Th1,Th2制御とNKT細胞,樹状細胞のかかわり


プロローグ
NKT細胞の機能と感染制御
Th1/Th2分化における樹状細胞の役割
Th1/Th2分化におけるサイトカインの役割
Th1/Th2バランス制御におけるケモカインの役割
最後に

〜〜プロローグ〜〜

2001/8/22 Mitsuyuk Ohno@ForPclub

まず始めに、皆さんに質問します。
『何故、結核菌は細胞性免疫で排除されるのか?』
『何故、麻疹やおたふく風邪は、液性免疫で排除されるのか?』
(厳密に言えば、細胞性免疫も活性化され、一役買っているのだが、ここでは省略。)

この問題は『何故?』と問う性格のものじゃないのでは?
何故、リンゴは赤いのか?
何故、みかんはオレンジ色なのか?って聞いてるようなもんじゃないか!っておっしゃる方もいるでしょう。


結核菌は細胞内寄生細菌で、Immuno-globulinが細胞内まで入れないから生体は細胞性免疫を誘導すると説明される事もあります。

「細胞内寄生細菌の場合は細胞性免疫」というのが、一般的には言われています。しかし、生物一般の普遍的な現象でない事は、ある系統のマウスの場合、細胞内寄生細菌を接種すると液性免疫が誘導されて死に至るが、別系統のマウスでは、細胞性免疫が誘導されて、死を免れるとういう事実から、種固有の現象である事も認められてます。

どうして、ヒトの場合、結核菌に感染した時、積極的にIgGを作らずに、キラーT細胞をせっせと誘導するのでしょう。まるで当たり前の事をしているように。

どうして、ヒトの場合、花粉に暴露されると、IgE抗体を産生するのでしょう。どうして、キラーT細胞が誘導されないのでしょう。IgEさえ産生されなきゃ、あの煩わしい「くしゃ」「はなみず」「はなづまり」に悩む事も無いのに。

抗原が補足されて、免疫が発動するまでの間のどこかに、この秘密を解く鍵が隠されているものと考えられます。

今現在、この謎は全て解明されているわけではありませんが、ここ2〜3年で加速度的にその謎を解く鍵、知見が集積されてます。

冒頭の『何故?』が解明されるという事は、その現象をコントロール出来るということに繋がります。すなわち、治療法、治療薬の作用機序を理解することに繋がります。
今回は、この謎に迫るべく、現時点でわかっている事実を紹介しながら、免疫現象全体の中でその事実がどのあたりに位置付けられるのかをレクチャーしてみます。
そして、今回は、かなり難しい?と思うので、その前に柔らかい話からしてみましょう。


みなさんの中には、どうして薬剤師が『免疫学』に詳しくなる必要があるのか?と思われてる方もいる事でしょう。

たしかに、日々の我々の仕事、特に処方箋を見ながら調剤するという行為は単純作業で、その中には、アカデミックな要素が感じられないのは否定できませんし、ハッキリ言って退屈な業務であるといえます。(処方箋監査は大切な仕事だけど、アカデミックというほどではないよなぁ!パソコンでチェック出来ちゃうパターン解析だからね。多剤併用時のP450の競合や吸収阻害なんてね。アレルギーの有無もコンピュータに記録しときゃいいもんね。)
もう一つの仕事である服薬指導、これは、やり方によっては調剤行為より楽で、服薬指導マニュアル本を暗記して、薬情を見せながら『これが血圧降下剤で、これが免疫抑制剤で・・・』なんて誰がやっても出来ちゃうという性格を持ってるから、手を抜きほうだいでOKだし。
薬歴簿記載の為に、いろいろとインタビューするけど、マニュアル通りやってれば、質問の意義なんか理解してなくてもOKで、結果、問題点が浮き彫りになる事も無し。だけど、いろいろ質問された事で、患者さんは安心して調剤をまかせてくれるという良い事だらけ。(おや!?こりゃ、まるで、検査はバンバンするけど、検査結果やレントゲン写真、心電図なんかが読めない○ブ○者と同じみたいだね。検査されるだけで患者さんは安心するからね。その結果が、治療方針に反映されなくてもね。)


ところで、薬の副作用に対する説明で、一番楽チンなのが『アレルギー』『アレルギー体質』ですね。

なんたって、この言葉、水戸黄門の印籠並みのパワーがあります。説明する薬剤師だってほとんどわかってないクセにバンバン使うし、説明される患者さんだって『アレルギーか!』って一発で納得してしまう。(なんて、魅力的な言葉、アレルギー。いろいろな活用方法を考えれば、無敵だ。)
間違っても、
『どう言う仕組みで、皮膚だけに症状がでるのか?』
『どうして、自分だけに出るのか?』
『同じ薬で、自分は皮膚症状、友人は喘息症状、どうして違うの?』
『このまま、ほっておいたら、重症化するのか?』
『この“アレルギー治療薬”を飲む、飲まないで、メリット、デメリットを教えてくれ!もう薬を飲むのが怖いから!』
なんて、質問される事はありません。

もし質問されたら、薬剤師は知っている顔をしながら、『そういう事は、治療方針にもかかわる事なので、Drに聞いてください』とヤレば、恥をかくことも無し。
やっぱり、勉強なんかしなくても、りっぱに薬剤師出来ちゃうジャン。なんかあっても、責任を問われること、無いしね。(薬の出し間違いで責任は問われるけど、こりゃ、当たり前だのクラッカーかっ!)
それに、勉強しなくていいし、ラク出来るから薬剤師になったのに・・・・。


うーーん、こう言われてしまうと、私も、反論の余地がありません。

免疫学は、『予防接種だ』『花粉症だ』『蕁麻疹が出た』などに対応する学問から、分子生物学や遺伝子工学、ゲノム科学をも取りこんで、生命現象そのものの『何故?』を解明する学問へと変わりつつあります。

日々の退屈な定型業務の中にも、病気を理解し、生命現象を理解し、その治療薬で病態がダイナミックに改善していく様を想像し、血管や臓器で発生するイベントをビジュアルに想像し、ワクワクしながら仕事したほうが、楽しみも増え、やり甲斐もあるってもんじゃないですか。知的好奇心が刺激されれば、多少なりともストレスも改善されるっていうもんじゃないですか?それに、勉強してれば患者さんの疑問、質問、悩みにクリーンヒットする確立がグゥーンとアップして、ホームランで信頼されるってゆーおまけも付くし?
また、ちょっと知ったかぶりの患者さんからは、
『インフルエンザのワクチンはあるのに、ガンのワクチンが無いのはどうしてだ?花粉症のワクチンもないじゃないか?薬屋さんは、ずぅーと薬飲ませたほうが儲かるもんなぁ』とか、
『自分の病気で調べたんだけど、胸腺以外で成熟するT細胞もあるっていうじゃない!なのにどうして、人間は全員、自己免疫疾患にかからないの?』
なんて、イヤミを言われるたり、意地悪されたりしても、知識があれば、ギャフンと言わせられるしね!
(。_゚)☆\(--;)バキッ
でも、『ヒスタミンって、細胞が爆発して出てくるって他の薬局で聞いたんだけど?』なんて言われたら、やさしく、『いえ、爆発ではなく、Rho系遺伝子活性化によるチューブリンの重合と膜融合の結果です』とさらりと言ってのけましょう。信頼度を増すか、呆れられるかは、皆さんの人徳次第です。

私にも、詳しく勉強する意義、これくらいしか見当たりません。


さぁ、そろそろ、ふざけた話も終わりにして、本題に入っていきましょう。

 CD4陽性T細胞が分泌するサイトカインによってTh1とTh2の2つの亜集団に分類される事がMosmannらによって報告されて以来、この概念は基礎、臨床を問わず、免疫学の中に広く浸透しています。現在ではTh1が活性化されれば細胞性免疫が、Th2が活性化されれば抗体応答、特にIg‐E産生、が誘導されると常識的に考えられるようになりました。
自己免疫疾患や、感染防御免疫もこの考え方によって整理される事が多いです。各亜集団が産生するサイトカインの活性から考えれば、納得が行く考え方だからです。しかし、生体の免疫反応は両亜集団が産生するサイトカインが相互に制御し合いながら、反応が進行するものであり、その間には、Th細胞以外の細胞の活性化が関与するのが普通です。(7月の勉強会では、Th1、Th2が産生するサイトカインが直接、Th1/Th2相互に働きかけてフィードバックしていると誤解されそうな資料がある事を指摘した。その時、フォローもせずに指摘しっぱなしにしておいた事だが、後日、誰からも質問が無かったのが残念だが、実は、Th1、Th2の上流のDC1,DC2レベルでは、フィードバックを掛け合っているのである。これが、相互に制御し合うということである。詳しくは後述する。)

