本の森通信 5月号

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5月28日(月)

地元紙朝刊の郷土本紹介欄に、『ふるさと艶笑譚選集 第一集 とっておきの秘話』が掲載された。先日の毎日新聞夕刊&ネット記事ほどではないが、午後になってから注文の電話が頻繁に鳴るようになった。県内書店からの注文も多く、取次店の在庫もだいぶ減ることになるだろう。第二版の仕上がりは、来月11日前後。それまで初版が持つかどうか微妙なところになってきた。明後日は首都圏の人気ラジオ番組に佐々木先生が電話出演される予定で、そこでもまた動きが期待できる。せっかくの追い風にうまく乗って、佐々木先生の仕事を一人でも多くの方に広げていきたい。

昨日smtで開催された「せんだいメディアテーク月例上映会」で、「花よりもなほ」を観てきた。この上映会企画を敬愛する知人が担当しており、彼の顔を見ることも目的にこの4月から通うことにした。来年3月まで続ければ、他者が選ぶ12本の映像作品を鑑賞することになり、普段あまり映像に近くない者としては大いに勉強になりそうだと考えたのだ。初っ端の4月の上映作品でガツンとやられてしまった(いや、何もやられなかったのか?)が、今回はそれに比べてキャッチし易い内容だろうと安心して出掛けた。

物語は面白かった。その展開の中で焙り出されて来るテーマも良かった。映像もユニークに思えたし、台詞回しもふと考えると笑えるものがあって引き込まれた。でも何より、主演の岡田准一と宮沢りえの演技が素晴らしかった。前者はテレビドラマ等でも魅力ある演技をしており、彼の主演作は時間さえ合えば観ている。俳優としてのイメージが強すぎて、バラエティ番組で笑っていたり、歌番組で歌っている姿の方が違和感を感じる。後者は歳を重ねるごとにアクが抜けてきているように思う。テレビドラマではあまり見かけないように思うが、数年前に映画館で観た「父と暮らせば」で「こんな演技をするようになったのか!」と驚いた。アイドル時代には考えられなかったが、いまは堂々と「女優」という肩書きで良いだろう。

帰宅してから藤沢周平の『雪明かり』を。上記と同じ近世期の庶民を描いた短編集。どちらもフィクションとは言え、この時代の人々はなぜこんなにも清い美しさがあるのか。憧憬とも嫉妬とも言えそうな感情が心に広がる。しかし、その一方にある生身の人間の姿を知りたければ、どうぞこちらを。(小)
5月25日(金)

今秋までの刊行を予定している仕事のため、昨日から立て続けに戯曲を三本読んだ。それとは別に、ずっと続けている歴史小説の編集作業を二時間。家には読みかけのミステリーが一冊。というわけで短い間に五つの作品世界にどっぷりと浸かり、さすがに頭が混乱してきた。「この話この登場人物のイメージは、あの話のあの登場人物のイメージに近いな」「このセリフ、別な話のあの人も言いそうだな」などと思い始めると、さらに混乱は増す。そんな寄り道をなるべくせずに、査読・編集・楽しみと、それぞれの「読み方」を時々思い出しながら読む。

五つの中で、直接著者と面識があるのは一つだけ(歴史小説)だ。当然といえば当然だが、もっとも深く入る読み方である「編集」をしている。顔を思い出したり、声を思い出したり、さらには口癖や振る舞い、そして何よりもその原稿について語った沢山の言葉を思い出し、一行一行に対峙する。上に二時間とは書いたが、本当は今日のスケジュールでは一時間の予定だった。面白くて、途中でやめられなくなったのだ。戯曲の一つに出てきた登場人物を、この歴史小説の一場面にも登場させたら、先々も面白い展開になりそうだった。

地方小出版社の従業員の仕事は、意外と多い。名刺には「編集部」と書かれ、人に紹介されるときも「編集者」とは言われるが、机に座って原稿に向かう、純粋な編集作業を行なっている時間は全体のほんのわずかである。一方で、純粋ではない(「不純な」という意味ではなく)編集作業は際限なく広がる。著者と会って話をしている時間も編集(に関係する)作業(の一部)だし、著者に会うためにクルマを運転している時間も編集(に関係する)作業(の一部を得る時間を作るための時間)だ。もっと言えば、他の作品を読んでそこからヒントを得て別な作品に活かすこともあるから、一つの作品を読んでいる時間は別な作品の編集作業をしている時間でもあるかもしれない。

