本日の勉強会のテーマは、免疫のしくみです。
というわけで、基礎をしっかり身につけて、最新の知見を理解できるようにがんばりましょう。

自分が、どの程度理解しているかを知る為に、雑誌"Nature"のホームページから、免疫関連の論文の日本語訳 Summary を集めてきました。


Mitsuyuki Ohno 23, Feb 2000


誘発性化学療法抵抗性の制御(NF-κBの阻害によりアポトーシスを増やして抗腫瘍治療を強化する) 
Control of inducible chemoresistance: Enhanced anti-tumor therapy through increased apoptosis by inhibition of Nf-kB 

化学療法や放射線療法などのほとんどの抗癌療法は、癌細胞のアポトーシスを誘導することによって機能する。しかしながら、多くの癌細胞は化学療法や放射線療法に抵抗性を示すようになり、高いアポトーシス閾値を示すようになる。これまでの研究によって、化学療法により癌細胞で転写因子であるNF-kBが活性化されること、NF-kBの阻害が癌細胞のアポトーシスの増加につながることが明らかにされている。この研究で北カリフォルニア大学のグループは、in vivoでアデノウイルス系を用いて、NF-kB阻害タンパク質である修飾型のI-kBaを癌細胞に導入した。そしてこの処理が、化学療法抵抗性の癌を抗癌薬に対して感作し、腫瘍の縮小を引き起こすことを示している。NF-kB活性化を抑制してアポトーシス閾値を下げるという考え方は、癌治療における補助的アプローチの論理的基盤となる。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.4, April 1999 
Ohnoメモ NF-kBは、I-kBとセットで機能を覚えておきましょう。
RbとE2Fの関係と大筋で同じです。

 

in vivoでのCD40へのリガンド結合による腫瘍特異的CD4+T細胞寛容からT細胞活性化への転換 
Conversion of tumor-specific CD4+T-cell tolerance to T-cell priming through in vivo ligation of CD40 

癌抗原に特異的なT細胞における免疫寛容の誘導は、治療用癌ワクチンの効力を制限することが知られている。抗原提示細胞(APC)は自己抗原に対するT細胞の免疫寛容の誘導を仲介する。ジョンズ・ホプキンス大学ほかのグループは担癌レシピエントにおいて、抗CD40抗体によりAPCを活性化させたあとの癌特異的T細胞の運命を調べた。この処置はAPCの反応性を持続させただけでなく、その活性化をももたらした。ワクチン接種だけでは何の反応もないときに、抗CD40抗体で処置したワクチン接種動物においては既存の癌の縮退が見られた。これらの結果は、APCの調節が、免疫化に対する反応性を増強させる有望な戦略になることを示している。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.7, July 1999 


 

TNF-a欠損マウスは皮膚発癌に抵抗性である 
Mice deficient in tumor necrosis factor-α are resistant to skin carcinogenesis. 

腫瘍壊死因子(TNF)-aは、真皮や上皮の腫瘍発生の初期および後期に何らかの役割を果たすと考えられている起炎症性サイトカインである。発癌過程におけるTNF-aの役割を解明するために、英国インペリアル癌研究基金ほかのグループはTNF-aノックアウトマウスの皮膚にさまざまな発癌処置を施した。TNF-aが欠失すると良性および悪性の皮膚腫瘍発生に対する抵抗性が見られたが、腫瘍発生の後期にはほとんど影響しなかった。そこで、腫瘍の微小環境ではTNF-aの存在が新たな皮膚発癌に重要であると結論づけている。これらの結果は 、TNF-aの中和を目指す治療戦略が癌治療に利用できるかもしれず、また起炎症性サイトカイン遺伝子の機能多型性が、悪性度のリスクまたは転帰に影響を与えている可能性があることを示している。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.7, July 1999 

 

in vivoでのCD40活性化はペプチド誘導性末梢CTLの寛容を克服し、抗腫瘍ワクチンの効力を増強する 
CD40 activation in vivo overcomes peptide-induced peripheral cytotoxic T-lymphocyte tolerance and augments anti-tumor vaccine efficiency. 

