「お茶」創作ページ

文責:だいち



「お茶にごす。」フリートークのページへ




このページは、「お茶にごす。」のその後に思いを馳せた
二次創作のページです。

「お茶にごす。」を完読してから読むことをお薦めします。


ショートショート作品と言うより、一コマの描写を描きたいかな…と。


「妄想 お茶にごす。」投稿SSは こちら から。



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「部長」と「船橋クン」

シネマを後に

シネマを後に2





「部長」と「船橋クン」



「お茶にごす。」の1シーンの想像を、久しぶりにアップします。
今回は、まークンと部長がお互いの呼び方について語り合う一コマです。
時期設定としては、2人が健康的なデートを何回か行った頃でしょうか。


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話題の映画を観終えた2人は近くの喫茶店に腰を落ち着けた。
見回せば、そこかしこにデートと思しきカップルが談笑している。

「なかなか面白かったね。」

「そっスね。…でも、部長。オレ、よく判らなかったコトあるんスけど。」

想像力が乏しく婉曲な表現の解釈が苦手な雅矢には、
話の展開に判らない部分があったのだ。
彼の疑問を丁寧に説明する部長。

「…と、いうことなんです。これで判っていただけましたか??」

「なるほど。部長に説明してもらうと何だか判ったような気がするっス。」

彼のあまりにも素直な言葉にニコリと微笑む部長。
そして話が途切れ、一瞬の間があった。
沈黙を破って、伏し目がちの部長が雅矢に語りかける。

「ね、船橋クン。私たち、一応、付き合っているんだよね。
 その『部長』って呼び方、少し変じゃないかな??」

部長を部長以外の言葉で呼ぶなんて、雅矢は考えたこともなかった。

「そっスか。
 でも、今までずっとそう呼んできたので変えるのはなかなか難しくて。」

彼の言いたいことも判る。しかし彼女は言葉を続けた。

「…でも…やっぱり変だよ。」

「じゃあ、これから部長を何と呼んだらいいんスか??」

雅矢の問いに、部長が少し顔を赤らめながら小さな声で答える。

「…奈緒美…なんて、どうかな??」

部長を名前呼び捨てで語りかける…
そう考えただけで、何だか雅矢の心臓はドキドキしてきた。

「…いいっスよ。だけど、それならオレを呼ぶ『船橋クン』というのも
 少し他人行儀じゃないかと思うんスけど。」

「エエッ?!」

考えもしなかった雅矢の反論に、一瞬、戸惑う部長。

「…判りました、私も呼び方を変えます。
 私は船橋クンを何と呼べばいいのですか??」

「そうですね…雅矢…でどうでしょう。」

お互いを名前だけで呼び合う…
ただそれだけのことなのに、何だか2人とも顔が赤くなってきた。

「じゃ、早速やってみる??」

「任せてください、部長!」

「ほらまた『部長』って!!」

「今のは撤回します。じゃあ…ほ、本当に言いますよ。覚悟はいいですか?!」

「い…いつでもどうぞ。」

…何の覚悟が必要なのやら…
それでもなかなか声が出てこない。
雅矢は自分が重いノドの病気に違いないと思った。

「な・・・な・・な・・なお・・なお・・・奈緒美!!」

「…ま・・ま・・雅矢!…」

そしてじっと見詰め合う瞳と瞳。


一瞬の間があって、どちらともなく大声で笑い出した。


「アハハハッ、ダメ!! 照れくさいし、何だかくすぐったい!!」

「そっスね!! アハハハッ!! まだダメっスね!!」


一頻り大声で笑い合った後、部長が雅矢に提案する。


「やっぱ、無理に呼び方変えるの、やめよっか。」

「賛成っス。やっぱオレ、自然に部長を部長って呼んじゃいますから。」


2人は表情を微笑みに戻した。やがて雅矢は席を立った。

ふと雅矢は気が付いた。
席を立つ自分の腕に、初めて部長の掌がそっと添えられたことを。

少し顔を赤らめながらも、彼女の表情はいつも通りの暖かい微笑だった。

2人は考えた…そう、今はまだこのままでいいのかもしれない、と。

今はまだ急いで近道をする必要はない。
…でも、いつか自然にお互いの名前を呼び合える時がくると信じたい。


淡い想いを胸にした幼い恋人たちを、いつしか周囲のカップルたちが
微笑みながら暖かい眼差しで見守っていた。


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こんな感じでどうでしょう??
ゆっくり…本当にゆっくりと進展していく2人が、私は好きなのです。

シネマを後にして…の1コマは、この他にもいろいろと描いてみたい気がしますね。



2010.1.24.





