本の森通信8月号
[Back Number]
[Home]
8月16日(火)
本日昼間の地震、皆さんの周りに大きな被害はなかっただろうか? 地震後45分経ってこの文章を書いているが、ラジオでは少しずつ被害の報告がなされ、全体像が掴まれつつあるところである。
小社では昨日も今日も執務をしており、スタッフ二人でパソコンに向かっている際の出来事だった。タテ揺れはあまり感じず、大きなヨコ揺れが何度も往復するような感覚だった。編集部内に積んでいた在庫本等はすべて崩れ、その復旧作業に30分ほど要した。ビルの窓ガラスやエレベーターにも支障はなく、電気・ガス・水道も通常通り。電話・FAXはかかりにくい状態になっている。
地震直後から携帯電話はつながりにくくなったが、メールは何の問題もなく送受信が可能だった。おかげで家族とは早い段階で無事が確認でき、お見舞いのメールもすべて受信できた。これがなかったらと思うと相当ストレスのたまる時間を過ごしたと思うので、幸運と携帯電話会社の対応(?)に感謝したい。
午後に市内の画家さんの家を訪問する予定でいたが、今日一日は落ち着かないであろうということでキャンセル。いま、外から救急車のサイレンの音が聞こえる。大きな被害でなければいいが・・・。繰り返しになるが、まだ被害の詳細は分かっていないものの、火の元を使う昼時で、しかも帰省ラッシュで動いている人も多いということから、大きな影響が出ている可能性も高い。津波も到達予想時刻を過ぎたものの、ラジオでは繰り返し警戒を呼びかけている。小社業務は互いの判断で本日は終了とし、午後13時で帰ることになった。様々な二次災害もありうる状況だけに、東北南部を中心とした地区にいらっしゃる方々は十分注意されたい。(小)
8月12日(金)
普及の名作アニメ番組「まんが日本昔ばなし」が、今秋より11年ぶりに復活するという(詳細)。新作はなく、初期の名作をピックアップする“再放送”らしいが、これはなかなか楽しみだ。その後家政婦として活躍されたあの方の語りもそのままだというので、リアルタイムで観ていた頃を懐かしんで昔話を味わうのもいい。
かつては周りの友達もよく観ていた。オープニング曲の替え歌などはいくつもバージョンがあったし、あの龍に乗った子どもソックリの顔をした奴が「むかしばなし」というあだ名で呼ばれていたこともあった。いま振り返ると、すごいニックネームだ。本人になってみなければ真意は分からないが、いじめの対象となっていたわけでは決してない。本人はプロレスラーの天龍源一郎のファンだったので、「龍つながり」をそれなりに喜んでいたようだった。話が横にそれたが、友達同士でつくあだ名が「むかしばなし」(「ぼうや」とも呼ばれていたような気がしてきた)というのは、それだけあのキャラクターがみんなに浸透していたという証拠だろう。「ひょうきん族」派も「全員集合」派も、その前の時間はあの番組を見ていたのだ。
とは言うものの、実はあまり熱心なファンではなかった。土曜の夜というのがスイミング・クラブに行く日で、小学校のある時期以降はほとんど観ていないと思う。いくつか記憶のある話は、たぶん小学校低学年の時に観たものなのだろう。あるお爺さんとお婆さんが100も田んぼを持っていて、お爺さんはいつもそれを嬉しそうに自慢する。ある日田んぼで仕事をして、お爺さんがお昼の時に田んぼを数えてみると99しかない。何度数えても一つ足りない。するとおばあさんが、お弁当のお櫃の下に小さな田んぼが一つ隠れていたことに気づき、二人で大笑いする。これは前半部のサイドストーリーで、本筋はまた別の展開とオチがあるはず。題名も細かいストーリーもよくわからないのだが、なぜか記憶に残っている。佐々木徳夫さんの本の編集をしていて、「出てこないかなぁ・・・」と、密かに期待している一話だ。
前のこの欄で書いたとおり、今では昔話への興味がかなり大きくなっているので、10月からの復活放送は本当に楽しみだ。薄い記憶では、一話ごとのタイトルが画面に出る際に、その昔話の採集場所(県名程度)が出ていたのではなかろうか? だとしたら、東北一帯の昔話なら馴染みのあるものも登場するはずである・・・と思ったら、なんと20年前と同じ理由で観られないではないか!! 縁があるんだかないんだか、大きなショックを受けている。新聞紙上で話名をチェックするか、あるいは同番組公式サイトの充実に期待するしかない(まさか動画配信などしてくれないだろうが)。ご覧になれる方は、この機会に大いに昔話の世界を楽しんでいただきたい。(小)
