ES細胞の培養、培地の作製、サブカルチャー、凍結

 ES細胞の培養の注意点の一つは培養しすぎに注意すること。通常、継代後72時間放置することはない。48時間後には継代をおこなうようにする。速い分には24時間後でもかまわない。コンフルエント前の最後の数時間というのはES細胞の数、コロニーの形態等が急激に変化するので、注意深い観察が必要。あと半日くらいは大丈夫だろうとおもって家に帰って寝てしまうと、次の日、ES細胞の様子は激変してしまう。逆に継代してしばらくは分裂も遅く、培地交換はさほど神経を使う必要はない。
 もう一つの注意点は、逆に継代のやり過ぎである。ES細胞は培養環境で生きていく限り要らない遺伝子がたくさんあるわけで、そういった遺伝子がいつ抜け落ちとも限らない。極端な話、染色体がひとつ脱落しても見かけ上、区別のつかないときすらある。逆に染色体が多くなると分裂速度が増し、ワイルドタイプのES細胞より有利なためこれが生じると非常にやっかい。この様なES細胞は当然ながらジャームラインに落ちる能力はほとんどない。ES細胞のマウス一個体を発生させる能力はむしろ奇跡的能力なのであって、その点は十分注意を要する。エレクトロポレーションに使用するES細胞は特に大量に同世代で凍結保存しておくことが必要である。

(1)ES用培地 (ESM) の作製
(試薬)
*DMEM (high glucose)(炭酸水素ナトリウム3.7g・1NのHCl を7から8ml):フィルター濾過して冷蔵保存。
*FCS :ロットチェックしたもの。一度溶かしたら冷蔵保存しておく。
*X 100 sodium pyruvate (GIBCO) 冷蔵保存。
*X 100 non-essential amino acids (GIBCO) 冷蔵保存。
*X 10000 LIF
ESGRO 製、和光純薬販売1ml を22ul ずつに分注して-80度保存。一度融解したら2度と凍結はおこなわないこと。
*X 1000 2-mercaptoethanol (SIGMA, M3148)
1 ml DW に 7 ul 2-ME を加え、フィルター濾過して -80゚C 保存。古いものは使用しない。

(作り方)
以下のように混合する。一度に 200 ml ずつ作り、1週間程度で使いきる。pH が上昇して赤変したものは使用しない。使用前に37度で10分以上あたためる。

DMEM 156 ml
FCS 40 ml
X 100 sodium pyruvate 2 ml
X 100 NEAA 2 ml
X 10000 LIF 22 ul
X 1000 2-ME 200 ul
Total 200 ml

(2)サブカルチャー
(用意するもの)
*ESM
*Feeder layer
*0.25% trypsin/EDTA-PBS
*EDTA-PBS

(方法)
1)培地を除き、EDTA-PBSで一回洗浄する。トリプシン液を 1 ml/60 mm dish くわえ、インキュベーター中で5分間置く。
2)dish をゆすり底面より細胞を遊離させる。
3)培地を 4 ml 加え、ピペッティングを十分して(10回以上吸ったりはいたりする)細胞の凝集が無い状態にする。ES細胞は小さな球状をしており、丈夫で、この操作で壊れたりしない。枚数が多いときは5、6枚くらいを1セットにして行う。ピペッティングまでに時間がかかると細胞の凝集が起こってしまワう。
4)遠心チューブにうつす。一部とって細胞数を測定する。丸く光っている細胞のみを数える。60 mm コンフルエントで 1 X 10^7 cells の細胞がいる。
5)1 X 10^6 cells/60 mm dish となるように新しい dish にまく。培地量 5 ml とする。
6)翌日より毎日培地交換する。

(3)凍結
(必要なのも)
*10% DMSO/ESM
*凍結するための発泡スチロール

(方法)
1)サブカルチャー1)ー4)を行う。
2)1000 rpm, 5 min 遠心する。
3)上清を除き、5 X 10^6 cells/ml となるように 10% DMSO/ESM に懸濁する。
4)1 ml ずつクライオチューブに分注し、発泡スチロールの容器に入れ、-80゚C 一晩置く。
5)翌日からは、液体窒素中に保存する。