いんさいど世界
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いんさいど世界(16)
北朝鮮とパキスタンが合同秘密核実験?


「イスラムの核」の父、パキスタンのカーン博士の研究所を中心とした、国際的な「核のブラックマーケット」の存在が明るみに出ました。「カーン研究所」を軸とした「核の闇市場」が白日の下に曝されたわけですが、「闇」はさらに深まるばかりです。きょうは、この問題の「続報」をお伝えしたいと思います。

先日、このコーナーで、キム・サナエさんという北朝鮮の商社代表の妻が、パキスタンのイスラマバードで暗殺された事件について報告しました。暗殺事件の発生は、1998年6月。西側報道によれば、サナエさん(北朝鮮へ渡った日本人妻か、その娘さんではないでしょうか?)を射殺したのは、当時、カーン研究所にいた北朝鮮の技術者だったといいます。なぜ、サナエさんが暗殺されたかというと、これも西側報道によれば、西側諜報機関に情報を流したか、流そうとしていたか、らしいのですが、この報道が正しいとして、問題は、サナエさんが流そうとした情報がどんなものだったか、ということです。彼女が暗殺されなければならないほどの「情報」とは、いったい何だったのか?

最近、というか、先月、2月の末、この「サナエさん暗殺」との関連で、興味がひかれるスクープ記事が、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙に掲載されました。デイビッド・サンガー(この人はたしか、NYT紙の東京特派員をした、やり手のジャーナリストです)と、ウイリアム・ブロードの両記者による、バイライン(署名)つきの特種記事ですが、内容は、カーン博士率いるパキスタンのチームが、パキスタンの西部の砂漠で、北朝鮮と合同で秘密核実験を行ったのではないか、との疑惑が強まっている、というものです。核兵器の開発も、実験が命。だから、核を開発した国は必ず、核実験をする。ところが、北朝鮮のような国土の狭い国では、国内で核実験をするわけにはいかない。北朝鮮が仮に核を保有しているとして、核実験はどうしたんだろうという疑問が昔からあったわけです。NYT紙の記事が事実だとしたら、北朝鮮はパキスタンと合同で、出張核実験をしていたことになります。

ここで「サナエさん暗殺事件」との関連に戻ると、NYT紙の報道によれば、パキスタンがイラン国境に近い、西部のバルキスタン砂漠で、、北朝鮮と合同で核実験を行ったのは、1998年5月30日。 ということはつまり、サナエさんは核実験の直後に、暗殺されたことになるわけです。この時系列から浮かび上がる、事件の「真相」は、おそらく、ただひとつ・・・・・・サナエさんは、北朝鮮がパキスタンと合同で行った、核実験という最高国家機密を流そうとして、殺されたのではないか、という推理です。NYT紙によると、パキスタンは1998年5月に、バルキスタン砂漠で、地下核実験を数度、繰り返していました。そんな一連の核爆発のなかで、実験の最後に、5月30日に行われた核実験は、それまでのものとは様相を異にしていたといいます。それまで地下核爆発実験が行われたサイトから、100キロ離れた地点で行われたことがひとつ。二つ目は、爆発規模が小さかったこと。三つ目は――これが一番、重要なポイントですが、実験地の上空を飛んだアメリカのスパイ観測機が、大気中からプルトニウムを採取しているんですね。ここから、NYT紙は、北朝鮮がパキスタンにプルトニウムを持ち込み、カーン博士らと核実験を行った疑惑が出て来る、と指摘しているわけです。もしかしたらサナエさんは、その一部始終を知る立場にあり、それを国際的に「内部告発」しようとして凶弾を浴びたのかも知れません。

同じNYTのサンガー記者の最近(3月14日付け)の記事によると、米国中央情報局(CIA)が、ワシントンで先週、パキスタンと北朝鮮の核協力に関するブリーフィングを行ったそうです。ホワイトハウスなどの政府高官が対象ですが、アジアの政府当局者にも説明が行われた。ということは、当然、わが国の在米大使館でもブリーフィングを受けているはずです。どんなブリーフィングだったんでしょう? 日本の報道機関にも、NYTのサンガー記者らに負けずに、パキスタンと北朝鮮の「核コネクション」について、気合の入った報道をお願いしたいところですね。サナエさん暗殺事件の追及は、日本の報道ジャーナリズムの試金石となることかも知れません。(2004・3・25)

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