鮎の細道 2 ドライブ編

 4時半頃目が覚めた。ここはどこなんだろう? 覚醒している僕が、眠っている僕との境界を波紋のように広げていく。やがてその面積が逆転して僕は目覚める。  まどろみは軽い寝息をたてて眠っている君の胸に預けて、僕はゆっくりと起きあがろう。昨日の夜の君は素晴らしかったよ。ゆっくりおやすみ。僕は柔らかな唇にそっとくちづけして髪に触れてみる。少し目を開けて君は恥ずかしそうに僕の胸に顔を埋める。その胸に一滴涙が落ちた。
「ばかだなぁ。僕は行かねばならない」
「だって、、、、、、、」
「君のことは忘れないよ。何時かきっとまたやってくる。でもね、僕は風さ。ほら、外に仲間が迎えに来ている。」
 風の音なのかどうかは、はっきり僕にも分からない。ただ、外はやけに騒がしい。彼女との時間を邪魔されたくはないが(なにしろその気になっている)注意して音を聞いてみる。風じゃない。声だ。何の声だ? 男のようだ。だんだん近づいてくる。僕は小鳥のような彼女をしっかりと抱きしめ、声のする方を振り返った。

 「しんさん、朝だよ! まいったなあ! が〜っはっはっは」 夢の時間はあっけなく終わりを告げた。いきなり血圧が180に跳ね上がる。
今日も元気だ高橋GO! 無理矢理現実に引き戻される。
でも、いきなりそんなでかい声で起こさなくてもいいじゃないっすか。
「まいったなあ!」というのは、GOさんの口癖で、何の脈絡もなくいきなり発せられる。
とにかく声はでかい。家もでかいが声もでかい。眼もでかい。とにかく勢いの塊のような人である。たぶん本当に「まいった」事は無いと思われる。
「あ、起きてましたよ」俺は嘘吐きか。よ〜も起きた瞬間にそうも白々しい言葉が出るものだ。
まあ、とにかく起きなくては殺される。しかし股間のもっこりをどうしよう。しょうがない。
僕は巨大ともいえるイチモツを立て竿にしてパンツのゴムで固定し、その上からズボンを覆い被せた。これで気付かれまい。嗚呼なんて僕は頭がいいんだろう。なんで釣りは下手なんだろう。
「は〜〜〜〜〜〜!」っと伸びをして大きく体を反らすと、ズボンが下がってパンツから顔を覗かせているのは、赤ら顔。無論、草刈には似ていない。

とても俳句とは云えない。
しかも早いの自慢してどうする。

 外に出てみると雨も風も無いんである。間違いなく台風はこちらに向かっている。しかもかなりの大型である。GOさんの勢いに恐れをなしたか、台風野郎。
まあそれは良いとして、GOさんの隙を見てすかさず庭に立ち小便をかます。その頃には戦闘態勢は収まっていたのだ。急いでモノを仕舞ったので、ちょぴっとだけパンツを濡らしてしまった。
「ま、まいったなあ!」勿論、全然まいってない。
斉藤さん、イトマコさんとの待ち合わせ場所に車を走らせる。
僕は荷台に荷物を満載したライトバン。GOさんとGOジュニア(以下ジュニアと略)は、セダンだ。
 
 とにかくGOさんは勢いがあるので、運転も勢いでする。つまり飛ばす。
僕のドライビングテクニックでなんとかカバーしながら付いていく。マニュアルトランスミッションだったことが救いだ。ヒール&トウとダブルクラッチ、小刻みなハンドルワークで追撃する。思い出すぜ。あのオイル臭く焼けたサーキットを。
というのも、全くのでたらめで、ただ直線で思いっきりアクセルをべた踏みするのであった。

 待ち合わせ場所のコンビニに到着。朝飯を買って、ガムテープを買う。
実はガムテープを蝿取り紙のように使って、鮎をくっつけて捕ろうという魂胆だったのだが、後々このガムテープが荷造りに活躍することになる。
ふ〜ん。ガムテープってそーゆー使い方もできるんだ。うそぴょ〜ん。

 斉藤さんが赤ら顔で登場。この人は焼けても黒くならないんじゃろか?
GOさんから伝授された勢いで顔を観察するが、に、似てない。イトマコさんの無精ひげも随分伸びてきている。

 さて、出発。というところでうんちがしたくなる。なんでこう、せっぱ詰まった時に限ってしたくなるのだろう?「まいったなあ!」というGOさんの声を後ろに聞きながら、かけ込み寺。30秒で済ませてすっきりした眼で斉藤さんを見ると、やっぱり、、、、、、、、、、、、。


 山道を上って下って田沢湖畔を抜けて、川を何本も渡る。2時間くらいのドライブ。どこも減水らしいが、それでも魅力的な渓流が沢山あった。山が深いから水も深い。スケールが違うなぁ、いわきとは。

 道には風で折れた小枝が所々に落ちている。台風の影響か? やがて高度を上げ突然眼下に遠く川が見えた。


おお! 初めて俳句らしい俳句。
一応これって、奥の細道のパロディーのつもりなんです。

 阿仁川の鮎センターに到着。みんな真っ黒に日焼けしていて、いかにも上手そう。
☆浜ちゃんがタックルボックスをひろげて何かやっている。覗きに行ってびっくり! 市販品なら殆ど全部あるんじゃないじゃろか。隙を見て2〜3個かっぱらおうと思ったが、まだ早いと思いとどまった。
最終日にタックルボックスごとかっぱらうことにする。竿もついでに取り替えちゃおうっと。
僕の9.5mの競技にマジックでTVと書いておけば、そう簡単には見破られないはずだ。
しめしめ。

 GOさんの号令により集合。細かな日程の説明がある。しかも各自にプリントが配られる。
う〜みゅ。幹事の鏡。東北OLMの為に生まれてきたような男! その名は高橋GO!
そして最後に「という予定ですが、川を見て行き当たりばったりに決めましょう!がっはっは」へなへなへな。はらほろひれはれ。
オトリを買って川沿いを走り河川公園のような所に車を止める。

 台風の影響は未だ見えず。 さて、いよいよ竿を出す。

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