
いんさいど世界(35)
北朝鮮が台風21号をメアリー(やまびこ)台風と命名
ことしは台風のあたり年です。18号台風は日本に大きな爪あとを残しました。猛暑の夏に続く、台風の季節。きょうは、台風のお話をしたいと思います。この前に来た「18号」台風ですが、実はあれって、番号じゃなくて、ちゃんとした名前が付いていました。ご存知でしたか?「ソングダー(Songda)」って名前です。「台風ソングダー」。このソングダー、いや18号台風のことは、被害が大きかったせいもあって、世界のマスコミでも取り上げられました。同じころ、アメリカでは「フランシス」という台風(ハリケーン)がフロリダを襲った。アジアでは「ソングダー」が、アメリカでは「フランシス」が大暴れしたわけです。
アメリカのハリケーンに名前がつくのはよく知られたことですが、「北西太平洋上で発達し、中心付近の最大風速がおよそ17メートル以上になった熱帯低気圧」である台風(タイフーン)にも、国際的に認められた名前がついているんですね。そういう決まりになっているんです。
でも、日本の気象庁はそれを無視というか、長年の慣行ということで、番号制を採り続けている。だから、えっ、日本に来る台風にも名前が付いているの?――って驚くわけです。
「ソングダー」って名前の由来、意味はさておき、台風あるいはハリケーンに名前がつきだしたのって、そんな1953年のことなんだそうです。昭和28年のことですね。アメリカの気象学者たちが始めたもので、アルファベット順のイニシャルで女性の名前をつけ出したんだそうです。それ以前は、米軍が使っていた、アルファベット(ABC)の通信確認表現である、ABLE(A)、BAKER(B)、CHARLEY(C)……を、アルファベット順につけていたんだそうです。つまり、ハリケーン「エイブル」、ハリケーン「ベーカー」ってわけです。
そんな「女の台風」の命名法に対し、女性差別だ、男女同権で行こう、といった批判が出て、男の名前もつくようになったのは、1979(昭和54年)のこと。そして現在、アメリカでは、男性名と女性名が入れ替わることになっているんだそうです。ハリケーンも男女同権なんですね。
では、わが東洋の「台風」はどうかというと、番号制を守っている日本は別として、以前はハリケーン同様、人間の名前をつける方式で来ましたが、今世紀から、つまり2000年から、アジアの関係各国の気象関係者が持ち寄ったニックネームをつけることになった。人間の名前をつけてもよし、地名でもよし、動植物でもよし……つまり、なんでもOKってことになったわけです。そうしたネーミングのリストが数年先まで決まっていて、順にあてはめていく。
そのなかには、日本の気象庁が考えた名前も含まれています。で、記念すべき2000年の台風1号の名前は何っていったかというと、「ダムレイ」でした。カンボジアがつけた名前で、「象」って意味。「象さん台風」だったわけですね。次の第2号は「ロンワン」。中国の命名で「龍の王」。第5号は日本が名づけ親で、「テンビン」。天秤座のてんびん、です。でも、日本では「テンビン台風」とは呼ばずに、相変わらず「台風5号」って言ってたわけです。さて、冒頭のことしの台風18号の「ソングダー」に戻りますが、これってベトナムが名づけ親。ベトナムの北西を流れる川の名前なんだそうです。
次の19号の「サリカー」は、カンボジアで「さえずる鳥」の意味。20号は中国語で「ハイマー」……「タツノオトシゴ」だそうです。日本が名づけ親のは、ちょっと飛んで台風23号です。それがなんと「トカゲ」。「トカゲ台風」なんです。日本はどういうわけか星座が好きで、「とかげ座」から命名した。まあ。いいんじゃないですか。
過去の例をみると、2001年の8号台風は北朝鮮の命名。「テポドン」(???)ではなく、「トラジー」……「人知れず咲く美しい花」だそうです。お隣の韓国はたとえば「ノグリー」(2004年4号)。その意味は……「たぬき」。うーん、「狸台風」ですかぁ……。ついでに中国。2000年の16号台風に「ウーコン」ってつけた。そのココロは「(孫)悟空」。フィリピンはどうかというと、たとえば2001年15号台風に「ダナス」。これって意味深で「経験すること」なんだそうです。何を経験することなんしょう?
もういちど北朝鮮にもどると、ことしの21号に「メアリー」とつけている。アメリカへの政治的メッセージかと思ったら、「やまびこ」って意味なんだそうです。「やまびこ台風」……なかなかいいけど、東北新幹線が止まるようなことにはならないでほしいですね。
この台風のネーミング・リスト、気象庁のホームページにアクセスすると、見ることできます。アジアの言葉の勉強にもなって楽しいですよ。(2004・9・16)