また、ひとつの免疫反応には単独のTh亜集団のみが関与するのではなく、一つの反応の各局面において両亜集団がともに関与すると考えられています。(ウイルス排除のようにね!細胞内にもぐりこんだウイルスには抗体は歯が立たないから、その感染細胞を細胞性免疫に壊してもらわなければならない)

さらに、病変局所の免疫反応は、必ずしも、全身の反応を反映しているわけではありません。

したがって、Th細胞の組織内での移動・集積は重要な意味を持っています。Th細胞亜集団のケモカイン受容体発現の最近の研究の進歩は、大きな意義を持ちます。

Th細胞亜集団の分化については、ナイーブTh細胞に抗原を提示する樹状細胞の亜集団(DC1,DC2)によって決まるという知見や、つい最近発見された、NKT細胞が免疫応答の初期に大量のIFN‐γやIL-4を産生する事によって、Th1/Th2バランスを調節しているという知見が集まりつつあります。

そして、樹状細胞は、NKT細胞にも、抗原を提示する能力がそなわっているのであります。

なんだか、謎解きには、この辺が“クサイなっ”って思うでしょ?!

まず、Th1,Th2 の方向性を決定する一翼を担うと認識されつつある、NKT細胞の免疫現象での“振る舞い”を見ていきます。
その後、樹状細胞によるTh1,Th2 の方向性を決定する条件などを示し、うまくいけば、世界に先駆けて、『何故?細胞性免疫なのか、何故?液性免疫なのか』の答えを導き出せるかもしれません。
(こうなったら、論文にまとめて、ノーベル賞を狙います…オイオイ、んなワケねぇーだろ)

というわけで、支離滅裂、尻切れとんぼに終わる可能性が大きい中、無謀にもこのテーマに着手します。途中、わからなくなったら、遠慮無く、流れを止めて質問してもらって結構です。また、本文中は『です・ます』調の書き方はしません。

〜〜NKT細胞の機能と感染制御〜〜



 近年、新たなリンパ球、今までの分類法では分類できない、NKT細胞が見出された。このリンパ球は細胞表面にNK(ナチュラルキラー)細胞受容体とT細胞受容体を発現しており、既知の免疫系が主要組織適合遺伝子複合体(MHC)拘束性にペプチド抗原を認識するのに対して(注1)、MHC非拘束性に糖脂質抗原を認識して活性化する。生体の感染防御は、大別して食細胞による自然免疫とリンパ球による獲得免疫によって担われているが、NKT細胞は自然免疫に分類され、ナイーブT細胞のTh1/Th2スイッチングに関与し、自然免疫と獲得免疫との橋渡し役を担うとして注目されている。


■樹状細胞による抗原提示刺激を受けてIFNγ、IL-4を産生

 免疫系を構成するリンパ球として、T細胞、B細胞、NK細胞(ForPclub まめ知識14参照)の 3 種の系列が知られているが、新たに見出されたNKT細胞は、T細胞とNK細胞の性質を持つ第 4 のリンパ球と言われる。
 NKT細胞は、細胞表面にNK細胞受容体とT細胞受容体の両方を発現している。NK細胞受容体には、NKR-P1、NKG、Ly-49などがあり、NKマーカーとして、マウスではNKR-P1(NK1.1)、ヒトではCD56が用いられている。奇妙なのはT細胞受容体のほうで、胸腺由来の通常のαβT細胞のや胸腺外分化γδT細胞のT細胞受容体とは、その遺伝子構成は全く異なるものだった。


(この図は単なるイメージです。かっこいいでしょ!)

(この細胞の発見の過程は驚きの連続であった。常にVα14遺伝子とJα281遺伝子との間で再構成され、この遺伝子から作られるT細胞受容体Vα14TCRα鎖を持つ細胞が全ての純系マウスにほぼ等しい頻度で存在している事が判明する。【詳しくは澤井豪氏担当勉強会の資料、“Vα14NKT細胞による腫瘍拒絶”を参照されたい】
そもそも免疫細胞は、その類まれなる多様性を最大の特徴とするが、その中にあって、同一の受容体だけしか発現しないVα14NKT細胞がMHCのハプロタイプの違いにかかわらず存在している事は、大きな驚きであった。(注2)
また、後になりα鎖とヘテロダイマーをなすβ鎖の多くが、Vβ8.2である事が判明する。
この細胞が他のリンパ球と異なる決定的な証拠は、胸腺形成以前の胎生早期から生体内に出現している事、生後は主に胸腺外の抹消リンパ組織で分化していくこと、その分化がVα14TCRα鎖の発現によって規定されることである。
Vα14NKT細胞が均一な抗原受容体を持つ事から、これによって認識される分子も均一なものが想定されていた。マウスのCD1d分子はハプロタイプに関係無く全てのマウスで同一の構造をしているMHCクラス1bに分類される分子であるが、これがVα14抗原受容体によって認識される事が分かって、なるほどと、納得するのであるが、この時点で、CD1d分子に補足される抗原は、特定できていなかった。)

(注1:どういうこと?
大野の体内から取り出した樹状細胞は、ホッシーのT細胞に抗原情報を伝える事ができるのか?
(注2:なんで、驚きなのか??


 通常のT細胞受容体は、周知のようにV、D、Jなどの遺伝子断片の再構成によって構築されており、さらにランダムな塩基配列が挿入されて、抗体と同等かそれ以上の多様性を持ち、多彩な抗原に対応する。しかし、NKT細胞のT細胞受容体はほぼ均一な遺伝子構成を持ち、マウスではα鎖がVα14/Jα281、β鎖がVβ8、Vβ7、Vβ3、Vβ2に限定されている。ヒトでも同様にα鎖の遺伝子はVα24/JαQ、β鎖の遺伝子はVβ11に限定され、多様性は見られない。

 NKT細胞が認識する抗原は糖脂質抗原であり、その抗原認識もCD1d分子の抗原提示を受けて行われ、これまで知られているT細胞によるMHC拘束性のペプチド抗原認識とは異なることが明らかになっている。CD1dはMHCクラス I 分子と類似した構造の分子で、糖脂質のアシル基がはまり込む深い溝を持つ。

 NKT細胞のCD1d認識機構はヒトでもマウスやラットでも共通で、種を越えて存在することが明らかになっている。NKT細胞に対する抗原提示を担う最も主要な細胞が樹状細胞(dendritic cell)で、多数のCD1dを発現しており、きわめて強力な抗原提示活性を持つ。抗原刺激を受けたNKT細胞はIFNγ、IL-4の 2 種のサイトカインを産生する。IFNγはIL-12とともに抗原刺激にさらされていないナイーブT細胞(Th0)のTh1への分化誘導にかかわり、IL-4はTh2への分化誘導にかかわると考えられている。

 NKT細胞を活性化させる糖脂質抗原は、千葉大学、谷口ら(NKT細胞発見者)のグループによって報告された海綿由来の合成糖脂質α-GalCer(ガラクトシルセラミド)が有名である。内因性糖脂質としては、今のところGPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)が、NKT細胞のナチュラルリガンドとして報告されている唯一のものである。 

■クリプトコッカス感染症でNKT細胞機能を検証する
----NKT細胞はIFNγ産生を介して感染制御と細胞性免疫誘導に働く

 クリプトコッカスは、後天性免疫不全症候群(AIDS=エイズ)に合併する日和見感染症の重要な原因真菌である。細胞性免疫によって感染制御が担われているが、いったん播種が起きると脳や髄膜に病巣をつくりやすく、クリプトコッカス髄膜炎は重篤な疾患として知られている。病原微生物のなかでも特に排除に手を焼くのが細胞内寄生菌だが、クリプトコッカスも最近は細胞内寄生菌、あるいは細胞内増殖菌として位置付けられている。実験では、主としてNKT細胞が産生するIFNγ動態と、細胞性免疫のかなめとなるTh1誘導の関連に注目した。

