本の森通信 5月号
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5月25日(木)
昨日の地元ローカルニュースに、小社から4冊の昔話本を出版している佐々木徳夫さんが登場した。実際に昔話を採集している様子や、その録音テープを文章化する作業、そして自宅仕事場の本棚など、なかなか貴重な映像が盛りだくさんであった。中でも私が腰を抜かしたのが、佐々木さんの朝の運動のシーンである。「早朝にかなりの距離を散歩し、家に帰ると自分で考えた運動をしている」とはよく聞いていたのだが、その運動がどんなものかは知らなかった。昨日県内に御・エアされたそれは、傘寿とはとても思えない機敏な屈伸運動と体操選手並の柔軟運動だった。あれは「衝撃映像」の部類に入るのではないだろうか。夜遅く帰宅してビデオで観て、文字通りひっくり返ってしまった。その後何度も巻き戻しをして確認したが、間違いなく佐々木さん本人である。それは担当編集者である私が保証する。
その後の朝食のシーンでは、自家農園で採れた野菜たっぷりの味噌汁を作り、それをつまみに朝酒をやる姿が放送されてしまった。朝酒の習慣も聞いてはいたが、まさかそれまで紹介されるとは・・・。「毎朝どのくらい飲むのですか?」の質問に佐々木さんが答えた酒量は、私が聞いていたものよりもやや少なめだった。「ポヤ〜ンとするくらいですよ」との答えを聞いて、午前中早い時間の打ち合わせは避けようと決めた。
そんな面白いシーンもあったが、いつも佐々木さんから聞いていた哲学にもきちんと触れられている内容だった。「昔話採集家は、語り手の第一発見者でなければならない」この信念は、半世紀にわたる佐々木さんの活動の根本を支えたものである。それを語る佐々木さんの姿がテレビで紹介されたことは、本当に価値のあることだと思った。この部分が包装で使われたことは、佐々木さんもきっと喜んでいらっしゃるだろう。
と思ってたったいま電話してみたところ、今朝散歩をしていて見知らぬ人から「テレビ観ましたよ。色んなことをされているんですね」と声をかけられたそうだ。信念を語った部分ではなく、柔軟体操や朝酒のシーンがその「色んなこと」を指すのではないかと思うが・・・。明日久々にお宅にお伺いするので、話題にしてみよう。(小)
5月24日(水)
朝、出社してすぐにA原稿の校正作業に取り掛かる。漢字の間違いや表記が統一されていない箇所など、パラパラと見つける。「見つけてよかった!」という安堵感と、「なぜ入稿原稿でチェックできなかったのか・・・」という自己嫌悪感の二つが同時に心に湧き上がってくる。昼食を挟んで前半部を終了。後半部は明日に回す。
次にこの夏から三部作を刊行予定のB原稿の入力を行なう。400字詰原稿用紙で15枚ほど、著者の手書きの文字を判読しながら進める。とりあえず区切りとなるところまで到達したので、今週中に著者宅に持って行く予定だ。続いて先日「大まかな完成原稿」という形で届いたC原稿の素読みをする。先週の内に三分の二を読んでいたので、今日読んだのは150ページほど。興味の引かれる内容で、読み進めながらも所々で年表を開いたりネット検索をしたりしてしまう。素読みなので特に赤訂正などは入れず、無事読み終える。
最後にD原稿のチェック。これはこの欄のアップ後に行なうつもりだ。先にD原稿に取り掛かってしまうと、またこの欄の更新を怠けしまいそうで・・・。「検索」機能を使って何度となく表記統一等は行なっているのだが、パソコンの機能に全幅の信頼を与えることにどうも抵抗がある。目で読んで、直す。これが一番である。刊行は7月の予定なので、チェックする時間もだんだん少なくなってきている。ここが勝負どころだ。
というわけで、抱えている原稿がAからDまで4つ。今日は外出せずに編集部に閉じこもろうと決め、なんとか全てを進行させられそうだ。こんな状態にあるためか、最近一週間が本当に短い。同時に、一ヶ月が短い。(小)
5月23日(火)
久々に東北大学川内キャンパスの生協書籍部へ。新刊本の紹介とこれからの出版物について新しいご担当の方とお話しし、その後文系店にも行ってみると、ずっとお世話になっているMさんがいらした。ちょうど昨日の会議で小社の名前が出たらしく、突然の来訪を驚きまた歓迎してくれた。
