抗がん剤の併用薬--有害反応軽減


星子 謙
2000/5/24

 今回の勉強会のテーマも、時代の趨勢には逆らえず、ここのところ我が勉強会(For P club)で続いている分子生物学、分子医学、遺伝子医療の領域の流れに従って、遺伝子そのものの異常によって生じる癌を臨床面(薬物治療)から眺めてみたい。

 癌患者は、化学療法、放射線療法を受けなくても電解質の異常、悪液物質の蓄積などにより救援を求められる。この電解質の異常は、適正な治療を行うために薬物濃度を保つということの障害となる。まず、はじめに電解質異常、いわゆるサード・スペースの概念を解説する。恒常性を保つ為、限界ぎりぎりで頑張っている生体の代償機構、補償機構を学んでおくことは、他の分野の勉強をする上でも必ず役立つものと考える。

 本来治療を目的としてなされる癌化学療法は、治療に必要な量の投与でさえ有害作用を伴うことが当然と考えうるほど、有害作用の発生頻度が多い。これは、細菌に対する抗菌化学療法と異なって、制癌療法では攻撃対象が癌細胞であるのに、正常な組織、細胞にまで作用するためである。そのために、癌化学療法を計画する段階で患者の病態を把握し、その病態にあった投与量投与間隔さらには投与期間の設定をするとともに、有害作用の回避、発生時の対応をあらかじめ練っておくことが必要である。

 有害反応を軽減する方法としては、スタンダードになっているいくつかの中からMTXのLVレスキューと5-FUのLVレスキューの理論と、新しい試みとして塩酸イリノテカンの漢方薬による下痢の予防の二つを取り上げ、詳細に解説してみたい。お気づきの事と思うが、有害反応を軽減するということはすなわち、臨床効果をあげることであり、次回の勉強会のテーマである抗がん剤の併用薬--作用増強と表裏一体であり明確に区別することは出来ない。重複する内容になるのはご了承ください。
また、時間が許せば外来処方箋でも散見されるアロプリノール含嗽水にまで言及したい。


 今回、詳細に解説出来ない方法も含めて、資料という形で配布するのだが、とりあえず一覧にしてみた。

◎アドリアマイシン、ブレオマイシンによるスーパーオキシドが原因と考えられる心毒性に対するIL-1の予防的投与。

◎投与量規制因子となる骨髄抑制を克服するためのG-CSF投与。

◎血小板減少に対するトロンボポエチンの投与。

◎5-FUによる消化管毒性の軽減。
5-Fuに拮抗する物質でしかも、投与後、消化管に局在することにより、消化管細胞の障害を防ぐ。

◎投与されたピリミジン系アナログ薬剤の腫瘍部位以外での活性を抑制するため、ピリミジンヌクレオシドフォスフォリラーゼ阻害薬の投与。

◎シスプラチンによる嘔吐の抑制。5-HT3レセプター拮抗薬。

◎5-HT3以外の制吐方法。

◎カルバペネム系抗生物質の腎毒性を軽減するために配合されている物質を、シスプラチンの腎毒性軽減に応用。



また、もっと詳しく勉強したい方は、以下の書籍を求めてください。

書名 がん化学療法の副作用対策
(改訂版)

(原)著者 吉田 清一 監 
出版社名 先端医学社 
ISBNコード ISBN4-915892-42-5 
分類 臨床医学:一般 / 癌・腫瘍一般 
発行年(初版) 1996 
判型 / 頁数 B5 / 588 
本体価格 12,000 円 


書名 がん化学療法の有害反応対策ハンドブック

(原)著者 吉田 清一 監 
出版社名 先端医学社 
ISBNコード ISBN4-915892-73-5 
分類 臨床医学:一般 / 癌・腫瘍一般 
発行年(初版) 1993 
判型 / 頁数 B6 / 264 
本体価格 4,000 円