本の森通信 7月号

Back Number] [Home

7月29日(金)
今日で七月も終わりで、もう一週間もすれば七夕だ。今年は前夜祭の花火が金曜日となり、大勢の人出が予想される。6、7日も土日にあたるのだから、この三日間の中心部は大賑わいになるだろう。この時期はあまり街中には出ず、家や郊外でのんびりと過ごすのが一番だと思っているので、来週末は晴れたら自転車、雨が降ったら読書と、いつもどおりの時間を過ごそうと思う。もっとも、七夕期間中には一度は必ず雨が降るというジンクスがあるのだが・・・。

8月中に刊行予定の本が3点ある。うち一つは来週中にも書店の店頭に並ぶ予定だ。あとの2点はお盆明けの予定。この二つの書店廻りも来週中に始め、準備を整えておきたいところである。どちらも組版のコピーや装丁デザインのイメージプリントなどは手元にある。これを持って廻ると、やはり書店員さんへのアピールも変わってくるものだ。

装丁デザインといえば、今回新たにお願いしたデザイナーさんがいる。著者から紹介された方なのだが、とても質の高い作品を提案してくれた。間に何人か入っていることもあり、原稿の読み込み具合や全体のテーマをどの程度把握されているかよくわからなかったのだが、作品の一部一部を見るとよく工夫されていることが伝わる。これまでの小社刊行物にはなかったカラーのデザインなので、書店廻りでの書店員さんの反応が楽しみになった。

最近、書店員さんからの情報で買って読んだ本が多い。書店廻りの際に、その本の感想を話したり、さらにそこからオススメの本を紹介してもらったりするのも、大きな楽しみの一つだ。厳しい目で見たベストセラー本の評価や、一般の話題にはならないが特定客層に強い支持を受けている商品など、なかなか面白い情報も得ることができる。来週は「雨の七夕 引き篭もり本」をどなたかに推薦してもらおう。(小)
7月27日(水)
台風一過の仙台は昼ごろから青空が広がり、すぐに眩しい日差しに包まれた。納品の行き帰り、自転車で切る風が気持ちいい。今週中には東北地方も梅雨明け宣言が出るそうで、ようやく夏を迎えることになりそうだ。

昨日の午後、地元出版社で編集長を務めるHさんと、NPO法人仙台インターネット推進研究会の代表理事を務めるKさんが来社した。先月好評のうちに幕を閉じた「杜の都のブックフェア」に続く、在仙出版社合同企画の打ち合わせだ。地元の出版社十数社が中心になって作る任意団体「宮城出版人の会」の活動の一つで、春の総会においてHさんとともに担当者に指名されていた。一昨日から大まかなプランを立てておき、まずはHさんの意見とKさんのアドバイスを受ける。方針も目的もはっきりしているので、頭を悩ますこともあまりない。とりあえずは目標となる形式を決め、いよいよ企画が本格的に進むことになった。

こういった出版社合同企画は、地域という枠組みでのものとなると全国的に珍しいという。仙台にも小規模出版社がいくつかあるが、一つ一つの会社規模でできることは限られるものの、みんなで力を合わせればできることも増えてくる。その発想のもとで続いているのが「杜の都のブックフェア」なのだが、ついに別企画も立ち上げることになった。これも、ただ目的だけが共通だからできることでもなく、普段から互いの会社を行き来したり、別な人脈からのつながりを大切にしたり、街中や書店で会えば笑って世間話をする仲の良さがあってのことだと思う。こういう関係は、本当に大事にしていきたいものだ。

新企画の完成は、今秋の終わりくらいになりそうだ。今日から仙台の夏が始まったとして、季節単位で二つ分を丸々使うことになる。となると、出来上がる頃がちょうど年末の忘年会の季節。今年は在仙出版社合同の大忘年会を催すのも面白いかもしれない。(小)
7月25日(月)
東北地方は梅雨明けしないまま、今年最初の台風を待つことにそうだ。明日から明後日にかけて、台風七号が関東・東北地方に接近・上陸するおそれがあるという。早くもその影響か、今日の仙台は朝から雨が降ったり止んだりでどうも不安定だ。このまま8月に入り、七夕・お盆を過ぎれば、東北の短い夏は終わる。今年も日差しの少ない夏になるのだろうか。