8月10日(水)
現在入力&編集している、佐々木徳夫さんの四冊目の昔話集が面白い。まだ全体の20%程度しか進んでいないが、どの話も愉快なものばかりだ。佐々木さん謹製の手書き原稿を、一枚一枚楽しみながらめくって入力している。
これまでの三冊の著作の編集で、約500話の昔話に触れてきた。これまで昔話といえば「花咲か爺さん」や「かちかち山」「浦島太郎」といった有名なものしか知らず、地域との関連などもまるでわからなかった。それが佐々木さんの本の担当をしたおかげで、たった一年数ヶ月で500話もの、しかも地元東北に根付いた昔話を知ることとなった。自分の中にほとんど無かった要素を、短期間で一気に身に注ぎ込んだようなものだ。ここ一年ほどを振り返って、山間地の古い家々の風景や巨木・名木に妙に関心を持つようになったり、こんな番組が好きになったりした理由は、実はここにあるのかもしれない。
一冊の本の編集を担当すると、実に多くのことが身につく。そのテーマについて全くの門外漢であっても、原稿を読み、読者を想定して読みやすく編集し、時には読者を代理して著者に質問して加筆してもらったりしているうちに、いつの間にか知識なり考え方なりが自分の中に育ってくるのだ。例えば『ドキュメント 医療過誤事件』を担当した当初は、医療過誤裁判はもちろん、裁判そのもののことすら何もわからなかった。しかし、裁判用の参考文献を頼りに原稿を読んだり、既刊の同テーマ本を読むことにより、著者の主張することがだんだんとわかってくるようになった。著者にも著者の事務所の方にもご迷惑をおかけしたが、なんとか作り上げることができ、今では医療過誤事件関連の新聞記事やニュース解説の主旨はほぼ100%理解できる。もちろん、読者の方にもそうなっていただきたいと思うが、読者の場合と編集者の場合とを比べてみると、やはり後者の方がより中身に踏み込んで考える機会が多く、学ぶことは多いような気がする。もちろん、そういう編集を経て完成したものが読者に届くわけで、どの段階を「作品=本」とするかなど、簡単に比較はできないのだが。
昨日トップページにアップした『田舎弁護士の大衆法律学<保証の巻> 情が仇 仇は情』は、今月末発売予定で予約受付中の新刊書である。この本でも、「保証」という制度についてじっくりと学ぶ機会を得た。これまでも「保証人にはなるな」くらいの意識は持っていたが、編集を担当して「どんなことがあっても保証人にだけは絶対になってはいけないのだ!」へと認識のレベルが上がった。同書には、「保証」のおかげで自らの命を絶つことになった3人の人物が登場する。その姿を克明に描くとともに、保証制度そのものの解説や疑問、さらには「公共の福祉」の考え方等、実に読みどころの多い一冊である。初読の際には、少なからずショックを受ける読者の方も多いと思う。すでに編集者として携わってしまったので、初読のインパクトはもう味わえないのが残念だが、そのインパクトとともに心にずっしりと残るものも多い内容だ。たくさんの方に、ご一読いただきたい。(小)
8月8日(月)
大気の状態が不安定とかで、午後は雨が降ったり止んだりの一日。その中でトーハン・日販へ自転車で納品しに行き、見事に雨に遭う。雨足が強くなる時に限って移動中で、全身ずぶぬれになってしまった。まぁ、こうして風雨と闘いながら働いてこその仕事なのだろうから、いずれこの経験が役立つこともあろう。というより、これまでの自転車経験(土砂降りの中の練習等)が、今日役立っていたようにも思えるが・・・。
午前中、昨年末に刊行(販売代行)した『さくちゃんとももちゃんのたんじょうび』の初回清算に伴い、売上の確認をする。小社が扱う初めての絵本ということで、著者・絵の作者とともに色々工夫しながら作った一冊だ。新聞やテレビでも紹介され、多くの人に読んでいただけたと思っている。これで一つの区切りとはなるが、いずれまた、こんなテーマの本に携わってみたいと思う。
