遺伝子ノックアウトマウス作製をゼロからはじめるかたへの特記事項
必要な時間:
遺伝子ノックアウトマウス完成までに最短でも1年。解析にも最低1年。合計するとトラブル無しでも、データが出るまでに最短で2年間。少々のトラブルを見込んで3年用意したい。
通常の分子生物学的な研究、細胞培養を行っているラボにある機材。ES細胞のインジェクション関係の設備としては、倒立型顕微鏡とインジェクター。インジェクターは、ディスポのテルモシリンジでインジェクションしている強者も実在するので、高価なインジェクターでなくても手作りでもOK。インジェクション針を作る機械類は必要。まとまった数のマウスを飼う動物施設は一番必要。
ES細胞の選定と入手は最重要ポイント。実験の正否を決めるクリティカルポイントであると言える。ES細胞は外見からだけでは「マルチポテンシー」を保持しているのかどうかは判断できない。確認する唯一の方法は実際にインジェクションしてみて効率よくキメラマウスができるかどうかを見てみる以外手がない。しかもこれだけでは不十分で、理想的にはできたキメラマウスからES細胞由来のヘテロマウスができてくるかまでのチェックが必要である。これだけで数カ月から半年もかかる作業である。よって、ゼロから始める場合は、うまくいってるラボのES細胞をもらうしかない。遺伝子ターゲッティングがルーチンワークになってるラボのES細胞を何とか直接もらう。いったんそれを手に入れればそのラボで蓄積している情報がそのまま流用できるので、その点のメリットは計り知れない。さらに希望を言えばそのラボに入り込んで何カ月か修行できれば完璧である。さらにもっと希望を言えば、そのラボでマウスを作るところまでやれればもっと完璧であるが。最近germline transmissionを確証されたES細胞が売りに出されている。これを使うのも一つの手ではある。
いろいろな会社が行っている遺伝子トラップ済みのES細胞システムは、検討する価値あり。すでに遺伝子トラップ済みのES細胞ストックを何万何十万クローンももっているので、目的の遺伝子がトラップされたES細胞がストック内にあれば、非常に早い。しかも、マウスができなければ代金返却というシステムもある。単純に遺伝子を潰すだけであれば、これで十分ではないか。