ニュースサイトを見ていて驚いた。江戸風俗研究家で、NHKの歴史コメディー番組でも人気を博した杉浦日向子さんが、下いん頭がんのため死去した。享年46歳。あまりにも早い逝去である。江戸の庶民暮らしを実に面白く文章に表現し、単なるノスタルジーに止まらず、現代にも活かせる江戸の知恵や気質を広く紹介した功績は大きい。テレビ番組でも、ピシッと着た和服とやわらかい笑顔のバランスが評判となり、多くの人に愛された。漫画家→研究家と進む中であの佇まいを体得されたのかと思っていたのだが、日本橋の呉服屋がご実家で、普段から和服を召していたという。どうりで他にはない「凛」とした雰囲気を漂わせていたはずだ。

また、江戸研究と並んで業績として欠かせないと個人的に思うのが、「ソ連」の活動だ。「ソバ好き連」の略であるこの団体は、無類のそば好きで構成され、杉浦氏は中心的役割を果たした。以前、雑誌編集部にいた頃に同連編著の本の書評を書いたことで知り、『ソバ屋で憩う』『もっとソバ屋で憩う』は面白く読んだ。一作目の「特選五店」をいずれ制覇しようと思いながら、「神田まつや」(五店には入らず)の良さを知ってなかなか浮気できなかったことを懐かしく思い出す。

そばに限らず、杉浦氏の語る江戸の食はどれも本当に魅力的だった。それは、単なる食のウンチクではなく、その食べ物の素材や味と密接に関わっていた庶民生活の姿をまず描いていたからだろう。そこにある粋(いき)な気風も一緒に飲み込み、まるで江戸の人々と同じように味わう錯覚があったからこそ、そば店で「憩う」というスタイルに憧れが集まったのだと思う。そんなことをわかりやすい文字と言葉で我々に伝えてくれた杉浦氏は、本当に貴重な人だった。読者の一人として、心からご冥福をお祈りする。(小)
7月21日(木)
昨日の夕方、編集部からの帰り道に瑞鳳殿の中の道を歩いていると、「カナカナカナ・・・」というヒグラシの鳴き声が聞こえた。梅雨明けはまだ宣言されていないが、ふと夏を感じる瞬間であった。それにつられて石段の途中で足を止め、鳴き声に集中してみると、必ずしも「カナカナ」とは聞こえない。それでも、ヒグラシといえばやはり「カナカナ」だろうし、この音表現は実に見事であると思っている。いったい誰が最初に、あの軽く、涼しく、乾いた鳴き声を「カナカナ」と表現したのだろうか? 「夏」の音訓読みを並べたのかな・・・などとちょっと考えた。

セミと言えば、お隣の山形県・山寺に残る名句「閑かさや 岩にしみいる 蝉の声」が浮かぶ。この芭蕉が詠んだ蝉の種類は何かという論争が、斎藤茂吉と小宮豊隆の間で行なわれたのは有名な話だ。たしか高校時代に世界史の先生からこの話を聞き(なぜ世界史の授業で芭蕉が出てきたのだろうか?)、先日「ラジオ深夜便」で紹介され思い出した。茂吉はアブラゼミ説を唱え、豊隆はニイニイゼミ説を主張。結局は東北大学の研究者が現地調査をし、ニイニイゼミ説に軍配が上がったという。論者のパーソナリティを考えると、地元山形出身の茂吉の説を支持したい気持ちもあるし、「漱石文庫」を仙台にもたらした豊隆の肩も持ちたい。個人的見解としては、岩にしみいる音となるとやや低音のような気がする。となると、論争では負けたアブラゼミ説か。

昨年も夏のはじめに山寺へ行った。『やまがた俳句散歩』のウリコミだったので、行き帰りの仙山線車内では同書を開いた。当然、山寺を舞台にした句もたくさん載っている。それぞれの句をじっくりと味わえるようになり、さらには自分で一句詠めるようになったりすれば、幼少から通い続けている山寺にも新たな魅力を見つけられるのだろう。そんなことを考えて早一年、俳句の勉強など何もせずに過ごしてきてしまったが、今年の夏も同書を携えて山寺に行こうと思っている。いずれは自然と句をひねりたくなるのかもしれないし、自分なりの○○セミ説も唱えられるようになるのかもしれない。そんなこと一つ一つが、歳を重ねる楽しみであると思う。