同書と前後して販売代行を開始したのが、宮城県大和町にお住まいの写真家・桜井洋次さんの写真集『森の時間』(本体価格1905円)。船形山麓のブナ原生林に魅せられ、そこで写真教室や森歩きの講座をされている。同書はその船形山の森に流れる“時間”を、春夏秋冬に渡り撮った美しい写真で構成されている。全34ページとコンパクトな写真集だが、一枚一枚に写る木や土や沢の表情には味わい深いものがある。市内主要書店ほか、小社への直接注文も受けている。まもなく注文ページもアップする予定なので、ご興味のある方はぜひご一覧いただきたい。
8月5日(金)
編集部に扇風機が導入された。働かないエアコン(「動かないエアコン」ではない、動いても冷えないので「働かない」なのだ)を見限り、ついに登場したこの夏のヒーローだ。現在、室内中央の打ち合わせテーブルの中央に鎮座し、心地よい風を送ってくれている。
いわゆるマイナスイオン扇風機で、リラクゼーション効果もあるらしい。どの程度の効果・効能があるのか定かではないが、とりあえず「イオン発生」モードにして利用している。書類を吹き飛ばすなどのトラブルもなく、現在のところ期待通りの働き。冬はストーブ上部に滞りがちになる温気を循環させるのにも役立ちそうで、末永い付き合いとなりそうだ。
午後に『武士道 入門』の著者である高橋俊さんが遊びに来てくれた。高橋さんは東京在住のビジネスマン。地元・仙台に帰省したついでに、編集部に顔を出してくれたのだ。同書も販売一年足らずだが多方面から反響があり、在庫も僅少となってきている。新渡戸稲造の名著を実にわかりやすく、シンプルに抄訳したもので、まさに作品・「武士道」の入門書として格好の一冊だ。ちょうど一年前、高橋さんと東北各地と東京の主要書店を廻ったことを思い出した。東京では池袋のラーメン店で昼食を取ったのだが、高橋さんは今でも時々その店に行っているという。そういえば、郡山で食べた豚肉丼や山形で書店さんに連れて行ってもらったゲソ揚げそばなど、高橋さんとの書店廻りでは美味しいものに恵まれた。あの時廻った書店からはほとんど返品がなかったし、むしろ増刷の検討が必要になっている状況である。振り返ってみると、効果もあったし舌も楽しめた思い出深い書店廻りだ。
去年の夏も暑かった。東京の書店廻りでは、冷房の効いた電車内・書店内と、炎天下の道路の寒暖の差が激しく(なんだか砂漠の一日のような表現だが)、汗が出る渇くを繰り返して身体が変になりそうだった。その店、扇風機は適度に涼しく、長時間身を置くには良い環境かもしれない。また、ちょっと面白いのが時間によって風の温度が変わること。午後1〜2時くらいは窓から入る風そのものが熱いので、扇風機のかぜもちょっと重い。しかし、外気温が下がる夕方になるにつれて、少しひんやりとした風を送ってくれるようになる。これがまた気持ちいいのだ。今年の夏は、この一台で十分に乗り切れそうである。(小)
8月4日(木)
梅雨明け翌日の今日、実に夏らしい一日となった。開け放した窓の外からはセミの声が聞こえ、各地の知り合いから「今週末は花火大会です」というメールが届く。仙台も明日が七夕前夜祭の花火大会。金曜日の夜ということもあり、かなりの賑わいになるだろう。
日中の暑さあってこその、夜の花火の美しさ。たしかにそうかもしれないが、毎日徒歩通勤している身としては、これ以上暑くなるのはご勘弁願いたい。朝夕片道40分の徒歩は、いまが一番厳しい時期だ。朝会社に到着した時には、Tシャツが汗でびしょ濡れになっている。もちろん、夕方家に着いたら、そのまま脱衣所へ行って風呂に入る。頭にタオルを巻き(直射日光防止)、白いTシャツ一枚の上半身(やはり綿100%のシャツは使い勝手がいい)で、本を読みながら歩いている(本の内容に集中することで、運動の苦痛がほんの少し和らぐような気がしないでもない)。これはどう考えても社会人の朝の姿ではない。夏場の通勤は単なる移動ではなく、もはやトレーニングの範疇に入ると考えている。
そんな夏通勤の記憶の一つが、七夕初日の朝、つまり花火大会の翌日だ。いつも歩くのは「抜け道」のような道なので、さほど人通りが多いわけではない。決してなくなることのないタバコごみ以外は、道端に落ちているものも少ない。しかし、花火見物の好スポットとなった翌日の朝は、信じられないほどたくさんのごみが散乱しているのだ。いや、散乱とは言わないのだろう。なぜか丁寧にも欄干に並べてあったり、集積所でもないところに山積みになっていたりする。飲まず食わずで花火を見ろとは言わないが、せめて自分の出したごみくらい持ち帰ってくれればと思う。
