変換規則と対立することなく実現できるのだろうか。
まずは中でも簡単そうな (7') 式から見ていこう。
簡単そうとは言っても、先ほどのように単純に元の形と比較することには意味が無い。
こんな試みはそもそもうまく行くはずがなかったんだと諦めてしまう考えもあろうが、実際には出来る道がある。
(7') 式ではまだ
これを (7') 式に代入してやれば、何と、次のような形にまとめることが出来るのである。
この式の 1 行目はまさに元の (7) 式と同じ形式であり、
2 行目も元の式の一つである (11) 式と同じ形式である!
ここから言える事は、少なくとも
であることが計算できる。 これで、我々が良く知っているローレンツ変換と同じものが導かれたわけだ。 しかしこれで、めでたし、めでたし、と終わってしまうわけにはいかない。 当初の目的は果たせたけれども、 今やそれとは違うことが非常に引っ掛かる点として残ってしまうことになったからだ。
(12) 式が変換に対して不変であると言うためには、
この 2 行目が 0 でいてくれないと困ることになる。
これは元のマクスウェル方程式にもあった (11) 式と全く同じ形のものだが、 この式が成り立っていることを証明なしに受け入れてしまってもいいのだろうか、と気になったりする。 いや、しかしこのことは全く問題にするべきではない。 我々は計算をしている途中で、当初の目的をすっかり忘れそうになってしまうことがある。 今はマクスウェル方程式が変換によって不変であることを「証明」したいわけではない。 むしろ逆で、不変となるためにはどうしたら良いのかを考えているのである。 だから今回はこの式を前提条件として積極的に使えばいいのだ。 逆に、マクスウェル方程式がローレンツ変換によって不変である事を証明したい場合には、 (12') 式を見て、これが全ての v について成り立つので、1 行目と 2 行目は独立して成り立つべき、 と結論付けてしまうことが出来る。 (11) 式と同じものがこの段階で出て来てしまった。 すると (11) 式を変換した結果である (11') 式からは、一体、何が導かれるというのだろうか。 何だか気になる話だ。 しかしまぁ、ここまで来ると、後は確かめ算に過ぎない。 (11') 式は次のように変形される。
やはり、(7) 式と (11) 式に似たものがそれぞれ成り立つことが出て来るのであって、 矛盾などどこにもないのである。
電流密度と電荷密度の変換残ったのは (4') 式と (10') 式である。 やり方は同じなので、細かい注意は省いてさっさと行こう。 (4') 式は次のようになる。
式が見やすくなるように、
これにより、次の変換が成り立っていることが言える。
次に、(10') 式を変換してやろう。
もうくどい説明は要るまい。 この右辺についても、次のように変換していて欲しい。
すなわち、次のような変換が成り立っていると結論できる。
(14) 式と (15) 式は
となる。 さあ、これで、すべてが収まった。 めでたし、めでたしだ。
電荷の保存則ところで、電荷の保存則というものがあった。
この式はマクスウェル方程式をいじれば自然に導かれてくるものではあるが、 ついでだから、確認しておいてやろう。 これを座標変換してやると、次のようになる。
形式そのものが変わってしまうわけではないようだから話は簡単だ。
これが
という関係が成り立っていると考えるより他にないわけで、 これはすでに上で導いた変換と矛盾しない事が分かる。
相対論的な解釈要するに、変換に対してマクスウェル方程式が不変であることを要請すると、 ローレンツ変換の他に、電磁場や、電流密度、電荷密度の変換までもが自然に導かれて来るのである。
しかし逆に、ローレンツ変換によってマクスウェル方程式が不変となることを
証明しようとすると、電磁場などの変換規則については人為的に導入しなければならず、
少々強引な論法であるように見えてしまうこともあるだろう。
どういうことかと言うと、
「形式的には元と同じ形になったから、多分、この部分が なぜ電場が磁場の一部に化けるのか、 なぜ磁場が電場の一部に化けるのか、その理由までは相対論は説明しない。 ただ、相対論の二つの原理を認めるならば、 どうしてもそこはそうでなくてはならないと結論づけるだけである。 それが相対論による、ある意味とても簡潔な説明だとも言える。
だからと言って、物理的な解釈を差し挟む余地がないわけではない。
電場の
また、速度
|