五つの作品を読むことで生まれる混乱は、もしかしたらヒントや新しいアイデアの宝庫かもしれない。そう思えば、混乱もまた楽しい。次に「このセリフ、別の作品のあの登場人物も言いそうだぞ」と思うことがあったら、いっそのこと「ここでこう言わせてみてはいかがですか?」と、その作品の著者に提案してみようか。そうなると、まったく異なる作品のまったく異なる登場人物が、同じセリフを言うことになる。その関連性を知っているのは、たまたまその二作を同時に読んでいた編集者だけ。さすがにこれは遊びすぎだろうか。いや、すでに何人もの先輩諸氏が、「自分だけが知っているコラボレーション」をやっていそうな気もするのだが・・・。書店や図書館に並ぶ多くの本の中に、そんなつながりを持っている本があるかもしれない。(小)
5月22日(火)

またもや長く更新を滞らせてしまった。再開する度に書いているが、この欄の更新がないということは他の執務に追われている場合が多く、編集作業であれ販売作業であれ、社として悪いことではない。もちろん、この欄の執筆担当者の気分が乗らないなんていうことでもない。念のため。

先々週はとんでもない事態が起こっていた。思い返せば9日の水曜日、全国紙の仙台支局記者より、「佐々木徳夫さんの『ふるさと艶笑譚選集 第一集 とっておきの秘話』記事が、明日の県内版に載ります。もしかしたら今日の夕刊にも載るかもしれません」との連絡があった。夕刊となれば、部数は少なくても全国に配達されている。おぉ、それは反応が期待できると喜び、社外での打ち合わせを済ませ、夕方ごろに会社に戻ったら電話が鳴り止まない状態になっていた。夕刊を見たお客から、さっそく『ふるさと〜』の注文である。その日は7時ごろまで電話が途切れない状態だった。どうやら夕刊にとどまらず、ネットのニュースや携帯電話の情報サービスでも配信されたようで、かなり幅広い層に伝わった気配だった。

明けて10日と次の11日。この両日の記憶がほとんどない。ただひたすら電話を受け、メールをチェックし、宅配便の宛先伝票を書き続けたことしか覚えていない。その数、二日で200以上。昼食を食べながら書き続けてもとても追いつかず、中にはやむを得ず取れなかった電話もいくつかあったかもしれない。お客からも「なかなか電話がつながらなかったよ」「FAXがまるで送信できないんだけど」という苦情に近い声があったので、多くの方は何度も何度も電話してくれたのだろう。本当に感謝、感謝である。

週が明けてからは書店からの注文が殺到するようになり、慌てて何度も取次店に納品することになった。印刷会社さんに置いてもらっていた在庫はあっという間になくなり、『ふるさと〜』はめでたく増刷が決定した。これまで小社から四冊刊行した“昔話集”は、増刷まで至っていない。新聞や情報配信の大きな応援があったとはいえ、“艶笑譚集”で増刷というのは佐々木先生の仕事の本質を捉えたようで嬉しい気持ちになる。

お付き合いのある新聞広告代理店の方は、「いくら広告や記事で大きく載っても、全く反応がないものだっていくらでもある。広告や記事の形態と、その商品の魅力の二つが備わっていないとダメ」と言う。今回の爆発の要因の一つは、掲載された記事の見出しだろう。「大人のための昔話」と大きく打ち、さらに「男女の色話集」とも添えてある。電話注文をくれたお客のほとんどが、正式な書名ではなく「大人のための昔話を一冊下さい」「男女の色話集が欲しいのですが…」と言っていたことからも、インパクトのある見出しで興味関心をひいたということがわかる。記事を読んで抱いたワクワク感が、受話器の向こうからこちらに伝わってくるようなお客も多く、注文を受けていて本当に楽しかった。また「第二集、第三集の発売はいつですか?」と訊かれたり、振替用紙の通信欄に「続編が出来たら送ってください」と書いてあったり、わざわざメールで「面白かった」と感想をくれるお客もたくさんいる。自分の地域に伝わる艶笑譚と比較して質問をくれた読者もいて、この本が内容の魅力も十分に備えていることをあらためて認識させてもらった。こういう嬉しいニュースを著者に伝えられることが、担当編集者としてはこれ以上ない喜びである。

増刷の準備と「第二集」の製作は、ともに順調に進んでいる。またしばらく佐々木先生を振り回してしまうことになるが、迷惑にならない程度にしっかりお願いするつもりだ。「第二集」は、第一集にまさる面白い内容である。当初は全て50話ずつの掲載を予定していたが、この「第一集」の爆発を記念し、「第二集」は読者サービスで+α話の掲載を決定。完成は夏の盛り頃になるだろう。こうご期待を。(小)


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