本の森通信 12月号

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12月13日

一昨日仙台文学館で行なわれた講演会「昔話とはなにか」(筑波大学名誉教授・小澤俊夫)は本当に面白かった。これまで公私問わず文学館主催の講演会・読書会等に多く参加してきたが、昨日のものが最も面白く、かつ感動的だったような気がする。小澤先生の、昔話を大切にする姿勢が凝縮された、実に内容の濃い講演会だった。昔話本編集者として、昔話の世界に身を置く端くれとして、大きな記念になる一日だった。内容をここで振り返ろうとも思うが、もったいないのでやめておく(少々意地悪だが)。代わりに受け売りを一つ。「白雪姫」「シンデレラ」のストーリーを思い浮かべてみて、“3回”というキーワードが出てこない方は、ディズニーに騙されている可能性が大です。

昨日は東北学院大学泉キャンパスの大学生協へ行って来た。予定より少々早めに到着したので、学食で昼食を取ることに。最も学食らしいメニューをとカツカレーを食べてみたが、これがなかなか美味い。学食のカレーはかなりの量を長時間煮込んでいるのでコクがあるものだが、昨日のカレーは香りもあって満足度の高いものだった。その後生協書籍部のAさんに挨拶。近刊の『必携 教職入門  先生のための教科書』の仕入れ数のことをメインに、大学生の読書傾向、書籍部の商品構成などについて面白い話を聞く。ちなみに同店は、今年公開された映画「アヒルと鴨のコインロッカー」(伊坂幸太郎)のロケ地だ。今でも時々、ロケ地巡りに来る人がいるという。新作『ゴールデンスランバー』も、映画にしても面白くなりそうな作品だ。その際は東二番丁通りを完全封鎖して、派手に仙台ロケをやって欲しいものである。

今日は午前中に佐々木徳夫先生宅へ。朝から冷たい雨が降っており、すっかり身体が冷えてお邪魔したところ、先生が「いま、あったかいのけっから」と台所へ。「あの〜、どうぞお構いなく〜」と言うこと数回、返事なし。数分後「さあさ、どうぞどうぞ」と出てきたものは、どんぶりいっぱいの御味噌汁だった。その中にホウレンソウ・ニンジン(半分)・サツマイモ(半分)がごろごろと入っている。どれも“佐々木農園”でとれた新鮮野菜。ニンジンとサツマイモは、皮を剥いていないワイルドでエコなスタイルだ。野菜の甘味と味噌汁の塩味がマッチし、本当に旨い。あっという間に食べ終わり、身も心もホカホカになった。先生は今朝同じもので朝酒を一杯やったそうで、梅納豆でまた呑み始められた。主目的は果たせたものの、気持ちよくなったところで著作にサインを書いてもらうのは気が引け、明日の再来訪を約束して帰ってきた。

14時過ぎになった昼食は東北大学の北門食堂で「豚牛蒡うどん」を食べる。二日続けて学食ランチだった。(小)
12月10日

先週の土曜日、仙台文学館の企画展「みやぎの昔ばなし ‐佐々木徳夫の仕事から‐」の記念すべき初日をすっぽかしてどこへ行っていたかというと、東京・駿河台で開かれた大学時代のOB・OG会に参加してきた。五年ぶりの会で、上京するのも久し振り。午前中の事務手伝いから新幹線の最終間際の三次会まで、実に楽しい一日を過ごしてきた。あまりに楽しすぎて、まるで夢の中にいるようだったとは言い過ぎか。でも、いま振り返っても本当に面白かった。周囲をぐるりと見回すだけで、ずっと会いたかった人、ゆっくり話をしたかった人がわんさかいるのだ。それらすべての人とじっくり話ができたわけではないが、同じ時間に一つの空間に集まるというだけで、十分に“つながり”を意識することが出来た。そんな感覚を持てるというだけで、この集まりの素晴らしさを改めて感じた。
同期とは二次会・三次会でずっと旧交を温めた。特に今回の会の幹事役として奮闘してくれたのが同期の一人だったで、三次会では同期会を兼ねた小さな慰労会ができた。次に会うのは何年後か。その時はみんなで元気に集まりたいものだ。

