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ピースメーカー

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 印象に残る敵役、というものに巡り会うのはなかなか難しい。ちょっと前だと「スピード」のデニス・ホッパーや「沈黙の戦艦」のトミー・リー・ジョーンズなんかがそういうふうに言われているのを聞いたことがあるが、私にとってはそうでもなかったらしく、どっちの映画も見たことはあるが、敵役の印象は薄かった。「沈黙の戦艦」のトミー・リー・ジョーンズには全く気付かずに、マッチョなスティーブン・セガールの敵にしちゃあ随分歳のいったオッサンやな、と違和感を感じたくらいである。
 だいたい、敵役の人は主人公を追い詰める役しかしていないことが多い。最近では、頭が良い悪いに関わらずとにかく頭がおかしい人が敵役になるケースが多いような気がする。
 いろいろ考えてみた結果、私のなかで印象に残る敵役のキャラクターは、
○「レオン」のゲーリー・オールドマン:とにかくキレ過ぎ。ヤバ過ぎる。
○「ロボコップ」で悪者一味のボスをやってたカートウッド・スミスという人:眼鏡かけててハゲてて、じっとしてたら真面目そうに見えないこともないのに、なんか知らんがヤバそうな雰囲気出してた。
の二人であった。
 それと、「ピースメーカー」のデューサンことマーセル・ユーレスという人である。このキャラクターはストーリー上、敵役と言ってしまっていいのかどうか難しいところではあるが、ニューヨークのど真ん中で核爆弾をぶちかまそうというのだから、そういう意味では敵だろう。そこに至る背景は家族を殺された復讐であり、その辺が最近のサイコ・キラーみたいに敵と言い切れない部分である。
 が、私の印象に残ったのは、彼がサイコではなかったから、ではなくて、彼がピアニストの外交官であり、フーニャフニャのヒョーロヒョロだからである。普通、主人公を困らせるからには、頭がやたらと切れるとか、とにかく強いとか、不屈の精神を持つとか、そういう常人離れした部分があるものだと思っていたが、彼は、何にもないのである。体力なし。頭脳普通。精神力ちょっと強い。愛する家族を奪ったものに対する憎しみは持つが桁外れというわけでもなく、常人離れした執念を発揮するわけではない。そんな彼が、でっかいバックパックに入った核弾頭を背負って、肩ひもを両手で握りしめて、マンハッタンをただ一生懸命うろうろと逃げるのである。文字どおり人間核弾頭と化すのだが、バックパックは重いのか、普通に歩くのもフラフラである。世界を脅かす敵としては、私の知る限り過去最高に弱いであろう。弱いという意味では桁外れである。ただ、時限スイッチのONになった核弾頭入りバックパックを背負って歩くだけ。重たい荷物にヒイヒイ言いながら、愛する家族を奪われた悪夢が終わる瞬間が近いことだけを頼りに足を止めないのみ。とにかく悲愴感はハンパじゃないです。見ていて可哀想というか、がんばれーというか、マラソンの最後にゴールインする人を見ているというか。そして、最後には、見つかって追い詰められて、自分で頭を撃ち抜くのである。  世界の脅威となる敵なのに、これほど同情を誘う敵もいないだろう。復讐どうこうではなくて、そのヒョロヒョロぶりで同情を誘うのである。
 そして、これほどまでに印象に残る敵役が出てくるだけあって、「ピースメーカー」はとても面白かったのであった。

(2001/07/02)


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