現在Mさんは生協全般が推し進める「学びと成長」支援事業に携わっていらっしゃる。これがかなり面白い企画だ。以前この欄で紹介した「読書マラソン」はもちろん、PC講座やTOEIC・TOEFL講座、就職支援やベンチャー志望学生の合宿など、あらゆる学生サービスを展開している。私立大学の学生課や生協なら、学生相手に様々なイベントをやるイメージはある。しかし、国立大学(性格には国立大学法人)の生協がこのようなアクティブな活動をしているとは知らなかった。学生が参加することもあるらしく、先日も生協内の一室で夜遅くまで会議を行なったという。
その会議の中で学生に「何をしたいか」を聞いてみたところ、「もっと本を読みたい」という声が多かったという。これは本当に嬉しい話だ。本に魅力を持ってくれる若者が、まだまだいるらしい。この「もっと本が読みたい」という想いから、次の展開として様々な企画を模索しているようだ。小社として、あるいは個人として協力できることがあれば、喜んでお手伝いしたいところである。
振り返ってみると、学生時代は大学生協の書籍部に大いに助けられた。大学生のうちに読んでおこうと思って揃えた名作・話題作の文庫本は、ほとんど大学生協で買った記憶がある。10%引きの文庫本と学生食堂の定食が、自分の経済活動の全てであった時期も長かった。
たとえ違う大学でも、大学の敷地内が持つ雰囲気は懐かしく感じられる。今度は学生食堂への潜入も試みてみようか。(小)
5月18日(木)
ハリポタ発売である。昨日発売の『ハリーポッターと謎のプリンス』が六作目。前作には及ばないものの、初版二百万部は驚異的な数字だ。いやぁ、本当にスゴイ。同じ本がこれだけ売れるのに、なぜ顔ぶれ多彩な小社の本は売れないのだろう?(昔話と刑法の本を、同時進行で作ったりしてる) これだけ本を読む人がいるのに、なぜ小社の本を読む人は少ないのだろう?(上下刊セット売りなんてしていない。そもそも上下刊がない)・・・こんなことを考えている暇があるなら、現在抱えている原稿の訂正を一箇所でも見つけたほうが遥かに良いのだが・・・。
この人気シリーズも次回の第七作で完結となるらしいが、今に至るまで一作も読んでいない。出版人として失格であることは重々承知だが、ふと身の回りを探しても「全作読んでいる」という人は一人もいない。書店員さんや読書好きの友人、仙台・東京の同業者を入れてもそうなのだから、これはちょっと不思議だ。書店を廻っていて「ハリポタの新作読みました?」と訊かれることもなかったし(「伊坂(幸太郎)さんの新作読みました?」とはよく訊かれる)、「読んでないなら、貸しましょうか?」と言われることもない(「伊坂さんの新作貸してくれませんか?」とはよく言われる)。
おかげでストーリーもよくわからず、発売のサイクルも把握していないが、何かと話題になっている「買切」の難しさだけはよくわかっているつもりだ。書店員さんからは、この「買切ベストセラー」にまつわる悲喜こもごものエピソードを聞いている。ただ、それよりも心配しているのは「ポスト・ハリポタ」つまり次回最終作の後らしい。「ハリポタ」発売は毎回お祭りのような状況で、売上もかなりある。しかし、それが今後ピタリとなくなってしまうとなると、前年比の売上で100%を維持することが難しくなる書店も多いというのだ。確かにここ数年、数点は単発的な大ベストセラーが出る傾向にあるが、いくら「売れている」とは言っても「ハリポタ」に並ぶような売上には及ばない(価格のことも含めて)。「ハリポタ」なきあとの書店業界は、祭りなき日常が続く日々に戻ってしまうことになるのだ。早い時期から同じ傾向のファンタジー小説を併売して読者層を育てたり、「ハリポタ」には頼らない商売をしてきた書店は影響は少ないかもしれない。しかし、祭りに参加してきた多くの書店には厳しい将来が待っていると言えそうだ。
同業他社の商品なのであまり触れすぎてもと思うが、最も心配なのは返品・在庫になってしまった本である。行き場のなくなってしまった本を思うと、他社の商品であれ心が痛む。自ら関わった小社の本ならその思いは数倍で、それを考えると初刷り適正部数を守る出版が、いかに大切かを再認識させられる。まぁ、「ハリポタ」の場合はそれがそれが二百万部で、小社の本はその○分の一ということなのだろうが・・・。(小)
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