往復の新幹線で読んだのが、『ゴールデンスランバー』(伊坂幸太郎 新潮社)。いやぁ、これはまたすごい作品だ。自身の高いレベルのでの“傑作率”をさらにまた上げる作品と言えるだろう。とにかくオススメ。今から書店に行って買うべき一冊である。もっとも、この興奮の理由の一つは、読んだシチュエーションがあまりにも恵まれていたからかもしれないが。

手元に『書肆アクセスという本屋があった 神保町すずらん通り1976-2007』(岡崎武志・柴田信・安倍甲 編  『書肆アクセスの本』をつくる会)が届いた。神保町の書店『書肆アクセス』の閉店にともない、有志が集まって刊行したものだ。この経緯は以前この欄でも紹介したが、いざ手にとってみるとたくさんの人の思いが詰まった素晴らしい一冊が完成したと思う。編集代表者の「志の高さだけは一流。天下無敵の本になっているはずだ」(「はじめに」より)の言葉どおりである。恐悦至極ながら、自分も駄文を書き誌面を汚している。周りの“共著者”の顔ぶれにただただ驚くばかりだが、そんな仲間たち(ああ、思い切って書いてしまった・・・)とともに、忘れられない書店「書肆アクセス」をずっと心に刻んでいよう。

明日は仙台文学館で「昔話とはなにか」と題した筑波大学名誉教授・小澤俊夫先生の講演会がある。実は大役を仰せつかっており、少々緊張している。それはともかく、小澤先生と佐々木徳夫先生が会話されている様子を、誰よりも身近に拝見できることは本当に楽しみである。緊張を超えた興奮。それを味わいながら、明日を待とう。(小)
12月7日

いよいよ明日から、仙台文学館の企画展「みやぎの昔ばなし ‐佐々木徳夫の仕事から‐」が始まる。今日はそれに先立って、佐々木先生とともに展示を見せてもらった。「感動」の一言である。詳しくは書かない。ぜひ文学館へ行き、展示をご覧いただきたい。いま言えるのはそれだけである。

でも、一つだけ補足を。館内レストラン「杜の小径」で楽しめる、おなじみの企画展メニュー。今回はお餅がメインの一品だが、これも素晴らしい! ぜひ合わせてお楽しみあれ。(小)
12月6日

「みやぎの昔ばなし ‐佐々木徳夫の仕事から‐」(仙台文学館)には、展示・イベントに加えてもう一つ大きな目玉がある。通常の企画展で制作される「図録」代わりのものとして、『みやぎの昔ばなし 心をぬくめる21話』という昔話集を仙台文学館発行として作った。この一冊、実に素晴らしいものだ。

掲載されている21の昔話は、すべて宮城県内で佐々木徳夫先生により採集されたものだ。ほとんどが、小社刊行の著作に入っているものだが、今回あらためて註などを加えて手直しされている。「八枚の御札」「坪沼の謂れ」「宮城野の歌」など、話の中に馴染みのある地名が登場するのが地元民として楽しい。もちろん、「まてい爺とそそう爺」や「姥捨て山」「猿地蔵」などの人気の話も収録されている。「三十一文字恋問答」という美しい艶笑譚が入っているのが、「文 佐々木徳夫」たる所以と言えるか。「解説」では一話ごとに由来や背景、そして話者が紹介されている。この「解説」だけでも読み応えがある。

「絵 阿部笙子」というのも、この一冊の大きな魅力だ。宮城県白石市在住の版画家・阿部笙子さんが、カバー絵から挿絵まですべてを描き下ろしている。独特の雰囲気を持つ阿部さんの絵のタッチは、昔話の世界にぴったりである。「お月お星」や「宮城野の歌」「八枚の御札」の挿絵は、個人的に大いに気に入ってしまった。それら白石和紙に描かれた原画は、たしか展示もされるはずである。