 クリプトコッカスの臨床分離株を経静脈接種した野生型マウスに、感染後経時的に合成糖脂質α-GalCerを腹腔内投与して、感染 1 週後と 2 週後に肺内と脾臓内の生菌数をカウントした。肺、脾臓のいずれでもα-GalCer投与群でコントロール群より有意な生菌数の減少が認められ、特に肺内のクリプトコッカスは検出限界以下に減っていた。
 こうした著明な効果は、Jα281遺伝子を欠損させたいわゆるNKTノックアウトマウスでは観察されなかったことから、α-GalCer投与による感染防御効果はNKT細胞を介したものと考えられた。


 さらに、野生型マウスのα-GalCer投与群では血清IFNγの著明な増加が認められたが、NKTノックアウトマウスの血清中からはα-GalCer投与によってもIFNγはほとんど検出されなかった。

 上記の野生型マウスα-GalCer投与群では、血清IFNγはクリプトコッカス感染 3 日後から検出量が増え、感染 7 日後にピークを示し、14日後にはほとんど検出されなくなる。そこで、感染 7 日後に野生型マウスの脾細胞を取り出し、in vitroで再度抗原刺激を加えたところ、α-GalCer投与群由来の脾細胞から抗原量依存性に大量のIFNγが産生されるのが確認された。野生型マウスでも、コントロール由来脾細胞やNKTノックアウトマウス由来の脾細胞からは、再度の抗原刺激によるIFNγの産生はほとんど認められなかった。

 さらに最近の研究では、NKTノックアウトマウスではクリプトコッカス肺感染が悪化するとともに、感染局所でのTh1細胞の誘導が十分に起こらないことを示す実験結果も得られている。
 これらの一連の実験結果は、感染早期にNKT細胞がIFNγを産生して感染制御に働くと同時に、クリプトコッカス特異的なTh1を誘導することを示すものと考えられた。 




■NKT細胞の感染制御は病原微生物により異なる?

 クリプトコッカス感染にかかわるNKT細胞の活性化と役割は次のように考えられる。
 感染が起きると、まず感染局所で自然免疫系が活性化し、マクロファージや樹状細胞による抗原取り込みが起きる。クリプトコッカス由来の糖脂質抗原は、主として樹状細胞上のCD1d分子に結合して抗原提示され、同時にマクロファージや樹状細胞はIL-12を産生して、NKT細胞やNK細胞の活性化を促す。(おいおい、いきなり、IL-12を出すなぁーー!謎解きになってねーぞ!)★
 NKT細胞は、CD1d分子に結合した糖脂質抗原を抗原受容体によって認識し、IFNγを産生してNK細胞の活性化やTh1細胞の分化を誘導する。NKT細胞、NK細胞、Th1細胞から産生されたIFNγがマクロファージを活性化して、NO(一酸化窒素)によるクリプトコッカスの殺菌を促す。

 最もプリミティブな自然免疫系の活性化からTh1細胞などによって担われる獲得免疫系の発動まで、数日間のタイムラグがあることが知られている。NKT細胞は、NK細胞や、皮膚あるいは腸管上皮などに存在する胸腺外分化T細胞(γδT細胞)とともに早期誘導免疫の一員としてクリプトコッカスの殺菌を担い、獲得免疫発動までの間隙を埋めると同時に、獲得免疫誘導の一翼を担う重要な細胞と位置付けることができる。

 一般に、Th1の誘導にはIFNγ、IL-12とともに、IL-18といったサイトカインが重要とされているが、IL-18をノックアウトしたマウスを用いても上記の一連の反応の進行に影響は見られなかった。したがって、少なくともNKT細胞に関しては、IL-18の役割はまだわからないらしい。Th1/Th2バランスの制御におけるIL-18の役割・意義に関しては、後述する。
 また、クリプトコッカス感染系では、NKT細胞が感染制御にきわめて有効であることが明らかになったが、文献的にこの結果が必ずしも他の細胞内寄生性細菌にそのまま当てはまるとは言えないようだ。
 例えば、CD1dを欠損させてNKT細胞の分化誘導をノックアウトしたマウスに結核菌を感染させても、感染増悪などの影響は見られなかったと報告されている。あるいはリステリアのように、NKT細胞によってむしろ感染増悪が示唆されている例もあるという。一方、マラリア原虫やトリパノソーマでは、NKT細胞によって大量の抗体が誘導されると報告されている。

 このように、NKT細胞が関与する感染制御は複雑な様相を呈しており、NKT細胞が産生するIL-4が液性免疫を誘導し、細胞性免疫を抑制することによる影響もあるだろう。NKT細胞が産生するサイトカインがIFNγ優位に傾くかIL-4優位かで、状況が大きく変わってくることがあるのであろう。★

ここで、忘れてならない事は、NKT細胞はDC抗原提示を受けて免疫応答を発動するだけでなく、自らNKレセプターを使って独自に、感染微生物の排除に動けるということである。DCに依存しないサイトカイン分泌パターンもありうるという事である。


以上をふまえて、NKT細胞や、Th細胞に抗原情報を提示する、樹状細胞(DC)の機能を見ていきましょう。

〜〜Th1/Th2分化における樹状細胞の役割〜〜



 樹状細胞は生体に広く分布し、抗原特異的にT細胞を活性化、免疫応答を誘導する抗原提示細胞であり、免疫システムを多方面から統御する細胞として、最近注目されている。また、樹状細胞は単一な細胞集団ではなく、骨髄幹細胞から異なる分化経路を経て異なる組織に移動・分布するいくつかの亜群により構成されていると考えられている。とくに樹状細胞にはその起源、属性からミエロイド系樹状細胞とリンパ球系樹状細胞に大別され、免疫機構におけるその役割分担が近年提唱されている。
 細胞性および液性免疫応答は、最終的に細胞傷害性T細胞や抗体産生細胞を介して誘導されるが、その過程には、さまざまなサイトカインや細胞間相互作用の影響を受けている。これら免疫応答の開始に際して樹状細胞はその役割を果たすが、その亜群により免疫監視機構、抗原情報の提示、さらにはこれに引き続く免疫応答の調節・制御に異なる役割を果たし、ときには相反する調節制御機構をもつことが明らかになっている。

 ここでは、これらの最近の知見に基づき、免疫応答における樹状細胞の免疫制御機能、とくにT細胞への免疫応答の違いについて解説する。

■ミエロイド・リンパ球系樹状細胞
 樹状細胞は骨髄幹細胞由来であることは広く知られており、現在までのところ大きく2つの分化経路が想定されている。ひとつは、その分化成熟にGM-CSFが必須であることからミエロイド系樹状細胞と総称され、Langerhans 細胞や単球由来樹状細胞、CD11c+末梢血樹状細胞が属すると考えられる。
 一方、リンパ球系樹状細胞はT細胞と共有の前駆細胞を経て樹状細胞へ分化すると考えられており、GM-CSFに依存しない。ヒトにおいては、リンパ組織T領域や末梢血に存在するplasmacytoid cell が想定されている。

fig1

 実際に、末梢血CD11c+樹状細胞や単球は培養条件によって Langerhans 細胞や成熟単球系樹状細胞のみならずマクロファージヘと分化しうることから、ミエロイド系樹状細胞は単球/マクロファージの近親の細胞属性をもつことが推測され、マクロファージと同様に刺激により強力なIL-12産生能をもつことが知られている。
 一方、リンパ球系樹状細胞と考えられるplasmacytoid cellの分化・成熟にはGM-CSFではなく、むしろIL-3依存性であることや、pre-T細胞レセプター一α鎖(pTα)を有していることも報告されている。興味深いことに、この細胞はミエロイド系樹状細胞とは異なり、IL-12産生能は低いかほとんどないことが示されている。代わりにウイルスやある種の菌体により多量の1型インターフェロン(IFN-α/β)を産生することが近年報告され、これまで実体が明らかでなかった血中1型IFN産生細胞であることが明らかにされている。
 1型IFNは抗ウイルス活性がおもな生物活性であり、対ウイルス防御機構の中心をなすサイトカインであることから、この樹状細胞亜群はウイルス感染時に対する免疫防御細胞として重要であることが示唆される。いずれにせよ、ヒトにおけるリンパ球系樹状細胞は感染時に対する初期免疫防御機構のなかで1型IFN産生細胞として発動した後、成熟によって抗原提示細胞として機能しうると考えられる。

