いんさいど世界
ホーム バックナンバー

いんさいど世界(5)
地球の磁場が消えていく!


ことし、2003年の読書界最大の話題といえば――唯一のものではないにせよ――、山本義隆氏の労作、『磁力と重力の発見』(みすず書房)の3巻シリーズ完結のニュースでしょう。
毎日出版文化賞と大仏次郎賞を同時受賞した傑作です。
ぼくも「本の森」に関係する出版人のはしくれ、高い本ですが、飲み代をセーブして購入しようと思っています。理科音痴のひとりですが、なんとか読破してみたいものですね。
山本義隆氏といえば、東大全共闘の議長をした、70年世代のヒーローです。物理学者の卵が大学アカデミズムと縁を切って、予備校の講師をしながら、全1000ページに近い、この大著を書き上げました。
頭が下がります。

で、今回は、山本義隆氏に敬意を表しつつ、地球の磁力に関する話題を紹介したいと思います。
地球って大きなひとつの磁石である……これってわたしたちの常識ですね。磁石の針は北極の方向、つまり「北」を指すようになっています。
マグネティック・フィールド(磁場)というのがあって、わたしたちはそのなかに生きている。渡り鳥なんかも、この磁場の磁力でもって方向を確認し、渡っているらしい。
この磁場があるおかげで、わたしたちの地球全体が、太陽の磁気嵐で生まれるプロトン(陽子)の強烈な放射から守られているそうなんです。
太陽からのプロトンの放射が磁場で跳ね返されずに地球の大気圏にもろにぶつかると、窒素酸化物が生まれ、オゾン層を破壊・拡大してしまい、オゾンの穴を通して有害な紫外線が直射するようになっちゃうそうです。
そういうことを防いでくれてもいる、大事な大事な地球の磁場が弱まっている――これがきょうのニュースの肝です。
今月、12月11日、アメリカのサンフランシスコで、米国地学会が開かれ、そこで磁場の弱まりが報告されたのですが、地球の表面――つまり地表での磁力測定器を使った観測結果では、過去150年間に、地球の磁場がなんと10%も衰弱しているそうです。
このペースで磁場が失われていくと、あと1500年から2000年で、磁場は消失してしまうんだそうです。
地球の磁場がなぜ生まれているかというと、どろどろに溶けたマントル下のマグマの流れのなかで発生する電流によるものらしいんですが(このあたりは、学校の理科の先生方に解説をお願いします)、このマグマの流れに変調が起きていて、どうもそのせいで磁場の力が落ちているらしい。
すでに南大西洋には、ほかより30%も磁場が弱い、マグネット・ホールともいうべき地域が現われているんだそうです。
このままの傾向が続いていくと、こんごどうなるか?
マグネット・ホールがどんどん出来て、その地域では磁石の針がとんでもない方向を示すこともありうるそう。
そうやっているうちに、さきほども言いましたように、今から1500年から2000年後に磁場が地球からいったん完全になくなる状態に入り、その後、おそらく、いまの「北―南」の方向軸とはまったく違った――場合によっては、南と北と逆転したかたちで――磁場が復活することもありうるのだそうです。

以上はニューヨーク・タイムズ紙から仕入れた知識ですが、地球の深部で変調が起き、そのおかげで「北」が「北」でなくなることもあり得るってことのもっと深い、ほんとの意味を、山本義隆先生に教えてもらいたいですね。『磁力と重力の発見』という本をますます読みたくなりました。(2003・12・25)
top