末梢におけるCD8+細胞傷害性T細胞(CTL)の活性化は、CD4+Tヘルパー細胞に決定的に依存している。Tヘルパー細胞の存在下ではCTLの免疫応答が誘導されやすいが、ヘルパー細胞が存在しないとCTL寛容が起こりうる。ライデン大学ほかのグループはCD4+とCD8+細胞の産生相互作用に不可欠な分子であるCD40をin vivoで活性化すると、ペプチドをベースにした腫瘍ワクチンの効力が高まることを示している。最小限のCTLエピトープを含む免疫寛容原性のペプチドワクチンと活性化抗CD40抗体を併用すると、寛容化が強いCTL反応へと転換した。さらに、腫瘍マウスにおけるCD40へのリガンド結合は腫瘍特異的ペプチドワクチンの治療効力を増した。これらの結果は、CD40が末梢での免疫応答の発生に重要な役割をもち、CD40活性化因子が抗癌ワクチンの重要な成分になる可能性をもつことを示唆している。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.7, July 1999 

 

腫瘍に関連する新しい免疫抑制因子 
Inhibition of cell growth and induction of apoptotic cell death by the human tumor-associated antigen RCAS1 

腫瘍細胞は腫瘍関連抗原を発現するが、免疫系による腫瘍の認識と排除は有効に働かないことが多い。九州大学の渡邊武たちは今回、ヒト癌細胞の表面に発現する膜結合分子として、RCAS1という新しいタンパク質を同定したことを報告している。RCAS1は、ヒトのさまざまな細胞系列や、T細胞、B細胞、NK細胞といった正常な末梢リンパ球に存在すると推定される受容体のリガンドとして働いた。この受容体の発現は、リンパ球の活性化によって増強された。最も重要なのは、RCAS1が、受容体を発現している細胞の増殖を抑制し、アポトーシスによる細胞死を誘導したことである。これらの結果は、RCAS1が、免疫系の監視から腫瘍細胞が逃れるのに関与する新しいアポトーシス促進因子である可能性を示している。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.8, August 1999 

 

ヒヒ胎児の免疫化で、胎児特異的な抗体反応が誘導される 
Fetal immunization of baboons induces a fetal-specific antibody response 

本研究は、B型肝炎(HB)に対する組み換えサブユニットワクチンを用いてヒヒ胎児の能動的ワクチン接種を行い、その胎児が防御性免疫応答をつくりだせることを示したものである。これは、妊娠中に母体の抗体が胎盤を介して移行することにより通常起こる、胎児の受動的な免疫獲得とは対照的である。オクラホマ大学保健科学センターのグループは、胎児に直接ワクチンを接種することで防御可能なレベルの抗B型肝炎抗体を誘導できるかどうかを調べ、新生児寛容を引き起こさずに抗HB抗体が産生されることを報告している。胎児にHBに対する免疫防御機構をもたせる手法は、免疫不全の母親や自己免疫疾患をもつ母親など、母体抗体の経胎盤性移行が起こらない場合に必要とされる。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.4, April 1999 

 

CD154に対するヒト化モノクローナル抗体での治療は非ヒト霊長類で腎移植片の急性拒絶反応を防ぐ 
Treatment with humanized monoclonal antibody against CD154 prevents acute renal allograft rejection in nonhuman primates 

CD154はCD40受容体に対するリガンドである。このリガンド‐受容体複合体は抗原提示細胞の活性化に関与し、Tリンパ球と抗原提示細胞の相互作用を促進することが示されている。米国海軍医学研究センターほかのグループは、抗CD154モノクローナル抗体(hu5C8)の投与によって、雑系のMHC不適合アカゲザルの同種腎移植が急性拒絶反応を起こすことなく容易にできたと報告している。この効果は治療終了後10か月以上も持続し、また、移植片の生着を延長するのに追加治療をいっさい必要としなかった。抗CD154で治療したサルは健康を維持し、治療効果はT細胞やB細胞の全体的な欠乏による関与を受けなかった。長期生存したサルはドナー特異的な様式でMLRの反応性を失っていたが、移植臓器にはT細胞が浸潤しドナー特異的な抗体が生産されており、移植片の機能になんら明らかな影響を及ぼすことはなかった。そこで著者たちは、抗CD154治療はヒトの同種移植受容を促進するための新しい有望なアプローチを示していると結論づけている。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.6, June 1999 

 

リガンドを発現する「キラー」樹状細胞
Induction of antigen-specific immunosuppression by CD95L cDNA-transfected 'killer' dendritic cells 