■T細胞免疫応答における樹状細胞の免疫制御機構
 樹状細胞の専門化された抗原提示細胞としての機能は、適応免疫応答において中心的な役割を果たすと考えられる。すなわち、生体に侵入した病原性微生物を特異的に認識し、さまざまなタイプの選択的免疫応答を発現させるうえで、樹状細胞は非常に合理的に機能する。その機能のひとつとして、樹状細胞は強力な naive helper T(Th)細胞刺激活性化能をもっている。
 樹状細胞により分化・活性化されたTh細胞は抗原特異的にcytotoxic T細胞(CTL)を刺激活性化し、細胞性免疫応答を誘導(→Th1)、また一方でB細胞に標的分子を提示し、抗原特異的な抗体産生を促す(→Th2)。近年、そのT細胞活性化能に対する樹状細胞のあらたな免疫制御機構が明らかにされている。すなわち、naive Th細胞からのTh1あるいはTh2細胞への分化を樹状細胞が制御しているというものである。(fig2参照)

fig2

樹状細胞によるT細胞制御にかかわる因子
適応免疫応答において樹状細胞は、Th細胞のTh1およびTh2への分化を制御していることが報告されている。樹状細胞の lineage の違いや成熟段階の違いによりTh細胞の分化に差異が認められ、一方で樹状細胞に対するサイトカイン刺激や感染微生物の違いによっても異なるTh1/Th2バランスが誘導される。

注1:LiuらのグループはTh1を誘導するDCとして末梢血単球を樹状細胞の precrsor stageの細胞として pre-DC1(pDC1)、末梢血単球をGM-CSF、IL-4存在下で培養・調整した樹状細胞にCD40-ligand刺激で成熟させた成熟樹状細胞をDC1と定義した。

注2:Th2を誘導するDCとして、リンパ組織T領域の plasmacytoid cell(あるいは末梢血CD4+CD11c-樹状細胞)をpre-DC2(pDC2)、これらををIL-3、CD40-ligand刺激で成熟させた樹状細胞をDC2と定義している。


1.樹状細胞側の因子によるTh1/Th2誘導の差異
 以前より、ミエロイド系樹状細胞は種々の刺激により多量のIL-12を産生し、Th1細胞を誘導することが知られていた。しかし、リンパ球系樹状細胞である plasmacytoid cellではIL-12産生能が低い。この観点からLiuらのグループは、ミエロイド系樹状細胞とリンパ球系樹状細胞におけるTh細胞に対する機能の検討を試みている。彼らは、ミエロイド系樹状細胞である単球由来の樹状細胞が in vitro において異系 naive Th細胞を刺激活性化し、IFN-γ産生Th細胞を誘導する、すなわちTh1への分化を促すことから、単球由来樹状細胞をDC1と定義した。(fig2注1)
 この作用は抗IL-12抗体により阻害されることから、IL-12を介した反応と考えられる。一方、IL-3によって成熟させた plasmacytoid cell は異系 naive Th細胞を刺激活性化し、IL-4産生T細胞を誘導、Th2への分化を促進することを明らかにし、このリンパ球系樹状細胞をDC2とした。(fig2注2)

 しかし、DC2にはIL-4産生能が認められず、また、抗IL-4抗体を用いることによってもこの作用は変化しないことから、IL-4以外の因子がこのDC2-T細胞間作用に関与している可能性がある。しかし、現在までこの因子は同定されていない。

 さらに、このDC1とDC2にはそれぞれが誘導するTh1/Th2細胞を介してたがいに制御するというフィードバック機構の存在も示されている。(fig3)つまり、DC2が誘導するTh2細胞由来のIL-4はDC2自身の生存を阻害するが、単球からGM-CSF+IL-4でDC1が誘導されるようにIL-4はDC1には促進的に働く。

fig.3


 一方、DC1から誘導されるTh1細胞由来のIFN-γはDC2の生存に対し抑制的に働くIL-4の作用を中和する機能をもつ。このようなサイトカインを介した制御機構により免疫システムのホメオスタシスは維持されていることが予想される。このように、樹状細胞における起源・属性の違いによりT細胞に対して異なる免疫応答を誘導する可能性が示されている。

 しかし、しかし、しかし、plasmacytoid cellが、CD40-ligand 刺激により前述した1型IFNおよび、DC1と同等以上のIL-12を産生し、これらを介してTh2のみならずTh1をも誘導し得たとの報告もされている。これに加え、単球由来樹状細胞においても成熟途中の未成熟なものや、CD40-ligand 刺激の代りに抑制・調節サイトカインであるIL-10処理したものではIL-12の産生は抑制され、Th2を誘導することが示されている。一方で、成熟しきった“exhausted DC”でもIL-12産生能がなくなり、むしろTh2を誘導することが最近報告されている。
 これらのことから、成熟度の違いや刺激の種類によっては単球由来樹状細胞でもIL-12産生能に差があり、それに伴ってかならずしもTh1を誘導しないことが明らかになっている。
 いずれにせよ、Th1/Th2バランスの制御は一部には抗原提示細胞のIL-12産生に依存しているようである。Liuらの提唱したDC1とDC2という概念は生体におけるミエロイド系とリンパ球系樹状細胞の非常に明確な機能分類として浸透しつつあるが、実際には刺激の種類や局所微小環境などのさまざまな要因によって樹状細胞依存性のT細胞免疫応答は制御されていると考えられる。


2.環境・刺激因子によるTh1/Th2誘導の差異

 では、どのような病態・環境刺激において樹状細胞のT細胞制御に差が認められるのか。
 ミエロイド系樹状細胞に対して、インフルエンザウイルス、リーシュマニア、トキソプラズマ、百日咳菌、結核菌類など、多くの細胞内感染はIL-12の産生を誘導することが知られている。また、IFN-γ自身によってもこの反応は促進されることから、ミエロイド系樹状細胞の誘導したTh1の環境において、この機能は増幅されうることが容易に推測される。
 一方で、蠕虫により産生されるプロスタン酸塩やManson住血吸虫卵、あるいはコレラ菌毒素では、IL-12産生は抑制されてTh2が誘導される。また、通常の炎症部位に認められるPGE2や、前述したIL-10、あるいはステロイド処理によってもIL-12の産生は抑制され、Th2の誘導が認められる。
 これらTh2の誘導には表面抗原であるOX40-ligandが介在している可能性も示唆されている。
(次ページfig4参照)

 plasmacytoid cell に対してはIL-3がその成熟を促しTh2を誘導することは前述したが、この細胞はアレルギー性疾患や寄生虫感染時における活性化T細胞や肥満細胞の分泌するIL-3によって成熟し、Th2を誘導、引き続く液性免疫による防御免疫応答を起動することが推測される。実際にアレルギー性鼻炎の粘膜内に plasmacytoid cell の多数の浸潤像が確認されている。
 しかし一方で、ウイルス感染時においては異なる成熟機構とT細胞制御機構が近年報告されている。
(fig4)
plasmacytoid cell はウイルス感染によって1型IFNのみならずTNF-αをも産生し、その両者の相補作用により autocrine に白己の成熟を促し成熟樹状細胞へと分化することが示された。このウイルス感染によって成熟したリンパ球系樹状細胞を用いて naive T細胞と共培養すると、IL-3によって成熟した場合とは異なり、Th2ではなくIL-10/IFN-γ産生の特殊なTh細胞を誘導することも示されている。
 このIL-10/IFN-γ産生Th細胞の生理灼意義は不明であるが、1型IFNがT細胞に対し、直接IFN-γとIL-10を産生させる作用があることから、ウイルス刺激リンパ球系樹状細胞は自己の産生する1型IFNを介してT細胞を制御・分化させていると考えられる。

fig4


 これまで述べてきたように、樹状細胞により誘導されるT細胞分化において、
@異なる樹状細胞系列による差異、
A同じ樹状細胞系列でも環境・刺激因子による変化や成熟段階による差異、
が観察される。
 このように樹状細胞は、生体におけるさまざまな疾患病態の複雑な微小環境下で、それぞれに適応免疫応答を制御していると思われる。


