校 庭 芝 生 化 に つ い て 01G43 松井康洋 平成16年7月より名古屋市立東桜小学校の校庭芝生管理を行い、一年が経過しました。 この経験をもとに、校庭芝生化についてまとめてみました。 利用の目的と効果(メリットとデメリット) メリット 教育上の効果 ・天然芝の持つ柔らかな弾力性は、他の舗装材に比べ、安全です(擦り傷ケガは、格段に 減少します)。 組体操など、土のグランドではできなかった、危険性の高い競技が可能になります。 ・天然芝にする事で、小動物(トンボ・バッタなど)が集まり、児童の自然接触が増え、身近 な動植物に対する関心が高まります(虫取りや、小枝を差しトンボが止まるのを楽しむ遊び など、児童の創造性が膨らみます)。 ・児童が管理作業を行う事で、環境や環境問題に興味や関心が高まり、環境教育の活動 に繋がります。 環境保全上での効果 ・緑化全般と同じように、美観の向上という効果があります。 ・多くの学校で頭を悩ませている砂塵飛散害が解消されます。 ・芝生の持つ蒸散作用により、ヒートアイランド現象の緩和に役立ちます。 デメリット ・芝生管理のため作業労力や、コストが掛かる。 ・芝生養生のために、グランドの利用制限が必要になる。 基本方針 年間を通じて緑を保つには、多くの養生期間が必要になり、運動場としての機能は失われて しまいます。 『利用して傷んだら養生する』、上手に芝生と付き合うことが、校庭芝生化の必須項目になっ てきます。 すなわち、『年間行事の節目で、芝生を良好な状態にする』これが基本方針となります。 年間行事の節目となるイベントには、入学式と運動会があります。 入学式は、秋に冬芝の種を播き、春に良好な芝生を作ります。 運動会は、夏休みを利用して生育旺盛な夏芝を養生管理し、秋に良好な芝生を作ります。 これで、運動場の機能を損なわずに利用できます。 【入学式の風景】
(桜と芝生の色彩がとてもきれいです) 【運動会の風景】
(夏休みの養生期間で、芝生も元気いっぱいです) 管理方法 基本方針である、節目での良好な芝生作りを可能にする管理方法としてバミューダグラス (ティフトン419)の夏芝に、ライグラス(フェアウェイ)の冬芝を播種する手法です。 これはサッカー場などで、よく使われているウィンターオーバーシード工法です。 この管理方法は裸地化した部分への補修方法に大きな特徴があります。ティフトンを選択 した理由は以下の手法が可能だからです。 ティフトン芝の茎屑、新品種の種子(リビエラ)からの繁殖補修で、工事費を安価にする事が 可能になりました。 【ティフトン芝の茎屑繁殖補修状況】 (補修前)
(作業状況)
(補修後約1ヶ月)
【種子(リビエラ)繁殖補修状況】 8月2日播種
8月13日状況
8月31日状況
芝草品種の選択理由 バミューダグラス(ティフトン419) バミューダグラスの改良品種で、主にサッカー場などで使われている芝草です。 生育が旺盛で、繁殖力が強いため、損傷した部分への匍匐回復が容易にできます。 コウライ芝などの、ゾイジア芝に比べ踏厚対抗性は低いですが、回復力の面で優れてい るため、その特徴は最大限に校庭芝生化に活用できます。 生育が旺盛なため、芝刈り作業の問題がありますが、夏休みの養生期間は週2回ほど、 高頻度の芝刈りが必要になります。しかし適度な利用により、擦り切れで葉の伸長が抑 制され、10日に一度前後の芝刈頻度で十分対応できます。 バミューダグラス(リビエラ)補修用種子 改良バミューダグラスで唯一、種子から生育可能な品種です。ティフトン芝と同等以上の 生育力、葉質の形状が特徴です。従来ティフトン芝生が裸地した場合の補修方法は、ソ ッドによる張替補修か、茎などからの繁殖補修しかありませんでした。この品種を利用す る事により、工事費を低く抑えられ、補修作業を安価に行う事が出来ます。 ライグラス(フェアウェイ) この品種は、秋から春に掛けて生育し夏には、自然に消滅する特性があります。 秋にティフトン(以下、夏芝)の上に種を播き、冬から秋の間、夏芝を保護しながら緑の 芝生を作ります。 夏になると、自然に消滅するため簡単に夏芝への切り替えが行えます。 入学式を迎えるに当たり、利用制限と補修作業が必要になりますが、鮮やかな緑の 芝生を作ります。 造成時、必要項目について レイアウト 校庭芝生化についてまず考慮する点は、校庭のどの程度の面積を芝生化し、どう配置 するかです。 トラック部分や、サッカーゴール部分など踏厚損傷が高い部分については、裸地化の危 険性が高いです。 そのため利用形態に応じたレイアウトが重要になってきます。 土壌改良工法について サッカー場のように、土壌の締め固まりを軽減するため、床土を砂に入れ替える方法が あります。しかし工事費用は、高価なものになってしまいます。土壌のpHなどの調査は 必要になってきますが、現状土壌に有機質肥料を混ぜ込み、締め固まりを緩和する方 法は安価で行えます。 どちらも排水性の向上が、共通点であり、その効果は芝生の根の生育を促進させます。 散水設備について 適切なスプリンクラーを敷設する必要があります。十分な散水は芝生の生育に最も必 要なものです。 また維持管理作業の中で最も労力が必要なのも散水作業です。 敷設式のスプリンクラーは、高価なものではありますが、最低でも飛散半径10m以上 の能力を持つ移動式スプリンクラーは用意する必要があります。 まとめ 芝生というと、庭園の様な美しい芝生をイメージされますが、校庭の場合は原っぱの様 なイメージと考えるのが無難と言えるでしょう。 運動場としての利用が目的である以上、芝生が傷む事は仕方がないと認識する必要が あります。芝は生き物ですので、土のグランドと同じ利用は不可能です。 以上の点を十分理解した上で、校庭芝生化を選択された場合、芝生がもたらす環境教 育の効果を考えると、作業労力も苦にならなくなると思います。 東桜小学校では、先生方の強い熱意により、生育に応じて愛情ある維持管理が行われ ています。 その結果児童を交え、マイシバボトル大作戦の様な活動が始まりました。 まさに芝生がもたらした、環境教育の成果だと思います。
私たち業者は、ただ管理作業の提案をするだけではなく、芝生がもたらす可能性を わか りやすく伝える事が一番大切なのかもしれません。 平成17年10月吉日 岩間造園株式会社 |