シネマを後に



日常の一コマを描写した話も、サラリと読み書きできて楽しいかな…なんて。
今回のシネマを後に…の想像は、ちょっとしたハプニングに遭遇した、
「お茶」キャラクターたちそれぞれの様子を想像した話です。
まークン&部長、ヤーマダ&夏帆ちゃん、ブルー&智花ちゃんの3組が
「ファースト・ラブ」という映画をタイトルで選んで観ることにしましたが、
驚いたことにポルノ映画と勘違いしそうな内容だったという設定です。
(過去に、本当にそんな映画があったと聞いています。罪なことをしますね。)
まークンは部長と数回目のデートなのですが、ヤーマダのアドバイスで
この映画を選んだと経緯があります。そして、ヤーマダはまークンのデートを
サポートするのを口実に夏帆ちゃんを誘い、彼女もそれに乗ったわけですね。
また、ブルーと智花ちゃんの場合は偶然出会い、ブルーにお世話になった
感謝の気持ちを伝えたいけど切り出せないうちに、まークンたちを眼にして、
何となく気になってその後を付いていった状況です。

それでは、ブルー&智花ちゃんの場合から。


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樫沢は、雅矢たちの場所がわかる席を選んでそこに智花と並んで座った。
ほどなく上映時間となる。
しかし、銀幕が下りてからものの数分で、樫沢の顔色が変わった。

な…何なんだ、この映画は??
もしかして、18禁映画だったのか??

もし、画面から眼を逸らしていたら、隣の席で智花が俯いてしまったことに
気付くことができたろうに。
彼は周囲への配慮が足りない男だったのだ。

…だが、オレは逃げない。
何が待っていても、後ろを見せない。
それがオレだ。樫沢光輝だ。

ほどなく、誰かが席を立ち、連れがそれを追いかけて出て行った。
樫沢は、それが夏帆ちゃんと山田であることを知る由もない。

さらにしばらくして、雅矢と部長がスクリーンを後にした。

…バカなヤツ、相手のことを考えて映画を選んだらどうなんだ。

樫沢は自分の状況をすっかり棚に上げている。彼はふと考えた。

…船橋は席を立った。だが、オレはまだここにいる。

何となく彼は、船橋に対する優越感を感じていた。

スクリーンの中では、カップルが相変わらずベッドの中にいる。

…オレは逃げない。
だが…しかし…これは…。
い・・・いや、ここで眼を逸らしたらオレの負けだ。
オレは何物からも逃げない男なんだ。

彼が己と長く戦っている間に、ようやく映画も終焉を迎えた。
樫沢は、ふうと息をつくと独り言を呟く。

「オレは…船橋に勝ったぞ。」

しかし、彼の勝利感を感じたのは、隣の席に眼を移すまでの
僅かな時間だけだった。
彼は、船橋との勝負に夢中になって、自分にも連れがいることを
すっかり忘れていたのである。

「…樫沢さんの…エッチ…」


ガーーーン!!


それは金属バットで殴られたような衝撃だった。

…エッチ…オレはこの娘にそう思われてしまったのか!?

しかし、彼女に言い訳することは己のプライドが許さなかった。
それっきり俯いてしまった智花の沈黙は、樫沢にとって、永遠に続く
苦しみの刑ように感じられた。


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まぁ、当然といえば当然の帰結ですね。
つまらないことに意地を張るのはTPOをよく考えてからにしようね、樫沢クン。
さて次は、ヤーマダ&夏帆ちゃんバージョンです。

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作品が始まってものの数分で、夏帆は耐え切れなくなって席を立った。
慌ててその後を追うヤーマダ。
いや、実はこの作品内容は彼にも大きな誤算だったのだ。

シネマ近くのファーストフード店…席に座るなり夏帆が噛み付いてくる。

「いったい、どういうつもりなの!!」

いつもならば怒った表情もカワイイと言う山田であったが、今度ばかりは
そのものすごい剣幕に、さすがの彼も口ごもった。

「いや…つまりその…あれは…
 じ…実はタイトルだけで選んじゃったんだ。」

そう、山田自身もまさかこんな内容とは知らなかったのである。
よく調べもせずに、タイトルで安易に選んだのだ。
夏帆の剣幕も気になるが、彼にはもう一つ気になることがあった。

まークン、途中で出てくるくらいの分別があればいいんだが…。
まさか、アレを最後まで部長に観せていないよな??