樹状細胞は、専門化した抗原提示細胞であり、免疫的に未感作のT細胞を活性化する能力の高いことが特徴である。テキサス大学サウスウエスタン医療センターの松江弘之たちは今回、アポトーシスを促進するCD95リガンドのcDNAを導入することによって、「キラー」樹状細胞をつくり出した。これらの細胞は、抗原特異的なT細胞に対して、活性化の信号ではなく細胞死をもたらす信号情報を伝えた。マウスにこのキラー樹状細胞を注入したところ、遅延型過敏症と接触型過敏症の双方の反応を抗原特異的に阻害した。したがって、CD95リガンドが過剰発現するように操作した樹状細胞は、外来抗原やハプテンに対する細胞性免疫応答を抑制するのに利用することができ、T細胞関連疾患の新しい治療法を開発する土台となってくれそうである。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.8, August 1999 

 

糖尿病関連自己抗原の同定
Identification of an MHC class I-restricted autoantigen in type 1 diabetes by screening an organ-specific cDNA library 

1型糖尿病は、CD4とCD8両Tリンパ球が関係する免疫過程によって、インスリンを産生する膵臓のb細胞が若年時に破壊される自己免疫疾患である。新しい抗原特異的な免疫療法を開発すべく、糖尿病関連自己抗原を同定するために努力が重ねられてきた。今回、エール大学のF.S. Wongたちは、ヒトの糖尿病研究に最も役立つ動物モデルである非肥満型糖尿病マウスにおいて、病原性の高いCD8 Tリンパ球によって認識される自己抗原を初めて同定したことを報告している。インスリンB鎖と同じ領域に位置するこの自己抗原ペプチドは、病原性のあるCD4 Tリンパ球によってエピトープと認識される。CD8とCD4の両細胞を刺激するエピトープを含んだ島特異的自己抗原を同定したこの研究は、新しい治療法への道をひらき、糖尿病の病理発生におけるインスリンの中心的役割を改めて確証するものだ。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.9, September 1999 

 

 

◎ここからは、OMAKEだよーーん。
カスパーゼの阻害は黒質移植片のアポトーシスを減少させ、生着率を高める  
Capase inhibition reduces apotosis and increases survival of nigral transplants. 

盛んに研究されているパーキンソン病の治療法の1つは、胎児のドーパミン性ニューロンの移植である。しかし、ヒトのドナー臓器の不足や、ドーパミン性ニューロン移植片の生着率が悪いため、この方法には限界がある。これまでの研究から、大部分の移植ニューロンで移植の1週間以内にアポトーシスが起こることが明らかになっている。Ac-YVAD-cmkのような修飾ペプチドは、アポトーシスのカスケードに関与するプロテアーゼであるカスパーゼを特異的に阻害することによって、アポトーシスを阻害することが知られている。ルンド大学ほかのグループは、片側パーキンソン病のラットで、Ac-YVAD-cmkによる胎児黒質細胞処理によって移植ドーパミン性ニューロンの生着が向上し、機能回復も高まることが示された。著者たちは、カスパーゼ阻害剤をたとえ移植片の調製中に存在させるだけでも、移植の成功に必要なドナー胎児ニューロンの量を75%減らせるだろうと結論づけている。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.1, January 1999 

 

小児期の熱性けいれんによる長期的影響 
Febrile seizures in the developing brain result in persistent modification of neuronal excitability in limbic circuits 

小児の発作としてよく見られる熱性けいれん発作が、側頭葉てんかんに見られるような神経興奮性の長期的変化を引き起こすことがあるかどうか、長い間論争されてきた。カリフォルニア大学アーバイン校のI Solteszたちは、新しいラットモデル系とパッチクランプ法を用いて、高体温で起こる発作が辺縁系の神経興奮性に長期的変化を実際にもたらすことを明らかにしている。彼らのデータは、高体温で起こる発作が海馬におけるシナプス前のGABA放出を増加させ、GABA作動性抑制を増強することを示唆している。高体温がどのようにしてGABA作動性の情報伝達系にこれらの変化をもたらすのかは、まだよくわからないが、今回の知見は幼少期の熱性けいれんが「良性」であるという現在の大方の見方と矛盾しており、意味は大きい。 

Nature Medicine, Vol. 5, no.8, August 1999 

 