今年は花火大会の翌日が土曜日なので、どんな状況にあるかをこの目で見ることはない。でも、毎年繰り返されていることなので、劇的な変化があるとは期待できない。あの橋には今年もごみが残されるのだろう。そしてこれも大事なことだが、その橋はいつまでもごみが残っているわけではない。毎年、誰かが、きちんとごみの処理をしてくれているのだ。近隣の住民かもしれないし、まったく関係ない人かもしれないが、誰かがごみを拾っている。そんなことを少しでも考えれば、わずかなごみでも置いていくなんてできないと思うのだが。「頭上は美しく、足元は汚く」そんな花火大会で良いはずがない。(小)
8月3日(水)
この時期になると、ちょっと気の利いた書店なら「戦争もの」の書籍を集めた棚ができる。特に今年は戦後60年を迎えるので、新刊書籍でも興味深い戦争関連書が刊行されている。戦後日本もこの夏で還暦。新刊・ロングセラー問わず、この一ヶ月の間に何か一冊戦争ものの本を読むのも良いかもしれない。
朝日新聞のサイトも見ていたら、こんなページを見つけた。紙面には7月31日付で掲載されたようだ。「書店に探す戦後六十年」と題して、新書を中心に12冊の戦争ものの本を紹介している。新書が中心であること、著者は研究者が多いことから、ずいぶんお堅いラインナップになっているのは仕方ない。逆に、こんな時こそお堅い戦争本にチャレンジするというのも面白いだろう。既読作品は『新版 きけわだつみのこえ?日本戦没学生の手記』と『父と暮らせば』(こちらは既読ではない。映画を観た)の二冊。文学部史学科(近現代史)卒の端くれ、中村政則先生の著作は読んでおくべきだろうか・・・。
ちょっと興味をひかれたのは『沖縄「戦後」ゼロ年』。著者の方を存じ上げていなかったが、小説「水滴」で芥川賞を受賞している。地元出身の著者による書というのが、なんとも興味深い。沖縄史は不得意分野なので、これを機会に勉強してみようかと思う。
昨年の夏にあるラジオ番組に呼ばれて、小中学生を対象に「読書感想文の書き方」について話したことがあった。たしか夏休みも終わり近くで「宿題お助け企画」などと題していたかもしれない。課題図書から選ぶのもいいが、今年こそ戦争ものの一冊にチャレンジしてほしいと思う。年齢に合った物語でもいいし、ちょっと背伸びした名作をご両親に薦めてもらうのも良いだろう。本当なら“拡大解釈”を許してもらい、映画を観てそれについて書くのもいいのだが・・・。戦後60年の今年に良質の戦争ものを読んだなんて、何年経っても素晴らしい夏の思い出になると思う。60歳の日本人でも知らない戦争、小中学生にはわからないのが当たり前である。それならば、あえて自分の知らない世界を覗いてほしい。それこそ、本ができる大きな役割の一つなのだから。(小)
8月2日(火)
朝から曇り空で日差しは弱いながらも、むっとする湿気の多い空気が肌にまとわりつくような一日。こういう時こそ外廻りをがんばろうと思い、午前中のうちに編集部を出た。
まずは地下鉄に乗って泉中央へ。改札を出てエスカレーターを上ったところで、ふと思い出して駅ビルの中を探して歩くと、3階の奥まったスペースにガラス張りのスタジオを発見。地元・泉区をメインとするコミュニティFM局「FMいずみ」が、先月同ビルに移転していたのだ。早速移転のお祝いを兼ねて同局のAさんへ挨拶。久しぶりの、しかも突然の来訪なのに、快く迎えていただいた。コミュニティFMの「地域密着」の難しさ等を題材に、しばし意見交換。これまでよりも立地が格段によくなったので、様々なゲストも呼びやすくなったという利点があるという。今後の同局の活躍に注目である。
