インターネットを使った東洋史研究のデザイン

猪飼祥夫

1999.7.3
龍谷大學東洋史研究会例会
龍谷大學大宮学舎南黌204號教室


「インターネットを使った東洋史研究のデザイン」とは、インターネットだけを使って論文が書けないかという作業仮説である。今までの東洋史研究では、情報を書物で手に入れることが中心であった。しかし、今日では、インターネットは世界最大の図書館になった。図書館だけでなく、ラジオ局であり映画館でありテレビでありコンサートホールでもある。また世界経済の中心でもあり、国際紛争のプロカパンダの場でもある。世界の情報が新聞やテレビ等からインターネットに移っている。この東洋史研究だけに限ってみても、情報の新しさや検索の便利さによって、大きな変化が来ていると思われる。そこで大胆な作業仮説をおいて、その方法論を探ることとした。

目次

  1. 興味を探す
  2. 論文の書き方
  3. 基礎の学習と辞書
  4. 情報をどのようにして手に入れるか
  5. 手に入れた情報をどのようにして論文にするか
  6. 論文発表の形
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1,興味を探す
まず、自分の興味の対象を探すことが必要である。東アジアのページをなんとはなく探しても、なかなかわからない。そこで探索するためのサーチエンジンというものが有効である。まずはヤフー(YAHOO! JAPAN)である。まず、ここで中国とか朝鮮とか印度とかの言葉を適当にいれ、検索すると日本国内の適当なページが表示されるので、そこから指示されるページに行くと関連の項目が表示される。このヤフーではカテゴリー検索もできるので、階層を選んでいっても目的の情報に近づける。このヤフーは、各国のページがあってそれぞれの国の情報を案内してくれる。

関係項目へ・ヤフー

中国語の表示や韓国語の表示には、色々なテクニックが必要になる。インターネットエクスプローラに中国語と韓国語と台湾表記を組み込むと文字が読める。ネットスケープにも同様の作業が必要である。 中国語や韓国語で文章を作るときには、それぞれの言語に対応したワードプロセッサーが必要となる。中国語の環境は、内田研究室に詳しい。同志社の竹内さんのパソコンと中国語に詳しい解説がある。
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中国史の人名や年号、書名などをいちいち辞書登録するとたいへんな時間がいる。そこで、それらの単語を一括して登録できる辞書なるものがある。これを使えば論文を書くときに大変楽に作業ができる。このような作業を一人でした人がいる。立命館の山田崇仁さんのページである。かれのページは、若い研究者がインターネットでどのようなことをめざすべきかという参考にもなるよいページである。


2,論文の書き方

論文を書こうとすると、どのように書けばいいのかわからない人が多い。論文を書くというのは、小説や詩のように文学作品を作るのと同じであるので、創造的才能がいるように思う。けれども、私のような才能のない者には大変苦しい作業となる。最近は歴史の論文と言っても表や図と記号が多くて、まるで何かの設計図のような無味乾燥の著作も多い。私見だが、やはり論文は読んでいて楽しくなければいけないのではないかと思う。論文の書き方と言えば、樽 本 照 雄先生の清末小説研究ガイドである。このページは、清末の小説研究の方法を事細かに述べられている。ここに述べられた方法論は、東洋史研究にも当てはまるものである


3,基礎の学習と辞書

論文を書くためには、資料が読めなければならない。そのためには、研究の対象となる各言語を理解する必要がある。中国ならば中国語、朝鮮半島なら朝鮮語・韓国語、ベトナムならベトナム語という事になる。このような分野も非常に充実してきている。中国に限ってみると、古漢語の読解と云うことも大切である。

まずは中国語を理解すると言うことになる。日本国内のページでは、中国語を本格的に教えるところは少ないようである。中国語を勉強するには、全球華文網路教育中心がいい。発音もビデオも付いている。そして英語の教材であるので英語の勉強にもなる。当然、中国語の文法も学べる。漢語語法修辞常識は中国語の文法を学ぶのに良いページである。