 ここまでは、細胞の振る舞いを中心に見てきたわけだが、ここからは、視点を変えて、Th1/Th2分化・成熟に重要な役割を果たしている、サイトカインに注目し、その働きを、掘り下げて見てみましょう。

〜〜Th1/Th2分化におけるサイトカインの役割〜〜


■Th1の活性化/分化
 Th1細胞の活性化/分化に重要なIL-12は、p40とp35とからなるヘテロダイマーである。p40とp35はコードする遺伝子が異なる染色体上にあり、発現刺激も異なっている。
 Th細胞抗原刺激に伴うTh細胞−抗原提示細胞(APC)相互反応においては、抗原刺激を受けたTh細胞は表面にCD154(CD40リガンド)を発現し、これによってAPC上のCD40を刺激してp40の発現を誘導する。p40とp35が同一の細胞で発現されないと、活性をもったIL-12は産生されない。
 CD40刺激ではp35の発現は誘導されない。Th細胞-APC相互反応においてp35の発現を誘導するのは、クラスU主要組織適合抗原(MHC-classU)に対する刺激である。p35は多種類の細胞に恒常的に発現しているとの記載が多いが、組織から採取したばかりの細胞では、ほとんどの細胞でp35の発現はきわめて弱い。
 Th細胞−APC相互反応においてはT細胞抗原受容体(TCR)によるMHC-classU刺激によってAPCはp35を発現し、これがp40とヘテロダイマーをつくって生物活性をもったIL-12が産生される。
(fig5参照)p40が単独で存在する場合には生理活性をもつIL-12p70の受容体への結合を阻害する。たしかに、p40のトランスジェニックマウスではTh1細胞の誘導は抑制され、遅延型過敏反応は弱くなり、さらにTh1反応であるマラリア原虫感染に対する抵抗性も弱くなる。

fig5


 細菌やウイルス、細胞内寄生虫の感染によっても短時問内にIL-12産生がみられる。この産生は細胞内寄生体の種類によって、それぞれ異なる刺激・機構によって起こると思われる。この場合の産生細胞は主として食細胞である。食作用刺激、または感染体のlipopolysaccharide(LPS)やlipo-teichoic(タイコ)酸などがCD14を刺激することがその機構の一部には含まれる。さらに、細菌のDNA、とくにCpGモチーフ(注★)をもつDNAはIL-12の産生を強く刺激することが知られている。CpGのIL-12産生刺激は強く、interferon gamma(IFN-γ)によってさらに増強される。CpGはアジュバント作用をもつことが知られており、DNAワクチンとの関係でも注目されているが、このアジュバント作用はIL-12産生刺激によるものと考えられる。

♪♪♪ 一休み ♪♪♪

(注★) CpGモチーフ・・・聞きなれない言葉かもしれません。
単なるDNAが免疫系を刺激するアジュバント効果を持つとして、発見当初は、懐疑的でしたが、現在では、免疫をやっている人達には、コンセンサスが得られてます。

ここで、発見者の一人である、徳永 徹(福岡女学院大学教授・国立感染症研究所名誉所員)氏の手記を紹介します。
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 BCG から免疫刺激DNAの発現に至る経緯について簡単に記してみよう。若い方々はご存じないかもしれないが、1980年代に癌のBCG療法が一世を風靡した時代があった。当時、私は国立予防衛生研究所の結核部の室長をしていたので、早くからその研究を手がけることとなった。 その頃、 米国とヨーロッパ8カ国の癌免疫療法の実状を視察する機会があったが、どこもたいへんなBCGブームだった。しかし、実際はずいぶん無茶な投与方法がとられていて、ひどい副作用もみられ、結果としては台風一過、膀胱癌を除いてBCGは影を潜めてしまった。しかし、BCG以前に、癌局所にDNCB (dinitrochlorobenzene:皮膚科領域で皮内テスト、貼付試験、DNCBテストなどで使用)などによる遅延型アレルギー反応を惹起し、活性化マクロファージのもつ強力な異常細胞破壊能と免疫誘導能とを利用しようとする臨床的試みが先行していたわけで、私はこの路線の研究はもっと注意深く続行すれば必ず収穫があるものと今でも考えているが、無謀な世界的ブームのなかでこうした研究までが顧みられなくなってしまった。

 これとは別に筆者らは、BCGの菌体から有効で副作用の少ない水溶性成分を得ることを検索するうちに、DNAが同系腫瘍に強い抗腫瘍効果を示すこと、それはINF-αとγを誘導し、それによってNK細胞を強く活性化するためであることを知った。しかし、DNAに対する免疫応答は、それまで自己抗体が知られているだけであったので、私たちはこの結論を出すために、永い時間をかけて慎重な上にも慎重に実験を重ねた。さらにその後も、国際的に注目を得るまでに10年以上を要したのであった。

 DNA合成が研究室で可能になったことが、解決の燭光をもたらした。その頃、BCG蛋白をコードする遺伝子の塩基配列がいくつか報告されたので、私たちはその一部をランダムにとり、10種ほどの単鎖DNAを合成してテストしたところ、all or none で活性が有るものと無いものに分かれた。活性は塩基配列と関係があると私たちはエキサイトした。活性の発現には約20塩基鎖を要したが、リポゾームに封入することにより6個の塩基で活性を示すことができた。そして、6塩基の中心にCGをもつパリンドローム構造(この点、例外もある)が、活性中心であることを報告し、初めてこの領域でCpGモチーフという言葉を使った。

 私たちは、早い時期からもう一つ難問に出会っていた。バクテリア、ウイルス、さらに下等動物由来のDNAは、マウスの細胞(ことに骨髄細胞)とヒトの血液細胞を刺激してIFNを産生するが、脊椎動物と植物由来のDNAにはこの作用がなかった。コメや鶏卵のDNAにヒトが反応しないことは、生体防御上興味あることに思えた。最初にメチル化の有無を考えたが、 メチル化した塩基を1個入れた合成オリゴヌクレオチドでは活性があったので、その意義の確認に手間取ったが、メチル化塩基を多数入れた場合には活性がなくなることがわかった。

 免疫刺激DNAが爆発的な注目を集めたのは、細菌DNAがBリンパ球を刺激するというKriegらの報告(1995)以来である。それは私たちのBCG・DNAの抗腫瘍効果の報告より11年、合成DNAの報告より3年遅れたが、Krieg氏は私たちの仕事をよく知っていながら引用しなかった。しかし、1999年9月にドイツで開かれた「Immunobiology of bacterial CpG-DNA」(山本三郎・十糸子夫妻が出席)では、私たちのpriorityが充分に認められた。

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♪♪♪ 一休みおしまい ♪♪♪

■Th2の活性化/分化
 Th2細胞はTh1細胞とは異なり、IL-12産生能がないB細胞をAPCとして抗原刺激を加えても増殖する。Th2細胞の増殖はIL-2/IL-4に依存している。これらサイトカインに対する受容体発現がIL-1によって増強されるTh2細胞が多い。すなわち、IL-1はTh1細胞におけるIL-12に類似した作用をTh2細胞に対して発揮する。IL-1はAPCによって産生されるが、この産生はCD40に対する刺激で誘導される。Th1細胞と同様に、Th2細胞はTCR刺激によってCD154を発現し、CD40-CD154反応によってAPC(大食細胞/樹状細胞)のIL-1産生が誘導される。

 このTh2-APC反応によってはIL-12は産生されない。
 なぜなら、Th2細胞はTCR刺激によってIL-10を産生し、IL-10がIL-12p40の発現を強く抑制するからである。IL-4はこのCD40-CD154反応によるIL-12産生に対しては強い抑制作用は示さない。
 Th2細胞は抗原刺激とともに、APC上のB7分子によってCD28に刺激を受けると自らIL-1を産生する。
 これらAPC由来、および自ら産生したIL-1を受容すると、IL-2受容体(IL-2R)とIL-4Rを強く発現してIL-2/IL-4依存性に増殖する。