その後、八文字屋書店(二店)を廻り、今月発売予定の新刊書籍を売り込む。八文字屋書店さんは、いつも嬉しい数の注文をしてくれる。それにしっかり応えられるように、こちらも売れる商品を作らなければならない。もちろん、本が完成したあとの販促物の作成や、地元での宣伝活動等も効果的に行ない、書店で売れる数を少しでも増やしたいところである。少し足並み軽く駅に戻り、今度は一気に南下して長町の紀伊国屋書店へ。店内の客数の多さにびっくり(夏休みということで、普段の平日とはやはり違うそうだ)した。忙しい中をNさんに時間をとっていただき、新刊書籍を説明。こちらでも嬉しい数の注文を受けた。「いま、泉の書店さんに行って来たんですけど、こちらの方が客数が多いと思いますよ」と言うと、「あ、そんなこと言っちゃっていいの? 今晩Kさんと飲むから、つげ口しちゃうよ(笑)」と言われてしまった。市内の書店員さん同士で飲み会などをするケースは多いようで、そこで様々な業界の情報をやり取りしたり、販売の知恵を出し合ったりするという。地元の版元同士の仲が良いことはここでも書いたが、書店も同じようなネットワークを形成しているらしい。
また地下鉄の乗って仙台駅に帰り、駅前の書店を2店廻る。一店では担当の書店員さんと自費出版についてのあれやこれやについて話をし、互いの(書店側、版元側)疑問点を解消する。訪ねるお店ごとにこういう楽しいコミュニケーションをしていると、一日もあっという間に過ぎてしまう。15時過ぎに編集部に戻って急いで昼食をとり、注文の成果を整理してすぐに入力作業へ。そうこうしているうちに、もうこの通信を書く時間になってしまった。めまぐるしく終わる一日、今日も帰ってから家で読む一冊が楽しみである。(小)
8月1日(月)
今日から8月。まだ梅雨明け宣言はないものの、この蒸し暑さはまさしく夏である。小社のエアコンの不調さは夏になる度にこの欄で書いてきているが、「動かない」「急に止まる」などの既存トラブルに加え、今年は「働かない」が加わった。世間に逆行しているのを承知で設定温度20℃にしても、外の階段のほうがずっと涼しいという状態だ。動いてはいるし止まりもしないのだが、一向に冷えない。パソコンの前に座って入力作業をしていると、1〜2行入力するごとに団扇で扇がないとやっていられないくらいだ。こんな蒸し暑い日の外廻りは誰もが大変だと思うだろうが、小社のこの状態だと、逆に外廻りをして冷房の効いている書店を歩き廻ったほうがずっと快適である。夕方近くになってようやく風が出始めたので、エアコンをあきらめ窓を開けて風を通した。時々涼しい風が吹き込み、ちょっと生き返った気分になれる。
エアコンの修理も必要だが、今年の夏は扇風機を導入しようかという案が出ている。オフィスでの扇風機は書類を吹き飛ばしてしまうとの理由で避けられがちだが、最近は紙データそのものが減る傾向にある。著者から受け取る原稿も、昔ながらの手書き原稿という例はかなり少ない。FD(もすでに旧い)やCD、さらにはメールで届くというのが今や主流になっている。最終入稿の際やその後の校正作業はもちろん紙でやるのだが、紙が活躍する場面は確実に減っているのが現状だ。ならば、編集部で扇風機を回しても風がイタズラすることは少ない。暑さで目が回る前に、なんとか扇風機を回したいものだ。
とは言え、夜はさほどの暑さではない。まだ家ではエアコンを一度も使っていないし、北と東の窓を開けていると心地よい風が吹き込んでくる。明け方近くにはちょっと肌寒いこともあるくらいで、「寝苦しい夜」というのはまだ一度も経験していない。天気ニュースで全国の最高気温を示す時に注意して見てほしいのだが、札幌や秋田よりも仙台のほうが低いことがよくある。仙台は、意外と夏に涼しい土地なのだ。特に夕方から夜にかけて気温が下がっていく気持ち良さは、この街の隠れた魅力でもある。夕刻の鐘が愛宕神社から響き、その間だけ蝉時雨も少しだけ控えめになる。そんなときに吹く風が、ちょっと嬉しい程度に冷たい。その時間こそが仙台の夏だという人も、少なくないのではなかろうか。
今年から、その時間の楽しみ方がもう一つ増えた。言うまでもなく、フルスタ宮城でナイターを観戦しながら過ごす楽しみ方だ。フルスタ宮城は、夏のナイターで吹く風が最も気持ち良い球場であると思う。今月のナイターのチケットも、すでに入手した。見るなら当然、レフト側の最上段席“ウィング・トップ”(某氏命名)がいい。あそこなら上空を吹く風はもちろん、グラウンドで選手やボールを涼ませた風がスタンド伝いに登ってくるのを感じることもできるだろう。7月を勝ち越しで終えたイーグルス。あついはあついでも、熱い試合をしてくれる分には大歓迎だ。去年まで、仙台の夏は七夕とお盆を過ぎればもうおしまいだった。今年からは、それ以降もスタジアムで心を熱くさせてくれるものがある。(小)
[ページトップ]