抗癌薬の併用薬--作用増強

 

2000.7.26 山口 美江子



 癌は、どの診療科でも対象疾患として重要であるから、治療効率を上げるための戦略は共通の関心ごとである。薬物治療の原則は、治療効果を確保しつつ有害作用を防ぐことにある。そのために、対象とする症例に最も適した薬物の選択とともに、その患者の病態にあう投与量と投与間隔の設定が処方の中心となる。それにもかかわらず、抗がん剤では治療投与量でも有害作用が発生しうるので、治療中に起こる有害作用は、せっかく選択した薬物療法の継続を困難にし、しばしば患者の治療への意欲を消えさせてしまうだけに、その対策も重要な課題となっている。

その癌化学療法においては、単剤での有害作用の面からも投与量の上限が設定されていることもあり、相加・相乗作用を期待して多剤併用する例が多く見られる。作用増強を機構から分類してみると、
1.耐性機構を阻害して薬物の送達率を増加させる。
2.複数の薬物によるbio-chemical modulationによる制癌活性増強を期待する。
3.DDSの利用、開発により抗癌作用増強
4.その他
に分けて考えられる。

 今回の勉強会のテーマは、抗癌薬の作用増強である。前回の『副作用の軽減』とは、表裏一体であるので、まず、復習もかねて5-FU関連から作用機序とその周辺の代謝機構を概説してp309〜の『5-フルオロウラシルによるシスプラチンの抗腫瘍効果増強と耐性克服』に入りたい。
 ここで、私からの解説を始める前に、皆さんの頭を『癌』に切りかえるため、めいめいに『癌とは何か』を考えていただきたい。全員に『癌』と『正常』の違いを、或いは、『癌』の特徴を、1人1つずつ、順に述べてもらって、意見の出尽くすところまで、やってみましょう。

 次のポイントは、『抗癌薬耐性』である。ここを押えておく事は薬剤師にとって必須と考えるので、p297〜の『抗癌薬多剤耐性の機構とその克服』、p305〜の『多剤耐性克服薬MS-209の効果』をテキストにして解説する。

 次に時間があれば、p329〜の『アンジオテンシンU昇圧による抗がん薬の腫瘍血管外移行の増強』を解説したい。
腫瘍組織の異常な構造を知ることは、正常組織との対比においてその構造の特徴を際立たせる事になり、より、組織の構造を理解する助けになると思います。

 今回配布した資料はすべてここで消化するのは不可能ですので、各自、もう一度といわず、2〜3回、読みなおしてほしいと思います。薬剤師が関与できない治療法を知る事によって、きっと、癌治療における薬物療法の位置付けがはっきりする事でしょう。また、これを知る事(マクロな視点を養う)も、薬剤師にとって大切な事だと考えてます。

★配布資料一覧

・抗がん薬多剤耐性の機構とその克服

・多剤耐性克服薬MS−209の効果

・5-FUによるシスプラチンの抗腫瘍効果増強と耐性克服

・生体内分解性マイクロスフェア型長期徐放性注射剤による酢酸リュープロレリンの作用増強

・ドキソルビシンまたはダウノルビシン封入リポソーム注射による抗がん効果増強と有害作用軽減

・モノクローナル抗体結合抗がん薬によるガンミサイル療法

・アンジオテンシンU昇圧による抗がん薬の腫瘍血管外移行の増強

・遺伝子導入法の発展とガンの遺伝子治療

・大腸癌肝転移の治療戦略としてのIL−2の利用

・進行胃癌に対する併用化学療法の位置付け

・メトトレキサート/5−フルオロウラシル時間差投与法による胃がん治療

・低浸透圧シスプラチン溶液腹腔内投与による胃がんの腹膜播種治療

・腹膜播種に対する温熱化学療法と腹膜亜全摘

・化学温熱腹膜潅流による胃がん腹膜再発の予防

・胃がん治療に対する昇圧化学療法

・大腸癌に対する5−フルオロウラシルとロイコボリンの併用療法

・大腸癌の温熱化学療法

・肝癌に対する高分子化抗がん剤動注療法におけるガン組織集積性----とくにスマンクス/リピオドール療法を中心に

・肝癌に対する温熱併用化学塞栓療法

・肝癌根治療法後の再発に対する非環式レチノイドの抑制効果

・原発性肺がん切除例に対する術後補助免疫療法

・生体内吸収性高分子を用いた徐放性抗がん剤マイクロスフェアによるがん胸膜炎の治療

・婦人性器ガンに対する温熱化学療法

・脳腫瘍化学療法における drug delivery system の利用

・悪性グリオーマに対する biological response modifier (BRM) 療法

・レチノイン酸による急性前骨髄性白血病の分化誘導療法

・軟部肉腫に対するカフェイン併用動注化学療法