サイクロスポリンは細胞の自律的な機構を介して癌の進行を促進する 
Cyclosporine induces cancer progression by a cell-autonomous mechanism 

臓器移植ののちには、合併症として悪性新生物が生じることが多く、問題視されている。新生物の発生率の高さと進行の速さは、免疫抑制療法と関連性があり、臓器を移植された患者の免疫監視機構の機能不全のためだと考えられている。しかしここでは、宿主の免疫機能とは無関係に腫瘍の悪性度が高まる機構を報告する。サイクロスポリン(サイクロスポリンA)は免疫抑制剤で、臓器移植後の患者の経過の改善に大きく寄与してきたが、この薬が、細胞の自律的な機構によって、非形質転換細胞を浸潤性にするなど細胞の表現型に変化を引き起こすことがわかった。腺癌細胞をサイクロスポリンで処理すると、膜がけば立ち多数の偽足が形成されるなど著しい形態変化が起こり、細胞の運動能が増し、足場非依存的に(浸潤性)増殖するようになる。これらの変化は、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)に対するモノクローン抗体で処理すると妨げられる。免疫不全のSCID‐ベージュマウスではサイクロスポリンが生体内で腫瘍の増殖を促進するが、抗TGF-βモノクローン抗体は、サイクロスポリンによって起こる転移の増加を阻害した。別の抗体を使った対照群では阻害は見られなかった。これらの結果から、サイクロスポリンのような免疫抑制剤は、宿主の免疫細胞に対する作用とは無関係に直接細胞に働きかけることによって癌の進行を促進することがわかり、サイクロスポリンに誘導されたTGF-β生産がかかわっていることが示された。 

Minoru Hojo1, 2, Takashi Morimoto3, Mary Maluccio1, Tomohiko Asano4, Kengo Morimoto2, Milagros Lagman1, Toshikazu Shimbo2 & Manikkam Suthanthiran1 

1. Department of Transplantation Medicine and Extracorporeal Therapy, Division of Nephrology, and Departments of Medicine and Surgery, Weill Medical College of Cornell University, 525 East 68th Street, New York, New York 10021, USA 
2. Department of Pediatrics, Mizonokuchi Hospital, Teikyo University School of Medicine, 3-8-3 Mizonokuchi, Takatsu-ku, Kawasaki 213, Japan 
3. Department of Cell Biology, New York University School of Medicine, 550 First Avenue, New York, New York 10016, USA 
4. Department of Urology, National Defence Medical College, 3-2 Namiki, Tokorozawa, Saitama 359, Japan 
Nature, Vol. 397, 11 February 1999, p.530 

 

ウイルスのRNAポリメラーゼ遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、このウイルスに感染したマウスの生存率を向上させる 
Antisense oligonucleotides directed against the viral RNA polymerase gene enhance survival of mice infected with influenza A 

インフルエンザウイルスAに感染したマウスの回復に対する、アンチセンス ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチドの効果について研究を行った。これらのオリゴヌクレオチド(PB2-asあるいはPA-as)は、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼのPB2、およびPA遺伝子の翻訳開始コドンを取り囲む配列と相補的である。カチオン性リポソームであるTfx-10と複合体を作らせたPB2-asの静脈内投与は、平均生存日数をかなり長くする効果があり、インフルエンザAウイルスに感染したマウスの全体としての生存率が向上した。リポソーム中に封入したPB2-asは、インフルエンザAウイルスに対する効果的な治療薬となる可能性があると考えられる。 

Tadashi Mizuta1, 3, Masatoshi Fujiwara1, 3, Toshifumi Hatta2, Takayuki Abe2, Naoko Miyano-Kurosaki2, Shiro Shigeta3, Tomoyuki Yokota1, 3 & Hiroshi Takaku2 

1. Rational Drug Design Laboratories, 4-1-1 Misato, Matsukawa-Machi, Fukushima 960-1242, Japan. 
2. Department of Industrial Chemistry, Chiba Institute of Technology, 2-17-1, Tsudanuma, Narashino, Chiba 275-0016, Japan. 
3. Department of Microbiology, Fukushima University School of Medicine, 1 Hikarigaoka, Fukushima 960-1295, Japan. 
Correspondence should be addressed to H Takaku. e-mail:takaku@ic.it-chiba.ac.jp 
Nature Biotechnology, Vol. 17 No. 6, June 1999, p. 583