 自ら産生するIL-1を増殖に利用できることは、上述のようにTh2細胞がB細胞をAPCとしても増殖できる理由と思われる。

 Th2細胞の分化にもっとも重要なサイトカインとしてはIL-4/IL-13が知られているが、これらはTh2細胞、NKT細胞、肥満細胞、好中球などから産生され、組織内でのTh2の分化誘導が複雑な機構によっていることを示唆している。(fig6参照)

fig6




■APC由来サイトカインの産生制御
 IL-12の産生は各種のサイトカインで調節きれている。産生を増強する代表的なものにインターフェロンガンマ(IFN-γ)がある。IL-12p40遺伝子のプロモーター領域には転写因子IRF-1の結合部位がある。【インターフェロン制御因子(Interferon Regulatory Factor, IRF-1 および IRF-2)は、ウイルス感染に応答するインターフェロンβ(IFN-β)遺伝子プロモーターの発現調節領域に存在する繰り返し DNA 配列 (AAGTGA)n に結合する転写因子として同定された。マウス IRF-1 と IRF-2 の DNA 結合ドメインである N 末端側 113 アミノ酸の相同性は 76 % と非常に高い。実際に、この 2 つの転写因子は同じ DNA 配列 G (A) AAA (G/C) (T/C) GAAA (G/C) (T/C) を認識し、IRF-1 が転写活性化因子、IRF-2 が転写抑制因子として、IFN 遺伝子および IFN 誘導遺伝子の発現調節において正反対の役割を果たしていることが明らかになった。】
 IFNγはIRF-1を介してp40の産生を増強すると考えられる。IRF-1はとくにLPS刺激によるIL-12産生には重要であり、IRF-1欠損マウスではLPS刺激によるIL-12産生はみられない。
 IFN-γはp35の発現をも増強するが、この機構はわかっていない。いずれにしてもIL-12とIFN-γは、たがいに正に制御しあっている。
 GM-CSF(Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)もp40の発現を増強し、IL-12産生を亢進することが知られている。IL-12そのものが樹状細胞のIL-12産生を増強する。樹状細胞はIL-12Rを発現し、IL-12の結合によってIFN-γ産生が増し、間接的にIL-12産生を増強している可能性もある。

 IL-12の産生を負に制御するものとしては、IL-10、IL-4、IL-13、TGF-β、FcγR C3biなどがある。IL-10はT細胞依存性/非依存性IL-12産生を強く抑制する。IL-4はCD40-CD154反応によるIL-12産生に対する抑制作用は弱く、主としてLPSなどによる産生を抑制する。

 一方、IL-12と比較してIL-1の産生制御についてはあまり研究は進んでいない。


■Th1/Th2細胞のAPC由来サイトカイン受容体発現

 上述のように、Th1/Th2誘導にはAPC由来のサイトカインが有効に機能している。Th1細胞は高親和性IL-12Rを発現するが、Th2細胞は低親和性IL-12Rを発現し、IL-12のシグナルを伝えないとされている。
 IL-12Rには、すくなくともβ1とβ2の2鎖が同定されており、両鎖が揃ったときに高親和性の受容体が形成される。この2鎖のうち、β2はシグナルを下流に伝えてIL-12刺激で選択的に活性化される核内因子STAT4の活性化を促し、IFN-γの産生を誘導する。この意味で、β2の発現はTh細胞の分化に重要な意味をもつと考えられる。

 ナイーブT細胞はIL-12Rを発現してはいないが、APCによって抗原刺激を受けるとβ1とβ2からなる高親和性受容体を発現する。これはAPC上のB7分子によってCD28が刺激されて起こることがわかっている。CD28刺激はとくにβ2発現に重要な意味をもち、ナイーブT細胞のβ2発現には必須である。以上の機構はIL-12産生機構とともにfig6に示した。
さらにT細胞のIL-12R発現、とくにβ2発現は、マウスの場合はIFN-γによって、ヒトではIFN-α/γによって正の制御を受けている。
 感染を繰り返すヒトのなかに、遺伝的にIL-12Rβ1を欠損している例が複数見つかり、いずれも末梢血中のIFN-γ値の低下と結核菌などの細胞内寄生菌に対する抵抗性の低下がみられ、Th1の活性低下を示している。これらの所見は、IL-12R発現がTh1の誘導にたしかに重要な意味をもっていることを示している。

 ここまで、IL-12とIL-4に焦点をあてて、見てきたが、前述したように、IL-18の役割も見逃せないのである。ここからは、IL-18の生体内におけるTh1/Th2バランスに与える影響を見てみよう。


■Th1/Th2バランス制御におけるIL-18の意義

 IL-18は1995年、岡村らによってその遺伝子がクローニングされた。発見当初、このサイトカインが強いIFN-γ誘導活性を有することからIFN-γ誘導因子とよばれた。しかしその後、多彩な生物活性が明らかとなり、また、そのレセプターも既知のサイトカインレセプターと異なるため、インターロイキン18(IL-18)とよばれるに至った。

 IL-18はIL-12とともに種々の細胞(T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞)に作用し、相乗的にIFN-γの産生を誘導する。ところが最近、IL-18がIL-12の非存在下では好塩基球、マスト細胞、あるいはCD4+T細胞に作用してTh2サイトカインの産生を誘導することが明らかとなった。

■IL-18によるTh1細胞増強作用
 T細胞からのIFN-γの産生を誘導する方法には2通りある。そのひとつは、T細胞を前もって抗原とIL-12で刺激してTh1細胞に分化させた後、同一抗原で再度T細胞を刺激する方法である。もうひとつは、ナイーブT細胞あるいはTh1細胞をIL-12とIL-18の両因子で同時に刺激する方法である。
(fig7参照)

fig7

 Th1細胞は、抗原あるいは抗CD3抗体存在下で刺激を受けるとIFN-γを産生する。また、Th1細胞はIL-18Rα鎖を発現しているため、抗原+IL-18で刺激を受けると、抗原単独の場合よりもいっそうIFN-γの産生を増加するようになる。
しかし、シクロスポリンA(CsA)の存在下でTh1細胞を抗原で刺激してもIFN-γの産生は起
こらない。
 T細胞は、抗原刺激がなくてもIL-12とIL-18の両者で刺激されると大量のIFN-γを産生する。抗原刺激の場合と異なり、このIL-12+IL-18で誘導されるIFN-γ産生はCsAを培養液中に加えてもまったく抑制されない。

 このIL-12とIL-18による相乗的なIFN-γ産生のメカニズムは、IL-12によるIL-18Rα鎖の増強効果と、IL-12とIL-18によって誘導される核内転写因子問の相乗作用によるものと考えられる。
 IL-18刺激は、MyD88、IRAK、TRAF6などの刺激伝達分子の作用で順次伝達され、ついには
NF-κBとAP-1の活性化を誘導する。一方、IL-12刺激は細胞質でStat4を活性化する。したがって、IL-12とIL-18で刺激されると、Stat4、NF-κB、AP-1などの転写因子がIFN-γのプロモーター領域に結合し、相乗的にIFN-γmRNAの転写を促進することになる。

 IFN-γの産生を誘導することだけが目的であれば、T細胞をIL-12とIL-18で刺激するだけで十分である。しかし、同時にTh1細胞を誘導することが必要な場合はT細胞を抗原の存在下でIL-12とIL-18で刺激する必要がある。抗原刺激はとくにIFN-γの産生量を増加することはないが、ナイーブT細胞をTh1細胞に分化させるのに必須である。

■IL-18によるTh2細胞誘導
 それではIL-12が存在しない条件下では、IL-18はT細胞にどのような作用を示すのであろうか。最近の研究からIL-18のあらたな機能が明らかになった。すなわち、IL-2とIL-18はナイーブT細胞に作用するとCD40リガンドの発現を増強するとともに、IL-4、IL-5、IL-13、そしてGM-CSFの産生を誘導する。さらに、抗原存在下にナイーブT細胞に作用すると、IL-2とIL-18はT細胞をTh2細胞へと分化させる。以上の結果から、IL-18はIL-12が存在するとT細胞やTh1細胞を活性化してIFN-γの産生を誘導するが、それ単独ではTh2サイトカインを誘導することが明らかになった。(fig7参照)
 しかし現時点では、どのようなメカニズムによってIL-18のシグナルが伝達され、核内のIL-4プロモーター部位に結合し、IL-4mRNAの転写が誘導されるのかは不明である。