しかし、彼には2人の心配をしている余裕はなかった。
夏帆の怒りがエスカレートしてきたからだ。

「バカじゃないの!!あんなもん見せてどうするのよ!!
 船橋のヤツがその気になって、部長に襲いかかったらどーするの?!」

それはいつにも増したすごい迫力での罵声だった。
しかし、夏帆の心配について、山田はキッパリと自信を持って否定した。

「大丈夫、まークンは絶対そんなことしないから。
 だからオレは2人を置いて出てきたんだ。」

「…!!…」

開いたドアから吹き込んだそよ風が夏帆の髪を微かに揺らした。

「…どうして…そう思うの?!」

彼は暫く眼を閉じ、そしてはっきりと応えた。

「判るさ…まークンとは、長い付き合いだからな。」

「…ヤーマダ…」

こういうところが男友達同士の繋がりなのかな??
そう考えた夏帆は、自分の怒りが潮が引くように収まるのを感じた。

「…山田クン。アタシ、あんな映画を観ちゃって気分悪いな。」

「悪かったって、ホント!」

「だから、気分直しに違うの観たいから、つきあってくれる??」

山田にとって、この夏帆の誘いは予想外のことだった。
もしかして、初めての彼女からのデートの誘いかも。

「もっちろん!…えーと、今上映中のロマンチックな作品は…」

「そんなのには興味ないね。アタシは観てスカッとするのが好き!
 アニメだけど『今日からオレは!』にしない??」

どっかで見たようなタイトルのアニメだが…まあいいか。
夏帆ちゃんがオレを誘ってくれただけでも、すっごい前進だしな。

彼は親指を立てて、喜んで付き合うことを彼女に伝えていた。


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ヤーマダ&夏帆ちゃんも、高校生らしいカップルで良い感じです。
彼が浮気をせずに一途に付き合えば、きっときっと上手くいきますよ。

なお、後で夏帆ちゃんはヤーマダに、まークンを信じる根拠について
詳しく聞きました。
すると彼からの答えは、まークンには想像力が欠如しているから、
どんな場面を観ても、それを自分と部長に当てはめることはないと
確信していた…ということでした。
実はヤーマダは、まークンの人格とか自制心については、
全く考慮していなかったのですね(笑)。

では最後は、まークン&部長バージョンです。


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映画が始まってすぐ、雅矢は部長の様子が変なことに気が付いた。
よくは判らないが、映画で気分が悪くなったのかもしれない。
そう言えば、さっき早々と出て行った2人組もいたようだ。
雅矢は彼女を促して映画館を後にすることにした。

2人は近くにある静かな喫茶店に落ち着いた。
雅矢が部長の表情を伺うと、彼女は真っ赤な顔をしている。

「部長、顔が赤いっスけど、熱でもあるんじゃ??」

「いえ…熱はないので大丈夫です。」

部長はふうと深呼吸をして自分の気持ちを落ち着かせようとした。
ようやくドキドキ感が収まってくる。
それでも、あんな画面を観ていたのに、顔色一つ変わらない雅矢に、
彼女は彼の知らない一面を見たような気がした。

「…船橋クンて、私が考えていたより、ずっと大人だったんですね。」

「そっスか??」

雅矢は彼女が何を言いたいのか、よく判らないといった風情だ。
そして会話が途切れ、どちらからも言葉が出てこない。
沈黙の中で部長が考え込む。


船橋クン…どうして、あんな映画を選んだのですか??
確かに…私たち、付き合って時間が経つのに進展していませんね。
だから…それが不満だったのでしょうか??

彼女はさらに考え込む。

私は…2人でこうして合えるだけで嬉しかったの。
…でも、船橋クンはそれだけではダメなのかな。
私が先に進む心の準備できるまで…船橋クンならば待ってくれると
思っていたのは…私のワガママだったのかな?


