【学習の目的】学問には、研究の対象がある。研究対象の情報は、一般的に資料と呼ばれているものである。資料は必ずしも本ばかりではない。現在では、石刻、写真、映像、出土文物、TVなど多彩な局面を持つ。どのような資料がどのような情報をもたらすかを概説して、学問対象の情報をどのような形の資料で手に入れるかを学ぶ。
ここでは過去の中国民俗学研究を利用して、この学問の対象を明らかにする。さらに、日本での中国民俗学研究の限界と方向性について検討する。方法として、情報論から「みたて」という仮説を利用して学習をする。
民俗学の対象
中国民俗の種類
民俗学と民族学の関係
資料の解説・資料の扱い方
>民俗
物質生活の方面・・環境、労働、衣食住など
社会生活の方面・・伝承する現象、組織など
精神生活の方面・・観念の伝承
古代では民俗は風俗と言葉で表わされていた。それは礼儀の違いとして認識されていた。>>楊成志「民俗学的起源、發展和動態」『民俗学講演集』p30
「禮、履也。國人所踐履、定其法式、大而冠婚喪祭、小而視聽言動、皆有其節文也。」
「俗者習也、上所化曰風、下所習曰俗」『周禮』
「凡民函五常之性、而其剛柔緩急、音聲不同、系水土之風氣、故謂之風。好惡取舍、動靜亡常、隨君上之情欲、故謂之俗」『漢書・地理志』
風俗の違いは次のようである『民俗学講演集』p30
「入境而問禁、入國而問俗、入門而問諱」『禮記・曲禮』
「百里不同風、千里不同俗」『晏子春秋』
民俗学の研究の重点は漢族の労働人民を主として、民族学は少数民族を主とする。>>楊@(方方/土)「民俗学與民族学」『民俗学講演集』p79
人類学は人類の原始時代と未開人類をを研究する。人類と文化の根源を探求する。民俗学は一つの国家や民族を、有史以前から歴史時代、現代までの民俗の伝承文化現象を含んでいる。張紫晨『中国民俗與民俗学』(龍大蔵書)p2
民族学は民族を研究する科学である。民族学の研究範囲は民俗学に比べて広い。社会学は社会の構造、機能、発生、発展の規律を研究する学科である。社会学は、民族学に比べて更に広い。張紫晨『中国民俗與民俗学』(龍大蔵書)p2-3
漢族と少数民族の関係は古くから次のように言われている。
「禮失而求諸野」「中國失禮、求之四裔」・・野は民俗学の研究対象、四裔は民族学の対象>>楊@(方方/土)「民俗学與民族学」『民俗学講演集』p73
>民俗資料はどのようにして存在するか。
どこにでもある。どんどん棄てられる。新しく作り直される。発明や発見によって改良が加えられる。無形の民俗資料(伝説、制度、行事など)は行なう人々の移動や死亡によって失われてゆく傾向にある。>>フィールドワークの必要性
中國でも野外調査>>「三同」(同吃、同住、同労働)>>楊@(方方/土)「民俗学與民族学」『民俗学講演集』p73
書物、考古出土品、美術、音楽、劇、映像、TVなど
>歴史的な民俗資料の形
書かれたものが主体。そのほかに考古出土品、絵画など。
>書かれた民俗資料の中で歴史的な指標となるもの3つー重要なもの
今日的には十三經注疏をさす。儒教の經典。四書五經のこと。六經(易經、書經、詩經、禮經、春秋、樂經)とは儒教の經典。のち禮と樂が失われ、『禮記』を補った。 現在、『周易』『尚書』『詩經』『禮記』『儀禮』『周禮』『春秋左氏傳』『春秋穀梁傳』『春秋公羊傳』『論語』『孝經』『孟子』の十三經。
>>十三經のなかで『禮記』『儀禮』『周禮』が重要。三禮ともいう。
古代の習俗、習慣、制度などがわかる。
『禮記』四十九編は周の末から秦漢時代の儒学者の、禮にかんする理論と実際との記録を集めた書。漢の宣帝のころの戴聖(たいせい)(戴徳の甥)が集録したもので、戴徳の編集した『大戴禮』八十五編にたいして『小戴禮』ともいう。(月令・明堂。樂記は馬融がふかしたものともいう)。今文學派に属する書。鄭玄注孔穎達疏『禮記正義』六十三巻。
『儀禮』十七巻は、周代の上流階級の冠・婚・喪・祭・朝覲(ちょうきん)(諸侯が天子にお目にかかること)・聘問(へいもん)(諸侯が大夫に、他の諸侯を訪問させること)などの儀式のやりかたや法制について詳述したもの。周公旦の作と言われている。また孔子の撰という。『漢書』では「士禮」十七編、高堂生撰とする。『儀禮』の名前は鄭玄以後のものと考えられる。鄭玄注賈公彦(かこうげん)疏『儀禮注疏』がある。後漢の墓から『儀禮』が出土した。甘肅省武威県磨咀子の後漢墓からでた。『武威漢簡』文物出版社1965
『周禮』六編は、周公旦が周代初期の官制を記したものといわれている。劉イン(音欠)の偽作したものともいわれる。『周官』ともいう。天官(宮中の諸官)・地官(地方行政・教育)・春官(祭祀)・夏官(軍政)・秋官(司法)・冬官(制作)の六部門、二百七十余の職制・官員・職務内容を記す。この内、前漢武帝のとき、河間献王の献じた『周官』には冬官が欠けていたので、のちに『考工記』で補った。