昨日の日差しとは一転して、今日は一日中曇天の下だ。これでは帰りにヒグラシの音を楽しむこともできないだろう。梅雨明けが待ち遠しいが、雨に濡れたアジサイを愛でるのも今年最後のチャンスかもしれない。今日の帰りは耳ではなく、目で足を止めよう。(小)
7月20日(水)
本日付の河北新報夕刊に、先日この欄でも紹介したジュンク堂書店仙台ロフト店の企画棚の記事が掲載されている(記事はこちら)。「熊谷達也書店」「伊坂幸太郎書店」「三浦明博書店」と、在仙で活躍する三人の作家さんによる“セレクト棚”で、著作とともに、それぞれが推薦する本を20冊程度ずつ「店頭」に並べているのだ。一冊ごとに、その本との出会いのエピソードや書評が書かれたPOPもあり、とても面白い棚になっている。記事の扱いは一面トップで五段見出し写真付だ。

記事にもあるが、「店長」の一人である伊坂幸太郎さんは、自分の選んだ本の売れ行きが気になり時々見に行っているという。なんだかとっても面白い話だ。版元の人間が、自社の本が売れているかどうかを調べに書店に行くのとはちょっと違う。もちろん、著者が自分の著作の売れ具合を見に行くのとも違う。まさに、「作家さんが書店を開いたら・・・」という愉快な仮定を、そのまま現実にしたのがこの企画棚だ。書店としてはお客へのサービスになるし、「店長」としても普段自著を読んでくれる読者へのサービスになる。選ばれた本の版元も、思わぬ強力な協力者の出現にびっくりしていることだろう。

この棚は半年間続けるそうだが、そうなると同店の名物棚になるだろう。もし他県から本好きの友人が訪れるようなことがあれば、観光地や牛タンと並ぶ“仙台名物”としてこの棚を紹介したいと思う。地元民としてそのくらい自慢したい棚であるし、地元出版人としてもより力が沸いてくるような棚だ。先日各書店で選んだ三冊は、そろそろ読了する。新しい三冊を求めて、またお店に行こうと思っている。(小)
7月19日(火)
作家さんに挨拶に行って大量のキュウリとレタスを頂戴したり、迫力ある和太鼓の生演奏を聴いたり、自転車で練習に行ってフラフラになって帰ってきたりと、うまく時間を使って十分に堪能した三連休だった。読みかけの本も読了できたし、ようやく本葉を大きく広げだしたアサガオの植え替えも終えた。まぁ、晴れの休日が三日続けば、身も心もリフレッシュできるということだろう。

今日は朝から校正に取り掛かる。先週のうちに下書きの仮校正紙を作っておいたので、その訂正を見ながら本校正紙に赤を入れていく。それでも、途中で別の直しに気づいたり、追加の文章や図も作成するので、そう簡単には終わらない作業だ。お昼を挟んでなんとか終わらせ、すぐに著者校正のために発送準備。それを終えてやっと取次納品のために自転車に飛び乗った。取次店からは追加の注文をもらい、明日も自転車で届けることになった。

校正作業中に、「ドン! ドンドン!!」という音が外から聞こえた。今日と明日は会社近くにある大日如来さんのお祭りである。その花火の音らしいが、こんな街なかで派手な花火の音とは平和な証拠だ。帰りに道でもあるので毎年立ち寄り、気が向けばカキ氷くらいは買って食べている。ほんの100メートル程度の道だが車両は完全通行止めで、歩行者天国になる。浴衣で散歩する人も多く、夕方から夜にかけての雰囲気はなかなかのものだ。風情を味わうにはちょっと早いが、取次店の帰りに様子を覗いてみた。普段見慣れている通りが様相を異にするのは、やはりワクワクするものである。会社帰りにもう一度歩いてみよう。

夕方にかけて注文の電話が相次ぐ。普段はあまり出ない本なのだが、立て続けに5冊も注文があった。これは何かで紹介されたか、何かで話題になったかだろう。社内在庫と格闘しながら探し出し(刊行してから時間も経っているので、在庫僅少である)、なんとか注文数をそろえた。この傾向は明日も続くのか、ちょっと怖いところである。(小)

ページトップ