いんさいど世界
ホーム バックナンバー

いんさいど世界(27)
「平和」を祈って大地を転がるインドの聖者


インドの聖者、BABA……ご存知ですか? BABA……「ババ」だなんて、呼び捨てられませんね。なにしろ「聖者」なんですから。ここはひとつ、親しみをこめて、BABAさんと言うことにしましょう。

実はババさんって、ギネスブックにも登場している、世界的に有名な聖者なんです。で、なんで有名かというと、大地を転がる聖者だからです。目的地に向かって、ひたすら大地を転がっていく聖者――。 現地の言葉で「ルドカン・BABA」――英語だと、ROLLING BABA……日本語だと、「転がるババさん」。そのBABAさんがいま、インドの国道2号線を、西に向かって転がっているそうです。このインド国道2号線って、実はパキスタンのラホールに続く、インターナショナルなルート。BABAさんはそのパキスタンのラホールに向かって、国道2号を転がっているんです。

暑いんだそうです。日中の最高気温が摂氏50度近い、ものすごい暑さ。かんかん照りのインドの夏を、からだをひねりながら転がっていく。身長150センチ、55歳。裸足の聖者です。半ズボンに、ブルーのTシャツ姿。ひじ、ひざを包帯やスウェット・バンドで防護して、路面をローリングしていく。あのジャイアント馬場さんを、細く、小さくしたような感じですね。タバコを吸いながら、コロコロ転がっていく。これがけっこう、速いんだそうです。お年よりの足では追いつけないくらいのスピード。 朝7時から正午までと午後4時から7時までの2回にわけて、一日8時間。30キロは進むっていいますから、なかなかなものですね。

そんなBABAさんの周りを、数十人の信者たちが付き従っています。先導する人は、路上の障害物を取り除いたり、日傘をさしてあげたり。そんなBABAさんの行く先々で村人たちは一行を歓迎し、食べ物やお金の施しをしている。BABAさんはそんな貧しい人々を孔雀の羽で撫でて祝福してあげるんだそうです。国道ですから、車の往来もあるのですが、渋滞ができても、ドライバーの人たちは文句を言わないんだそうです。みんな、BABAさんのことを知っているからです。インドでは牛なんかも道路なんで悠々としていますよね。

なぜ、BABAさんはパキスタンに向け、国道を転がっているのか? それはインドとパキスタンの平和を願っているかです。インドとパキスタンは戦争をしたり、これまでいがみあって来ました。そういう対立をなくしたい。愛と平和で友好関係を築きたい。そう願って、大地を転がっているだそうです。 BABAさんのローリングには、同じ大地に生まれ、大地に生き、大地に死んでいく、けっきょく、みんな同じ人間じゃないですか、争いはやめましょうよ、という思いがこもっている。

BABAさんは北インドのドゥンガプールの生まれ。12歳のとき、死にそうな少年の手をさすって命を救う奇跡を起こしたあと出家し、12年間、水と草だけの修行生活を続けた、ヒンヅー教の聖者なんです。その修行時代に、「平和のために転がりなさい」というお告げを受ける。それ以来、これまで5回にわたって、インド大陸をローリングして来ました。今回は6回目。ことし1月28日に、中部インドのラトランを出発、デリーから国道2号線に入って、すでに全行程の半分を突破、あと800キロ近くを残すのみ、となっています。インド大陸はこれから真夏。まさに暑熱地獄がBABAさんの前には待っている。順調にいけば、あと1カ月でラホール入りの予定。BABAさんはパキスタンのムシャラフ大統領に面会して、印パ平和を訴えるだそうです。インドとパキスタンの関係は最近、インドのボリウッド(ハリウッドをもじった言い方)映画にパキスタンのスターが出演したり、クリケットの親善試合が行われたり、いい方向に向かっています。BABAさんのローリングが最後の一押し(一転がし)になればいいですね。

ところで、このBABAさん、早くも次の「平和へのローリング」を構想しているそうです。何処へ? そう、イラクへ………。イラクに行って、ローリングするんだそうです。凄いですね。BABAさん、がんばれ。みんなで応援したくなりますよね。 (2004・7・8)                

top