突然、雅矢が話しかけてきた。少しドキッとする部長。

「でも、あれ、本当に変な映画だったスね。
 あれで、最後まで観ていれば、海辺を2人で走ったんスかね??」

「エッ??」

「あの映画、ヤーマダが薦めてくれたんスよ。
 アイツによると初恋って、海辺を2人で手を繋いで走ることだって。
 ファーストラブって映画だから、そういう話だろって。」

「エエッ!?」

映画の内容を、さも不満そうに語る雅矢。
そのあまりに真面目な表情に堪えきれなくなって、
部長は思わずクスクスと笑い出す。
キョトンとした表情で彼女を見つめる雅矢。

「部長??」

「アハハハッ!  船橋クンって、本当に変な人―!!」

「???」

ますます状況が判らない。
一頻り笑い終わると、部長はニツコリ微笑んで語りかけてきた。

「…じゃ、行こっか。」

「行くって、どこへっスか??」

「海…今からなら、夕陽に間に合うかもしれないよ。」

「エッ??」

状況がさっぱり判らない雅矢の動きが停止する。
その様子に、部長はもう一度ニコリと微笑むと独り言のように呟いた。

「…私も…初恋の思い出、欲しくなっちゃったから。」

そして、すぐに席を立って雅矢を急き立てる。

「何してるの、早くっ!!」

パタパタと走り出す部長。その後を追い、雅矢もまた走り出した。

…ヤーマダ…何だかオレ…
初恋について少しだけ判ったような気がするぜ。

雅矢はいっぱいの笑顔になると、想い人を全速で追いかけていた。


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うーん、青春ですね。やはりこの2人が一番私の好みです。
まークンと部長には、私のイタズラ設定なんて全く通じないですね。

…さてと、次はどんな設定がいいでしょうね??



2010.2.13.





シネマを後に2



<背景>
例によって「シネマを後に」シリーズ。(芸がないなぁ)
今回の映画は前回選択を誤ったせいかアニメ映画。
美しい牝鹿に恋をしたライオンの話。
二匹は、弱肉強食の世界を抜け出そうと冬山を越えようとするが、
悪天候に力尽きてしまう。
牝鹿は、ライオンに自分を食べて生き残るようにと言うのだが…。
アニメにも関わらず、やけに重いストーリーの映画を観終えた
まークンと部長の話です。


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シネマを後にすると、2人はいつもの喫茶店に腰を落ち着けた。
理由は全く判らないが、何となく雰囲気が重い気がする。
(いえいえ、それはやはり映画の選定ミスでしょう。)
そこで話のきっかけになればと、雅矢が部長に質問する。

「ところで、部長。
 あの映画観て、どんなこと考えました??」

「エッ??…考えたこと…ですか??」

それはごく普通のありふれた質問のつもりだった。
しかし、目の前の彼女は不思議にも口ごもっている。
その様子を見て、雅矢はあることにふと気が付いた。
これまでに雅矢は、迷惑なことを含めて、部長にいろいろな
質問をしてきた。
尋ねられた彼女は、例え正解が判らなくても一生懸命考えて、
自分なりの答えを雅矢に話してくれていた。
しかし、ごくごく稀にではあるが、部長が何も答えてくれない
質問もあったような気が…。

「そう言えば、部長。オレ…思い出しました。
 まだ、返事をもらってなかったような気がするんス。」

「返事…ですか??」

ドキリとしたような表情で部長が反復する。

「…あの日、オレ、尋ねたスよね。
 いつまでもオレの傍にいて欲しいって。」

「もちろん、覚えています。・・・でも・・・」

語りかけたまま、部長が深く考え込む。
もちろん、雅矢が自分に逢いに来てくれた、あの夏の日のことを
彼女が忘れるはずはなかった。

…今、船橋クンに私の本心を話すべきなのでしょうか??