禮は古来からの風俗習慣儀式制度から生まれた。古代の社会の制度や習慣や習俗が反映されている。周は農村社会であったか。・・原風景について
禮は複雑多岐にわたるので、五禮とか九禮に分けた。
五禮・・吉凶軍賓嘉 九禮・・冠・婚・朝・聘・喪・祭・賓主・郷飲酒・軍旅
經學の解釈がいろいろである。非常に読みにくい。しかし重要である。
十九世紀末に敦煌の千佛洞で発見された文書類。Sir Aurel Stein(1862-1943)オーレル・スタイン、Paul Pelliot(1878-1945)ポール・ペリオ、Albelt von Le Coq(1860-1930)ルコック、Sergey Fyodorovich Ol'demburg(1863-1934)オンデンブルグ、大谷光瑞などによって集められた。
スタイン文献はイギリスの大英図書館(British Library)などに、ペリオ文書はフランスの国立図書館(bibliotheque nationale)、ルコックはベルリン民俗博物館、オンデンブルグ サンクトペテルブルクの科学アカデミー東洋研究所、龍谷大学大谷文書、残りは北京図書館などに集められた。
これらの文書の特徴は、当時の生の文書を含むことで重要である。過去に捨てられてきた日常のメモや帳面、手紙などを含み当時の民俗を知る上で重要である。また多くの仏典を含み、宗教の民俗資料としても重要である。
問題は地方性があることである。長安からすごく離れている。西域に近いのでインドチベットウイグルなどの他の民族の制度や習俗が混じっていることがあるかもしれない。
宋代以後、各地で地方志が作られる。そして、出版される。
地方志は、特定の地域の歴史・文物・名所・伝説・人物・言語などが記録されている。地方志は、ある程度パターン化されている。編著者が文人であるために、儒教の影響が強い。地位や思想が反映される。>>グロータスの調査・満鉄調査部の調査
考古出土品の多くは、墳墓からでたものが主体である。そのために喪礼のことはわかるが、家庭の中の日常生活はわからない。明器によってその時代の文物がわかり、歴史的な時代の指標となる。
古い時代の絵画は非常に少ない。漢代以前のものは、岩壁画か墓室の壁画か金石画か考古発掘品である。唐代以後、伝世品がみられる。宋代の『清明河上圖』が有名である。明代以後は小説の版画類が大切である。
儀礼はフィールドワークが重要である。その他には映画TVで概略が知れる。 食事>>『飲食男女』(恋人たちの食卓)、結婚>>『ウェディングバンケット』
京劇が有名であるが、各地にそれぞれ特色がある劇がある。
雜技がどこから発展してきたか。
中国の民俗学は歌謡研究から始まった。
>特徴>現在性を持つ記録である。観察者と研究者が同一である。方法論的に訓練されている。目的を持っている。
>方法論>>技術的な条件>@長期の現地滞在A言語の習得B現地の人との信頼関係C現地社会の一員として受け入れられる 《文化人類学を学ぶ人のために》p36
>現在はフィールドワークの危機が言われている。
>>立場の問題(自己満足、専門家)・まとまりのある小さな社会はいま世界中に存在しない(世界の一部)・調査するものとされるものの関係(不平等)・情報処理の問題(恣意的である)・研究者が持っている枠組みで記述する(>猪飼みたて論) 《文化人類学を学ぶ人のために》p41-42を利用して改める。
>>岩田慶治>無知の知のフィールドワーク>第一段階「とびこむ」第二段階「ちかづく」第三段階「相手の立場にたつ」第四段階「ともに自由になる」
同じ資料を扱っても目的が違う。例えば『禮記』を儒学の經典として読むのと、民俗学的資料として読むのとでは自ずとことなる。「みたて」の違いである。
ものごとを把握する方法。ものごとを理解するためには、まず理解するための基礎がなければならない。その基礎はどのようにしてできるのか。原風景にかかわる。原風景はいつ獲得するのか。どうも10才から12・3才の頃のようである。原風景の中から、嗜好が生まれる。嗜好の中で論理の組み立てができ、ものごとを理解する枠組みができる。「枠組み」(フレーム)はそれぞれの個人によってことなり、ものごとを把握するときそれぞれの窓を通してしか、社会や文化を理解できない。しかし原風景には同一文化の中ではある種の共通性が認められるから、同一文化内では意志疎通がはかられる。「みたて」の枠組みを手に入れることは一生続く。そしていろいろな枠組みを手に入れ、それぞれの知識を理解し獲得すわけである。「みたて」は個人的でありながら、なおかつ社会に共通の枠が存在している。これを一般的に常識と呼んでいるものに近い。その共通の認識の基礎となる枠を歴史的に考えると時代精神というものに相当する。
日本文化と中国文化は共通性が多い>日本における中国文化の受け入れ>その度合を判断する基準があるか>中国民俗史を学ぶ一つの目的

