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その男凶暴につき

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 北野武主演監督の映画は、たいてい一人の男が破滅に至る様を、破滅のちょっと前から追い掛けるような形式をとる。普通とは到底いえないが大事件発生ともいえない、ある意味「日常」といっても差し支えないような淡々とした細切れのエピソードが丁寧に積み重ねられ、展開していく。ストーリーはあるようなないような。センスのみで作られたような映画にも関わらず、観ていてとても丁寧な感じがするし、真面目な感じがする。そう考えると、北野武の映画は日本人の作った映画だなあ、と思う。世界的に評価が高いのもわかるような気がする。
 アクション映画が好きで、恋愛映画が嫌いだというせいで、日本映画にはずいぶんと縁のない映画歴を持つことになってしまったが、ハリウッドその他の外国製アクション映画が果たして完璧なのかどうか、と問われると、やっぱり外国製の映画では、映画の中の本当に些細な部分(今ここで具体例をすぐに思い出せないような些細なこと)に、微妙な違和感(主にガサツな感じ)を感じないわけにはいかない。そういう意味でも、日本人が日本で面白いアクション映画を作ってくれれば、それに越したことはないのである。そして、その答えの一つは北野武だと思う。
 アクションという面でいえば、北野映画におけるガンアクションは世界的にもトップクラスの無造作ぶりであろう。この映画のラスト、二人の男の撃ちあいがその典型だと思う。逃げない。狙わない。当たらない。当たらなければ歩いて相手に近づいていく。そして、相手の方に拳銃を向けて引き金を引くのみ。
 逆に、殴り合いはあまり面白くない。監督自身は、普通の映画のようなきれいな立ち回りの殴り合いでなくて、避けた方に拳が飛んでくるようなぎこちなさを殺陣師に要求したらしいが、本当のところ、どうなのだろう。監督は満足しているのだろうか。私はあの殴り合いをリアルだとも思わなかったし、ぎこちないとも思わなかった。
 北野映画の最新アクション映画である「BROTHER」では、殴り合いのシーンはほとんどなくなって、撃ちあいのシーンは、デビュー作であるこの映画に対して、ずいぶんと派手になったような気がする。この変化が何を意味するのかは今後の北野映画の展開を観ればわかるのだろう。
 というわけで、私にとって、「世界のキタノ」は独特の雰囲気を持つ好きなアクション映画の監督、ということになるわけだが、一つだけ直してほしい、というか、どうだろう、と思っていることがある。芸人魂がそうさせるのか、緊張と緩和という手法なのか知らないが、淡々とした展開のなかに笑いをとろうとするシーンが時々含まれる。正直なところ、それらのシーンはいつも、他のシーンからかなり浮いてしまっているような気がする。あれをなくすか、でなくてももうちょっと何とかしてほしいと思うんである。
 たぶん、北野監督はアクション映画を撮るのが好きなんだろうけど、好き放題に真剣にやってると、何となくかっこつけてるような気がして照れてしまうんでしょうね。
 もっと開き直ってほしいです。

(2001/07/02)


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