■IL-18によるIgE産生調節機構
 これまで述べてきたように、IL-18はIL-12共存下でさまざまな細胞に作用してIFN-γの産生を誘導する。一方、IL-12非存在下ではT細胞や好塩基球に作用してIL-4とIL-13の産生を誘導する。この結果に続いて 兵庫医科大の善本・中西らは、in vitro におけるIL-18のIgE抗体産生に対する作用を検討している。

 マウスに線虫 Nippostrongylus brasiliensis(Nb) を感染させるとTh2細胞が誘導され、著明にIgEの産生が起こる。さらに、Nb感染マウスでは脾細胞中に好塩基球が増加するとともに、好塩基球は活性化されてIL-4とヒスタミンを産生する。
 しかし、Nb感染直後からIL-12とIL-18を同時に投与すると、IgEとTh2細胞の誘導は完全に抑制され、さらに好塩基球も不活化されて、IL-4とヒスタミンの産生は完全に抑制される。

 ところが、IFN-γ遺伝子欠損マウスにIL-12とIL-18を投与しても、Nb感染によって誘導されるIgE産生は抑制されないばかりか、むしろ増強された。以上の結果から、IgE産生の抑制はIL-12とIL-18の生体内投与によって誘導されたIFN-γの作用であることが明らかとなった。実際、IL-12とIL-18を4日間連続マウス腹腔内投与することによって、血清中に高濃度のIFN-γ産生が誘導される。
(fig8参照)

 fig8


 一方、Nb感染マウスにIL-18を単独投与すると、いずれのマウスにおいてもIgE産生は増強される。このメカニズムは、Bb感染マウスヘのIL-18単独投与によってTh2細胞への分化が促進され、さらにIL-18によって好塩基球がいっそう活性化された結果、IL-4とIL-13の産生が増強されるためである。このようなIL-18単独投与によるアレルギー反応の増強作用は、ブタクサ抗原を吸入して作製した喘息マウスにIL-18を単独吸入すると気道内の好酸球の浸潤が増強し、Th2反応と血清IgE値が増強することでも証明されている。
 さらに驚くべきことに、無処置のBALB/cマウス(注☆)にIL-18を単独投与するだけで、投与量に依存して血中にIL-4とIL-13の産生が誘導されることが最近明らかになった。一方、IL-4遺伝子欠損マウス、IL-4Rα鎖遺伝子欠損マウスまたはCD4+T細胞を除去したマウスにIL-18を投与してもIgE産生は誘導されないことから、このIL-18によるIgE産生誘導はCD4+T細胞から産生されるIL-4に依存していることが明らかとなった。
(注☆:詳しくは http://www.nig.ac.jp/labs/AR98ja/hozon/hozon-7-1f.html を見てね)

 さらに、内因性にIL-18を過剰産生させる目的で作製されたcaspase-1トランスジェニック(Tg)マウスでは、出生初期から血清IL-18は高値(5ng/ml)を示し(正常マウス血清IL-18値は約0.1ng/ml以下)、血清ヒスタミン値は上昇する。また、ヒトのアトピー性皮膚炎に類似した皮膚疾患を発症し、それに続いて血清IgE値は40μg/mlと異常高値を示した(正常マウス血清IgE値は約0.1μg/m1以下)。ところが、caspase-1TgマウスをIL-4の細胞内シグナル伝達に必須のStat6遺伝子を破壊したマウスに交配し、さらに戻し交配して得たStat6欠損caspase-1TgマウスではまったくIgE産生が認められないことから、IL-18によって誘導されるIL-4によってIgE抗体産生が誘導されることが明らかとなった。

 以上述べてきたように、IL-18はアレルギー反応の“アクセル:Th2反応増強”と“ブレーキ:Th1反応増強”という相異なる重要な働きを担っている。このように、1つのサイトカインで、条件の違いにより、相反する反応を促進する例は、現在わかっている範囲では、IL-18をおいて他にない。
 このIL-18がどのように疾患にかかわっているかは、断片的であるが、報告されつつある。


 ところで、IL-12とIL-4の組合せによってTh1/Th2バランスを制御することは、in vitroでは可能である。近年、樹状細胞にも亜集団が存在することが明らかになり、Th亜集団は異なる樹状細胞亜集団によって活性化・分化が進むと考えられるようになったのも、以上の通りである。

 そして、疾患を考える場合は、組織局所における免疫反応が重要であることは、いうまでもない。したがって、Th細胞、樹状細胞亜集団の分布を決める接着分子や遊走因子の特定と機能制御の研究がも重要であると思われる。


 ここからは、免疫反応局所へのTh1/Th2細胞の選択的浸潤におけるケモカインの役割について、最近の知見とともに紹介したい。

〜〜Th1/Th2バランス制御におけるケモカインの役割〜〜

 ケモカイン(chemotactic cytokine,chemokine)は、内因性の白血球走化性、活性化作用を有し、塩基性でヘパリン結合性の強い蛋白質分子群である。現在までに40あまりのケモカインが同定され、一般的には、最初の2つのCys残基の存在形式によりCXC、CC、C、CX3Cサブファミリーに分類される。(詳しくは、斉藤和義氏担当の勉強会資料[AIDS治療の現況と新しいターゲット“ケモカイン”]を参照されたい)
1987年にアメリカNational Cancer Institute(NCI)にて、松島、吉村らにより精製、遺伝子クローニングされた好中球遊走、活性化因子であるIL-8、さらに1989年に発見された単球走化性活性化因子であるMCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)からケモカイン研究がはじまり、この10年ほどでますます発展した。
現在では炎症のみならず、発生、免疫、癌などの多臓器生物の高次の生命現象における臓器間・臓器内での細胞移動・定着にケモカインが関与していることが明らかにされてきている。


■ 復習しましょう。(眠くなっている頃でしょう?)
繰り返しになるが、Th1/Th2とは!!!
抗原刺激によって誘導される免疫反応には細胞性免疫と体液性免疫があり、これらをつかさどる細胞はCD4+T細胞である。Th1/Th2(1型ヘルパーT細胞/2型ヘルパーT細胞)とは、このCD4+T細胞のサイトカインの産生パターンにより、それぞれに分類した細胞群である。
Th1細胞はおもにIFN-γ(inteferon gamma)を産生し、その機能は細胞内感染症のコントロールである。一方、Th2細胞はIL-4(interleukin-4)、IL-5、IL-13を産生し、Bリンパ球の活性化および抗体産生を促すと考えられている。Th1/Th2細胞への分化の誘導、そして細胞の活性・増殖に、Th1へはIL-12が、Th2へはIL-4が不可欠であることが知られている。そして、このTh1/Th2スイッチングの鍵を握るであろう、樹状細胞、NKT細胞の振る舞いを見てきたわけである。

これらの仕事はいままで in vitro のものであったが、実際に免疫疾患において局所に浸潤してきているTリンパ球がTh1細胞またはTh2細胞優位であることから、このTh1優位かTh2優位かのバランスが免疫疾患の成因に重要な役割を果たしていると考えられている。


これまでの研究は、何によってTh1/Th2が生体内で誘導されるのか、そしてどのような疾患でどのサブセットの細胞が浸潤してくるのかといった状況証拠をとらえることが主であったが、近年、なぜ免疫反応局所においてTh1/Th2の選択的細胞浸潤が生じるのかという病態形成の原因となるべきところにケモカインとケモカインレセプターの相互作用が関与してくることが、明らかになってきた。



■in vitro におけるTh1/Th2とケモカインレセプター
Th1/Th2とケモカインレセプターの発現に対する仕事は1997年にSallustoらが、ケモカインレセプターのひとつであるCCR3が好酸球や好塩基球以外にもTh2に選択的に発現することを見出したのを皮切りに、末梢血あるいはTh1/Th2 cell line の検索がつぎつぎになされた。
現在までの報告ではTh2に関しては、ナイーブCD4細胞からTh2に分化させた細胞、およびTh2 cell line にCCR4、末梢血中のIL-4産生T細胞の一部にCCR3、活性化Th2 cell line にCCR8の発現を認めている。
Th1に選択的なケモカインレセプターとしてはCXCR3、CCR5が考えられている。しかし、これらのレセプターがTh1細胞に同程度で発現しているわけではなく、たとえば活性化Th1 cell line ではCXCR3がCCR5より強く発現している。