それは彼女にとって、少し話しにくいことだった。
でも、心の真直ぐな雅矢に自分の気持ちを正直に話さないのは、
何か違うような気がしていた。
彼女は勇気を奮い起こすと再び口を開いた。

「…もし…あの時、船橋クンが自分のことが好きか嫌いかと
 尋ねてくれたなら、私はすぐに答えました。
 …船橋クンが…大好きですって。」

その言葉と同時に、部長は耳まで赤くなって、そのまま
俯いてしまった。

…船橋クンが大好きです…

それを聞いた雅矢は、天にも昇る気持ちで心ここに在らず、である。
時が流れ、ようやく部長は火照った顔を上げると言葉を続けた。

「…でも、船橋クンは私に…いつまでも傍にいて欲しいと
 尋ねましたよね。」

彼女の問いに、我に帰った雅矢がコクコクと頷く。

「私は…この言葉は船橋クンからのプロポーズだと思いました。
 だから…簡単には答えられなかったんです。」

意外な事実に驚く雅矢。

「エエッ!? そうだったんスか?!
 部長がそこまで深く考えてくれていたこと、オレ、
 今まで全然知らなかったっス。」

確かにそれは雅矢の本心だった。
すると部長が上目遣いで彼の顔を覗き込む。

「…船橋クンは、私をお嫁さんにしてくれる気はないのですか??」

首をブンブン振って慌ててそれを否定する。

「…よかった…。」

雅矢が必死で否定する様子を見て、部長はニッコリと微笑んだ。
余人には判らないが、彼女は雅矢をカワイイとすら思っていたのだ。
そんな感情をひとまず脇に置いて、部長は話を続けた。

「でもね、お互いが本気なら、将来のこと、学校のこと、家庭のこと、
 そして生活のこと…いろいろと真剣に考えなくてはいけません。」

「オレにもそれは判るっス。」

雅矢は判っていたのだ。部長が自分より遥かに大人であることを。
想いは別として、年長者として無分別な彼を制止する立場にもある。

「…だから…だからね、私、簡単には答えられないんです。
 船橋クン…もう少しだけ答えを待ってもらえないでしょうか??」

雅矢に迷いは全くなかった。
なぜって、部長がそれを願っているのだから、彼にとっては
それで理由は十分である。

「そういうことなら…部長の考えが決まるまで、
 オレ、5年でも10年でも…いや50年でも待ちます。」

「50年?? 私、お婆ちゃんになっちゃうよ。」

「そしたらオレはジジイですかね。
 けど、ジジイが恋しちゃイケナイ法律はなかったかなと。」

雅矢は笑っていたが、その一途な深い想いを知った部長の胸は
次第に熱くなってきた。

…船橋クンなら…本当に50年でも待つかもしれないな…。

湧き上がる強い想いに囚われて、自制を保つのが難しかった。
突然、彼女が話題をふった。

「…確か、あの映画を観て考えたこと…だったよね??」

「エッ?? そういや、その質問、忘れてたっス。」

彼女の顔から微笑が消えて真顔になっていた。
何だか、部長の様子、いつもと違う気もするが…。

「…私があの牝鹿なら…
 船橋クンになら…食べられちゃってもいいかな…なんて。」

聞く人が聞けば、とても大胆な発言かもしれなかった。
しかし、雅矢は物事を言葉通りに受け取る素な男だったのだ。

「そりゃあ、ないっスよ。
 オレがあのライオンなら、部長を背負って死ぬまで歩きますね。」

「…そっか…船橋クンならきっとそうだよね。」

雅矢の答えに彼女は微笑を浮かべた。
そして次の瞬間には、彼女は普段の「部長」へと戻っていた。


・・・いつものように楽しい2人の時間が流れていく。


雅矢が部長を家まで送っていく夜道のことである。
別れ際、彼女はふいに雅矢に語りかけた。

「…たぶん、船橋クンの答えの方が正しいと思うな。」

「??」

どういう意味が判らなくて困惑する雅矢。
そんな雅矢の掌を部長はそっと掴んで、心の中で呟いた。

…船橋クン…

いつかあなたに、ためらいなく言える日が来ると信じます。
死ぬまで二人で歩こうねって。

その時こそ…私はあなたの問いに答えますね。





…私は…一生あなたの傍にいます…と。





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今回は、妄想「お茶にごす。」の「ラストバトル」にて、
なぜ部長がまークンに「私は一生あなたの傍にいます」と言ったのか…
その種明かしを兼ねて、このSSを描いてみました。
妄想「お茶にごす。」では、説明不足で本当にごめんなさい。



2010.8.28.