さらに辞書もある。一番便利なのは辞典ネットである。この辞書には十二の辞書にリンクしてあり、すぐにそれぞれの辞書に入ることができる。広東語や客家語まで調べられ、その発音を聞くこともできる。リンクされた辞書では、以下のものが特に有用である。国語辞典(漢語辞典)は、台湾の教育部で発表している国語辞典である。漢韓日・英語・辞典は、日本語でつかえる辞書である。四角號碼でもつかえる。同じ所に仏教辞典や仏教文献、道教儒教の辞典などがある。英漢辞典も、便利な辞書である。中央アジアの言語にはSergei Starostinさんのここが役立つ。

漢文の講座や漢文法を教えてくれるページは、適当なものがない。大学受験には役立ちそうだが、中国の古漢語や日本での漢文を本格的に学べる日本語ページは探すことができなかった。また東洋史の事典という本格的なものもなかった。ただ中国史微小辞典が一番よくできている。高崎真哉さんの私的中国史調査会も辞典と索引風で便利なページである。最後に困ったらここに尋ねるのもよい。新語絲社である。

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4,情報をどのようにして手に入れるか

一応、論文のテーマが決まると、その関係の文献を集める必要がある。まず、世界でどのような研究が行われているのか、現在はどのようなことが問題になっているのかを調べる必要がある。これまでは、『史学雑誌』の「回顧と展望」号を見ていれば日本の学問情況を把握できたが、今日では世界の情報を知らないことには、研究を続けることができなくなっている。

まずは、世界最大のアジア研究のバーチャル図書館というものがオーストラリアにある。ここではアジア研究の今日的情況を知ることができる。世界中の英語で書かれた文献のリンクページがここにある。僭越ながら僕のページもリンクされている。もう一つ、性格は少し違うがドイツのハイデルベルグ大學にも、中国研究のためのバーチャル図書館がある。ヨーロッパの学問を知るためにはこのページも見逃せない。日本では、言語に始まって東洋学ならなんでもそろうのがこのページ、OrientNet Homeである。

また、フィールドワークや研究プロジェクトのページもある。テキサス大學にあるアジア研究のためのページである。このページは、世界のアジア研究がどこに向かっているか、なにが世界のテーマになっているかの方向がわかる。

私たちの大學の東洋史は、仏教史研究や道教研究も伝統ある学問である。当然、私たちの大學にこそなければならない図書館なのだが、残念ながら他のページを紹介しなければならない。仏教徒のためのバーチャル図書館である。このページは色々と関係するページが置かれている。例えば、同じ所に禅の図書館もある。道教のためのバーチャル図書館も充実している。

日本語のリンクページもまた役に立つ。日本のリンクページは、研究情況を明らかにするという所まで行っていなくて、資料をリンクさすとか、データベースにつなげるとかのページが多い。中国研究のための日本の基本的なリンクとして、一番早くから先駆的な活動をされてきた新潟大学の児玉研究室は、中国の思想を知りたい人必見のページである。またここからリンクされているページは役に立つ。また信州大学の宇佐見研究室は、中国哲学と美術のページである。科学技術史ならば友人の真柳研究室のページである。リンクページも充実している。

朝鮮の近代史や、近代朝鮮史文献データベース「戦後日本における朝鮮史文献目録」のページもある。

チベット史の研究案内には、チベット史情報室「テングリノール」である。チベットの言語と文化の研究には、東京外国語大学の星泉先生のページである。東洋文庫のチベット研究室も必見である。

南アジア研究のネットワークは、東南アジア研究にまず見るべきページであろう。東南アジア史学会や、京大・東南アジア研究センター 、U.C.L.A.のThe Center for Southeast Asia Studies International & Area Studiesなども、注目すべきである。

東洋学のインターネットサーチ

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研究のテーマが決まると、まずはその分野の論文や著作を探すことになる。本を探すのにどこにどのような本があるかを探すには、文部省学術情報総合目録データベースである。日本の多くの大学の図書館情報がまとめられている。このようなものができると昔、蔵書索引を一づつ手で引いていたのが不思議なぐらいである。