これまでのT細胞の機能解析はTh1/Th2に最終的に分化した状態での機能的分類が主であった。しかし、ケモカインレセプターの発現動態からT細胞のTh1/Th2への分化、そして活性化のプロセスのなかで、その状況に応じたケモカインレセプターのスイッチングが生じていることが示唆された。これは、ケモカインがサイトカインファミリーのなかでもとくに数多いメンバーを有し、またひとつのケモカインに対応するレセプターが数種類あるという特徴を生体が最大限に利用していると考えられる。すなわち、炎症・免疫反応の複雑な調節をレセプターのスイッチングによる多様性で行っていると想定される。

■ナイーブ/メモリー/エフェクターT細胞とケモカインレセプター
生体防御において重要な役割を担う免疫反応は、外来抗原に対して反応する局所と、免疫反応を促進する二次リンパ組織(脾やリンパ節)との地理的に隔絶された臓器が統合的に協調作業を行うことにより効率的に生じる。
免疫系の主役であるリンパ球は各組織間を絶え間なく循環し、抗原提示細胞(antigen presenting cell:APC)と相互作用することにより情報伝達が円滑に行われる。

この現象をケモカイン/ケモカインレセプターの機能を通してみてみよう。(fig9参照)


fig9


1.priming (DC-T cluster)

おもにCCR7、CXCR4を発現しているナイーブT細胞は、HEV(高内皮性細静脈:この部位にてリンパ球は血管内から組織中へ遊走する)にて産生されるSLC、ELC、SDF-1によりリンパ臓器のT細胞領域に侵入し、外来抗原を保持した未成熟樹状細胞と Cluster を形成する。

2.エフェクターT細胞/メモリーT細胞

DC-T cluster により priming されたT細胞は、CCR7- CD45RA- エフェクターT細胞となり、輸出リンパ管より血中に戻り炎症局所に遊走される。一部はCCR7が再発現し、CCR7+ CD45RA- メモリーT細胞となり、次回の抗原刺激に備える。そしてこのメモリーT細胞はCCR7を再発現することで、再度リンパ節に流入しうる。エフェクターT細胞にはTh1/Th2の両方の性質をもつ細胞が存在している。すなわち、Th1特有またはTh2特有のケモカインレセプター(CCR4、CXCR3、CCR5)が発現している。

では、Th1優位かTh2優位かのバランスはどこで、どの時点で決定されていくのであろうか。この問題はいまだ解決されていない。

東京大学、村井・松島らはSAGE(serial analysis of gene expression)法【For P club FAQ 95参照】で、活性化Th1/Th2細胞の遺伝子発現パターンを比較した。活性化Th1細胞はIFN-γ、MIP-1α、MIP-1βが、活性化Th2細胞はIL-13が高発現していた。ケモカインレセプターの発現は認められなかった。これらのデータから、Th1/Th2両者の性質をもつ、つまり両者になりうる細胞が、局所で産生されるサイトカイン・ケモカインによって遊走され、Th1またはTh2に分化する。そして分化し活性化された細胞が、それぞれさらにサイトカイン・ケモカインを産生し、反応を増幅する。

すなわち、局所においてTh1/Th2の均衡が崩れ、どちらか優位の反応が生じていると考えられる。さらに、この反応を促進させるために、リンパ球は抗原刺激によりTh1/Th2特有のケモカインレセプターの発現が減弱する性質を利用し、リンパ節へ流入し、Th1またはTh2優位の細胞の増殖を行っているであろうと予測される。
この迅速なケモカインレセプターのスイッチングにより局所と二次リンパ臓器における情報伝達が円滑に行われ、より正確かつ効率的な生体内での免疫応答が引き起こされていると考えられる。


このように、Th1病、Th2病と呼ばれる疾患の病態形成におけるケモカイン/ケモカインレセプターの役割を明らかにすることが出来れば、ケモカイン/ケモカインレセプターを標的とした治療が発展することが期待される。

〜〜最後に〜〜


長時間に渡って、Th1/Th2への分化・誘導に関わるであろう因子を見てきたわけですが、私の独断と偏見で、以下のようにまとめてみました。ここからは、全く当てにならないので、覚えないでくださいね!!!(^。^) また、私がどのような思考回路でこの結論を導き出したか、それを考えながらこの資料を何度も読み返す事をお薦めします。

一番大事と思われるのは、抗原の種類と、最初に補足する貪食系細胞に依存するのだろうと言うことです。抗原が偶然に貪食経細胞に出会う確立と、その貪食細胞が貪食できるかどうかが、第一段のような気がしてならないのです。

異物(非自己、抗原となりえるもの)が生体内に侵入すると、まず、様々な貪食系細胞によって、排除されるわけだが、大きな第1段階として、好中球に貪食されるかどうかと考えられる。
好中球にとらえられれば、まず、これに対する抗体産生が発動する。

好中球で補足される異物が100個侵入したとして、100個全てが好中球に貪食されるわけではないので、残りがマクロファージや樹状細胞、NKT細胞などに補足され、そこでまた、いろいろあって、抗体産生が増強されたり、細胞性免疫が上乗せで発動されたりしているのではないか?!

好中球で補足されない異物は、最初から、マクロファージや樹状細胞、NKT細胞などに補足され、そこから、スタートする。

また、B細胞で補足される異物は、抗体産生する液性免疫が主であろう。

また、T細胞なしB細胞を刺激し、抗体産生を促すタイプの異物も存在する。
B細胞がAPCとして機能せずに、抗体産生まですすめば、そこで産生されるサイトカインがTh2を誘導するパターンも考えられないだろうか?

異物として、食細胞系に補足されないもの、たとえば、DNA断片(CpGモチーフ)、毒素などが、先行的にマクロファージや樹状細胞、NKT細胞から始まるTh1/Th2スイッチングに影響を与えているものと、考えられる?!

また、生物種により、Th1/Th2スイッチングに差があるのは、たった1ヶ所のポイントが違うと考えるよりは、生体の総合的な反応の違いによるものと考えた方が、無難そうである。


Th1/Th2制御には、今回紹介した以外にも、腸管主体の免疫を担っているγδT細胞(胸腺外分化)も関与しているだろうし、サイトカインレセプターにリガンドが結合した以降の細胞内情報伝達系や転写因子の制御のされ方も加味して考えなければ、真の姿は見えてこないものと思われる。
最後に、面白い事実を紹介して終わりにしたいと思う。この事実を、皆さんなら、どう解釈しますか?

■染色体構造とTh1/Th2
ヒト第5染色体には、IL‐3、GM‐CSF、IL‐4、IL‐5、IL‐13と多数のサイトカイン遺伝子が存在し、マウスでも第11染色体にシンテニーが存在する。Th2特異的サイトカイン遺伝子であるIL‐4とIL‐13は13kbの短い遺伝子間隔領域を隔てて隣り合っていて、IL‐5は120kbほど離れて、IL‐13と並んでいる。
このように同一染色体に、Th2特異的サイトカインがクラスターを形成しているのは、共通の制御機構の存在を匂わせる。

サイトカイン遺伝子の実際の転写にはNFAT(※)などの活性化シグナルを伝達する転写因子が関与するが、Th1/Th2の特異性を決定する機構は、大胆にも染色体構造改変があり、それにより、転写因子群が構造変化した各プロモーター領域と相互作用できるのではないか?という考えがある。
【※NFAT:シクロスポリン、FK-506は、細胞内リガンドと結合後、カルシニューリンを失活させる。結果、NFATのリン酸化が起こらず、NFATが核内に移行せず転写が抑制される。ちなみに、免疫初期段階のナイーブThでは、IL‐2が産生されており、自分のIL-2Rに結合してオートクリンに増殖するのだが、ここを抑制する為に、免疫抑制剤として効果がでるのだ】

このような、染色体構造を解析する方法として、DNaseや制限酵素の切断に対する高感受性領域の解析がある。
驚いた事に、Th2細胞には存在するが、Th1やナイーブTh細胞に存在しないDnaseT高感受性領域がIL‐4/IL‐13遺伝子をコードしている領域や、遺伝子間領域に見つかったのである。

なんとも、驚いた事に、Th2への分化には、染色体の改変まで行っていたのである。
この事実、皆さんなら、どう解釈しますか???