そしてさらに、この本には朗読CDが付いている。21話の中から12話を抜粋し、朗読者の田村文子さんの読みで録音されている。田村さんは、東北放送ラジオ「みちのくむかしばなし」で10年以上にもわたって昔話を朗読している方だ。このレコーディングに立ち会ったのだが、ほとんど間違いがなく、想像以上にスムーズに収録を終えたことに一同驚いていた。さすがは田村さんである。また、このCDが付いていることで、「昔話は耳で味わうもの」という佐々木先生の考えと企画展のコンセプトを貫徹している点も見逃せない。 『みやぎの昔ばなし 心をぬくめる21話』は、一冊(CD付)で税込1200円。値段をとやかく言いたくはないが、この内容でこの値段は絶対にお得だと思う(むしろ、声を大にしてそう言いたい気持ちだ)。カバー紙に「里紙」という和紙に似た手触りのものを選んだり、「ぬくめる=温める」のサブタイトルにちなんで見返し紙の色を温かな橙色にしたりと、随所に趣向を凝らした一冊でもある。仙台文学館ほか、市内のいくつかの書店でも買うことが出来る。興味のある方は、ぜひお手に取っていただきたい。(小)
12月5日

トップページに「特報!」として「みやぎの昔ばなし ‐佐々木徳夫の仕事から‐」(仙台文学館)へのリンクを追加。企画展全般について詳しく記載があるので、ぜひご覧いただきたい。注目は企画展ページ内のイベント詳細。「これでもか!」というほど、質・量ともに充実した内容だ。

まずは来週12日(火)に筑波大学名誉教授の小澤俊夫先生の講演会「昔話とはなにか」がある。会期序盤からビッグネームの登場だ。小澤先生と言えば昔話研究の大家で、佐々木先生とも交遊が長い。講演等で全国を飛びまわっているそうで、土日の日程を押さえることができず、異例の平日昼間の講演となったそうだ。小社刊行の佐々木先生著作に序文を頂戴していることもあり、いつか直接お目にかかってご挨拶したいと考えていた。今回はさらに講演を聴けるというのだから、今から12日が楽しみである。間をあまり置かず16日(日)には、文学サロン「昔ばなしを集めつづけて」がある。佐々木先生・作家の佐佐木邦子さん・朗読者の田村文子さんによるイベントだ。昨年度四回にわたって文学館で行なわれた「昔ばなしの四季」の拡大版と言えるものである。「四季」では田村さんの昔話朗読に佐々木先生が解説を加えるという形式だったが、今回の拡大版はどのようになるのか。この日どんな話をするのか、あえて佐々木先生には訊いていない。これも当日を楽しみに待とうと思う。

年が明けて早々の1月6日(日)には、「ふるさとのことばを語り継ぐ」と題したイベントが開催される。パネリストは東北大学方言研究センター教授の小林隆先生、佐々木徳夫先生、文学館の小池光館長、コーディネーターは川野目亭南天さん。そして岩手・宮城・福島にお住まいの昔話の語り手を招き、その語りを聴きながら「昔話とことば」を考えるというものだ。これはかなり面白くなりそうである。パネリストは三者三様の専門分野で活躍しながら、それぞれに重なる部分を持っている。そこにホンモノの昔話の語りが加わるのだから、論じられるのは果たして言語学なのか、民俗学なのか、文学なのか・・・。もしかしたら、「昔ばなし学」などと名付けたくなるような新たな学問分野の誕生が見られるかもしれない。14日(日)は、文学館内の喫茶店「杜の小径」店長の三山タエ子さん(この方は、ある意味で文学館で最も著名な方である)による「小正月を楽しむ〜餅花つくり〜」がある。昔話は生活に根付いたもので、年中行事とは切っても切れない関係にある。会期が正月であることに着目した、ちょっと異色でユニークなイベントと言えよう。2月3日(日)の「金野むつ江の民話語り」も面白そうだ。地元劇団の主宰者が、マリンバの音に乗せて民話語りをする。「劇都仙台」にある仙台文学館ならではの企画だ。

さらに圧巻なのは、「囲炉裏端で昔っこ」という試み。展示室内に設置する囲炉裏端で、地元の民話の会・語りの会・わらべうたの会の方々が昔話や童歌を披露する。これがなんと、ほぼ毎週末の午前午後に予定されている。その回数、実に46回(全24日)。中でも注目なのは、東北生活文化大学高校宮城伝承文化研究会の出演(これは館内講習室にて開催)だ。現役の高校生が昔話をどのように扱うのか?? これは見逃せない。

上記に連ねたイベントについては、トップページのリンクから企画展ページへ進めば、すべて詳細を把握することができる。「囲炉裏端で昔っこ」は、二度目からは半券提示で無料になるサービスもある。展示と同様に、これらイベントも大いに楽しめるものになるだろう。(小)
12月4日