論文を探すには、京大人文科学研究所のデータベースchina3であるが、これは一般人は使えない。『東洋学文献類目』のインターネット版である。税金を使っていながら、このような利用制限をするのは信じられない。

歴史民俗博物館のデータベースれきはくや、インド学仏教学論文検索データベース国際敦煌学I項目nternational Dunhuang Projectなども目的よって役立つものである。

佛教関係のリンク

台湾では、台湾全図書館蔵書検索台湾国家図書館が役立つ。また、精華大学にある中国の図書館の蔵書検索も参考になるであろう。またかっての北京図書館、今は中国国家図書館の蔵書が調べられるようなった。

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洋書を探すのであれば、やはりここである。アマゾンブックストアー 、一瞬にして世界の英語文献が調べられ買うことができる。当方もよく利用している。日本で本を探すなら 日本書籍出版協会である。紀伊国屋や、丸善などの検索も役に立つ。どうして日本の本屋はこうも高いのかと思ってしまう。

本屋のリンク

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最近思うことの一つに、東洋史を学ぶには日本の古典籍や江戸時代の漢文家の論説を読まなければ仕事にならないことである。ところが、私たちは学問が細分化しているために、国史や国文学に全く明るくない。国文学研究資料館は、心強い味方である。最近ここで実験的に公開されている「国書総目録」と「古典籍総合目録」の著作・著者情報の統合目録は、家に居ながらにして日本中の古典籍が調べられると言うすぐれものである。 日中交渉史を調べるならば、外務省外交史料館である。

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中国歴史を調べるには、やはりここである。中央研究院は台湾における中国研究の中心であり、ここで行われていることは世界の中国研究の方向性であるともいえる。その中で一番有名なものは、古典文献の索引である。漢籍電子文献では、『二十五史』、『十三經注疏』、『台湾方志』などから一字が引ける。原文を抽出することもできる。原文がインターネットで抽出することができると、いちいち原文を入力する必要がない。これは本当に楽である。さらに文物図象研究室資料庫では、簡帛金石史料40数種、居延漢簡補編図象などの金石資料が探し出せる。

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また、さきにCD版で発売された『四庫全書』がインターネットで見られる。それも原文のままである。このページはすべて完成しているわけではないが、目を離すことができないページである。

アメリカでも中国古典籍はBIG5で入力されている。古典文献全文検索資料庫でも、『十三経』や『二十五史』『朱子語類』『明儒学案』『四庫総目』などが引ける。

日本国内でも歴史資料のデータベース化が進んでいる。この分野では早稲田大学のグループが進んでいる。秦漢の竹簡である包山楚簡データベース楚簡データベースindexである。
我らが龍谷大學もこの分野では大きな貢献をしている。龍大大谷文書の公開である。このような公開資料を、世界に向かって発信して行かなければならない時代と思われる。龍谷大学古典籍情報システムも新しい取り組みである。

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原典が手に入り、それぞれの文献の年代を考証するとなると年号や日付が確かめられなければならない。その時には台湾の中央研究院の中西暦の転換ページである。これも陳垣の『二十二史朔閏表』で引いていたことを考えれば、雲泥の差である。

また文学や現代歴史小説も歴史の一部分である。気分転換には以下のページがよい。中国の現代小説などが読める。黄金書屋では、金庸の武侠小説なども読める。因特中文網も楽しい。先に辞書で紹介したが、新語絲の電子文庫には古典籍の小説類がある。宋以後の小説なら、中国古典文学のページで手に入る。散文や詩などの古典籍ならこちらの中国古典文学である。

文学のリンクページ

世界の中国研究の中心は、哲学や宗教、文学である。中国の制度史や儒学を調べるには、中国経典文学の工具書録が役に立つ。先秦漢魏六朝唐宋文や紅楼夢唐宋金元詩宋詩全宋詞・全金元詞・全唐五代詞古典詩詞典籍『全唐詩』『全宋詩』なども有用である。占いに興味のある人なら、水口拓寿さんの風水研究者の広場が面白い。

