
いんさいど世界(13)
ヤング作家 世界的に台頭
ことしの芥川賞、すごかったですね。2人のギャルが日本文学界最高の賞をかっさらって行った。作家というと、一昔前までは、頭をかきむしりながら、原稿用紙に向かって、なにやら必死に書いていく、暗いオッサンといったイメージでしたが、それがこのところ、ずいぶん変わって来た。これって、実は日本だけの現象ではないようです。世界的にヤング作家が台頭している。きょうはこのあたりに的を絞って、すこしお話したいと思います。
目下、世界ナンバーワンのベストセラーといったら、例の「ハリー・ポッター」のシリーズでしょう。イギリスのおばさんが書いたファンタジー物語です。映画にもなったりして、日本でもまだまだ、すごい人気ですよね。この「ハリー・ポッター」を一発でぶっ飛ばし、ベストセラーのランキングのトップに踊り出た新作があります。ご存知の方もおありでしょうが、その名も「エラゴン」・・・・・・聞いたこと、あります?
彗星のように読書界に登場し、米国のニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・ランクなどで、一気に1位にのぼり詰めた作品です。作者はクリストファー・パオリーニ君。アメリカのど田舎、モンタナ州のパラダイス・バレー(つまり、極楽谷)ってところに住んでいる青年です。20歳になったばかり。それがすごいホームランをかっ飛ばした。
このクリストファー君って、ホームスクーラーなんだそうです。学校に行かないで、自分の家を拠点に好きなことを学ぶホームスクーラーなんだそうです。「エラゴン」の原稿を買き始めたのは、15歳のとき。1年がかりで書き上げ、脱稿するのですが、どうも気に入らない。それで次の年、まる1年かけて、全面的に書き直したそうです。書き直したら、けっこうな作品に仕上がった。それを親に見せたら、「これはいい」ということになって、両親が経営するど田舎出版社から、出版されました。印刷部数、なんと50部。ところが、この50部のうちの1冊が、やがてアメリカの児童文学作家の目にとまるんですね。その人が「これはすごい」と、ニューヨークの大手出版社に持ち込んだ。そうやって、とうとう、「ハリー・ポッター」をぶっ飛ばす、超ベストセラーになっちゃったわけです。
「エラゴン」のエラゴンって、ドラゴン、竜みたいな名前ですが、主人公の少年の名前です。でも物語のなかには、ドラゴンも出て来る。エラゴンとドラゴンが「エンパイア」の敵と闘い、勝利をおさめるストーリーだそうです。この「エラゴン」、原書では509頁もある長編ですが、3部作の第1部にすぎないそう。ことしの年末に第2作の「エルデスト」っていうのが出ますが、完結編の第3部、「エンパイア」が出るのはいつになるか決っていません。映画化も決定済み。日本語訳が早く出てほしいものですね。
「エラゴン」はアメリカ製ですが、フランスでは。フラビア・ブジョールという14歳の少女が買いた「宝石の預言」ってファンタジーが、これまた爆発的に売れているそうです。イギリスでは、ジョン・ディキンソンという青年が書いた「世界のコップ」というファンタジー物語がベストセラーになって、「ハリー・ポッター」を追撃しているそうです。それも、子どもたちばかりか、大人にも支持されている。まさにヤング作家のファンタジー・ノベル、大人気といったところですね。
どうして、ヤング作家のファンタジーが売れているか? イギリスのある評論家によれば、恐怖と希望、テロルとホープの入り混じったこの時代を生き抜く、道徳的な指針を示しているからだそうです。
悪に染まるではなく、正義を生きる勇気を手にすることができる。そういう「モラルの確実さ」が、読み手をひきつけている、それがベストセラーになった最大の理由だ、というようなことを言っています。なんとなく、わかる気がしますね。この世の中、悪がはびこって、正義が負けたり、変なことばかりですから。
わたしたちの宮城県からも、世界の読者を魅了するファンタジー・ノベルが生まれてほしいもの。「本の森」としても、ぜひ応援したいと思います。(2004・2・26)