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CAST AWAY

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 無人島に漂着したトム・ハンクスは、サバイバルの過程でたくさんの切り傷を体に刻む。非常に痛そうである。自慢じゃないが私は30手前にして未だに生傷の絶えない少年のような面を持っている。今も、右手人さし指と左手薬指に切り傷がある。ちょっと前までは目と目の間と左の頬の下の方に切り傷があった。情けない話だが、どうやら私の神経は末端まで行き渡っていないようなのである。そういうにぶい自分がわかっているので、何かを試みようとする場合、それが怪我に結びつくかどうかを考慮することが多い。そうしなかった時や咄嗟に動いたときは怪我をすることが多い。
 そんな私にとって、トム・ハンクスの切り傷はおおかた予想できるものだった。岩場を歩きにくそうに歩くトム・ハンクスを見て、足を切りそうだと思うとドキドキしてたまらなくなる。切ったトム・ハンクスを見て、痛さを共感してしまう。救命ボートが珊瑚で切れた瞬間にドキッとしたら、トム・ハンクスが足に大怪我をしていた。石のかけらでヤシをむいているときも指の関節のところをざっくりエグりそうだと思ったし、スケート靴で虫歯を抜くときはスケート靴の刃が唇を貫く様子を想像して体が硬直したのだった。
 あれくらいの切り傷(珊瑚礁が太ももに刺さった傷は重傷だが)、無人島でサバイバルする上では大した問題ではあるまい、と言う人もいるかも知れない。でも、私はそうは思わない。手のひらや指や足先に作った切り傷は体に対するダメージはそんなに大きくなくても、咄嗟のときに力が入らなくなるのである。人間、なんて事のない動作にもけっこう力を入れている。歩いているときに、靴下に畳のケバがついていて、何かの拍子にそれが足の裏に刺さっただけで、それを避けようとして転びそうになったことないですか?あ、ないですか。飯食ってる時に口の中を噛んだら物凄い勢いがついていて口の内側食いちぎったことないですか?これはあるでしょう。そういうもんなのである。
 だから、孤島のサバイバル術として、救命ボートでテント作ったり火をおこしたり飲み水を確保したりすることも大事ではあるが、手足にキズを作らないようにするのもわりと大事なサバイバル術の一つだと思うのである。
 そういうことを思わせるだけでもこの映画はしっかり作ってあるのかも知れない。映画の登場人物が細かい切り傷や擦り傷を作っているのなんて、あんまり見たことないし。しっかり作ってあると言えば飛行機が落ちるシーンはいやーな気持ちになるくらいリアルな感じがする。何となく何かあったときのために十徳ナイフを身につけておこうか、という気持ちになるのだった。もちろん、ナイフを使うときは慎重に使うつもりだ。

(2001/07/02)


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