儒教・中国思想・科学思想史のリンク

道教関係のリンク

文学のリンクページ

アジアの建築の文献集

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今日では、アメリカの人類学はアジアで大きな成果を上げている。私たちが東洋の社会や文化を研究するためには、東アジア人類学興味研究会が面白い。 シルクロードを守る財団とか、中日美術館もインターネットによる東洋研究の場であると思われる

近代の政治史などは、日本では手に入らない資料も多い。そういうときインターネットは役に立つ。例えば、文化大革命の資料などである。


5,手に入れた情報をどのようにして論文にするか

研究の情況がわかり、本を探すことができ、またその原文も手にはいるといよいよ論文を書くことになる。原文を読解するためには、基礎の力がいることはすでに述べたが、台湾や中国の文献を日本のワープロで加工するとなると文字のコード変換をしなければならない。そこで役立つのが、漢字通である。また当方は、南極星というワープロを使っている。日中の星も役立つ。

Unicodeを経由で日本語・韓国語・中国語(Big5、GB、HZ)の各文字コードを自在に変換こともできる。またことぶきじるしさんの新字体から旧字体への変換も役立つ。 中国語 (Big5) を読み上げてくれるページもある。

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論文は、オリジナリティーがなければならない。独創性と言うことが論文の一番大切なものであろう。しかし思いつきだけを論文にしてはならない。その思いつきを証明する必要がある。それも世界の人に認められるようにしなければない。
起承転結というのは、どのような文章にも必要なものであるが、これがまた難しい。小生などははちゃめちゃな文体で、論旨がはっきりしないものばかりである。とくに、起の所が難しい。これができると、結のところはある程度決まっているので、全体の構想がまとまる。小生の場合は、証明で十分詰めておかないと論旨が空中分解のようになるので、文章を思いついたときに少しずつ作っておくのである。原文読解の時にすぐにかき込むかメモを作るのがよい。高校の時、作文で0点を取ってから原稿用紙アレルギーの小生は、包装紙や広告の裏にメモを書くので、論文をまとめるときになるとたいへんなことになる。最近はメモをパソコンにしたので楽になったが、今度はそのメモをどこに置いたかわからなくなり、また大変なことになっている。
四苦八苦しながら、文章をつなげて見るとそれなりの論文ができる。インターネットを使うと切り張りが楽になり、人の文章を使うことになったりする可能性があるので、そのようなことは現に慎まなければならない。著作権を侵害することになる。
もう一度できあがった論文を見ると、さらに手を入れたくなるが、その前に友人先輩に見てもらうのがよい。人の批評は厳粛に受け止めて、さらに良い論文をめざすべきである。これが実は、小生などはできない。まずは、世界の研究の中で自分の研究がどの位置にいるのかを把握して、いいものを作るように努力すべきあると思っている。
6,論文発表の形

論文発表は、新しい形に変化している。たとえば、アメリカでは論文がインターネットで発表されたり、学会がインターネットで公表されている。アメリカの発表の一例としてAssociation for Asian Studies, Inc.をみれば、世界の學者がこの学会に集まって最高の研究発表を知ることができる。この学会こそ世界で一番のアジア学の学会である。また個別の学会もある。明代研究学会や、中国軍事史研究会魏晋南北朝研究会などがある。そこでも、多くの論文や抄録が発表されている。今後は雑誌の発表から、インターネットの発表へ学会の方向は移っていくに違いない。そして、世界では英語で書かれたものしか評価されなくなるであろう。

さいごにアジアの大學のランク と言うページを紹介しておこう。アジアの大学65位までに龍谷大學は入っていないので是非ともみなさんにがんばっていただきたいと思う。

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謝辞>多くの関係ページを参考にさせていただきました。個々のページ制作者にはいちいちお断りさせていただきませんでしたが、関係各位には深く感謝いしたしております。


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