今週末8日から来年の2月24日まで仙台文学館で開催される「みやぎの昔ばなし ‐佐々木徳夫の仕事から‐」の展示内容は、なかなか興味深いものになりそうだ。もちろん、全容を把握しているわけではないのだが、漏れ聞こえてくる内容を少々紹介すると・・・。

そもそも昔話とは、語り手の口から言葉として出ている時だけに成り立つもので、言わばその時間にしか命を持たないものである。この点は佐々木徳夫ご自身先生も、「昔話を録音して翻字するということは、昔話の記録方法としては二次的・三次的なものに過ぎない」と言っている。本当の意味で昔話を楽しむとしたら、語り手の目の前に座り、その語り手が受け継いできた(管理している)昔話を語ってもらい、それを自分の耳で聞くというスタイルになる。そんな口承文芸である昔話の魅力を、展示という方法でいかに伝えてゆくのか。仙台文学館の担当者の方も頭を悩ませたと思う。

同展の展示コーナーは、大きく分けて三つのブロックに分かれるようだ。まずは昔話の語りの部屋。なんと展示室内に囲炉裏をつくり、“昔話が語られていた場”を再現。周りには今となっては珍しくなった民具(実物)を置き、佐々木先生が訪ね歩いた東北の農家の雰囲気をかもし出す。さらに、単にそのようなスペースを作るだけでなく、そこで実際に昔話の語りや紙芝居などを実演するという。語るのは「民話の会」「語りの会」の会員のほか、佐々木先生の採集対象でもあったホンモノの語り手も登場する。前述した「昔話を聞く理想のスタイル」にかなり近いものを味わえそうだ。

昔話の語りをじっくり味わいたい場合は、小部屋に区切ったスペースでCDで聴くことができる。これなら一人でゆっくりと、昔話の世界に浸ることが出来る。よくある展示室のCD・ビデオコーナーはどうも内容が退屈であるイメージが強いが、このコーナーは昔話という一つの物語を聴くことができるので、あまり飽きが来ないと思う。むしろ、CD一枚に入っている昔話すべてを聴きたくなるだろう。

同展のサブタイトルになっている「佐々木徳夫の仕事から」を表現するコーナーもある。ここでは佐々木先生の半世紀にわたる昔話採集活動を、パネルにして紹介する。展示物は実際に使用した録音機材・話を翻字したノート・原稿・校正紙・挿絵の原画など。語り手が語る昔話が、先生の手によって本になるまでを、一連の流れで見られるようになる。これは昔話ファンだけでなく、出版に関心のある人なら大いに楽しめるはずだ。私も、他社の先輩編集者が佐々木先生の原稿をどのようにして本にして行ったのか、たいへん興味がある。

展示についての情報だけでも、こんなに楽しそうな内容だ。これに加え、会期中のイベントも実に充実している。明日はこのイベントについてお知らせする。(小)
12月3日

12月の仕事始めは寒い一日となった。朝から曇りの空模様で、午後には雨が降り冷たい風が吹き始めた。これが夜には雪になるという。寒い冬の始まりを感じる。

今年の冬の最大の話題といえば、今週末8日から来年の2月24日まで仙台文学館で開催される「みやぎの昔ばなし ‐佐々木徳夫の仕事から‐」に尽きるだろう。光のページェントもクリスマスも大晦日も正月もどんと祭も節分もすべて吹っ飛ばす、超弩級の78日間である。この78日間と同じ時代を生きることを、我々は神に感謝しなくてはならない(と思う)。

ちょうど一年前のこの欄によると、昨年の12月16日に仙台文学館の学芸員さん二人が佐々木先生宅を訪問し、昔話資料の整理・預かり作業をした。「寄贈された資料は、佐々木先生と文学館の方々の手によって整理され、いずれは展示等を通して我々市民も目に耳にすることができるだろう。佐々木徳夫昔ばなしの一ファンとして、その日が今から待ち遠しい。」などと書いていたのだが、“その日”がもう数日後に迫ってきている。これが興奮せずにいられようか(いや、いられない)。

今週のこの欄では、この「みやぎの昔ばなし ‐佐々木徳夫の仕事から‐」の展示内容やイベントについて、「予告編」というかたちで紹介して行こうと思う(他にネタがないわけでは決してない)。こうご期待。(小)

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